後天性免疫不全症候群とは? わかりやすく解説

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こうてんせい‐めんえきふぜんしょうこうぐん〔‐メンエキフゼンシヤウコウグン〕【後天性免疫不全症候群】

読み方:こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん

白血病悪性リンパ腫再生不良性貧血HIV感染症などのために、免疫機構損なわれた状態。続発性免疫不全症候群。

「後天性免疫不全症候群」に似た言葉

後天性免疫不全症候群


エイズ

同義/類義語:後天性免疫不全症候群
英訳・(英)同義/類義語:AIDS, , AIDS, Acquired ImmunoDeficiency Syndrome, , acquired immunodeficincy syndrome

ヒトT細胞感染するエイズウイルスHIV(Human Immunodeficiency Virus)による感染症で、免疫不全による様々な合併症引き起こす
「生物学用語辞典」の他の用語
病名疾患名治療など:  壊血病  多発性硬化症  奇形腫  後天性免疫不全症候群  心不全  心筋梗塞  感染症

後天性免疫不全症候群


後天性免疫不全症候群

後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome, AIDS, エイズ)はヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virusHIV感染によって引き起こされ重篤全身性免疫不全によって特徴づけられる疾患であり、高い発症率死亡率予防・治療難しさから、人類直面する最も深刻な医療問題一つとなっている。累積感染者数世界で6,000万人死者は2,000 万人超え中世黒死病流行例えられる未曾有の規模世界流行進行している。感染症法においては4 類感染症全数把握疾患定められており、診断した医師7日以内保健所通じて都道府県知事報告する義務がある(註:その後2003年11月施行感染症法一部改正により、5類感染症全数把握疾患変更)。

はじめに
エイズ1981年米国で、男性同性愛者カリニ肺炎カポジ肉腫など通常まれな日和見感染腫瘍もたらす極めて致死性の高い疾患としてはじめ報告された。その後1983 年に、病原体としてレトロウイルス属すHIV分離同定された。HIV はCD4 とよばれる細胞膜蛋白質受容体として細胞感染する性質をもつため、細胞性免疫統御する中枢細胞であるCD4 陽性ヘルパーT細胞マクロファージ感染し破壊する。そのため、細胞性免疫著し機能低下起こり全身性の免疫不全状態が引き起こされ様々な日和見感染症日和見腫瘍中枢神経障害など多彩重篤全身症状が起こる。適切な治療が行われなかった場合予後は2 ~3年である。しかし、ここ1995 年以来治療薬進歩には目をみはらせるものがあり、先進国におけるHIV 患者死亡率日和見感染発生率低下させ、HIV 患者予後大きく改善している。
さて、エイズ流行70年代半ば中央アフリカ地域始まった推定されているが、80年代入ってカリブ海欧米ラテンアメリカ諸国に、ついで80 年代末~90 年始めには南・東南アジア諸国、さらに90年代半ばに入ると東欧中国など諸地域において急激なHIV 流行起っている。2001年末の時点全世界で6,000万人におよぶ感染者発生し、すでに2,000万人上もの人々エイズ原因亡くなっているものと推定される
昨年2001年6月は、米国CDC 発行のMMWR 誌上に、エイズ最初の症例(5人の同性愛男性カリニ肺炎症例)が報告されからちょう20年目に当たり、国連ではエイズ特別総会開催された。この会議世界エイズ・結核・マラリア基金創設決議されエイズ結核マラリアという人類対す大きな脅威となっている感染症対す地球規模での取り組みへの強い決意うたわれた。しかし、その克服にはなお多く課題残されている現状にある。

疫 学

後天性免疫不全症候群
後天性免疫不全症候群

1. 世界におけるHIV/AIDS 流行現状HIV サブタイプ世界分布
地図上には2001 年末の大陸HIV 感染者(含むAIDS 患者生存者推計数および新規年間感染者数楕円内)(WHO/UNAIDS 推計)に加えHIV サブタイプおよびCRF世界分布を示す。HIV‐1グループM の各サブタイプをA~D, F ~H, J, K, グループO, NをそれぞれO, N, HIV‐ 2 を2 で示す。円の数字組み換え流行CRF)の番号を示す。

国連エイズ合同計画UNAIDS)による推計によれば2001 年末の時点で、HIV 感染者生存者総数4,000万人(うち15 歳以下が300 万人)、年間感染者発生数500 万人推定されている。これらの数値は、世界総人口(約60億人)の約150人に1人感染していること、また、一日当たり14,000 人-実に6 秒当たり1人-の新たな感染者発生していることを意味している。一日当たりの新規感染者数14,000人のうち、95%以上が開発途上国で、2,000 人が15 歳以下の小児である。成人感染者のほぼ50%女性1549 歳感染者の約半数1524 歳若年層推定されている。地域別にみると、サハラ以南のアフリカ地域感染者2,850 万人)と南・東南アジア560万人がもっとも深刻で、両地域世界全体感染者85%を占める(図1)。また、昨年度2001年1年間エイズ死亡者300 万人流行開始して以来累積エイズ死亡数は約2,500万人推定されている(推計2,480 万人)。アフリカいくつかの国々では、エイズ流行によって平均余命60 歳から40 歳にまで減少し一つの国の存否左右するほどの深刻な社会・経済問題引き起こしている。
一方我が国においては厚生労働省エイズ動向委員会報告によると、2001年12月31日現在、HIV 感染者報告届出総数は、4,526 件(男性3,085 件、女性1,441件)、エイズ患者届出総数は2,248 件(男性1,928件、女性320件)である。2001 年5月31日現在の血液凝固因子製剤による感染者は1,431 名(生存中の患者167名、累積死亡者536 名を含む)である。HIV年間報告数は1992 年ピーク後一旦減少したが、1996 年以降再び増加傾向続いている(図2)。2001年過去最高の新規感染者数621(男534、女87)を記録した従来凝固因子製剤よるもの感染者大多数占めていたが、現在では、異性間44%)および同性間の性接触32%)による感染主体となっている。また、日本人感染者大半国内感染80%)である。さらに、ここ数年傾向として1020 歳代の若年層感染者増加傾向指摘されており、近い将来我が国においても若年層中心にHIV 感染急増する可能性がある。その一方で保健所における抗体検査依頼件数はむしろ減少しており、我が国HIV 感染対す意識低さ危機的ですらあると憂慮される。
我が国諸外国比べて感染者数少ないが、HIV 感染無症候期検査受けていない数を考慮すると、実際感染者はもっと多いことが予想されるHIV 感染者数の実態正確に把握することは難しいが、厚生省HIV 感染症疫学」班(班長 木原正博教授報告によれば98年末の時点で約8,000人、2003 年末で16,000人という将来予測なされている。


話題1 -HIVエイズ流行起源
HIV起源に関しては、霊長類自然宿主とするサル免疫不全ウイルスsimian immunodeficiency virus, SIV)のヒトへの伝播ズーノーシス人獣共通感染症zoonosis)によるとする有力な証拠集積しつつある。HIV‐2 についてはスーティーマンガベイを自然宿主であるSIV SM由来することが確証されていた(両ウイルスだけがvpx 遺伝子という特異的な遺伝子共有し系統樹密接な関係がある)が、さらに、最近HIV‐ 1チンパンジーのもつSIV CPZ に由来するとする有力な証拠提出されている。狩猟の際の血液との接触創傷からの感染屠殺した霊長類生肉摂取などがヒトにおける流行発生契機になった考えられている。また、HIV 流行主体となっているHIV‐1グループMが生まれたのは、最近解析結果20世紀初頭の高々100年程度最近の出来事であることが明らかにされている。
エイズ流行シナリオ次のように考えることができようエイズ1960年70年代より中央アフリカ地域密林風土病的に存在した考えられ当時スリム病」と呼ばれた著しい「るいそう極度痩せ栄養不良状態)」によって特徴づけられる疾患群中に、現在でいうエイズ含まれていたと推測されている。当時病気外界とは隔離されていたが、中央アフリカ地域長年にわたる戦乱による難民化-農村部疲弊交通機関道路網の発達経済活動急速な発展に伴う急激な人々移動また、売春不特定多数性的パートナー性的接触(promiscuity)といった様々な社会的・経済要因絡まりあって、急速に世界広まった考えられるとりわけ1980 年入って極めて活発でしかも多数性的パートナーとの性行動を行う欧米同性愛者間に急速に拡がり、これがエイズよばれる疾患単位認識されるきっかけとなった。またこれに前後して欧米薬物乱用者(injecting drug user, IDU)の集団で、同じ注射器用いて薬物回し打ち(ニードル・シェアリングneedlesharing )によって爆発的に流行拡大した1988 年に入ると、これまでエイズ流行兆候のなかったアジア地域、特にタイ・インドでIDUs の間や売春不特定多数パートナーとの性的接触によって爆発的な流行発生し、現在、これらの地域アフリカに次ぐ最も深刻な流行地の一つとなっている。さらにごく最近は薬物乱用者中心とした東欧旧ソ連圏中国などでの新興流行emerging epidemic, エマージング・エピデミック)が注目されている

病原体

後天性免疫不全症候群
後天性免疫不全症候群

エイズ病因となる病原体は、レトロウイルス科のレンチウイルスに属すヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virus, HIV)である。このウイルスは、1983 年にフランス・パスツール研究所のルック・モンタニエ(Luc Montanier)らのグループによって発見された。

図3. HIV 粒子構造模式図
HIV 遺伝子ウイルス粒子構成タンパク質との関係を上に示す。ウイルス粒子内部砲弾型のキャプシド構造内に約9,500 ヌクレオチドからなる(+)鎖ゲノムRNA が2 コピー含まれるエンベロープ蛋白質3 量体構造をもつ。

図4. HIV 遺伝子構造と機能
HIV 遺伝子は、gag, pol, env の3 個の主要な構造遺伝子vif , vpr, vpuHIV‐1 とSIVCPZ だけがもつ)あるいはvpx (HIV‐2 とSIVSM がもつ), tat , rev, nef の6 個の調節遺伝子から構成され、複雑で精妙遺伝子発現調節機構によって制御されている。tat, rev2 つエキソンからなるTAR 及びRRE RNA 領域それぞれトランス活性化因子TatRev結合サイト

HIV直径110nm のRNAエンベロープウイルスで、約9,500塩基からなる2 コピーRNA ゲノム逆転写酵素などを含む砲弾型のコアキャプシド)と、それを取り囲む球状エンベロープによって構成される(図3)。ウイルス粒子外側構成するエンベロープには、外側突き出している糖タンパク質gp120と脂質二重膜貫通する糖タンパク質gp41からなるスパイクがある。エンベロープタンパク質は、ヘルパーT 細胞マクロファージ表面膜に存在するCD4 分子対す特異的な結合活性をもち、ウイルス標的細胞感染侵入する過程重要な役割を果たすHIV 遺伝子は、両端存在する転写開始逆転写組み込み反応重要なLTRlong terminal repeat)とよばれる遺伝子領域と、gag, pol, env3 つの主要な構造遺伝子tat, rev などの6種の調節アクセサリー遺伝子からなる極めて複雑な構造と機能をもつ(図4)。
HIV感染には、CD4 の他にCD4 と協同してウイルスの細胞内侵入促進する補助因子コレセプター)が必要である。HIV‐1コレセプター長い間であったが、1996 年になってケモカイン炎症性サイトカイン受容体CXCR4CCR5 であることが同定された。HIV は、CD4 およびCXCR4 あるいはCCR5受容体として、それらを発現しているヘルパーT 細胞マクロファージ感染しその結果として細胞性免疫機構破綻至らせる
また、コレセプター利用能の差異指標としてHIV機能的分類なされている。CXCR4コレセプターとして利用するものをX4 ウイルスCCR5利用するものをR5ウイルス両者利用する能力をもつものをR5‐ X4 ウイルスと呼ぶ。それらは、ウイルスの細胞指向性に基づく分類によるT細胞指向性マクロファージ指向性二重T 細胞マクロファージの両)指向性ウイルスにほぼ対応する。R5 ウイルスは、ヒトからヒトへの感染感染個体内での持続感染成立関与する最も重要なウイルス考えられる一方X4 ウイルスやR5‐X4 ウイルス感染後期に出現し急速なCD4 陽性T 細胞数の低下原因一つではないか考えられている。R5‐X4 ウイルス細胞障害性の強いウイルスで、CCR5CXCR4 以外にもCCR3 やCCR2 など他のケモカイン受容体コレセプターとして利用する能力をもつ場合があり、発症期の中枢神経症状など多彩重篤臨床像関係している可能性がある。
なお、CXCR4 およびCCR5受容体とするケモカインであるSDF‐1stroma cell derived factor‐1)およびRANTES, MIP‐1 α, MIP‐1 βはそれぞれX4 ウイルスおよびR5ウイルスの感染特異的に阻害する。これらの性質は、CXCR4CCR5HIV‐1感染必須の補助因子であることを裏づける重要な証拠一つとなった

話題2 -HIV 分類の新基準
HIV血清学的・遺伝学的性状異なHIV-1HIV-2大別される表1)。

後天性免疫不全症候群

HIV-1現在の世界流行pandemic)の主体となっているウイルスで、全世界分布している。これに対してHIV‐ 2 は主に西アフリカ地域限局しており、フランスポルトガルスペインなどに西アフリカ地域関連をもつ散発例が報告されているに過ぎない西アフリカ以外の地域では、インドのボンベイ・ゴアにHIV‐2 感染のエンデミック・フォーカス(侵淫地域)が存在することが知られている。HIV‐ 2HIV‐1比べて感染性病原性低く、このことがHIV‐2 流行限局的なものにしている理由考えられる

世界流行病因となっているHIV-1 は、遺伝学的系統関係からグループM (Major), O(Outlier)およびN (non-M/non-O)の3群に大別される表1)。このうちグループM は最も主要な系統で、さらにサブタイプA‐D, F‐H, J, K の9 サブタイプ分類される。これらサブタイプの他に、世界流行駆動する動因として、これらサブタイプ間の組換えウイルス重要な役割果たしていることが明らかにされている。これが組換え流行(circulating recombinant form, CRF)と呼ばれるもので、現在までに14 種のCRF報告されている。CRF発見順番を示す番号と、下線の後にそれを構成するサブタイプ名(3 つ上のサブタイプからなる場合一律cpx として示す)を組み合わせて表示される表1)。CRF01_AE はこれまでサブタイプEと呼ばれたウイルス株で、タイ中心とする東南アジア地域広範に分布する代表的な組換え流行である。このような多様なサブタイプ存在サブタイプ間のモザイク組換え現象は、HIV-1多様性やそのfitness適応性)を増す戦略一つとなっていると考えられる
我が国では、HIV 感染者の約75%がサブタイプB で、約20%がCRF01_AE 、残り数%がサブタイプC, F, A, Dなどである。サブタイプB は欧米広く拡がっているウイルス株で、我が国では、非加熱血液製剤によるいわゆる薬害エイズ患者男性同性愛患者のほとんどがこのタイプウイルスの感染者である。一方異性間性的接触による感染者の間では、サブタイプBと東南アジア由来するCRF01_AE が多く見られる90年代に入るまで、我が国感染者はほとんど例外なく欧米広く分布するサブタイプB であったが、9192 年以降CRF01_AE が主に性感染のルートを介して拡がりつつある。表1HIVサブタイプ分類とその世界分布を示す。また図1には、2001 年末の大陸HIV 感染者(含むAIDS 患者生存者推計数、および新規年間感染者数(WHO/UNAIDS 推計)に加えHIV サブタイプおよびCRF世界分布を示す。
サブタイプ分類が可能となった結果世界における流行起源系統関係整理されウイルス流行様相をより実体的に把握することが可能になってきた。しかし、サブタイプ違いが、病原性感染効率性感染や母子感染)の差異などのウイルスの生物学的性質どのように関連するかは明らかではない。

国立感染症研究所エイズ研究センター 武部 豊)

  


後天性免疫不全症候群

臨床症状
HIV 感染自然経過急性初期感染期、無症候期中期エイズ発症期の大きく3期分けられる(図5 、表2)。

後天性免疫不全症候群
後天性免疫不全症候群

1)急性初期感染期:HIV 感染成立の2~3週間後にHIV 血症は急速にピークに達するが、この時期には発熱咽頭痛筋肉痛皮疹リンパ節腫脹頭痛などのインフルエンザあるいは伝染性単核症様の症状出現する症状は全く無自覚程度から、無菌性髄膜炎に至るほどの強いものまで、その程度は様々である。初期症状数日から10週間程度続き多く場合自然に軽快する。
2 )無症候期中期感染後6~8週で血中抗体産生されると、ピーク達していたウイルス量は6~8カ月後にある一定のレベルまで減少し定常状態となり、その後数年10年間ほどの無症候期に入る。無症候期を過ぎエイズ発症前駆期中期)になると、発熱倦怠感リンパ節腫脹などが出現し帯状疱疹などを発症しやすくなる
3)エイズ発症期:抗HIV 療法が行われないHIV 感染がさらに進行しHIV増殖抑制できなくなり、CD4 陽性T 細胞破壊が進む。CD4 リンパ球数が200/mm3 以下になるカリニ肺炎などの日和見感染症発症しやすくなり、さらにCD4 リンパ球数が50/mm3を切るとサイトメガロウイルス感染症非定型抗酸菌症中枢神経系悪性リンパ腫などを発症する頻度高くなり、食欲低下下痢低栄養状態、衰弱などが著明となる。エイズ発症して治療の場合予後は2 ~3年である。

話題3 -エイズ発症機構に関する新知見]
HIV 感染無症候期には、血中ウイルス量見かけ上安定しているが、決して他のレトロウイルス感染症における潜伏期のような静的な状態ではない。最近の研究によって、HIV体内1日当たり10億個から100億個の速さ産生され一方、それに見合うだけのCD4 陽性T 細胞産生され感染し破壊されるというダイナミックな過程感染者体内日々繰り返されていることが明らかにされた。また、HIV 感染主要な場はリンパ節であるが、リンパ節の中では感染早期からウイルスの増殖リンパ濾胞破壊進行している。このようにウイルス免疫系とのたゆみない攻防の末、ついには免疫系破綻しエイズ発症するものと考えられる
なお、無症候期定常状態になった時のウイルス量(ウイルス・ロード)をウイルス学セットポイントといい、この値がその後予後重要な関係があり、セットポイント時のウイルス量が多い程エイズ発症しやすいことが明らかにされている(図5)。

話題4 -HIV 感染エイズ発症対す抵抗性遺伝的背景に関する最新知見
これまで男性同性愛者売春婦の中で、非常にリスクの高い性行動をしているにも拘らず感染から免れている人々exposed‐uninfected)が存在することや、一方ウイルス感染しているにも拘わらず15年上の長期間わたってエイズ発症から免れている-いわゆる長期未発症者(long‐term non‐progressor、LTNP)が存在することが明らかにされていた。しかし、このような現象どのような要因よるものかについては、これまで決定的な解答を見い出すことはできなかった。このような感染・発症抵抗性遺伝的背景一部として、コレセプター遺伝子など宿主遺伝子多型性が関与していることが最近急速に明らかになってきている。CCR5 Δ32CCR5 遺伝子内の32 塩基欠失変異)やCCR2 64I 変異がその代表的なものである。これらコレセプター遺伝子多型の他に、ケモカインサイトカイン関連遺伝子多型ヒト組織適合抗原多型性など、様々な宿主要因エイズ発症速度影響を及ぼすことが明らかになっている。

病原診断

HIV 感染症診断は、臨床知見指標疾患)による臨床診断加え検査レベルでの診断が行われる。実験室診断は(1)HIV 抗体検出エライザELISA)法や粒子凝集法particle agglutination,PA 法)、(2)ウイルス抗原検出HIV gag 蛋白質p24 アッセイ)、(3)HIV ゲノムDNA/RNA 検出PCR 法血漿あるいは血清中のウイルス量定量のためのamplicore monitor法、NASBA 法、b‐DNA 法など)、(4)ウイルス分離、の4 つ方法によって行われるHIV 感染症診断一般にHIV 抗体検査よる。HIV 抗体スクリーニング検査法(酵素抗体法ELISA)、粒子凝集法PA )など)の結果陽性で、かつ(1) 抗体確認検査Western Blot法、蛍光抗体法IFA))あるいは、(2) HIV 抗原検査ウイルス分離及び核酸診断法PCR等)等の病原体に関する検査(「HIV 病原検査」)で陽性である場合HIV 感染診断できる
ただし、周産期母親HIV感染していたと考えられる生後18 カ月未満の児の場合は、HIV抗体スクリーニング法が陽性であり、また、(1) 「HIV 病原検査」が陽性、あるいは(2) 血清免疫グロブリン高値加えリンパ球数の減少CD4 陽性T リンパ球数の減少CD4 陽性T リンパ球数/CD8 陽性T リンパ球数比の減少という免疫学的検査所見いずれか有する場合HIV 感染症診断される母体由来IgG 抗体胎盤通過できるため、この移行抗体が完全に消失するまで生後15カ月程度までは、児の抗体検査からは感染有無判断できない)。
最近検査法発展として特記すべきは、血漿/血清中のウイルス量(ウイルス・ロード)の検出定量が、アンプリコア法やb‐ DNA 法などの市販キットによって日常的に可能となったことである。ウイルス量モニタリングにより、治療効果客観的な評価随時行うことができるようになり、エイズ治療の評価方針決定大きな進展もたらされている。
またこの方法は、献血安全性の確保のためにも応用され実用化されている。ウインドウ期にあたるHIV 感染初期には一過性のウイルス血症があり、末梢血中に105 ~6/ml におよぶウイルス粒子出現することから、献血のために他の血液プール希釈された後においても、ウイルスRNA高感度検出できるこのような核酸増幅法NAT法)の導入によって、実際2000年度には3 件のウインドウ期にある献血者が未然発見され輸血血液安全性の確保大い役立っている。
章末に感染症法におけるHIV 感染症およびエイズ診断基準、およびその取り扱い詳細掲載されているので参考されたい

治療・予防
エイズ治療これまでの10年間で急速な進歩をとげ、感染者大きな福音もたらしている。AZTazidothymidine)を代表とする逆転写酵素阻害剤reverse transcriptase inhibitor, RTI)に加え近年優れたプロテアーゼ阻害剤protease inhibitor, PI)が開発され逆転写酵素阻害剤2 種プロテアーゼ阻害剤(あるいは非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤1種との組み合わせによる多剤(3 剤)併用療法highly active antiretroviral therapy, HAART)が奏効している。この治療法導入により、先進国における日和見感染症頻度や、エイズによる死亡者数95 年以来40%も減少してきている。
標準的な治療開始基準は、これまで血漿中ウイルス量5,00020,000コピ-/ml 以上、CD4 陽性リンパ球500/mm3 以下が目安となっていたが、副作用問題や、さらに有効性の高い薬剤開発進んでいることから、現在はCD4 陽性リンパ球200/mm3 (350/mm3 )以下と、治療開始をなるべく遅らせる方向にある。

治療用いられる抗ウイルス剤構造と、推奨される薬剤組み合わせを図6 に示す。しかし、薬剤へのアドヒランス(投薬スケジュール厳密に遵守することが、副作用服薬条件等の問題で必ずしも容易でないこと)、耐性問題などから、米国においても、これまで年々半減してきた死亡数の減少頭打ちになりつつある。

後天性免疫不全症候群

図6. HIV 感染症対する3 剤併用療法用いられるHIV 剤とそれらの推奨される組み合わせ

今後、さらに副作用少ない、服用しやすい(現行のHAART では薬の服用空腹時、食後食間によっては多量水分補給必要など、非常に煩瑣である)新薬の開発服薬条件工夫改善などが必要と考えられるまた、多剤併用療法決し根治療法ではなく血中ウイルス量検出限界以下となっても、依然リンパ節中枢神経系などにウイルス駆逐されずに残存latent reservoir)することが知られており、服薬中止する直ちウイルスのリバウンド起こってくる。このように薬物療法には依然改善すべき様々な問題点残されており、新薬の開発だけでなく、エイズ発症のメカニズムAIDS pathogenesisに関するより深い理解向けた基礎研究急務となっている。

エイズ治療のもう一つ重要な領域が、エイズに伴う種々の日和見感染症対す治療法発展で、特に、欧米での流行初期エイズ主要な死因であったカリニ肺炎対す特効薬であるペンタミジン吸入による実質的な患者延命効果はその代表的な例である。表3エイズ合併する様々な日和見感染症対す薬剤をまとめる。

後天性免疫不全症候群

表 3. エイズ合併する日和見感染症対す予防・治療

HIV感染予防鉄則は、他の感染症同様に感染経路を断つことである。HIV感染経路は、1 .経血液、2 .性的接触、3 .母子感染3 種(その他、臓器角膜移植などによる稀な感染例知られている)であり、感染予防基本はこれら3 経路遮断することにある。による刺咬や、握手抱擁、軽いキスなどの日常的な接触(カジュアル・コンタクト)によっては感染しない
個々経路による感染予防方法次のようである。
1 .経血経路遮断汚染血液血液製剤による輸血の危険を回避するための血液スクリーニング薬物乱用者との薬物回し打ち(ニードル・シェアリング)を行わないこと。我が国ではさらに、検査目的献血が行われることのないよう体制作り啓蒙活動が必要と考えられる
2 .セーフ・セックス実行コンドーム使用不特定多数パートナーとの性交渉避ける。感染リスクの高い肛門性交をさけることなど。
3 .母子感染の防止策:感染した母体から約30%の頻度で児に感染するが、感染母体および出生児への抗ウイルス薬AZTネビラピン)の投与によって、感染を防ぐことができる。エイズ依然その拡がり制御することが困難な病気であるが、少なくとも、母子感染による次世代感染に関していえば、現在の医学によってすでに予防可能な状況となっている。
感染予防究極方法ワクチンである。しかし、HIV抗原構造の多様性著し変異性を示すこと、HIV免疫応答中枢にあるヘルパーT細胞そのもの破壊することなどに加えてワクチン開発研究のための優れた動物モデルがないことなど様々な要因から、ワクチン実用化目途はまだたっていない新たな感染90%が高価な薬物療法恩恵享受できない開発途上国発生していることを考えると、有効なワクチン一日早い開発望まれる

