免疫学とは? わかりやすく解説

めんえき‐がく【免疫学】

読み方:めんえきがく

免疫機構解明およびその応用を図る学問抗体補体抗原化学的構造機能研究する免疫化学なども含まれる


免疫学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 14:37 UTC 版)

免疫学(めんえきがく、英語: immunology)とは、生体の持つ免疫機能の解明を目的とする学問分野のこと。

概要

主に、基礎医学歯学薬学生物学、臨床医学による研究が行われている。免疫には生物が広く持つ自然免疫と、哺乳類鳥類がもつ獲得免疫がある。

抗体の機能をになう免疫グロブリンの多様性の生成機能、B細胞T細胞の抗原レセプターの多様性形成機構、リンパ球内でのシグナル伝達機構、リンパ球の発生・分化・成熟機構、細菌ウイルスなど病原体と生体の相互作用の解析、自己と非自己の識別機構の詳細など、対象は多岐にわたる。

過剰免疫応答による疾患(アレルギー、炎症性疾患等)や自己免疫疾患の病理と治療法の理解や、免疫機能の亢進による保存的治療法の研究、移植免疫学など、今日の医学における免疫学は臨床医学と密接な関わりを持つ。

歴史

人は古くから、一度かかった病に二度目はかからなかったり、二度目は軽い症状で済む場合があることを経験則的に知っていた[1]。紀元前5世紀に記されたトゥキディデスの『戦史』ではアテナイの疫病について「二度なし」という言葉を用いて免疫について記した[1]

14世紀にはヨーロッパでペスト(黒死病)の流行が頻発し、キリスト教騎士や修道士が患者の手当てなどの慈善活動にあたっていた[1]。慈善活動にあたっていたキリスト教騎士らの中にはペストにかかりながらも奇跡的に回復した者もいたが、彼らはその後ペスト患者と接していても二度と病にかかることがなかった[1]。このような現象は、神のご加護によるものと信じられ、ローマ教皇から課役や課税を免除(im-munitas)され、のちのimmunity(免疫)の語源となった[1]

一方、天然痘でも免疫性が経験則的に知られており、西アジア、インド、中国などでは天然痘患者の膿を健康な人の皮膚に塗って免疫を得るという呪術的な方法が行われていた[2]。この現象に注目したエドワード・ジェンナー1798年牛痘接種による天然痘ワクチン(種痘)を公式に発表し、ジェンナーは「近代免疫学の父」と呼ばれるようになった[2]

ジェンナーの天然痘ワクチンのメカニズムを科学的に分析したのがフランス生化学ルイ・パスツールであり、弱毒化した微生物の接種により免疫を得ることができることを解明した[3]

さらにエミール・アドルフ・フォン・ベーリング北里柴三郎はワクチン接種により生体が獲得する免疫の正体が血中蛋白質である抗体によるものであることを突き止めた[3]。また、ロシアイリヤ・メチニコフは免疫の本質が血液中の食細胞と生体防御の双方の働きにあると考えた[3]

ジェンナーの種痘に始まった免疫学は現在幅広く発展し、生命現象を全体的に理解するために欠かせない学問となっている。現在では各種免疫疾患のメカニズム及び治療法の確立が問題である。

脚注

  1. ^ a b c d e 鈴木隆二 2015, p. 12.
  2. ^ a b 鈴木隆二 2015, p. 14.
  3. ^ a b c 鈴木隆二 2015, p. 15.

参考文献

関連項目

外部リンク


免疫学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 03:06 UTC 版)

ニューモシスチス肺炎」の記事における「免疫学」の解説

ニューモシスチス・イロベチイ自体組織障害性少なく、その存在だけでは呼吸障害を伴うようなPCP起こらない炎症反応過剰になることで肺組織障害がおこると考えられている。動物実験ではCD4陽性Tリンパ球選択的に欠損させたマウスではPCP発症しやすく、低酸素血症肺コンプライアンス低下など重症化認める。しかしCD8陽性Tリンパ球欠損させると肺内の量はかわらないものの、炎症酸素化障害軽減する。また重症複合免疫不全マウス晩期まで呼吸障害起こさないが。このマウス野生型マウスの脾細胞投与して細胞性免疫構築する急激な酸素化障害がおこる。CD4陽性T細胞機能不全の状態ではCD8陽性T細胞が肺障害関与する考えられる。この動物実験臨床的に再現されている。たとえばAIDS患者PCP治療不十分なまま抗レトロウイルス療法開始すると、免疫機能回復とともに遺残していた病原体対す激し炎症反応が起こる免疫再構築症候群知られている。また骨髄移植レシピエントにおける生着症候群でも免疫能の回復とともにPCP発症し呼吸機能大きく低下することがある

※この「免疫学」の解説は、「ニューモシスチス肺炎」の解説の一部です。
「免疫学」を含む「ニューモシスチス肺炎」の記事については、「ニューモシスチス肺炎」の概要を参照ください。

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免疫学

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 05:41 UTC 版)

名詞

免疫 めんえきがく

  1. 免疫機能解明応用図る医学分野

発音(?)

め↗んえき↘がく

翻訳


「免疫学」の例文・使い方・用例・文例

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