流行性角結膜炎とは? わかりやすく解説

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流行性角結膜炎

読み方:りゅうこうせいかくけつまくえん

アデノウイルス呼ばれるウィルスによって引き起こされる目の疾患角膜炎結膜炎併発するために「角結膜炎」と総称されるが、角膜炎のみ発症する場合流行性結膜炎」とも呼ばれる

流行性角結膜炎は感染力が非常に強いことで知られる罹患した際には学校職場には通わず静養することが求められるまた、流行性角結膜炎の治療法確立されておらず、ステロイド剤点眼しながら様子を見る、といった対応が主に取られている。

りゅうこうせい‐かくけつまくえん〔リウカウセイ‐〕【流行性角結膜炎】

読み方:りゅうこうせいかくけつまくえん

アデノウイルス感染による伝染性結膜および角膜炎症学校感染症の一。感染症予防法の5類感染症の一。流行目(はやりめ)。


流行性角結膜炎

・流行性角結膜炎(EKC,epidemic keratoconjunctivitis

流行性角結膜炎流行性角結膜炎

一般にはやり目といわれるもので,主としてアデノウィルス8型によるウイルス性の結膜炎です。感染力強く感染してから1週間前後潜伏期間をおいて突然発病します。まず結膜真赤充血し,涙がよく出ます次にまぶたが腫れゴロゴロした異物感もあり,しばしば耳下腺リンパ節腫れることもあります。片眠が先に発病することが多く数日後にもう片方の目にも発病してきますが,比較的後の目の方が軽くすみます。おとなと子どもでは経過症状違い幼児では,結膜の裏偽膜という白濁色の膜のようなものができ,まぶたの腫れは非常に強くなります。この膜ははがれるときに出血するので,目から血が出たおどろきますが,心配しなくてよいものです。おとなでは,症状おさまりかけた頃に角膜表面に点状の濁りがたくさんでき(点状表層角膜炎),視力悪くなります。この角膜濁りはすぐには治りませんが,いずれは完全に治り視力元に戻ります結膜炎は2~3週間治りますから,それ自体たいしたことはないのですが,その間充血流涙などの症状強くうっとおしい日が続きます特効薬がないため,混合感染を防ぐ意味で抗生物質,点状表層角膜炎に対して副腎皮質ホルモンビタミンB2点眼使用しますが,症状軽減それほど期待できません(むしろ周囲への感染防止努めることが大切になってきます。感染防止のための注意等は次項)。


流行性角結膜炎

流行性角結膜炎(EKCepidemic keratoconjunctivitis)は、主にD 群アデノウイルスによる疾患で、主として手を介した接触により感染する以前は、本疾患患者扱った眼科医医療従事者などからの感染多く見られたが、現在では、職場病院家庭内などの人が濃密接触する場所などでの流行的発生みられるアデノウイルス種々の物理学条件抵抗性強いため、その感染力は強い。19 世紀後半ドイツ労働者の間で流行したことが記載されている。その後米国で、"shipyard eye"と呼ばれる眼疾患が流行した造船所労働者眼の外傷治療のさい、医原病的に広がったものと考えられる今日我が国では全国的にEKCみられるが、年度によりD群の8、1937型のいずれか流行となっている。

疫 学
流行性角結膜炎患者との接触により感染する病院医師看護婦、さらに職場家庭などで、ウイルスにより汚染されティッシュペーパータオル洗面器などに触れるなどして感染する年齢による頻度の差はみられない血清学調査では、日本の子供の8型に対す抗体保有率は20%未満19型および37に対して10%程度である。
感染症法施行後発生動向調査によると、全国600眼科定点からの報告では1999年4~12月報告23,941定点当たり報告数41.71)、2000年1~12月40,873 (65.40)、2001 年1~12月暫定データ)に39,141 (62.13)となっている。季節としては8月中心として夏に多く年齢では1~5歳中心とする小児に多いが、成人含み幅広い年齢層みられる

病原体
アデノウイルスは現在まで49種の血清型知られているが、EKC起こすのはD群の8、1937型である。まれに、B群11型E群4型病因となりうる。現在流行中の型は19 型であり、ほぼ全国から分離されているが、8型と9型の中間型思われる血清型沖縄県におけるEKC病原考えられており、同様の型が横浜秋田でも分離されている。

臨床症状

潜伏期は8~14日である。急に発症し眼瞼浮腫流涙を伴う。感染力が強いので両側感染しやすいが、初発眼の方が症状が強い。耳前リンパ節腫脹を伴う。角膜炎症が及ぶと透明度低下し混濁数年に及ぶことがある時に結膜炎出血性となり、出血性結膜炎(EV70, CA24 変異株による)や咽頭結膜熱との鑑別要することがある(図1)。その他、ヘルペスウイルスや、クラミジアによる眼疾患との鑑別が必要である。

流行性角結膜炎 

新生児乳幼児では偽膜性結膜炎起こし細菌混合感染角膜穿孔起こすので注意する必要がある

病原診断
眼ぬぐい液や結膜擦過法によりアデノウイルス分離することが、病原診断基本である。ウイルス分離されたら、中和反応により型を同定する。ほとんどはD 群であり、重症型が多い。他の型が分離される軽症型では、咽頭結膜熱との異同再検討する急性出血性結膜炎エンテロウイルス(EV70)の感染よるものであるが、これは最近分離困難となり、ペア血清での中和抗体有意の上昇、あるいはPCRによる検出が必要となる。
迅速診断法としてELISAクロマトグラフィー法(アデノクロン、アデノチェック)があるが、型別判定できないPCR‐RFLP法シーケンス法により、型の同定が可能となった血清型を知ることで、より詳細疫学的調査が可能となり、公衆衛生的対応にも結びつくことが期待される

治療・予防
アデノウイルス全般について有効な薬剤はない。対症療法的に抗炎症剤点眼行い、さらに角膜炎症がおよび混濁みられるときは、ステロイド剤点眼する細菌混合感染可能性に対しては、抗菌剤点眼を行う。眼疾患者分泌物取扱い処分注意し手洗い消毒をきちんと行う。点眼瓶類がウイルス汚染されないよう注意をし、汚染され病院内器具類はオートクレーブ滅菌するか、あるいはアルコールヨード剤などで消毒する予防の基本接触感染予防の徹底である。

付記
EKCという診断名は8型において初め用いられ一元的病因論でいわれていたが、その後1937型も8型と全く区別できず、多元的病因論受け入れられている。4型でもEKC からPCF まで幅広い臨床像示しB群軽症なのでEKCよりもアデノウイルス結膜炎という診断名用い重症型(D群)、中間型E群)、軽症型(B群)という用語を用いることが提唱されている。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
流行性角結膜炎は5類感染症定点把握疾患定められており、全国600カ所の眼科定点から毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ以下の3つの基準のうち2つ以上を満たすもの
1. 重症急性濾胞性結膜炎
2. 角膜点状上皮混濁
3. 耳前リンパ節腫脹圧痛
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの

国立感染症研究所感染症情報センター 稲田
北海道大学医学部眼科学教室 青木功喜)


流行性角結膜炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 22:55 UTC 版)

ヒトの目の構造
結膜炎を発症し充血している

流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)(EKC:epidemic keratoconjunctivitis)は、ウイルスによって引き起こされる急性の結膜炎、あるいは角膜炎。別名「はやり目」ともいわれ、感染力が強い。

原因・症状

アデノウイルスの透過型電子顕微鏡による撮影像

主にアデノウイルス8型、19型、37型によっても引き起こされるが、希に B群の3型、7型、11型、E群の4型によっても引き起こされる[1]。以前はプールでうつる夏の病気だったが、近頃では一年中見られるようになった。1週間から2週間程度の潜伏期の後、発症する。結膜炎と角膜炎を起こすため、角結膜炎と呼ばれる。また全例ではないが、耳前リンパ節の腫脹を伴う[1]

結膜炎

  • 充血し、眼脂(めやに)が出る(ひどいときには「めやに」で目が開かないくらいになる)。
  • 片目発症後、4〜5日後に反対側の目も発症する場合が多い。
  • 涙目になったり、まぶたがはれることもある。
  • 視力が少し低下する場合がある。
  • 症状が重くなると、耳前リンパ節が腫れて触ると痛みを伴う。
  • 症状が強い人の場合は、まぶたの裏の結膜に白い膜ができ、眼球の結膜に癒着をおこす。
  • 症状が治まるまで約2-3週間かかる。

角膜炎

  • 透明な角膜に点状の小さな混濁[2]が生じ、眼痛を感じる。
  • 眩しさやかすみを感じる。
  • 視力障害を感じることもある。
  • 黒目の表面がすりむける角膜びらんを伴い、目がゴロゴロしたり、眼痛がひどくなる。
  • 症状が数ヶ月から丸一年に及ぶこともある。

診断・治療

結膜炎の原因はウイルス性のほか、アレルギー性、細菌性などもあり、初期の段階での判断は難しい。症状や所見から当該疾患が疑われ診断されるが、現在では迅速診断法として抗原抗体反応を利用したELISAクロマトグラフィー法により、簡易キットを用いた早期段階での判断ができるようになってきている。しかし、検査で陰性であっても必ずしもEKCが否定できる訳ではなく、後述の治療をしつつ数日間は経過を見る必要がある。

ウイルスに対する有効な薬剤はない。充血・炎症に対しステロイドの点眼を行い、細菌の混合感染の可能性に対しては、抗菌剤の点眼を行う。特に新生児や乳幼児では、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こす事があるので注意が必要である。

角膜炎が強度になり視力低下や場合によっては失明の危険もあるため、早期に治療を開始することが望ましい。

感染症法に基づく届出のために必要な臨床症状は、「重症な急性濾胞性結膜炎」「角膜点状上皮下混濁」「耳前リンパ節腫脹・圧痛」のうち2つ以上[1]

注意点

主として手を介した接触感染である。ウイルスに感染した眼を手で触れると、手にウイルスが付着する。そのままいろんな物に触れると、その物にウイルスが付く。更に、他の人がそれに触れて、その手で目をこするなどした場合に感染するという経路がほとんどとなる。

  • 手をよく洗い、手で目をこすったり、顔に触れたりしないこと。
  • 休養をとって体力をおとさない。
  • 風呂は最後に入り、その湯はすぐに捨てる。
  • タオル類の共有はやめる。
  • 治ったように見えても、しばらくの間は外出などは控える。
  • 流行時には、院内感染による流行拡大もあるため、乳幼児は、診察を受けるとき以外は病院につれて行かない。また、入院中の患者が感染した場合、退院可能な場合は強制退院の対象となり得る[3]

関連法規

  • 感染症法 - 5類感染症定点把握疾患。眼科定点医療機関(全国約700カ所の眼科医療機関)は週単位で、翌週の月曜日に保健所に届け出なければならない。
  • 学校保健法 - 学校感染症の一つで第3種(学校において流行を広げる可能性がある伝染病)。伝染の恐れがないと、医師が認めるまで出席停止。
児童に限らず成人が感染した場合でも原則的に出勤停止となり、特に医療従事者の感染は時に患者への二次感染を引き起こす事がある[4]

出典

  1. ^ a b c 流行性角結膜炎とは”. 国立感染症研究所感染症疫学センター. 2024年7月30日閲覧。
  2. ^ 石田篤行、益子直子、箕輪美紗斗ほか、流行性角結膜炎後、角膜混濁を生じた症例の生体共焦点顕微鏡による観察 日本視能訓練士協会誌 Vol.41 (2012) p.201-206, doi:10.4263/jorthoptic.041F121
  3. ^ 大阪大学医学部附属病院感染管理マニュアル(2019年11月改訂版)”. 大阪大学医学部附属病院. 2024年7月30日閲覧。
  4. ^ 細田昌良、小松敏美、松下美幸、流行性角結膜炎に対する地域社会と連携した感染対策の試み 日本環境感染学会誌 Vol.23 (2008) No.2 P.140-144, doi:10.4058/jsei.23.140

関連項目

外部リンク


流行性角結膜炎(EKC)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 07:40 UTC 版)

アデノウイルス」の記事における「流行性角結膜炎(EKC)」の解説

主として8、1937型によるとされてきたが、近年日本においては5354および56型によるEKC多発するようになった。これらはいずれもD種アデノウイルスである。B種の3、7型やE種の4型による場合もあるが、D種より軽症である。 目が充血し目やにが出るが、咽頭結膜熱のように高い熱はなく、のどの赤み強くはない。結膜炎経過後に点状表層角膜炎作ることが多く、幼小児では偽膜性結膜炎になることがある角膜混濁発症することがあり、数か月以上も症状が残ることがあるので眼科での治療が必要である。 流行性角結膜炎は学校保健安全法上の学校感染症一つで、伝染恐れがなくなるまで登校禁止となる。

※この「流行性角結膜炎(EKC)」の解説は、「アデノウイルス」の解説の一部です。
「流行性角結膜炎(EKC)」を含む「アデノウイルス」の記事については、「アデノウイルス」の概要を参照ください。

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