軟骨魚類とは? わかりやすく解説

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なんこつ‐ぎょるい【軟骨魚類】

読み方:なんこつぎょるい

軟骨魚綱脊椎動物円口類硬骨魚類とともに広義魚類構成する一群骨格軟骨からなる海産種が多く、板(ばんさい)類(サメ・エイ類)と全頭類(ギンザメ類)に分けられる


軟骨魚綱

同義/類義語:軟骨魚類, 軟骨魚,
英訳・(英)同義/類義語:chondrichthyes, cartilaginous fish

動物の分類で、脊索動物門脊椎動物亜門属する綱で、サメ類、エイ類が含まれる

軟骨魚綱

(軟骨魚類 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/22 08:24 UTC 版)

軟骨魚綱
生息年代: 439–0 Ma
前期シルル紀 (アエロニアン) - 現世
ホホジロザメ Carcharodon carcharias
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 顎口上綱 Gnathostomata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱

軟骨魚綱(なんこつぎょこう、Chondrichthyes)とは、サメエイギンザメの仲間を含む、顎口上綱の下位分類群軟骨魚類とも呼ばれる。名称の由来は、全身の骨格が軟骨で構成されていることによる。

概要

世界中の海洋に広く分布し、一部淡水域にも生息する。また、海水域と淡水域を自由に行き来できる種も存在する。深海種も多く、ギンザメ類はそのほとんどが深海に生息する。サメ、エイ、ギンザメでは各々体の形や大きさは異なり、一様でない。魚類中最大のジンベエザメもこの中に含まれる。脊椎動物の中でも比較的原始的な分類群であり、最古の化石記録は古生代シルル紀後期の地層から見つかったの破片で、約4億年前の古生代デボン紀には大規模な多様化を遂げたとされている[1]

従来は、魚類はもともと軟骨を持っており、後に骨が進化したが、サメエイなどの軟骨魚は骨を進化させないまま現在に至ると説明されたこともあった。しかし、顎を持つ生き物全ての祖先に当たる生き物は骨を持っており、軟骨魚類は骨を二次的に失って主に軟骨で構成される骨格系を持つようになった動物である[2]。化石の研究によりその進化過程も分かってきている[3]

形態・生態

軟骨

軟骨魚類は硬骨魚類のような骨ではなく、軟骨で全身の骨格を形成する。脊椎動物の頭蓋骨の表面の骨は、顎口類で進化した皮骨に進化的に由来する[2]エドウィン・ハリス・コルバート[4]は、硬骨魚の骨の方がより原始的な特徴とし、デイビッド・アッテンボロー[5]もこの説を支持している。もちろんこれは骨格組織の話であり、それ以外の部分について軟骨魚類が硬骨魚類よりも原始的な特徴を持つ事とは無関係である。

は系統発生上も個体発生上も上皮組織由来だが、通常の骨より硬く緻密である。また、直接歯を支える顎骨も骨の場合が多いが、歯ほど緻密ではない。

そのため、サメ類の化石はほとんど歯しか見つからない。軟骨は長い時間の中で分解されてしまうからである。そこから、サメの歯の化石がサメの物と思われず日本では「天狗の爪」などと呼ばれる俗信が生まれた。

噴水孔

軟骨魚類には眼の後方に噴水孔・呼吸孔と呼ばれる左右一対の孔がある。脊椎動物の顎が鰓弓の変化によってできた時、前方の鰓孔から鰓がなくなった後の痕跡である[4]。通常、遊泳型のサメでは単なる孔であるが、底棲のサメや特にエイでは呼吸のための水の取り入れ口となっており、口から海底の砂を吸い込むことなく呼吸ができる。顎の形成前の鰓孔起源であり、原始的な特徴と考えられ、現生の硬骨魚類では、チョウザメを除いて消失している。ギンザメでは胚の段階で見られるが孵化までにふさがる。耳小骨参照。

ロレンチニ瓶

上顎から吻の先端にかけての体表に存在し、小さな穴が多数開いたように見える器官。これは電気受容器であり、生物の筋肉から発生する微弱な電流を感知し、獲物の位置を知るのに役立っている[6]。ただし水中では電気の減衰が速いため、感応距離は数十センチメートル程度であり、獲物がごく近くにいるときにしか感知できない。主に砂の中に隠れている生物を探るときや、獲物に攻撃を加える瞬間などに使用されているものと思われる[6]。発見者の名前に因んで命名されたもので、ロレンチニ氏器官とも呼ばれる。

浸透圧調節

軟骨魚類は浸透圧調節のため、体内に尿素トリメチルアミンオキサイドを蓄積している。これにより体内の浸透圧は、海水とほぼ等しくなっている[1]硬骨魚類やその他の脊椎動物の体内の浸透圧は海水の3分の1前後であり、それよりもかなり高い値になっている。

尿素は体内に多量に保持しておくとタンパク質の構造を変性させ、その働きを阻害するので、一般に生物にとってよくない物質である。しかしトリメチルアミンオキサイドと共存することでその効果が弱められ、尿素とトリメチルアミンオキサイドの存在比が2:1になるのが望ましいとされている。

死後時間が経過したサメやエイの体からは、強烈なアンモニア臭がする。これは空気中にいる、尿素をアンモニアに分解する微生物の働きによるものである。

海産種では体内の過剰な類を排泄するため、直腸腺という器官を直腸の近くに備えている。直腸腺を構成する細胞は、多くの魚類のに存在する塩類細胞と形態的に類似している。

浮力調節

軟骨魚類は(浮き袋)を持たず、肝臓に水より比重の軽い油(肝油)を蓄積することで浮力を調節する[6]。このため、とくに外洋性の種では肝臓が大きく、たとえばヨシキリザメでは体重のおよそ5分の1を占める[6]。油の成分は主にスクアレン(スクアラン)である。

腸内は、螺旋弁と呼ばれる襞を持ち、表面積を増やすことで、他の生物より短く太い腸でも栄養を吸収できるようにしている[7]。サメやエイには、肛門(総排出腔)から腸の一部を出して、腸洗いと呼ばれる腸の残りかすや寄生虫などを洗い流す行動が見られる[8]

分類

ギンザメ類を含む全頭亜綱 Holocephali と、サメ・エイ類を含む板鰓亜綱 Elasmobranchii に大きく分けられる。現生種を含む分類群は太字で示した。

全頭亜綱

板鰓亜綱

化石

デボン紀後期の化石クラドセラケ

軟骨は化石化しにくく、ほとんどが歯化石で、骨格化石は少ない傾向がある[10][11]。最古級の化石として、シルル紀のサメの肌とみられる化石や、デボン紀中期の識別可能な化石がある[12]

脚注

  1. ^ a b 矢野衛 著「魚類の多様性と系統分類」、松井正文編集 編『脊椎動物の多様性と系統』裳華房、2006年、46-93頁。ISBN 4785358300 
  2. ^ a b Hirasawa, Tatsuya; Kuratani, Shigeru (2015-12). “Evolution of the vertebrate skeleton: morphology, embryology, and development” (英語). Zoological Letters 1 (1). doi:10.1186/s40851-014-0007-7. ISSN 2056-306X. PMC 4604106. PMID 26605047. https://zoologicalletters.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40851-014-0007-7. 
  3. ^ “サメは「生きた化石」ではなかった? 定説覆す化石発見”. AFPBB News. (2014年4月21日). https://www.afpbb.com/articles/-/3012896 2014年9月5日閲覧。  {{cite news}}: |accessdate=の日付が不正です。 (説明)
  4. ^ a b E. H. Colbert『脊椎動物の進化』
  5. ^ デイビッド・アッテンボロー『生き物たちの地球』
  6. ^ a b c d アンドレア・フェッラーリ、アントネッラ・フェッラーリ 著、御船淳、山本毅 訳『サメガイドブック 世界のサメ・エイ図鑑』谷内透監修、TBSブリタニカ、2001年(原著2000年)。 
  7. ^ Tomita, Taketeru; Murakumo, Kiyomi; Matsumoto, Rui (2023-04-01). “Narrowing, twisting, and undulating: Complicated movement in shark spiral intestine inferred using ultrasound”. Zoology 157: 126077. doi:10.1016/j.zool.2023.126077. ISSN 0944-2006. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0944200623000107. 
  8. ^ アカシュモクザメの腸洗い”. 海遊館. 2025年3月25日閲覧。
  9. ^ 学者によっては、ツノザメ目キクザメ科に分類されることもある
  10. ^ Goto, Masatoshi (1972). “日本産の化石軟骨魚類についての一総括”. 地質学雑誌 78 (11): 585–600. doi:10.5575/geosoc.78.585. ISSN 0016-7630. http://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/78/11/78_11_585/_article/-char/ja/. 
  11. ^ 髙桒, 祐司「日本における軟骨魚類化石研究――現状と展望――」2021年3月31日、doi:10.14825/kaseki.109.0_5 
  12. ^ Fossil Record of the Chondrichthyes”. ucmp.berkeley.edu. 2025年4月20日閲覧。

