反論権とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 反論権の意味・解説 

反論権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/15 16:32 UTC 版)

反論権(はんろんけん)とは、マスメディア報道等により批判・中傷を受けた者(報道被害者)が、当該マスメディアに対し、当該マスメディアの紙面上又は、放送上にて反論する機会を求める権利。

アクセス権の一類型である[1]

概略

反論権は、民放上の不法行為法の成立を前提とする狭義の反論権と、不法行為法の成否を問わないで認める広義の反論権がある[2]

なお、狭義・広義共に、批判を受けたのと同一の紙面スペース又は同一の放送時間・同一の分量・無料反論の確保を前提としている。

大陸法系の西ヨーロッパ各国を中心に反論権を認める立法が存在している[3]

反論権法制化の各国の動向

フランス

フランスでは、世界で初めて反論権の法制化を実施。1822年出版法によりプレスにおける反論権を導入した。1881年に体系化され今日に至っている。また、1972年には放送法にも反論権が盛り込まれた[4]

ドイツ

ドイツでは、フランスの出版法を参考に、1831年にバーデン州出版法によって最初に反論権が制定された。ドイツ連邦では、1874年に帝國出版法として反論権を法制化された。第二次世界大戦終結後、各州で出版法から放送法、放送法からメディア法へと移行しつつ、ドイツでは武器対等の原則を採用しているのが特徴である[5]

韓国

韓国では、ドイツ法を参考・移植して、1980年に言論基本法が制定され、その中で反論権が盛り込まれ、その後に制定された定期刊行物登録等に関する法律(定刊法)・改正放送法、それらの法を一元化した言論仲裁および被害救済等に関する法律(報道被害救済法)にも反論権は盛り込まれた[6]

英米法圏の国々

アメリカカナダ英国ニュージーランド等の英米法の国々では、法制化されていない。

日本の動向

1909年に公布・施行された新聞紙法で「正誤・弁駁権」制度が条文に明記され法制化されていたが、終戦後の連合国軍最高司令官総司令部による指示(GHQ指令)により、同法が廃止された(1949年に正式廃止)ので、以後このような制度は作られていない。

判例は、サンケイ新聞事件において、反論権なる制度を法令の根拠もないため認めなかった。

日本の学説上の動向

従来の通説

多くの憲法学者や一部の民法学者は、最高裁判所が指摘した観点から、反論権には否定的であり、民主的で自由な議論に対する国家による言論統制に繋がる[7]、戦前の新聞紙法の復活にも繋がるという指摘もなされている[8]。主張者に芦部信喜樋口陽一ほか。

近時の有力説

若手の憲法学者やメディア法(言論法)学者などを中心に、言論の多様性に繋がり[9]、司法的救済よりも簡便であるという理由[10]から反論権に肯定的な見解が出されている。主張者に市川正人田島泰彦ほか。

また、一部のメディア法(言論法)学者は、隣国の韓国でも導入されている事を踏まえ、さらに進んで、インターネット上にも反論権を認めてはどうかという見解も出されている[11]

脚注

  1. ^ 右崎正博「名誉毀損と反論権」浦田賢治編『立憲主義・民主主義・平和主義』三省堂、2001、p403
  2. ^ 韓永學「反論権をめぐる国際的動向と日本の課題」浮田哲ほか編『権力vs市民的自由』花伝社、2018、p41
  3. ^ 曽我部真裕「アクセス権と反論文の掲載」山田健太ほか編『よくわかるメディア法』ミネルヴァ書房、2011、p107
  4. ^ 大石泰彦『フランスのマス・メディア法』現代人文社、1999、p106以下
  5. ^ 鈴木秀美『放送の自由』信山社出版、2000、p38以下
  6. ^ 韓永學『韓国の言論法』日本評論社、p47以下及びp200以下
  7. ^ 幾代通「新聞による名誉毀損と反論権」星野英一編『私法学の新たな展開』有斐閣、1975、p462以下
  8. ^ 佐藤幸治『憲法(第3版)』青林書院、1995、p542
  9. ^ 右崎正博「反論権考」杉原泰雄ほか編『論争憲法学』日本評論社、1994、p142以下
  10. ^ 田島泰彦「表現の自由とメディアをめぐって」田島泰彦編『表現の自由とメディア』日本評論社、2013、p14
  11. ^ 韓永學「インターネットにおける人権侵害の救済」前掲『表現の自由とメディア』、p114以下

参考文献

関連項目


「反論権」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「反論権」の関連用語

反論権のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



反論権のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの反論権 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS