抑止とは? わかりやすく解説

よく‐し【抑止】

読み方:よくし

[名](スル)おさえつけて活動などやめさせること。「地価高騰を—する」「の—力」


おくし・せっしゅ 【抑止・摂取】

仏教教義の語。抑止は〈抑え止める〉こと、摂取は〈摂め取る〉ことで、仏が、衆生犯しそうな悪をあらかじめ抑えるのが抑止、すでに犯した悪を許容してくれるのが摂取。その教えを抑止門・摂取門ともいう。弥陀第十八願に「五逆正法誹謗するものを除く」とあるのは、すでに犯したものは摂取し、まだ犯してないものは抑止しておく、との意味があるという。なお摂取摂取不捨摂取して捨てず)・摂取照護(摂取し照らし護る)などの語としても用いられる

抑止力

(抑止 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 15:18 UTC 版)

抑止力(よくしりょく、: deterrence)とは、抑止する力であり、つまり相手に有害な行動を思いとどまらせる力、作用[1]。なにかをしようと思っている者にそれを行うことを思いとどまらせる力。やろうかと思っている活動をやめさせる力[2]

安全保障における抑止力

安全保障分野で抑止力は、一方が他方に軍事力の行使を行えば、被攻撃国は攻撃国に報復攻撃を行い、攻撃国は利得に見合わない損害を被ることをあらかじめ明白に認識させることで、軍事力行使を思いとどまらせることを言う[2][3]。抑止力にはさまざまな形があるものの、その中核部分は、相手に恐怖を与える威嚇であり[4]、報復の脅しによる「懲罰的抑止」である[1][3]。相手国が望ましくない行動をすることを思いとどまらせて、現状を維持し変更させないことを目的とする[3]

抑止力が成立するには、次の3つの要件を満たしている必要がある[1][3]

1.相手が耐えがたいまたは受け入れがたい効果的な報復攻撃の能力
2.相手に対する報復の意思の明示
3.相手に1および2を信憑性をもって伝達し、相手がそれらを認識し信頼すること[5]

具体例

日米韓3ヶ国と北朝鮮の例
  • 北朝鮮に対する3ヶ国の抑止力 - 日米韓3ヶ国側は、通常戦力の優位性を北朝鮮に示し、またアメリカの核戦力も明示することで、北朝鮮が大規模な挑発的軍事行動に出ることを思いとどまらせる作用を維持している[1]
  • アメリカに対する北朝鮮の抑止力 - 北朝鮮側は、同様に、核・ミサイルによる攻撃能力や局地戦能力の高さを宣伝することで、アメリカが北朝鮮に対して軍事介入することを思いとどまらせる作用を成り立たせようとしている[1]2017年アメリカマティス国防長官が記者会見で「北朝鮮問題を軍事的に解決しようとすれば、想像を絶する規模の悲劇が生じる」と指摘した[6]が、これは北朝鮮の報復能力への一定の理解を背景にした発言である[1]

両方とも上述の「抑止力の3条件」の維持あるいは成立に取り組んでいる[1]

インドとパキスタンの例
  • インドは1974年に、パキスタンは1998年に核実験を行い、両国とも核保有国となり互いに報復を恐れ核兵器の使用は行っていない。なお小規模紛争を抑止することはできず、2000年代に入っても両国の紛争は続いた[7]

脚注

  1. ^ a b c d e f g 神保 2017.
  2. ^ a b 大辞泉【抑止力】
  3. ^ a b c d 後瀉 2015.
  4. ^ 山本 2021, p. 126.
  5. ^ 山本 2021, p. 127.
  6. ^ “北朝鮮問題の軍事的解決、「想像絶する悲劇」引き起こす=米国防長官”. ロイター. (2017年5月20日). https://jp.reuters.com/article/north-korea-us-idJPKCN18F2A7 
  7. ^ 核抑止の失敗に向かう印パ紛争

参考文献

  • 神保謙 (2017年5月31日). “抑止力成立の3条件: 報復能力・意思と相手の理解”. キャノングローバル戦略研究所. 2023年9月6日閲覧。
  • 後瀉桂太郎「抑止概念の変遷: 多層化と再定義」『海幹校戦略研究』第5巻第2号、海上自衛隊幹部学校、2015年12月、ISSN 21871868 
  • 山本哲史「抑止理論における認知について」『エア・アンド・スペース・パワー研究』第7巻、航空自衛隊幹部学校、2021年3月、ISSN 24362395 

関連項目

  • 制裁脅し
  • 核抑止力
  • Massive Ordnance Air Blast bomb - 核兵器はいろいろな意味で被害が大きすぎて使えない、ということで開発された爆弾。核兵器ではないので放射能汚染は無く実際に使えるが、猛烈な破壊力を持つ爆弾。
  • ダイナマイト - 発明者のアルフレッド・ノーベルは強力な爆弾であるため、各国が使用を躊躇し戦争抑止になると期待していたが、実際には戦争の激化を招いた。
  • 敵基地攻撃能力
  • サダム・フセイン - 報復力、抑止力を持たず米国に滅ぼされた。
  • ムアンマル・アル=カッザーフィー -報復力、抑止力を持たず米国に滅ぼされた。
  • チベット - 報復力、抑止力を持たず中国共産党にすっかり侵略された。
  • 台湾 - 大陸の中国共産党側から侵略のターゲットにされつづけている。現状は台湾単独では十分な報復能力つまり抑止力を持たず、米国や日本が中国に対するしっかりとした報復能力つまり強烈な攻撃能力を持ち、もし台湾を侵略すれば中国の中枢に対して報復するとの意思も明示することで抑止力を持たないと、2025年~2026年前後には台湾は中国によって侵略され半導体生産なども中国に握られてしまう、と米国の分析官などから指摘されている。
  • アメリカ同時多発テロ事件 - イスラーム側からの米国に対する報復能力の明示と意思の明示。米国の軍事展開(イスラーム側から見た侵略)に対する抑止の試み。
  • 新しい戦争 - 近年の戦争は国家対国家という枠にはおさまらない、という指摘を含んだ概念。古典的な抑止の仕組みからはずれている。

抑止

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 09:22 UTC 版)

軍事力」の記事における「抑止」の解説

敵の軍事行動をこちらの軍事力存在によってリスクコスト計画の段階引き上げることで思いとどまらせるという機能である。冷戦における核兵器開発競争はこの抑止力競争という側面が強い。

※この「抑止」の解説は、「軍事力」の解説の一部です。
「抑止」を含む「軍事力」の記事については、「軍事力」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「抑止」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

抑止

出典:『Wiktionary』 (2021/08/14 23:14 UTC 版)

名詞

(よくし)

  1. 抑え付けてとどめること。何らかの行為さまざまな手段によりさせないようにすること。食い止めること。

発音(?)

よ↗くし
よ↘くし

派生語

対義語

対義語

動詞

活用

サ行変格活用
抑止-する

「抑止」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「抑止」の関連用語

抑止のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



抑止のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
中経出版中経出版
Copyright (C) 2025 Chukei Publishing Company. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの抑止力 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの軍事力 (改訂履歴)、核抑止 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの抑止 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS