クリミア・コンゴ出血熱とは?

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クリミア・コンゴ出血熱

読み方:クリミアコンゴしゅっけつねつ
英語:Crimean-Congo hemorrhagic feverCCHF

クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによりもたらされるウィルス性出血熱ダニ媒介となり人畜感染する。ヒトからヒトへも感染する。

クリミア・コンゴ出血熱の潜伏期間2日から9日程度で、発症すると高熱身体各所痛みなどがあらわれる。重症化する死亡するおそれがある

クリミア・コンゴ出血熱は、エボラ出血熱ラッサ熱マールブルグ出血熱と共にウィルス性出血熱として定義されている。致死性エボラ出血熱ラッサ熱が高く、感染例はラッサ熱とクリミア・コンゴ出血熱が多い。

クリミア・コンゴ出血熱

クリミア・コンゴ出血熱(Crimean‐Congo Hemorrhagic FeverCCHF)は、クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる急性熱性疾患であり、エボラ出血熱マールブルグ出血熱ラッサ熱とともにウイルス性出血熱Viral Hemorrhagic FeverVHF)4 疾患のひとつである。この疾患ダニ(Hyalomma 属)が媒介する。上記4 疾患の中ではラッサ熱についで多くアフリカ大陸から東欧中近東中央アジア諸国中国西部にかけて広く分布している。アメリカ大陸には存在しない人獣共通感染症zoonosis)として最も重要な位置にある。臨床症状として発熱や、点状出血から大紫斑に至る多彩な出血像が特徴的である。近年ダニ体内での垂直伝播も知られ、今後疫学的にも最も注意していくべき感染症のひとつである。

疫 学

CCHF世界中に知られるようになったのは、中央アジアクリミア地方野外作業中の旧ソ連軍兵士の間で、194445年にかけて重篤出血を伴う急性熱性疾患発生した時のことである。この折に患者血液ダニからウイルス分離され(クリミア出血熱ウイルス)、そのウイルス1956年アフリカコンゴ分離されたウイルス(コンゴウイルス)と同一であることがCasals 博士により明らかにされた。そのためCCHF ウイルスの名前がつけられた(米国ではCongo‐ Crimean と称されている)。

クリミア・コンゴ出血熱

図1. クリミア・コンゴ出血熱の分布領域

ちなみにCasals 博士は、CCHF ウイルス以外に1969 年ラッサウイルス初め分離した人としても知られている。
現在患者発生が知られている地域は、アルバニアブルガリアユーゴスラビアなどの東欧中央アジアロシアパキスタンイラクイランサウジアラビアドバイオマーンなどの中近東中国新疆ウイグル自治区)、アフリカ全域南アフリカコンゴモーリタニアウガンダセネガルなど)である。このウイルスダニ哺乳類から分離されている地域は、ギリシャナイジェリア中央アフリカ共和国ケニアマダガスカルエチオピアブルキナファソなどの国々である。
CCHF ウイルスのヒトへの感染経路は、(1)感染マダニに咬まれたりダニをつぶしたりして感染ダニから感染する経路、(2)感染動物血液組織接触して感染する経路、(3)感染者や患者血液血液混入した排泄物汚物などに接触して感染する経路がある。つまり、流行地の羊飼いキャンパ-、農業従事者獣医師家畜などのダニと密接に接する人や、病院患者接す医療関係者、および介護にあたる家族などはCCHF ウイルス感染するhigh risk グループ考えられる院内感染はしばしば起こっている。パキスタンドバイなどの病院での院内感染は、いずれも手術に伴う(急性腹症として開腹されることが多い)血液との直接接触により発生し、医師看護師感染している。他の出血熱ウイルス同様、空気感染否定されている。
1985 年南アフリカ発生したCCHF31 例では、曝露された感染源潜伏期間それぞれダニ咬傷場合が3.2日、家畜などの血液との接触場合6日患者感染者との接触場合では5.6日であった。19/31例でウイルス分離され、IgM 抗体は5 例のみで検出された。

