抗毒素とは? わかりやすく解説

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こう‐どくそ〔カウ‐〕【抗毒素】


抗毒素 [Antitoxin]

 病原菌有毒動物もっている毒素を熱やホルマリン無毒化(不活化)させて、それらを抗原として動物接種すると、その血清中に特異的な抗体ができる。その抗体を抗毒素という。また、抗毒素を含む血清を抗毒素血清という。1890年北里柴三郎(日本)とE.von ベーリング(ドイツ)は破傷風菌ジフテリア菌毒素を含む培養液免疫した動物血清それぞれの毒素中和し発病阻止することを認め、それが抗毒素発見端緒となり、免疫血清療法免疫学への発展の道を開いた。抗毒素は免疫グロブリン(IgG)の一つで、抗毒素血清病原菌毒素鑑別病気予防診断、治療に有効である。(治療には早い時期使用しない効果がでない破傷風ジフテリアをはじめ多く細菌感染症やヘビ毒などに対する抗毒素血清がしばしば用いられる

抗毒素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 02:58 UTC 版)

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1895年に製造されたジフテリア抗毒素のバイアル

抗毒素(こうどくそ、: antitoxin)は、特定の毒素を中和する能力を持つ抗体のことである。抗毒素は、ある種の動物植物真正細菌が毒素の暴露に反応して産生する。それらは毒素を効果的に中和することができるが、真正細菌やその他の微生物も殺滅することもある。抗毒素は生物の中で作られ、ヒトを含む他の生物に投与して感染症を治療することができる。この方法では、安全な量の特定の毒素を動物に注射する。次に、その動物の体内でその毒素を中和するために必要な抗毒素が作られる。その後、その動物から血液を採取する。血液から抗毒素が得られると、それを精製して人間や他の動物に注射し、一時的な受動免疫を誘導する。血清病を予防するためには、同じ種から得られた抗毒素を使用するのが最善であることが多い(例えば、人間を治療するためにはヒト抗毒素を使用する)。

ほとんどの抗毒素製剤は、毒素に対する力価が高いドナーから調製されており、高力価免疫グロブリン英語版になっている。

抗毒素の歴史

ジフテリア破傷風の毒素に対する抗毒素は、1890年以降、エミール・アドルフ・フォン・ベーリングとその同僚によって作られた。ジフテリアの治療にジフテリア抗毒素を使用したことは、The Lancet誌で「急性感染症の医学的治療における19世紀の最も重要な進歩」と評価された[1][2]

1888年、ベーリングは軍事医学学校での簡単な奉仕のためにベルリンに派遣された。1889年、彼は当時ロベルト・コッホが所長を務めていたベルリン大学の衛生研究所に加わった。1889年から1895年にかけて、ベーリングは血清療法抗毒素の理論に関する先駆的なアイデアを発展させた[3]

1887年初頭、ボンで、ベーリングは、破傷風免疫を持つ白ネズミの血清に、炭疽菌を中和する物質が含まれていることを発見した。彼は、これが炭疽菌への「抵抗力」の源であると認識していた[3]。1890年12月4日、ベーリングと北里柴三郎は、血液血清療法に関する最初の論文を発表した[3]。12月11日、ベーリングが署名した別の報告書は、破傷風の治療だけでなく、ジフテリアの治療にも血液血清療法を論じている。

1891年、パウル・エールリヒが、植物毒でさえ生体内で抗毒素が生成されることを証明したことで、ベーリングの理論は裏付けられた[3]

猩紅熱(しょうこうねつ)の抗毒素英語版は、1924年にRaymond Dochez、GladysGeorge Frederick Dickによって同時に開発された[4][5]

21世紀の血清療法

参照項目

  • 毒素-抗毒素系英語版 - 「毒素」タンパク質と対応する「抗毒素」の両方を一緒にコードする、2つ以上の密接に関連した遺伝子セット
  • 予防接種
  • ジム (馬名)英語版 - ジフテリア抗毒素を含む血清を生産するために使用された馬の名前
  • 抗血清
  • 発明

脚注

  1. ^ “Report of the Lancet special commission on the relative strengths of diphtheria antitoxic antiserums”. Lancet 148 (3803): 182–95. (1896). doi:10.1016/s0140-6736(01)72399-9. PMC 5050965. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5050965/. 
  2. ^ Dolman, C.E. (1973). “Landmarks and pioneers in the control of diphtheria”. Canadian Journal of Public Health 64 (4): 317–336. PMID 4581249. 
  3. ^ a b c d Emil von Behring Facts, information, pictures”. www.encyclopedia.com. 2016年5月17日閲覧。
  4. ^ Cushing, H.B. (August 1926). “Results of the use of scarlet fever antitoxin”. Canadian Medical Association Journal 16 (8): 936–939. PMC 1709338. PMID 20315893. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1709338/. 
  5. ^ Zingher, Abraham (November 1924). “The Dick test and active immunization with scarlet fever Streptococcus toxin”. American Journal of Public Health 14 (11): 955–962. doi:10.2105/AJPH.14.11.955. PMC 1355058. PMID 18011363. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1355058/. 

外部リンク


抗毒素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 23:42 UTC 版)

ボツリヌス症」の記事における「抗毒素」の解説

ボツリヌス症の抗毒素は、受動免疫によって循環系ボツリヌス毒素中和する抗体構成されている。これは、更なる毒素神経筋接合部働きかけるのを防いでくれるが、既に罹患した麻痺回復させることはない。 成人では、ボツリヌス毒素のA、B、E型対抗するよう作られ抗体を含む3価の抗毒素が最も一般的に使用される。しかし、2013年に7価のボツリヌス抗毒素が開発され米国FDAによって承認された。 乳児では、乳児血清病発症したり馬由来タンパク質対す持続的な過敏症起こす恐れがあり、馬由来の抗毒素が使われない場合もある。これを打開するため、ヒト由来の抗毒素が開発されて、2003年乳児ボツリヌス症治療用として米国FDA承認された。このヒト由来の抗毒素は、乳児ボツリヌス症治療に対して安全かつ効果的であることが示されている。ただし、乳児対する馬由来抗毒素の危険性明確に確立されておらず、馬由来の抗毒素が乳児ボツリヌス症治療に安全かつ効果的であることを示した研究もある。 3価(A・B・E)ボツリヌス抗毒素は、抗体全てが馬由来である。米国では、この抗毒素がCDCを介して地元保健局から入手可能である。第2の抗毒素は、7価(A・B・C・D・EF・G)ボツリヌス抗毒素は「脱」馬のIgG抗体由来する。この免疫原性少ない抗毒素は、禁忌でない限り既知ボツリヌス症あらゆる菌株に対して有効である。

※この「抗毒素」の解説は、「ボツリヌス症」の解説の一部です。
「抗毒素」を含む「ボツリヌス症」の記事については、「ボツリヌス症」の概要を参照ください。

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