血清型 [Serovar]
血清型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/12/15 14:54 UTC 版)
血清型(英: serotype, serovar)とは細胞表面の抗原を基に分類した微生物、ウイルスあるいは細胞の型である。血清型の判定に用いられる因子は、毒性、グラム陰性菌中にあるリポ多糖、外毒素の存在(たとえば百日咳菌における百日咳毒素)、プラスミド、ファージ、(たとえばポリメラーゼ連鎖反応によって判定されるような)遺伝子プロファイル、その他同じ種に属する個体を識別するための特性[1][2]で、疫学分類を亜種レベルまで可能にするもの[1][3]など多数ある。同じ抗原をもつ血清型をまとめて血清群という。
血清型判定はときとして種や亜種の決定に不可欠な役割を担う。たとえばサルモネラ菌属では、Salmonella enterica 血清型 Typhimurium、S. enterica 血清型 Typhi、S. enterica 血清型 Dublin など、4400以上の血清型が決定されている[2]。コレラを発生させる細菌種であるコレラ菌は、細胞抗原に基づく139の血清型を持つ。そのうち 0:1 および 0:139 の2つのみがエンテロトキシンを発生させる病原体である。
血清型は1933年、アメリカの微生物学者レベッカ・ランスフィールドにより発見された[4]。
臓器移植における役割
免疫系は細胞の血清型によって細胞が「自己」か「非自己」かを判断することができる。ヒトの血清型は、主にヒトにおける主要組織適合遺伝子複合体であるヒト白血球型抗原(HLA)によって決定される。非自己であると決定された細胞は、通常免疫系によって外敵と認識され、血球凝集などの免疫反応が起こる。血清型は個体によって大きく異なるため、ヒト(もしくは動物)から取り出した細胞を無作為に別のヒトに移植すると、その細胞は自己の血清型に適合しないため非自己と判断される。このため、遺伝的に同一でないヒトどうしの移植はしばしばレシピエントの免疫反応に異常を引き起こし拒絶反応を生じる。一定の条件下では、レシピエントとドナーのHLA型を一致させることによりこの反応を低減させることができる[5]。
ヒト白血球型抗原
HLA | 種類 | ブロード | スプリット |
---|---|---|---|
遺伝子座 | 血清型 | 抗原 | 抗原 |
A | 25 | 4 | 15 |
B | 50 | 9 | |
C* | 12 | 1 | |
DR | 21 | 4 | |
DQ | 8 | 2 | |
DP* | |||
*DP 遺伝子座および多くの Cw 遺伝子座は血清型判定に SSP-PCR法を要する。 |
関連項目
- 生物型
- 形態型
出典
- ^ a b Baron EJ (1996). Classification. In: Baron's Medical icrobiology (Baron S et al., eds.) (4th ed.). Univ of Texas Medical Branch. (via NCBI Bookshelf) ISBN 0-9631172-1-1.
- ^ a b Ryan KJ; Ray CG (editors) (2004). Sherris Medical Microbiology (4th ed.). McGraw Hill. ISBN 0-8385-8529-9.
- ^ "serovar." The American Heritage Medical Dictionary. 2007. Houghton Mifflin Company 24 Oct. 2009 http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/serovar
- ^ Lancefield RC (1933). “A serological differentiation of human and other groups of hemolytic streptococci” (abstract). J Exp Med 57: 571. doi:10.1084/jem.57.4.571 .
- ^ Christoph Frohn, Lutz Fricke, Jan-Christoph Puchta, and Holger Kirchner. The effect of HLA-C matching on acute renal transplant rejection. Nephrol. Dial. Transplant. 16: 355-360. http://ndt.oxfordjournals.org/cgi/content/full/16/2/355
External links
血清型
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「オリエンティア・ツツガムシ」の記事における「血清型」の解説
多数の血清型が報告されており、Karp 型(全感染例のおよそ 50% )、Gilliam 型(25%)、Kato 型(10% 以下)、Kawasaki 型の他莫大な多様性が存在する。マレーシアの単一フィールドでは8つの血清型が報告されており、更に多くの型が報告され続けている。遺伝子的手法により、以前判明していたよりもさらに複雑であることが分かってきている(例えば、Gilliam 型は Gilliam 型と JG 型に細分化された)。ある血清型に感染しても別の血清型に対する免疫が生じない(交叉免疫が無い)。したがって同一の患者に複数回にわたり感染が繰り返されることがあり、ワクチン設計が複雑になる。
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