ハザード比
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/19 07:29 UTC 版)
ハザード比(はざーどひ、英: hazard ratio、HR)は生存分析では、2つのレベルの説明変数によって記述された条件に対応するハザード率の比である。たとえば、医薬品の研究においては、治療群の単位時間当たりの死亡率は、対照群の死亡率の2倍になる可能性がある。このときハザード比は2となり、治療による死亡のハザード(危険)が高いことを示す。ハザード比が相対リスクやオッズ比と異なるのは、相対リスクやオッズ比が定義されたエンドポイント(疾患の発生を示す評価指標)を用いた研究全体の累積値であるのに対し、ハザード比は研究期間またはその一部分における瞬間的なリスクを表すことである。ハザード比は、選択されたエンドポイントに関する選択バイアスの影響を受けにくく、エンドポイント以前に発生するリスク(危険度)を示すことができる。
定義と導出
ハザード比とその信頼区間を取得するために回帰モデルが用いられる[1]。
瞬間ハザード率(instantaneous hazard rate)は、時間間隔を0に近づけたとき、単位時間当たりの事象数をリスクのある数で割った値の極限である。
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脳転移量に応じた全生存期間を示すカプラン=マイヤー曲線。Elaimyらによる(2011)[4] ハザード比を最も単純な形すると、ある事象が治療群で発生する確率を、対照群で発生する確率で割ったもの、あるいはその逆と解釈することができる。これらのエンドポイントは、通常、カプラン=マイヤー生存曲線を用いて分析される(図を参照)。これらの曲線は、エンドポイントに到達していない各所属群の割合に関連している。エンドポイントは、死亡、疾患の寛解、疾病の発症など、共変量(独立変数)に関連する任意の従属変数かもしれない。この曲線は、各時点でエンドポイントが発生する場合のオッズ(ハザード)を表している。ハザード比とは、2つの所属群の間における瞬間ハザードの関係を単純化し、カプラン=マイヤープロット間の距離の大きさを1つの数値で表したものである[5]。
ハザード比は、研究の時間単位を反映してはいない。ハザードベースの測定値と時間ベースの測定値の違いは、レースの「掛け率(オッズ)」と「勝者と敗者の距離」の違いに似ている[1]。ある研究で1つの期間ごとに1つのハザード比を報告する場合、所属群間の差は比例していると想定される。この比例の仮定が満たされていないとハザード比は意味をなさない[5][要ページ番号]。
比例ハザードの仮定が成り立つ場合、ハザード比が1であれば、2つの所属群のハザード率が同等であることを意味し、ハザード比が1以外であれば、所属群間のハザード率が異なることを意味する。研究者は、いくつかの検定統計量に関連する確率を報告することで、このサンプルの差が偶然によるものである確率を示す[6]。たとえば、Coxモデルからの
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ハザード比
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/08/31 00:09 UTC 版)
HR:ハザード比 h(t):ハザード関数(暴露群のハザード) h0(t):基準ハザード関数(非暴露群のハザード) ハザード関数は、生存分析において「追跡時間t後の瞬間死亡率」である。「追跡時間t後の生存者が(t+⊿)後に死亡する条件付き確率」が「追跡時間t後から(t+⊿)後における単位時間の死亡率(平均死亡率)」であり、それの「⊿t→0への極限」をとった値が「追跡時間t後の瞬間死亡率」となる。生存分析は、イベントが「生存/死亡」のような「あり/なし」の2値変数であれば、疾病の発生率などにも応用でき、イベント発生までの期間を解析してハザード比を求める。 指数関数近似では、生存関数S(t)は時定数mの生存期間tを変数とした減少性の指数関数で表される。 時定数mは、生存関数S(t)の対数と-(1/t)の積で表される。指数関数近似ではハザードは一定と仮定されており、時定数mがハザードとなる。 exp(bn):各パラメータの調整ハザード比 コックス比例ハザードモデルでは、暴露群と非暴露群において、時々刻々と死亡や罹患のリスク(ハザード)が変化する場合を対象とするが、暴露群と非暴露群のハザードの比がどの時点でも一定と仮定(比例ハザード性を前提)して解析する。ハザード比の対数が、複数の説明変数の線形和で表され、各説明変数の係数が、その要因の調整ハザード比の対数となる。
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