病原体
CCHFウイルスブニヤウイルス科(Bunyaviridae )のナイロウイルス属(genus Nairovirus )のメンバーである。粒子の径は90‐110nm の球形で、3分節(L‐RNAM‐RNAS‐RNAからなる1本鎖RNA をもつエンベロープウイルスである。L‐RNA がL 蛋白を、M‐RNA が膜蛋白を、S‐ RNA核蛋白発現する。自然界では野生家畜などの哺乳動物ウシヤギヒツジなど)が自然宿主で、マダニ(Hyalomma )が媒介する。ウイルスは経卵巣伝搬経路で、成虫ダニから幼ダニ伝搬されている。つまりダニダニ間で維持されている。また、動物ダニ間でも維持されている。現在27 種のマダニがこのウイルス媒介することが知られている。感染マダニ渡り鳥により遠隔地へ運ばれる可能性指摘されている(流行地の拡大)。

臨床症状
潜伏期間は2~9 日である。症状は表に示したように非特異的である。発生突発的で、発熱頭痛筋肉痛腰痛関節痛がみられ、重症化する種々の程度出血みられる点状出血から大紫斑まで)。死亡例では肝腎不全消化管出血著明である。致命率1540%で、感染者の発症率20%と推定されている。

クリミア・コンゴ出血熱

 クリミア・コンゴ出血熱

病原診断

正確な診断のために最も重要なことは、発症1 週間以内ウイルス分離することである。RT‐PCR血中からCCHF ウイルス遺伝子検出する、抗原検出ELISAウイルス抗原検出する、などで診断を行う。血清学的にはIgGELISA免疫蛍光法補体結合反応などで有意抗体上昇確認することで診断できる。迅速診断には、IgM捕捉ELISA などによりIgM 抗体検出するのも有用である。現在、国立感染症研究所ではこれらの診断は可能である。発症21日(3週)でCCHF ウイルス対すIgG 抗体陰性場合、この疾患否定できる。


治療予防
特異的治療法はない。治癒例では後遺症はみられない。鑑別診断全ての急性出血性感染症対象となる。
RNA ウイルスであるリバビリンCCHF ウイルスの増殖抑制する。実際にリバビリンCCHF患者投与され、効果認められたとする症例報告があるが、その効果実証されていない
ワクチンはない。感染予防には基本的バリアガウン手袋マスク等の装着)で十分である。

感染症法における取り扱い
CCHF一類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る疑似患者患者無症状病原体保有者のいずれであっても届け出は必要である。報告のための基準は、以下の通りとなっている。
診断した意志判断により、症状所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断がなされたもの
材料血液血清
 ・病原体検出
  例、ウイルスの分離など
 ・抗原検出
  例、ELISA 法など
 ・病原体遺伝子検出
  例、PCR 法など
 ・血清抗体検出
  例、IgGIFA補体結合反応による検出など
当該疾患を疑う症状所見はないが、病原体抗原検出されたもの
 (病原体抗原検出されず、遺伝子抗体のみが検出されたものを含まない
疑似症の診断
 臨床特徴合致し、以下の疾患鑑別診断がなされたもの
 (鑑別診断)他のウイルス性出血熱チフス赤痢マラリアデング熱黄熱

備 考
当該疾患を疑う症状所見はないが、病原体抗原検出されず、遺伝子抗体のみが検出されたものについては、法による報告は要さないが、確認のため保健所相談することが必要である。

学校保健法における取扱い
CCHF学校において予防すべき伝染病第1 種定められており、治癒するまで出席停止となる。

国立感染症研究所 ウイルス第一部 西條政幸)


クリミア・コンゴ出血熱

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/30 10:17 UTC 版)

クリミア・コンゴ出血熱(クリミア・コンゴしゅっけつねつ、Crimean-Congo hemorrhagic fever (CCHF))はブニヤウイルス科ナイロウイルス属に属するクリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる感染症である。




  1. ^ “クリミア・コンゴ出血熱とは”. 国立感染症研究所 (国立感染症研究所). http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/345-cchf-intro.html 2014年3月23日閲覧。 


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