症例報告
症例報告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/02 06:17 UTC 版)
医学における症例報告(しょうれいほうこく、case report)は、個々の患者についての詳細な報告で、症状、兆候、診断、治療、追跡調査の詳細をまとめたもの。診療ガイドラインへの反響や、治療の有効性、副作用、費用を伝えるための初期のきっかけとなり得、医学、科学、教育の目的をもって共有することができる。
役割
症例報告は、一般に事例証拠だとされる[2]。 統計的な抽出がないことを含んだ方法論的な制約から、症例報告は症例シリーズと共に、医学的証拠の階層の中では最も最下位となる[3]。しかし医学研究の中で症例報告には有用な役割がある[4]。特に新しい疾患の確立と治療の副作用についての認識を促すということである[5]。例えばサリドマイドの母親への投与とそこから生まれた乳児に奇形が起こっていることがあるという認識は症例報告が引き金となった[6]。医薬品安全性の役割を果たすことがある[5]。また、希少疾患の臨床的範囲や、一般的な病気の異例の症状を理解することを助ける[4]。病気の発生機序など研究上の仮説ができることもある[4]。医療実務においてはオーダメイド医療の参考となることもある[4]。
特に症例報告は早く出版できるため、大規模な研究を行う時間の余裕のない臨床医でも、迅速な短いコミュニケーションをとることができる[7]。
形式
症例報告の形式は概ね共通しており、表紙、要旨、序文、症例、考察、謝辞、利益相反、文献を記載することが多い[8]。ただし、実際に症例報告を記載する場合は、雑誌の投稿規定を確認する必要がある。症例の項目には、年齢、性別、主訴、現病歴、既往歴、家族歴、内服歴、入院時現症、検査所見、入院後経過、経過表を記載することが多い[9]。もちろん、症例の特徴によっては一部の項目を省くこともあるが、このような項目を網羅的に記載することで、客観的に記載することが可能となっている。
症例についての網羅的な記載は、対象が比較的少数ならば容易だが、数が増えるに従って冗長的となっていくため、症例対照研究やコホート研究など別の形式を用いることになる。
作成方法
決まった形式に従って記載する。LafLabo[10]などの専用のソフトウェアが手軽。内服歴や検査所見をLafLaboで一括処理も可能。
出典
- ^ “SUNY Downstate EBM Tutorial”. library.downstate.edu. 2004年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月3日閲覧。
- ^ Aronson JK (June 2003). “Anecdotes as evidence”. BMJ 326 (7403): 1346. doi:10.1136/bmj.326.7403.1346. PMC 1126236. PMID 12816800 .
- ^ Greenhalgh T (July 1997). “How to read a paper. Getting your bearings (deciding what the paper is about)”. BMJ 315 (7102): 243–6. doi:10.1136/bmj.315.7102.243. PMC 2127173. PMID 9253275 .
- ^ a b c d “The CARE guidelines: consensus-based clinical case reporting guideline development”. Headache 53 (10): 1541–7. (2013). doi:10.1111/head.12246. PMID 24266334.
- ^ a b “Anecdotes that provide definitive evidence”. BMJ 333 (7581): 1267–9. (December 2006). doi:10.1136/bmj.39036.666389.94. PMC 1702478. PMID 17170419 .
- ^ “Thalidomide and congenital abnormalities”. James Lind Library. 28 May 2014閲覧。
- ^ “Case report on trial: Do you, Doctor, swear to tell the truth, the whole truth and nothing but the truth?”. J Med Case Reports 5 (1): 179. (May 2011). doi:10.1186/1752-1947-5-179. PMC 3113995. PMID 21569508 .
- ^ “感染症学雑誌投稿規定”. 一般社団法人 日本感染症学会. 2023年5月24日閲覧。
- ^ 髙塚 真規子 (2023/05/20). “全身性エリテマトーデス治療中に致死的経過を辿った播種性クリプトコックス症の1例”. 感染症学雑誌 97 (3): 104-110 .
- ^ “LafLabo”. 2023年5月27日閲覧。
外部リンク
症例報告(case report)
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「臨床研究」の記事における「症例報告(case report)」の解説
個別の症例の治療を経験した後に、教科書的な経過をたどらなかったもの、あるいは教科書的な治療を超える工夫を行ったものについて、今後の参考に資するために詳細を報告する。ごく稀に見る疾患の場合には今後の治療に直接参考になる他、未知の疾患を最初に報告するきっかけとなる。
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症例報告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/03 15:00 UTC 版)
小林敏雄、横山健、坂本良雄、丸山清、藤森仁行「若年者の舌癌 : 15才男児の1例」『信州医学雑誌』第14巻第1号、長野県医学会、1965年5月、 100-108頁、 ISSN 0037-3826、 NAID 120002010203。 館花明彦、宇井義典、酒井滋、山川達郎、水口國雄、福間英祐「舌癌が乳腺転移をきたした1例」『日本臨床外科学会雑誌』第63巻第5号、日本臨床外科学会、2002年5月、 1104-1108頁、 doi:10.3919/jjsa.63.1104、 ISSN 1345-2843、 NAID 10008912846。 中島逸男、谷垣内由之、吉田博一、中村昭彦、馬場廣太郎「11歳小児の舌扁平上皮癌の1例」『口腔・咽頭科』第13巻第2号、日本口腔・咽頭科学会、2001年2月、 195-201頁、 ISSN 0917-5105、 NAID 10008972667。
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