発生動向調査について
感染症法に基づきエイズHIV 感染者発生動向は、毎3カ月間隔厚生労働省主催するエイズ動向委員会委員長 吉倉 廣 国立感染研所長)によって、各都道府県通じて厚生労働省報告され過去3 カ月間の症例集計した結果に基づき分析がなされ、公表される集計結果は、性別感染原因性別年齢性別感染地域等のカテゴリー別にとめられ発生動向多角的に分析され厚生労働省ホームページhttp://www.mhlw.go.jp)に掲載される

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
後天性免疫不全症候群は5類感染症全数把握疾患定められており、診断した医師7 日以内最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りとなっている。

1 HIV 感染症診断
1 .HIV抗体スクリーニング検査法〔酵素抗体法ELISA )、粒子凝集法PA )、免疫クロマトグラフィー法IC )等〕の結果陽性であって、以下のいずれか陽性場合HIV 感染症診断する
(1)抗体確認検査Western Blot 法、蛍光抗体法IFA )等〕
(2)HIV 抗原検査ウイルス分離及び核酸診断法PCR 等)等の病原体に関する検査(以下、「HIV 病原検査」という。)
2 .ただし、周産期母親HIV感染していたと考えられる生後18 カ月未満の児の場合少なくともHIV抗体スクリーニング法が陽性であり、以下のいずれか満たす場合HIV 感染症診断する
(1)HIV 病原検査陽性
(2)血清免疫グロブリン高値加えリンパ球数の減少CD4 陽性T リンパ球数の減少CD4陽性T リンパ球数/CD8 陽性T リンパ球数比の減少という免疫学的検査所見いずれか有する

2 AIDS診断
1 の基準満たし、3 の指標疾患Indicator Disease )の1 つ以上が明らかに認められる場合AIDS診断する

3 指標疾患Indicator Disease
A .真菌症
1.カンジダ症食道気管気管支、肺)
2.クリプトコッカス症(肺以外)
3.コクシジオイデス症
  1)全身播種したもの
  2)肺、頸部肺門リンパ節以外の部位起こったもの
4 .ヒストプラズマ症
  1 )全身播種したもの
  2 )肺、頸部肺門リンパ節以外の部位起こったもの
5 .カリニ肺炎
  (注)原虫という説もある
B .原虫
6 .トキソプラズマ脳症生後1 か月以後
7 .クリプトスポリジウム症1 か月上続下痢伴ったもの)
8 .イソスポラ症1 か月上続下痢伴ったもの)
C .細菌感染
9 .化膿性細菌感染症(13 歳未満で、ヘモフィルス連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれか2 年以内に、二つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの)
1 )敗血症
2 )肺炎
3 )髄膜炎
4 )骨関節炎
5 )中耳皮膚粘膜以外の部位深在臓器膿瘍
10サルモネラ菌血症再発繰り返すもので、チフス菌よるものを除く)
11活動性結核肺結核又は肺外結核
12非定型抗酸菌症
  1 )全身播種したもの
  2 )肺、皮膚頸部肺門リンパ節以外の部位起こったもの
D.ウイルス感染症
13サイトメガロウイルス感染症生後1 か月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
14単純ヘルペスウイルス感染症
  1 )1 か月以上持続する粘膜皮膚の潰瘍呈するもの
  2 )生後1 か月以後気管支炎肺炎食道炎併発するもの
15進行性多巣性白質脳症
E .腫瘍
16カポジ肉腫
17原発性リンパ腫
18非ホジキンリンパ腫
   LSG 分類により
   1 )大細胞型
     免疫芽球
   2 )Burkitt 型
19 .浸潤性子宮頸癌
F .その他
20反復性肺炎
21リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex13 歳未満
22HIV 脳症痴呆又は亜急性脳炎
23HIV 消耗性症候群全身衰弱又はスリム病

C11 活動性結核のうち肺結核及びE19 浸潤性子宮頸癌については、HIV による免疫不全示唆する症状または所見みられる場合に限る。
備考
報告のための基準は、サーベイランスのための診断基準であり、治療の開始等の指標となるものではない。近年治療の進歩により、一度指標疾患Indicator Disease )が認められた後、治療によって軽快する場合もあるが、発生動向調査上は、報告し直す要はない。しかしながら病状変化生じた場合無症候性キャリアAIDSAIDS死亡等)には、必ず届け出ることが、サーベイランス上重要である。
なお、報告上の記載は、
  1 )無症候性キャリアとは、1 の基準満たし症状のないもの
  2 )AIDS とは、2 の基準満たすもの
  3 )その他とは、1 の基準満たすが、2 の基準満たさない何らかの症状があるものを指すことになる。


国立感染症研究所エイズ研究センター 武部 豊)

  


後天性免疫不全症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/02 19:40 UTC 版)

後天性免疫不全症候群
エイズに関する社会運動のシンボル・レッドリボン
概要
診療科 感染症内科学
分類および外部参照情報
ICD-10 B24
ICD-9-CM 042
DiseasesDB 5938
MedlinePlus 000594
eMedicine emerg/253
Patient UK 後天性免疫不全症候群
MeSH D000163
世界の疾病負荷(WHO、2019年)[1]
順位 疾病 DALYs
(万)
DALYs
(%)
DALYs
(10万人当たり)
1 新生児疾患 20,182.1 8.0 2,618
2 虚血性心疾患 18,084.7 7.1 2,346
3 脳卒中 13,942.9 5.5 1,809
4 下気道感染症 10,565.2 4.2 1,371
5 下痢性疾患 7,931.1 3.1 1,029
6 交通事故 7,911.6 3.1 1,026
7 COPD 7,398.1 2.9 960
8 糖尿病 7,041.1 2.8 913
9 結核 6,602.4 2.6 857
10 先天異常 5,179.7 2.0 672
11 背中と首の痛み 4,653.2 1.8 604
12 うつ病性障害 4,635.9 1.8 601
13 肝硬変 4,279.8 1.7 555
14 気管、気管支、肺がん 4,137.8 1.6 537
15 腎臓病 4,057.1 1.6 526
16 HIV / AIDS 4,014.7 1.6 521
17 その他の難聴 3,947.7 1.6 512
18 墜死 3,821.6 1.5 496
19 マラリア 3,339.8 1.3 433
20 裸眼の屈折異常 3,198.1 1.3 415

後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん、英語: Acquired immune deficiency syndrome, AIDSエイズ))は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす疾患[2]。照屋勝治はエイズを慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」としている[3]性感染症の一つ。HIVに感染しただけでAIDSを発症するのではなく、HIVに感染した人が、免疫能の低下により23の合併症のいずれかを発症した状態のことをいう[4]

感染から2 - 4週で、無症候(症状がない)や、インフルエンザの様な症状などを起こしてから、5年から10年の症状のない潜伏期間に入る。後に風邪によく似た症状や、全身の脂漏性皮膚炎を呈し、その後、多くの感染症にかかるようになる。感染経路は、コンドームを用いない性行為のほか、注射器の打ち回しといった血液感染や、母子感染が主である。感染しているかの検査には血液検査が用いられる。

治療には複数の抗HIV薬を用いた抗レトロウイルス療法(Anti-Retrovirus Therapy、ART)が用いられる。1981年のアメリカ合衆国における初確認から1990年代半ばまでは治療法がなかったが、その後は服薬で体内のHIVを減らすことができるようになった[5]。2021年時点、服薬は副作用があるうえ発症を抑えるため生涯続ける必要があるが、HIVを体内から完全になくすワクチンが研究途上であるほか、幹細胞移植などによる完治例が少数ながらある[5]。一方で治療により、感染者の平均余命は非感染者とほぼ同水準まで延長されているとする研究も報告されている。

臨床像

照屋勝治によると、エイズは単なる細胞免疫不全疾患ではなく、慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」としている。免疫力低下に伴い日和見感染を生じるほか、HIVへの感染自体が血管内皮障害の原因となり、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)や心血管疾患(心筋梗塞など)のリスクを上昇させるとされる[3]

急性感染期

HIVの初期感染像はアメリカ疾病予防管理センター(CDC)分類では以下がある。いずれも感染後2 - 4週で起こるといわれ、多くの場合、数日 - 10週間程度で症状は軽くなり、長期の無症候性感染期に入るため、感染には気付きにくい。

  • 急性感染(Acute seroconversion) - 伝染性単核球症様あるいはインフルエンザ様症状
  • 無症候性感染
  • 持続性全身性リンパ節腫脹(PGL)
  • その他の疾患合併

上記以外にも、突然の全身性の斑状丘疹状の発疹(maculopapular rash)や、ウイルス量が急激に増加し重症化する例では、多発性神経炎、無菌性髄膜炎脳炎症状などの急性症状を示す場合もある。しかしながら、これらの症状はHIV感染症特有のものではなく、他の感染症や疾病においても起こりうる症状であることから、症状だけで判断することは困難である。

