こう‐たい〔カウ‐〕【抗体】
抗体
抗体
タンパク質・ポリペプチド・低分子に特異的に結合するタンパク質。血液中を循環しており、ウィルスなど外部からの異物に強固に結合し、不活性化する。たとえば、ウィルス粒子の表面を多数の抗体が認識・結合して覆ってしまえば、ウィルスの感染を防ぐことができる。一方、細菌の場合には抗体が結合するだけでは感染を防ぐことができないが、その場合には、別の免疫機構のための目印として働く。
抗体触媒
酵素は、基質から生成物への遷移状態(中間の化合物)の構造を安定化することによって化学反応を触媒する。抗体は「ある構造の化合物を結合する」能力を持っている。ということは、遷移状態に似た構造の擬似的な有機化合物(遷移状態アナログ)を結合する抗体を作成・スクリーニングしてやれば、任意の酵素反応を有する抗体を得られる。このような触媒能をもつ抗体を抗体触媒と呼ぶ。
(抗体触媒)
References

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抗原/抗体 ( antigeny/antibody )
抗体 (こうたい)

抗体
【概要】 抗原にぴったり結合するよう免疫系が働いて作る蛋白質で、免疫グロブリンという物質。血液や分泌液に出てくる。ヘルパーT細胞の調節のもとにB細胞が作る。異物が入ってきたとき、「これは異物」と貼り付けたレッテルみたい。初対面の場合は製造に少し日数がかかるが、前に見たことがある抗原には素早くたくさん作る。自己以外のものに付着すると、処理をするときの目印になる。警察に例えたら逮捕状のようなもの。

