知る権利
【英】 right to know
情報の受け手が情報の保持者に向けて情報の提供を要求する権利をいう。わが国の憲法にはこれを正面から規定した条文はないが,表現の自由(憲21条)を根拠とするのが一般的である。すなわち,世界人憲宣言19条が「意見及び表現の自由を享有する権利…は,…情報及び思想を求め,受け,及び伝える自由を含む」と規定しており,またわが国の判例にも報道の自由に関連して「知る権利」に言及したもの(最大決昭44・11・26刑集23巻11号1490頁「博多駅取材フィルム事件」)があるからである。
この知る権利を実効あるものにしようというのが情報公開制度であるが,情報公開法または情報公開条例に規定される開示請求権が,憲法上の知る権利を直接具現化したものなのか,情報公開法または情報公開条例によって創設されて市民に付与される権利であるのかについては争いがあり,裁判例は後者を採るものが多数を占めている。
(注:この情報は2007年11月現在のものです)
知る権利
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/04 02:29 UTC 版)
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知る権利(しるけんり、英: Right to know)は、公衆がその必要とする情報を、妨げられることなく自由に入手できる権利[1]。
概説
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知る権利とは、国民が自由に情報を受け取り(自由権的側面)、または、国家に対し情報を公開請求する権利(請求権的側面)であり、二つの側面がある[2][3]。 知る権利は、憲法21条1項によって保障されることが、博多駅テレビフィルム提出命令事件の判決によって示されている。学説上の通説的見解に拠れば、憲法上の知る権利には裁判規範性は認められず、立法的措置(情報公開法制の制定、反論権の創設など)が必要とする[4][5]とされる。
情報受領の自由
国民が自由に情報を受け取る(自由権的側面)ことは、情報受領の自由と呼ばれる[6]。
保護範囲
その保護範囲は、「新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれる」(よど号事件新聞記事抹消事件)とする。 もっとも、「表現の自由は、他面において、これを受ける側の知る自由をも伴う」(札幌税関検査事件)とされる。 なお、国会における国民の知る権利の保障ため、国会には国政調査権を持たせている[7]。
制約
情報受領の自由に対する制約は、公開や流通している情報へのアクセスを妨げるものであり、その性質上、事前抑制にあたることが多い。したがって制約を正当化するには厳格な判断が伴う[8][9]。 前出のよど号事件新聞記事抹消事件に拠れば、「所内の規律及び秩序の維持に放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるものとしたことには合理的な根拠があり」、その制限の程度は、障害発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきと判示した。これは、「相当の蓋然性」の基準と呼ばれる[10]。 この他、法廷傍聴でメモを取るもの知る権利の一つとされる(法廷メモ訴訟)。 さらに、特定秘密の保護に関する法律は、日本国憲法上の知る権利を侵害する恐れがあるとの法学者やジャーナリスト、市民からの批判があがった。詳しくは、特定秘密の保護に関する法律に対する声明の一覧を参照のこと。
情報公開請求権
国家に対し情報を公開請求する権利(請求権的側面)は、情報公開請求権と呼ばれる。個々の国民が、裁判上公開請求権を行使するためには、公開の基準や手続き等について、法律による具体的な定めが必要である[11]。詳しくは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、情報公開条例を参照のこと。 また、行き過ぎた情報公開をさせないよう個人情報保護法制も制定されている。詳しくは、個人情報の保護に関する法律を参照のこと。
アクセス権・反論権
さらに、知る権利の一類型としてアクセス権 (知る権利)や反論権がある[12]。
知る自由との違い
知る自由は知りたいことを妨害されない権利(受動的権利)なのに対し、知る権利は進んで情報を収集する権利(能動的権利)であるところに違いがある。 なお、知る自由が問題となって現れる例として刑事施設被収容者(在監者)の閲読制限、わいせつ物等の青少年の読書・閲覧規制などがある。他方、知る権利が問題となって現れる例として情報公開制度、情報にアクセスする権利などがある[13]。
脚注
注釈
出典
- ^ “知る権利(シルケンリ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2024年9月2日閲覧。
- ^ 浦部法穂・中村睦男・佐藤幸治・樋口陽一編『注釈 日本国憲法 下巻』青林書院 1988年 p493以下
- ^ 加藤隆之「知る権利と情報公開法」工藤達朗編『よくわかる憲法 第2版』ミネルヴァ書房 2013年 p80-81
- ^ 佐藤幸治『憲法 第三版』青林書院 1995年 p516
- ^ 井上禎男「情報公開と知る権利」松井修視編『レクチャー情報法』法律文化社 2013年 p34-35
- ^ 浦部法穂・中村睦男・佐藤幸治・樋口陽一編『注釈 日本国憲法 上巻』青林書院 1984年 p419以下
- ^ 憲法教育指導研究会編『憲法の解説 6訂版』一橋出版 2008年 p88
- ^ 川岸令和「知る権利」鈴木秀美・山田健太編『よくわかるメディア法 第2版』ミネルヴァ書房 2019年 p14-15
- ^ 大石泰彦「表現の自由」早稲田大学ジャーナリズム教育研究所編『現代ジャーナリズム』早稲田大学出版部 2013年 p210-213
- ^ 倉田原志「刑事施設被収容者(在監者):塀の中の人権」工藤達朗編『よくわかる憲法 第2版』ミネルヴァ書房 2013年 p146-147
- ^ 憲法教育指導研究会編『憲法の解説 6訂版』一橋出版 2008年 p29-30
- ^ 韓永學「メディアの集中・系列化とアクセス権・反論権」松井修視編『レクチャー情報法』法律文化社 2013年 p231
- ^ 山田健太『法とジャーナリズム』学陽書房 2004年 p82
参考文献
- 伊藤正己『言論・出版の自由 その制約と違憲審査の基準』岩波書店 1959年
- 千葉雄次郎『知る権利 : 現代の新聞自由』東京大学出版会 1972年
- 石村善治・奥平康弘編『知る権利 : マスコミと法』有斐閣 1974年
- 奥平康弘『知る権利』岩波書店 1979年
- 清水英夫編『情報公開と知る権利』三省堂 1980年
- 濱田純一『メディアの法理』日本評論社 1990年
- 松井茂記『マス・メディアの表現の自由』日本評論社 2005年
関連項目
知る権利
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 23:54 UTC 版)
文化的自由の根幹には知る権利がある。インターネット然り、出版の自由であり、報道の多さである。また、それを支援する社会構造・政策として、公立図書館の運営や新聞など活字文化への軽減税率の導入などが考えられる。 一方で著作権の観点から再販制度や古書店による流通、図書館での新刊貸し出し等の問題が、文化的自由を侵害することになるのか意見が分かれるところである。
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