感染後、数週間から1か月程度で抗体が産生され、ウイルス濃度は激減する。一般のHIV感染検査はこの産生される抗体の有無を検査するため、感染後数週間、人によっては1か月程度経過してからでないと十分な抗体が測定されないため、検査結果が陰性となる場合がある(ウインドウ期間)。

無症候期

多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、おおむね5年から10年は無症状であるが、体内でHIVが盛んに増殖を繰り返す。また、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞がそれに見合うだけ作られ、ウイルスがCD4陽性T細胞に感染し破壊するプロセスが繰り返されるため、見かけ上の血中ウイルス濃度が低く抑えられているという動的な平衡状態にある。無症候期を通じてCD4陽性T細胞数は徐々に減少していってしまう。無症候期にある感染者は無症候性キャリア(AC)とも呼ばれる。

またこの期間に、自己免疫性疾患に似た症状を呈することが多いことも報告されている。ほかにも帯状疱疹を繰り返し発症する場合も多い。

発病期

血液中のCD4陽性T細胞がある程度まで減少していくと、身体的に免疫力低下症状を呈するようになる。

多くの場合、最初は全身倦怠感、体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の過労、帯状疱疹、過呼吸めまい、発疹、口内炎、発熱、喉炎症、など、風邪によく似た症状のエイズ関連症状を呈する。また、顔面から全身にかけての脂漏性皮膚炎などもこの時期に見られる。大抵これらの症状によって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明してくる。

その後、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞の減少と同時に、普通の人間生活ではかからないような多くの日和見感染を生じ、ニューモシスチス肺炎カポジ肉腫悪性リンパ腫皮膚がんなどの悪性腫瘍サイトメガロウイルスによる身体の異常など、生命に危険が及ぶ症状を呈してくる。また、HIV感染細胞が中枢神経系組織へ浸潤し、脳の神経細胞が冒されるとHIV脳症と呼ばれ、精神障害認知症記憶喪失を引き起こすこともある。

通常、感染したと認められてから長期間経過したあとに、以下の23の疾患(AIDS指標疾患という)のいずれかを発症した場合にAIDS発症と判断される。

A.真菌症 1.カンジダ症食道気管気管支) 2.クリプトコッカス症(肺以外) 3.コクシジオイデス症 (1)全身に播種したもの (2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 4.ヒストプラズマ症 (1)全身に播種したもの (2)肺、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 5.ニューモシスティス肺炎P. jiroveci

B.原虫症 6.トキソプラズマ脳症(生後1か月以後) 7.クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの) 8.イソスポラ症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

C.細菌感染症 9.化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの) (1)敗血症 (2)肺炎 (3)髄膜炎 (4)骨関節炎 (5)中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍 10.サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く) 11.活動性結核(肺結核又は肺外結核)(※) 12.非結核性抗酸菌症 (1)全身に播種したもの (2)肺、皮膚、頚部、肺門リンパ節以外の部位に起こったもの

D.ウイルス感染症 13.サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以後で、、リンパ節以外) 14.単純ヘルペスウイルス感染症 (1)1か月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの (2)生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの 15.進行性多巣性白質脳症

E.腫瘍 16.カポジ肉腫 17.原発性脳リンパ腫 18.非ホジキンリンパ腫 19.浸潤性子宮頚癌(※)

F.その他 20.反復性肺炎 21.リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満) 22.HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎) 23.HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

(※);HIVによる免疫不全を示唆する所見がみられる者に限る。

—厚生労働省,感染症法に基づく医師の届出のお願い[6]

感染経路

HIVの初期症状は、発熱、リンパ節の腫れ、咽喉の痛み、だるさ、口内炎、発疹、慢性的な下痢、筋肉痛などであり、風邪やインフルエンザの症状と全く変わらず、症状から感染を判断することは難しい。また、潜伏期間が10年と長く感染に気付きにくい。よって、下記の感染の可能性のある行為の経験がある場合は、早めに保健所などでの検査を受けることが重要となる。

HIVは通常の環境では非常に弱いウイルスであり、一般に普通の社会生活をしている分には感染者と暮らしたとしてもまず感染することはない。一般に感染源となりうるだけのウイルスの濃度をもっている体液は血液精液膣分泌液母乳が挙げられる。一般に感染しやすい部位としては粘膜粘膜、膣粘膜、口腔粘膜など)、切創や刺創などの血管に達するような深いなどがあり、通常の傷のない皮膚からは侵入することはない。そのため、主な感染経路は以下の3つに限られている。

性的感染

性行為による感染では、性分泌液に接触することが最大の原因である。通常の性行為では、女性は精液が膣粘膜に直接接触し血液中にHIVが侵入することで感染する。男性は性交によって亀頭に目に見えない細かいができ、そこに膣分泌液が直接接触し血液中にHIVが侵入する事で感染する。そのため、性交でなくても性器同士を擦り合わせるような行為でもHIV感染が起こる恐れがある。また肛門性交では腸粘膜に精液が接触しそこから感染するとされている。腸の粘膜は一層であるため薄く、HIVが侵入しやすいため、膣性交よりも感染リスクが高い。コンドームの着用がHIVの性的感染の予防措置として有効である。ただし使用中に破れたり、劣化したものを気付かずに使用する場合があるため、完全に感染を防ぐことができるとはいえない。コンドームの使用に際しては、信頼できる製品を使用期限内に正しい用法で用いることが推奨される。また割礼によって感染リスクが低減するという研究結果が複数ある。傷つきやすく、免疫関連細胞の多い包皮を切除することで、HIVの侵入・感染が抑えられるためだと考えられている。なお口腔で性器を愛撫する場合も、口腔内に歯磨きなどで微小な傷が生じていることが多く、そこに性分泌液が接触することで、血液中にウイルスが侵入するおそれがある。

血液感染

感染者の血液が、傷、輸血麻薬の回し打ちなどによって、血液中に侵入することで感染が成立する。特に麻薬・覚醒剤中毒者間の注射器・注射針の使い回しは感染率が際立って高い。以前は輸血や血液製剤からの感染があったが、現在では全ての血液が事前にHIV感染の有無を検査され、感染のリスクは非常に低くなっている。医療現場においては、針刺し事故などの医療事故による感染が懸念され、十分な注意が必要である。

母子感染

母子感染の経路としては3つの経路がある。出産時の産道感染、母乳の授乳による感染、妊娠中に胎児が感染する経路である。産道感染は子供が産まれてくる際、産道出血による血液を子供が浴びることで起こる。感染を避ける方法として、帝王切開を行い母親の血液を付着させない方法があり、効果を上げている。母乳による感染が報告されており、HIVに感染した母親の母乳を与えることは危険とされている。この場合は子供に粉ミルクを与えることによって、感染を回避することができる。胎内感染は、胎盤を通じ子宮内で子供がHIVに感染することで起こる。物理的な遮断ができないため、感染を回避することが難しい。感染を避ける方法として、妊娠中に母親がARTにより血中のウイルス量を下げ、子供に感染する確率を減らす方法がとられている。

HIV感染予防薬

2018年現在、HIV感染を予防する方法・薬剤が存在する。一つは、医療従事者などが「針刺し事故」で感染の危険がある場合に、事後的に薬剤を投与する「曝露後予防内服(PEP、Post Exposure Prophylaxis)」であり、もう一つは、HIV感染リスクの高い業務に従事していたり(たとえば、コンドームを使用しないで性的サービスを行うソープランド従業員)、コンドームを用いないで不特定多数と性行為を行うライフスタイルを営む者に対して事前に薬剤を投与しておく「曝露前予防内服(PrEP、Pre Exposure Prophylaxis)」である[7]

曝露前予防内服(PrEP)は、ゲイバイセクシュアルの男性において高い予防効果と安全性が報告されており、怠薬なく毎日の服用を続けることができれば、90パーセント以上の予防効果があると考えられている[8]

なお、曝露前予防内服(PrEP)も曝露後予防内服(PEP)も「ツルバダ(Truvada)」という商品名の抗HIV薬(テノホビルエムトリシタビン合剤薬剤)を1日1回内服する方法が用いられる[9][10]

病原体

HIVのウイルス粒子構造の図
培養リンパ球から緑色で示されたHIV-1が出芽する様子を捉えた走査型電子顕微鏡像。

HIVはHIV感染症ないしAIDSとして知られる連続性を持つ疾患の病原体である。このウイルスはレトロウイルスの一種で、感染時にはまずCD4陽性細胞、マクロファージ樹状細胞といったヒトの免疫系に携わる細胞に感染する。そして、直接的にも間接的にもCD4陽性細胞を破壊する[11]