抗体
抗体
抗体 [Antibody(ies)]
抗体の生成は血清中に存在する糖タンパク質であるγ,β-グロブリンの領域が担っている。抗体が生成されたグロブリンを免疫グロブリン(immuno-globulin) といい、それを含む血清を抗血清という。
細菌が産生する毒素を加熱やホルマリンで処理して得られる無毒化毒素をトキソイドといい、そのトキソイドを動物へ接種すると、血清中にその毒素に異的な抗体ができる。その抗体を抗毒素という。無毒化した細菌の菌体やウイルス粒子も抗原として動物へ接種すると、その血清中に特異的な抗体ができる。 特異的な抗体ができると、体内へ再び同じ病原体(抗原)が侵入しても、その抗体と結合(抗原-抗体反応)して、病原体の毒力が中和されて発病しない。
また、抗血清あるいは抗毒素は細菌の鑑別や病気の診断にも用いられる。抗体には上記のような微生物の抗原に特異的な抗体のほかに、胎盤を通じた新生児抗体、アレルギー反応をおこすレアギン(reagin)、血液型抗体、ある抗原によってできた抗体の抗体(抗ハプテン抗体、抗HBウイルス抗体、抗単クローン性抗体など)などきわめて多種類がある。
免疫グロブリンは構造的にはIgG,IgM,IgA,IgE抗体などに分けられ、いずれの抗体にも分子内に抗原結合部位があり、そこに抗原が結合して複合体となる。反応によってはその複合体へ補体が結合して、溶血や溶菌などの細胞障害をひきおこす。このような抗体は補体結合抗体とよばれる。免疫グロブリンは分子量50,000-65,000のH鎖と25,000のL鎖が2本ずつ結合した基本構造をとっている。
抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 03:28 UTC 版)
注釈
出典
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)
「日本の発明・発見の一覧」の記事における「抗体」の解説
1889年、北里柴三郎は不可能といわれた破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功した。さらに破傷風菌の毒素を無力化する「抗毒素(抗体)」を発見した。
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/29 05:56 UTC 版)
抗体 (Ab) が抗原 (Ag) に結合する特殊な場合においては、大抵は親和性定数が用いられる。これは解離定数の逆数である。 Ab + Ag ⇌ AbAg {\displaystyle {\text{Ab}}+{\text{Ag}}\rightleftharpoons {\text{AbAg}}} K a = [ AbAg ] [ Ab ] [ Ag ] = 1 K d {\displaystyle K_{a}={\frac {\left[{\text{AbAg}}\right]}{\left[{\text{Ab}}\right]\left[{\text{Ag}}\right]}}={\frac {1}{K_{d}}}} この化学平衡は、会合速度定数(kforward)と解離速度定数(kback)との比でもある。2つの抗体が同じ親和性を持つ場合もあるが、一方が高い会合速度定数と低い解離速度定数、他方が低い会合速度定数と高い解離速度定数を持つためかもしれない。 K a = k forward k back = on-rate off-rate {\displaystyle K_{a}={\frac {k_{\text{forward}}}{k_{\text{back}}}}={\frac {\mbox{on-rate}}{\mbox{off-rate}}}}
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:18 UTC 版)
FcγRII受容体はIgG抗体とのみ結合する。一部の実験では、ADEは主にIgG2aサブクラスの抗体で発生したが、IgG1サブクラスの抗体では発生しなかったことが示されている。
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 06:42 UTC 版)
主にグランチャーやオルファン、ブレンパワードへの適正という意味で使われる。特にグランチャーは搭乗するパイロットの抗体化を進める。抗体化の深度が低いうちは不安や恐怖を増幅させられ拒否反応を示す。抗体化が進むと攻撃的かつ野心的になり、オルファンを盲従し、他人への関心が薄れ独善的になる。正に呪縛とでもいうべきもので、ジョナサンやクインシィをはじめとするグランチャーパイロットは勿論、勇やカナンですらその兆候はあり、第1話で勇はクマゾーたちに構わずヒメ・ブレンを撃墜しようとしてカナンに制止された。オルファンや自らの立場、戦うことに疑問を持ったり、他者への関心を強めたりすると呪縛が破られ、ついには動かすことさえできなくなる。勇とカナンはヒメ・ブレンのリバイバルに立ち会ったことがきっかけでオルファンや伊佐未ファミリーの説に疑問を抱くようになり、最終的にグランチャーの呪縛を解いた。ブレンパワードはグランチャーとは正反対で、優しさや他者への労り、愛情といった感情を刺激される。比瑪のいうブレンの優しさとはそうした意味合い。ナッキィはブレンとグランチャー双方の適正を持っていたが、結局はブレンに落ち着いた。
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/18 15:28 UTC 版)
「アルトネリコ3 世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く」の記事における「抗体」の解説
人類を拒絶するようになった惑星アルシエルが、人類を排除すべく生み出した生命体。
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 05:33 UTC 版)
様々な病原体に対しての抗体を持つ。常人ならば死に至る細菌兵器でも体内に潜伏させておくことが可能。その気になれば大規模なバイオテロを起こすことも可能だが、上層部から使用を制限されている。
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/05 09:58 UTC 版)
鳥の羽や排泄物に対する抗体を有している場合、鳥関連過敏性肺炎を発症する可能性がある。しかし、自身が鳥関連過敏性の体質であることに気がつかないまま重症化し、「特発性間質性肺炎」や「特発性肺線維症」と診断されるが有効な治療が行えず慢性過敏性肺炎に重症化する例が報告されている。
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抗体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:14 UTC 版)
抗体は急性の拒絶反応を防ぐ迅速で有望な免疫抑制法として使われる。
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「抗体」の例文・使い方・用例・文例
- 彼はエイズウイルスの抗体検査結果が陽性だった
- 抗核抗体値
- HIV抗体陽性
- 彼の抗体はかつて彼が確信した。
- 抗体は新たな借用書をつくる。
- 免疫体, 抗体.
- 酵素転換反応に依存して、特定の物質(酵素、ウィルス、抗体、または、バクテリア)の存在を検知するために使用される分析
- 侵入する物質(抗原:ウイルス、菌類、バクテリアまたは移植された臓器など)を認識し抗原に対して特殊の抗体を作る体内の防衛反応
- 同じ抗原と2度目に(または引き続いて)遭遇したとき、抗体が新しく急速に生成されること
- 抗原と抗体の結合で補体が不活化される(したがって、第2の抗原と抗体の結合に関与できなくなる)免疫反応
- 1種類の抗体だけを含むさま
- 特定の抗原を打ち消すことが出来るいくつかの抗体をそれぞれ含んだ
- TNFに対して向けられた抗体から成る反TNF化合物(商標名レミケード)
- 抗体の生産を刺激するために注射される弱められたか死病原性細胞の懸濁からなる免疫原
- 特定の抗原に対する抗体を含む血清
- 抗原、抗体、ホルモン、薬品に対して特異受容体を有する、あるいはウイルス、食細胞または神経線維などによる接触の焦点となる細胞のいずれか
- 抗体を蛍光塗料と結びつけ、組織サンプルの中の抗原を調べる技術
- 羊の赤血球を癒着させる異好抗体を検出する血液検査
- 血清のサンプルがその特定の抗原への抗体が存在しているかどうか決定するために特定の抗原と補数にさらされている血液検査
- 免疫学(例えば抗原と抗体の化学研究)で化学プロセスに関心を持つ化学の分野
抗体と同じ種類の言葉
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