関連項目


軟骨魚類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 14:32 UTC 版)

深海魚」の記事における「軟骨魚類」の解説

軟骨魚類にはいわゆるサメ・エイおよびギンザメ仲間所属し底生性深海魚多く含まれるギンザメ目 Chimaeriformes 約30種のすべてが深海底部生活する強靭な顎を持ち貝類甲殻類など硬い殻を持つ埋在動物捕食するゾウギンザメ科 Callorhinchidae テングギンザメ科 Rhinochimaeridae ギンザメ科 Chimaeridaeギンザメ ネズミザメ目 Lamniformes 表層から深海にかけて広い生活範囲を持つ種類多く純粋な深海性魚類少ない。ミツクリザメ科 Mitsukurinidae - ミツクリザメ メガマウス科 Megachasmidae - メガマウス メジロザメ目 Carcharhiniformes サメ類として最大グループであり、多く浅海生活しているが、トラザメ科一部の属(ヘラザメ属ナヌカザメ属ナガサキトラザメ属・ヤモリザメ属)に深海魚含まれる多く大陸棚で暮らす底生魚で、ほとんど泳がないトラザメ科 Scyliorhinidae カグラザメ目 Hexanchiformes 含まれる5種すべてが中深層海底付近に住む深海魚ラブカ科 Chlamydoselachidaeラブカ カグラザメ科 Hexanchidaeカグラザメ キクザメ目 Echinorhiniformes 以前ツノザメ目含まれていたグループ所属する2種はいずれ底生性深海魚キクザメ科 Echinorhinidae ツノザメ目 Squaliformes100種の大半深海底生性。アイザメ科には6,000メートル以深からの採取記録もあるが、その信頼性疑問視されている。ツノザメ科 Squalidaeアブラツノザメ アイザメ科 Centrophoridae カラスザメ科 Etmopteridae - フジクジラ オロシザメ科 Oxynotidaeオロシザメ ヨロイザメ科 Dalatiidae - ダルマザメ オンデンザメ科 Somniosidaeオンデンザメ トビエイ目 Myliobatiformes 多く大陸棚から大陸斜面にかけて住む底生魚で、分布範囲浅海から深海まで多岐にわたるムツエラエイ科 Hexatrygonidae ウスエイ科 Plesiobatidae

※この「軟骨魚類」の解説は、「深海魚」の解説の一部です。
「軟骨魚類」を含む「深海魚」の記事については、「深海魚」の概要を参照ください。

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軟骨魚類

出典:『Wiktionary』 (2021/08/16 04:49 UTC 版)

名詞

軟骨 魚類 (なんこつぎょるい)

  1. 脊椎動物門顎口上綱軟骨魚綱属す総称学名:Chondrichthyes

「軟骨魚類」の例文・使い方・用例・文例

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