HIVはレトロウイルス科[12]レンチウイルス属[13]の一員である。レンチウイルスは形態学的にも生物学的にも多数の共通点を持つ。レンチウイルスは多くの哺乳類に感染しており、長期の潜伏期(incubation period)を伴う長く続く疾患の原因となる[14]。レンチウイルスはエンベロープを持つ、一本鎖のプラス鎖RNAウイルスである。標的細胞への侵入に際し、ウイルス粒子にゲノムと共に細胞内へ輸送される逆転写酵素によってウイルスRNAゲノムは二重鎖のDNAへと変換(逆転写)される。ウイルスDNAはさらに宿主の核内へ運ばれ、ウイルスのインテグラーゼと宿主の共因子の働きによって宿主DNAに取り込まれる[15]。宿主DNAに取り込まれたウイルスは潜伏状態(latent)となり、ウイルスとその宿主細胞が免疫系に検知されるのを避ける[16]。代わりにウイルスは転写を受けて新たなRNAゲノムとウイルスタンパク質を産生し、組み立てられたウイルス粒子が細胞外へ放出されて新たな増殖環を開始する[17]

HIVはCD4陽性細胞間を2つの方法で拡散することが知られる。1つが細胞フリーな拡散法で、もう1つが細胞 - 細胞拡散法であり、HIVはハイブリッドな拡散法を利用する[18]。細胞フリーな拡散においてはウイルス粒子が感染細胞T細胞から出芽し、血液や細胞外液へ進出、遭遇したほかのT細胞へ感染する[18]。HIVはまた細胞から細胞へ、細胞 - 細胞拡散によっても広がっていく[19][20]。ハイブリッドなHIVの拡散機構は抗レトロウイルス療法時におけるウイルスの増殖進行を可能にする[18][21]

HIVには2つの型が知られる。HIV-1とHIV-2である。HIV-1は最初に発見された(そして当初はLAV、もしくはHILV-IIIとも呼ばれた)ウイルスである。HIV-1はより病原性(virulence)と感染性が高く[22]、世界的に見てHIV感染症の主要な病原体となっている。HIV-1と比べたHIV-2の感染性の低さは、HIV-2の曝露時に感染が成立する確率が低いことを暗示する。相対的な感染能力の低さゆえ、HIV-2はほとんど西アフリカに限って存在している[23]

診断

厚生労働省は、HIV感染症であり、かつ、指標疾患(Indicator Disease)の1つ以上が明らかに認められる場合にAIDSと診断し、感染症法に基づく届出が必要、としている[6]

HIV感染症検査

HIV感染症の診断では、血液中に抗体を有することを検査する。日本での検査方法は、日本エイズ学会による「HIV-1/2 感染症の診断ガイドライン」が広く用いられている。

検査機関

HIVに感染しているかどうかの検査は居住地に関係なく全国の保健所匿名無料で受けることができる[24]。都市部の保健所では、夜間や休日にも検査を行っているところがあり、仕事や学業に影響を与えず検査できる体制を整えつつある。また、医療機関でも実費負担で検査を受けられるところがある。

結果はおよそ1週間ほどで判明するが、近年は30分以内で判明する即日検査も普及し始めている。通常は抗体スクリーニング検査が行われるが、より感度が高くウインドウ期間の短いNAT検査(詳細は後述)を実施している保健所や医療機関もある。

種類

  • 血清抗体検査
    • PA法(粒子凝集法)
    • ELISA法(酵素抗体法)
    • CLEIA法(化学発光酵素免疫法)
    • IC法(免疫クロマトグラフィー法)
    • IFA法(間接蛍光抗体法)
    • Western Blot法
  • 血清抗原検査
    • 抗原抗体法(HIV-1 p24抗原検査)
  • 核酸増幅検査
    • HIV-1 PCR法(リアルタイムPCR法:RT-PCR法)
    • HIV-1 proviral DNA法
    • NAT(Nucleic acid Amplification Test)

方法

血液を採取して以下の検査が行われる。

  • スクリーニング(通常の抗体検査)
一般にスクリーニング用検査キットとしてさまざまなものが市販されているが、ELISA法またはPA法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体・HIV-1 p24抗原が同時測定が可能な第4世代キットが広く用いられるようになってきている。
検査時期としては、「感染の機会があってから3か月(検査機関により異なる)以上経過したあと」での検査が推奨される。これはHIVの感染初期においては抗体が十分に作られず、血液検査では検出できない期間があるためであり、この期間は「ウインドウ期間(ウインドウピリオド・空白期間)」と呼ばれている。ウインドウ期間には個人差があり、スクリーニングでの検出が可能なほど血中の抗体が十分に増加するまでに通常1 - 3か月かかるとされている[25]。この間に検査を行った場合、HIVに感染していても陰性(感染なし)と判断されてしまうため、ウインドウ期間が最大の場合を考慮し3か月以上としている。
ウイルス遺伝子である核酸を検知できるほどに複製する方法で、通常のスクリーニング検査と比較してウインドウ期間の短縮が可能である[26]。一部の検査機関では抗体検査と同時に実施されており、「感染の機会があってから2か月以上経過したあと」で信頼できる結果が得られる。後述する献血においても実施されている。
  • 確定診断
上記検査にて陽性となった場合、「Western Blot法によるHIV-1抗体・HIV-2抗体検査」と「HIV-1 PCR法検査」を施行し診断していく。一般的なスクリーニング検査では約0.3パーセント、即日検査では約1パーセントの確率で、HIVに感染していないにもかかわらず陽性結果となる偽陽性が発生する[27]ため、確定診断は重要である。
  • 感染後経過
HIV-1 PCR法によるウイルス量測定と、フローサイトメトリー法によるCD4陽性細胞数検査が行われる。CD4数は現在の病態を反映する数値である。正常ならば800 - 1200個/µLであるが、HIVに感染すると徐々に低下していく。500個/µL程度では帯状疱疹結核カポジ肉腫非ホジキンリンパ腫、200個/µL程度ではニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ脳症、100個/µLではクリプトコッカス髄膜炎、50個/µLではサイトメガロウイルス非定型抗酸菌症を起こしやすいとされている。

献血における検査

献血で採取された血液からHIVやその他のウイルスの感染の有無を調べるため、日本赤十字社による献血では現在、抗体検査やNAT検査が行われている。

  • 検査目的の献血について
献血においては安全性の面から上述の検査を行っているが、「検査目的の献血」を防ぐことから、HIVの感染においては陽性であってもその結果は献血者本人に知らせることはない。日本赤十字社では感染リスク後の献血は遠慮を願うとしており、HIV検査をする場合は保健所などで行うようにとしている[28]
  • 献血で行われる検査の詳細
NAT検査では、感染初期の体内でウイルスが増加するウイルス血症に陥ってから(感染直後 - 1か月ほどと個人差がある)、平均11日( - 22日)以降に検出可能であり、通常の抗体検査ではNAT検査より時間がかかり平均22日以降[25](感染後4日 - 41日の間に抗体の陽性化が起きるケースは95パーセントである[29])で検出が可能となる。NATで検出ができない期間を「NATウインドウ期間」、抗体による検査で検出ができない期間を「血清学的ウインドウ期間」という。そのため、ウイルス血症の発生時期やウインドウ期間に個人差があることなども考慮して感染が疑われる機会があった場合は、それから最低でも2か月以上経過したあとに保健所などで抗体検査を行ってから献血を行うことが望まれる。
現在、NATは試薬が大変高価で検査費用が高いこと、完全自動化されておらず一度に大量の検査ができないため、20検体を1つにプールしてNATを実施し(ミニプールNATと呼ばれている)、あるプール検体が陽性となった場合はプールされている20検体に対し、個別に再検査を実施し(個別NATと呼ばれている)、陽性の検体を特定して、その検体に対応する血液のみを輸血に使用しないという方法をとっている。

指標疾患(Indicator Disease)

治療

抗HIV薬について、基本的に多剤併用による抗レトロウイルス療法(Anti-Retroviral Therapy(ART)。2007年まではHighly Active Anti-Retroviral Therapy(HAART療法)とも呼ばれた)にて治療が行われる。ただし完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要がある。

一方、患者の平均余命は新薬の開発などにより改善されている。ブリストル大学の研究チームによると、2008年以降の早期にARTを始めた20歳患者の平均余命は78歳であり、非感染者とほぼ同水準まで延長されていた[30]

また、ARTは2000年初頭までは1年間に1万ドル以上が必要であったが、インドタイブラジルなどで安価なジェネリック薬が生産されるようになり、さらに世界最大のエイズ患者を抱える南アフリカ共和国がこうした薬を輸入できるよう定めた改正薬事法を1997年に施行し、これに対し提訴した製薬会社が2001年に和解に応じたことでエイズ治療薬価格が大幅に低下した。2001年末にはARTに必要な薬価は年間350ドルに低下し、エイズ治療は貧困層にも手の届くものとなった[31]

ガイドライン

一般に、アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)の治療ガイドラインが世界的に広く用いられている。おもなガイドラインには以下が存在する(ほぼ、毎年のように改訂[3])。

  • US DHHS Guidelinesアメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)による 成人・妊婦・小児と別れて存在する
    • Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-1-Infected Adults and Adolescents-1-Infected
    • Recommendations for Use of Antiretroviral Drugs in Pregnant HIV-1-Infected Women for Maternal Health and Interventions to Reduce Perinatal HIV Transmission
    • Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection
    • Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents
    • Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Children Guidelines
  • HIV感染症「治療の手引き」:日本のHIV感染症治療委員会による
  • Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection:英国HIV学会(BHIVA)による
  • Antiretroviral Treatment of Adult HIV Infection:アメリカ国際エイズ学会(International AIDS Society–USA)による
  • HIV GUIDEジョンズ・ホプキンズ大学エイズサービス(Johns Hopkins AIDS Service)による

治療開始

アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)の治療ガイドラインでは以下とされている。

  • AIDS発症またはCD4値<350個/mm3未満の患者では抗ウイルス薬の治療を開始するべき
  • 妊婦・HIV関連腎症・HBV重複感染ではCD4値にかかわらず抗ウイルス薬の治療を開始するべき
  • CD4値が350 - 500個/mm3の患者では抗ウイルス薬の治療開始を推奨する
  • CD4値>500個/mm3の患者では抗ウイルス薬の治療開始が好ましいか、任意で行う
※US DHHS Adult and Adolescent Guidelinesによる

日本の最新のガイドラインでは、すべてのHIV感染患者に対して抗HIV薬の開始が推奨されるようになっていて、特に、

  • AIDS発症
  • HIV感染が原因で腎臓の機能が著しく低下している
  • HIVに感染している妊婦
  • B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスにも感染している

場合には、早期の治療開始がより強く推奨されている[32]。ただし、CD4数が500/µLより多いと身体障害者手帳を取得できない場合があり、医療費助成制度を使えない可能性もあるので、事前に十分に確認する必要がある[32]

治療薬

現在、以下のような種類のHIVに対する抗ウイルス薬が存在する。

治療方法

基本的に、世界的に広く感染している「HIV-1」に対する治療についておもに記述する。「HIV-2」に関しては同じような治療であるが、NNRTIは効果が薄いなどの違いがある。

アメリカ合衆国保健福祉省(US DHHS)の治療ガイドライン」における推奨レジメンは以下の通りである。

推奨レジメン(Preferred Regimens)
NNRTIを基本としたレジメン EFV/TDF/FTC1
PIを基本としたレジメン ATV/r+TDF/FTC1
DRV/r+TDF/FTC1
INSTIを基本としたレジメン RAL+TDF/FTC1
妊婦に対するレジメン LPV/r+ZDV/3TC1
代替レジメン(Alternative Regimens)
NNRTIを基本としたレジメン EFV+(ABC or ZDV)/3TC1
NVP+ZDV/3TC1
PIを基本としたレジメン ATV/r+(ABC or ZDV)/3TC1
FPV/r+[(ABC or ZDV)/3TC1] or TDF/FTC1
LPV/r+[(ABC or ZDV)/3TC1] or TDF/FTC1
SQV/r + TDF/FTC1
許容レジメン(Acceptable Regimens)
NNRTIを基本としたレジメン EFV+ddI+(3TC or FTC)
PIを基本としたレジメン ATV+(ABC or ZDV)/3TC1
許容されるがデータが必要なレジメン
(Regimens that may be acceptable but more definitive data are needed)
CCR5拮抗薬を基本としたレジメン EFV+ddI+(3TC or FTC)
INSTIを基本としたレジメン RAL+(ABC or ZDV)/3TC1
注意して使用するレジメン(Regimens to be Used with Caution)
NNRTIを基本としたレジメン NVP+ABC/3TC1
NVP+TDF/FTC1
PIを基本としたレジメン FPV+[(ABC or ZDV)/3TC1 or TDF/FTC1]

日本の「HIV感染症治療委員会」による「HIV感染症『治療の手引き』」(第27版)[33]における推奨レジメンは以下の通りである。キードラッグ1剤(基本的にINSTI、状況に応じてNNRTIやPIも)とバックボーンドラッグ(主に2NRTI(合剤)、一部NRTI単剤)から1つずつ選択し併用する。複数の抗HIV薬を含む合剤が多く販売されており、実際に服用するのは配合剤一錠のみでよい組み合わせも多い。

またTAF/FTC(デシコビ配合錠)にはTAFの含有量が低用量(L)のものと高用量(H)のものがあるが、Lが選択されるのはCOBIやRTVといったboosterを含む一部の組み合わせの場合に限られており、通常は多くの組み合わせでHが選択される。

HIV感染症『治療の手引き』第27版(HIV感染症治療委員会 2023年12月発行)による推奨レジメン
推奨される状況 キードラッグ バックボーンドラッグ 商品名 備考
大部分の患者で推奨 INSTIベース BIC /TAF(H)/FTC ビクタルビ配合錠
DTG /ABC/3TC トリーメク配合錠 ※ HLA-B*5701陰性の場合
TAF(H)/FTC テビケイ+デシコビ配合錠HT
/3TC※※ ドウベイト配合錠 ※※ HIV RNA量<500,000コピー/mLおよびHBVの合併がなく3TC耐性のない場合
臨床状況に応じて推奨 RAL TAF(H)/FTC アイセントレス+デシコビ配合錠HT
PIベース DRV/COBI /TAF(L)/FTC シムツーザ配合錠
NNRTIベース DOR TAF(H)/FTC ビフェルトロ+デシコビ配合錠HT
RPV※※※ /TAF(H)/FTC オデフシィ配合錠 ※※※ HIV RNA量<100,000コピー/mLおよびCD4陽性リンパ球数>200/mm3の場合



免疫機能障害ということで都道府県に申請することにより身体障害者手帳が交付される。

免疫不全の患者は、感染量に比べると炎症は実は軽度であり、日和見感染症治療中にARTを開始すると免疫が賦活化することによって、日和見感染症が悪化することがある。これを「免疫再構築症候群(IRIS、アイリス)」と呼ぶ。この危険を避けるため、ARTは日和見感染症治療後に開始することとなる。

ARTは、安定期まで持っていくことができれば、ほとんどAIDSで死亡することはなくなった[3]ガイドラインで用いられているデータも、10年生存率まで記載されており、おそらく平均余命まで行くであろうというのが、大方の予想である(HIVの発見が1981年ということを考えると、ここまでデータがあれば十分である)。[要出典]また、前述のように2017年に公表された欧州と北米の調査の分析結果では、2008年以降に20歳でウイルス量が少ないうちにARTを開始した場合の平均余命は非感染者とほぼ同水準だった[30]

現在のHIV療法である多剤併用療法は決して根治的な療法ではなく、血中のウイルス量が検出限界以下となっても、依然としてリンパ節や中枢神経系などにウイルスが駆逐されずに残存(Latent Reservoir)していることが知られており[3]、服薬を中止するとただちにウイルスのリバウンドが起こるなどの問題がある。基本的にARTは、一生継続しなければならない。

有名な副作用としては、開始直後から出現し徐々に軽快する胃腸障害や精神障害、開始後1 - 3週で一過性に生じる皮疹、開始後1か月以上経過してから生じ、持続する高脂血症、リポアトロフィー(脂肪分布の変化)、糖代謝異常(高脂血症と併せて年間30パーセントリスクで虚血性心疾患のリスクが高まる[3]、かつ、PIとNNRTIはスタチン系と併用禁忌)、末梢神経障害、まれだが重篤な乳酸アシドーシス(NRTIにてミトコンドリアDNA合成を阻害するため)などが知られている。

予後

2004年における住民100,000人あたりのHIVやAIDSに対する障害調整生命年

世界的にAIDSは急性経過をとって致死に至るより、むしろ慢性化する感染症である[34]。予後には個人差があり、CD4陽性細胞数とウイルス量の測定が経過の予測に有用である[35]。無治療の場合、HIVの亜型によってHIV感染後の平均生存期間は9年から11年と見積もられる[36]。さらにAIDSと診断されてなお治療がなされない場合、生存期間は6か月から19か月の間となる[37][38]ARTと適切な日和見感染症の予防が行われると死亡率は最大80パーセント減少し、余命は新規に診断された若い成人で20年から50年に延長される[34][39][40]。この数値は健常者の余命と比べても3分の2[39]からほぼ同等の水準である[41][42]。治療開始が遅れると予後はそれほどよくない[41]。たとえばAIDSの診断後に治療を開始すると、余命は最大で10年から40年となる[41][34]。HIVの感染とともに産まれた新生児に関しては、無治療の場合その半分が2歳までに死亡する[43]

AIDSの直接的な死因は日和見感染症がんであり、いずれも多くの場合、進行性の免疫不全の結果として生じる[44][45]。がんのリスクはCD4陽性細胞数が500 /µLを下回ると増加するようである[41]。臨床症状の進行速度は個人差が大きく、患者の感受性や免疫機能[46]、保健施設の利用度、共感染の有無[37][47]、特定のウイルス株への感染といった要素に影響を受けることが示されている[48][49]

結核の共感染はAIDS患者における病態進行と死の主要な原因の一つで、HIV感染者の3分の1が結核で死に、25パーセントのHIV関連死の原因となっている[50]。またHIV自体も結核のもっとも重要な危険因子の一つである[51]C型肝炎も一般的な共感染症であり、HIVとC型肝炎ウイルスは互いの増悪因子である[52]。AIDS関連のがんでもっとも一般的なのはカポジ肉腫非ホジキンリンパ腫である[45]

抗レトロウイルス療法を行っても、HIV感染者は長期的に神経認知障害[53]骨粗鬆症[54]、神経病[55]、がん[56][57]腎臓疾患[58]、および心血管疾患など[59]を経験する可能性がある。場合によっては、リポジストロフィーがHIVとその治療によって引き起こされることがある[59]

疫学

世界

2022年末現在、世界のHIV陽性者数は3,900万人、新規HIV感染者数は年間130万人、エイズによる死亡者数は年間63万人となっている[60][61]

世界各国におけるHIV感染者の割合
アフリカの深刻な国における平均寿命の変遷

アフリカ

サハラ以南のアフリカには全世界の65パーセント近くのHIV陽性者がいるといわれる[62]。2022年末においては全世界のHIV陽性者数は3,900万人のうち、アフリカ(東部、西部、南部、中央アフリカ)が2,560万人を占める[60][61]。同年のHIV新規感染者は全世界で130万人、うちアフリカが66万人である[60][61]。同年のエイズ死亡者は全世界で63万人で、うちアフリカは38万人である[60][61]

このうち中東圏に属する北アフリカではAIDS患者がほとんどいないため、この数値のほとんどはブラックアフリカにおける数値である。中でも患者数が多いのは南部アフリカであり、南アフリカ共和国ナミビアボツワナスワジランドレソトジンバブエザンビアの7か国では人口の15パーセント以上が感染している。もっとも人口に対する感染率が高いのはボツワナであり、2001年末においては成人人口の38.8パーセントがHIVに感染している[要出典]。この影響により、上図のように南部アフリカ諸国においては1990年代以降AIDSによる死者の急増によって平均寿命が低下し、ボツワナは20歳以上平均寿命が短縮した。

1986年にはウガンダが感染率5パーセントを超えていたものの、それ以外に感染率5パーセントを超えるような国はなく、感染者数の多い国もほぼアフリカ中部に限られていた。しかしその後、感染者数は増加の一途をたどり、南部アフリカに向かって徐々にパンデミックは広がっていった。1991年にはウガンダ、ザンビア、ジンバブエで感染率が20パーセントを超え、1996年にはボツワナ、スワジランド、レソトで20パーセントを超え、2001年には上記の状況となったように、感染は急速に拡大していった。

アフリカにおける感染拡大は、他地域と異なり異性間の性行為によるものが圧倒的に多い。これは性的な寛容さや女性の地位の低さなどによると考えられている[63]。同様の理由で、他地域とは異なりアフリカのエイズ患者は女性の方が男性よりも多くなっている。また、AIDSに対する知識の低さや迷信、貧困戦争による影響も感染拡大の一因とされている。現在では治療薬によって病状を食い止めることは可能になっているものの、アフリカの多くの国においては貧困のためそれらの治療薬を入手することができない患者が多い。AIDSによる死者は働き盛りの男女が多いため、死亡率が急速に上昇した国々においては労働人口の減少を招き、経済に悪影響を招いている。さらに、親がエイズによって死亡した子供たちは孤児となり、エイズ孤児と呼ばれる社会問題となっている。エイズにかかっている親がミルクを購入できず母乳で幼児を育てざるを得ないため、母乳による母子感染の率も非常に高い。この母子感染による乳児死亡率の激増も、ブラックアフリカ諸国における平均寿命低下の大きな一因となっている。

このエイズ禍に対して、アフリカ諸国の政府の多くは有効な手を打つことができなかった。アフリカ諸国の多くは統治力が弱く保健衛生の制度もあまり整っていなかったうえ、パンデミック初期においてはエイズ治療薬の価格が非常に高く、増え続ける患者に行きわたるだけの治療薬を入手することが不可能だったためである。こうした中で、もっとも早くエイズ対策に取り組んだのはウガンダである。ウガンダは世界で初めてHIVのパンデミックが起こった国家であるが、その後政府はエイズ予防のためのさまざまな政策を実施し、こうしたプログラムが功を奏して感染率は減少した[64]。また、ボツワナのように患者に対するケアの体制を整えられた国も存在する[65]。ボツワナは2001年末においては成人人口の38.8パーセントがHIVに感染しており、世界でもっともHIV感染率の高い国であったが、同年からボツワナ政府はエイズに対する強力な対抗プログラムを実施し始めた。2001年からはアフリカではじめてエイズ治療が公的資金によって行われるようになり、2003年には一般の健康診断にエイズ検査が盛り込まれるようになるなど、早期発見および治療に重点が置かれた。またこれと並行し、エイズ予防の啓発プログラムも強力に推進された。こうした政策によってボツワナのエイズ死亡率は減少し、感染率も2008年には23.9パーセントにまで減少した[66]。また、2001年にエイズ治療薬の薬価が急激に低下したこともあり、このころからアフリカ各国においてエイズ対策が本格化し始め、新規感染者は徐々に減少の方向に向かい始め、一度は急減した平均寿命もこれにともない回復の傾向を見せている。しかし一度感染したエイズ患者は完治することはないため、HIV感染者の総数はそれほど減っておらず、依然として相対的に高い感染率となっている。

日本

1985年、初めてAIDSを発症した女性患者が兵庫県神戸市で確認。当初、女性は売春していたとしてセンセーショナルに報道されたためパニック状態となったが、後に遺族が起こした裁判で売春の事実は確認されなかったことが明らかになっている[67]1989年2月17日、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が施行。当初は大半が凝固因子製剤による感染症例(薬害エイズ事件)だった。

2022年の新規HIV感染者報告数・新規AIDS患者報告数は、前年の報告数より減少しており、6年連続での減少となった[68]。 日本人患者・感染者の現状は、同性間性的接触による感染が多く、ついで異性間性行為による感染が続いている。静注薬物乱用や母子感染によるものは少ない[69]

歴史

HIVの起源はカメルーンチンパンジーという説が有力であり[70]、そこから人に感染して世界中に広まっていったと考えられている。1950年代から疑わしい症例が散見され、中部アフリカ一帯で「やせ病(slimming disease)」という疾患群として報告されていた。1968年にはアメリカで当時15歳の少年ロバート・ウェイフォード英語版が重篤な日和見感染を併発した発疹を発症し1年後に亡くなったが、当初未知の性感染症が疑われたものの後の調査でエイズに感染したことが判明している。

エイズと正式に認定できる初めての例は、1981年にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性(ゲイ)の症例報告であり、その後のわずか10年程度で感染者は世界中に100万人にまで広がっていった。当初、アメリカでエイズが広がり始めたころ、原因不明の死の病に対する恐怖感に加えて、感染者にゲイや麻薬の常習者が多かったことから、感染者に対して社会的な偏見が持たれたことがあった。現在は病原体としてHIVが同定され、異性間性行為による感染や出産時の母子感染も起こり得ることが知られるようになり、広く一般的な問題として受け止められている[71]

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参考文献

診療ガイドライン 

携帯機器用アプリ

関連項目

外部リンク

政府機関・国際機関
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後天性免疫不全症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 01:24 UTC 版)

偏向報道」の記事における「後天性免疫不全症候群」の解説

後天性免疫不全症候群(エイズ感染者報道は、時として感染者患者)のプライバシー侵害する行為が行われてきた反面軽く流す程度で終わる報道見られるなど偏った報道見られた。例え性行為原因感染・発症した場合執拗なまでに「犯人探しが行われたが、血友病治療用いられ血液凝固因子製剤のうち非加熱製剤用いた結果エイズ感染した事例はほとんど扱われなかった。

※この「後天性免疫不全症候群」の解説は、「偏向報道」の解説の一部です。
「後天性免疫不全症候群」を含む「偏向報道」の記事については、「偏向報道」の概要を参照ください。

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後天性免疫不全症候群

出典:『Wiktionary』 (2018/07/05 18:19 UTC 版)

名詞

後天性免疫不全症候群 こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん

  1. (病理学) ヒト免疫不全ウイルスHIV)が免疫細胞感染し、免疫細胞破壊して後天的免疫不全起こす免疫不全症性行為感染症一つエイズAIDS

翻訳


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