ペニシリン耐性肺炎球菌感染症とは?

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ペニシリン耐性肺炎球菌感染症

ペニシリン耐性肺炎球菌PRSP:penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae)は、肺炎球菌化膿連鎖球菌などグラム陽性球菌に有効な抗生物質であるペニシリン耐性獲得した肺炎球菌である。PRSP病原性は、肺炎球菌同等であり健常者口腔などに定着していても、通常無症状であるが、咽頭炎扁桃炎などの炎症発生した場合には、炎症部位増殖感染症状を呈することが多い。また、乳幼児化膿性髄膜炎小児中耳炎肺炎高齢者肺炎などの原因となる。ペニシリン対す耐性度によりペニシリン感受性(PISP)とペニシリン耐性菌PRSP)に区別される。

疫 学
1967年頃、オーストラリアで、無γ-グロブリン血症患者からペニシリンMIC値が0.6μg/mlの肺炎球菌報告されていたが、1974年米国内で化膿性髄膜炎患者から、MIC値が0.25μg/mlの肺炎球菌分離された。1977年には、現在のPRSP同程度ペニシリン耐性MIC, 4μg/ml)を獲得した肺炎球菌南アフリカダーバン分離された。1970年代後半より、この種のペニシリンに低感受性耐性を示す肺炎球菌スペインフランスドイツなどで徐々に問題となり始め1980年代後半には南米諸国アジア各国からも分離されるようになったPRSP血清型としては、6, 9, 14, 19, 23型が世界的主流となっている。1980年代後半から欧米のみならず発展途上国などで増加し、現在、臨床分離される肺炎球菌3050%程度がPISP+PRSP判定されるのが一般的となっている。我が国でも、現時点で、PISP+PRSP分離率が50%前後を示す医療施設多くなっている。喀痰咽頭鼻腔耳漏などからの分離例が大半占め無症状いわゆる定着例」と考えられる事例も多い。

ペニシリン耐性肺炎球菌感染症

ペニシリン耐性肺炎球菌感染症

【図1、2. 臨床病理 111:53, 2000. (臨床病理レビュー特集111号 臨床検査 Year Book 2000)より】

病原体
肺炎球菌は、健常者であっても口腔鼻腔などに、多少の差は見られるものの必ず存在する弱毒性の常在細菌である。PRSPは、ペニシリン耐性獲得してはいるものの、病原性増殖能力などの生物学的な特徴ペニシリン感受性肺炎球菌何ら変わりはない。ペニシリン対す耐性は、細菌外膜層を構成するペプチドグリカン生合成関与するペニシリン結合蛋白(PBP1A, PBP2B)の変異やPBP2Xと命名された変種PBP獲得による。耐性度の高い菌株では、複数ペニシリン結合蛋白変異集積性が認められ、MIC値が1μg/ml以上のPRSPでは、ペニシリン標的である3種類のPBP(PBP1A, PBP2B, PBP2X)の全て何らかの変異同時に見られる事が多い。特に、これらのPRSPは、経口セフェムであるセファクロルCCL)に高度耐性MIC,≧32μg/ml)を示すものが多い。

多剤耐性肺炎球菌
1970年代後半には、ハンガリーで、ペニシリンエリスロマイシンテトラサイクリン同時に耐性獲得した肺炎球菌分離されている。今日臨床分離されるPRSPは、既に、ミノサイクリンに対しては高い耐性率を獲得しており、しかも、それらのいくらかはermAM遺伝子などの獲得によるエリスロマイシンクラリスロマイシンなどのマクロライドにも耐性獲得している。さらに、DNAジャイレースなどの変異によるニューキノロン耐性菌少数ではあるが分離されている。このように肺炎球菌ではペニシリン経口セフェムのみならずテトラサイクリンマクロライドニューキノロンを含む広範囲抗菌薬に対し耐性獲得した「多剤耐性肺炎球菌」の増加が、地球規模問題となりはじめている。

臨床症状
小児中耳炎咽頭炎扁桃炎などからしばしば分離される。特に0~6才児や60才以上の高齢者などで感染防御能力減弱した患者敗血症髄膜炎肺炎などを引き起こすが、それらの多くは、ウイルス性などの上気道炎に続発して発生する事が多く青壮年健常者肺炎などの感染症引き起こす事は稀である。

ペニシリン耐性肺炎球菌感染症

【表3. 臨床病理 111:54, 2000. (臨床病理レビュー特集111号 臨床検査 Year Book 2000)より】

病原診断
薬剤感受性試験:各医療施設において日常的実施されている同定試験薬剤感受性試験法により、肺炎球菌であって微量液体希釈法によりペニシリンG対す感受性試験結果が、MIC値で≧2μg/mlと判定されたPRSP、0.12~1μg/mlと判定された場合は、PISPとする(NCCLS標準法)。
disk拡散法を用いた場合には、PCG阻止円直径が≧20mmを感受性(PSSP)とするが、その他の場合には、MIC値を測定判定することが推奨されている。

治療予防
PRSP口腔鼻腔から分離されたのみで、感染症症状を呈さない、いわゆる定着例」と判断される症例に対しては、除菌目的抗菌薬投与隔離は行わない。PRSPによる中耳炎副鼻腔炎場合は、外科治療抗菌薬治療併用されるが、敗血症髄膜炎肺炎、術創感染症などの重症感染症患者治療には、感受性期待できる抗菌薬投与必須である。カルバペネムペニシリン大量投与療法一般的であるが、重症例ではカルバペネムとグリコペプタイドなどの併用療法などが試みられている。成人にはニューキノロン投与がL効な場合も多い。
予防手段としては、通常の院内感染対策方法により、感染者または排菌者から、免疫抑制状態の高齢者などハイリスク患者への伝播防止する対策がとられる。また、感染発病予防法として、肺炎球菌多価ワクチンニューモバックス)が認可されている。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は5類感染症定点把握疾患定められており、全国500カ所の基幹定点より毎月報告がなされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師判断により、症状所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断がなされたもの。
 ・病原体検出
  (1)血液腹水胸水髄液など、通常無菌的であるべき臨床検体から分離された場合敗血症心内膜炎腹膜炎胸膜炎髄膜炎骨髄炎など)で、以下の検査室での判断基準満たすもの
  (2)喀痰、膿、尿、便など無菌的ではない検体からの分離では、感染症起因判定された場合肺炎などの呼吸器感染症肝・胆道系感染症創傷感染症腎盂腎炎複雑性尿路感染症扁桃炎細菌中耳炎副鼻腔炎皮膚軟部組織感染症など)で、以下の検査室での判断基準満たすもの

検査室での判断基準
 ペニシリンMIC, ≧0.125μg/ml
 または、オキサシリン感受性ディスクKB)の阻止円直径が19mm以下


 (著者注:阻止円直径が19mm以下の場合は、PISP, PRSP可能性が高いが、確定するには、MIC値の測定を行うことが望ましい。)

国立感染症研究所細菌製剤部 荒川宜親)

  


肺炎レンサ球菌

(ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/22 02:59 UTC 版)

肺炎レンサ球菌(はいえんレンサきゅうきん、Streptococcus pneumoniae)とは、肺炎などの呼吸器感染症や全身性感染症を引き起こす細菌。日本の臨床医療現場では肺炎球菌と呼ばれることが多い。また、かつては肺炎双球菌 (Diplococcus pneumoniae) と呼ばれていた。病原菌であるとともに、遺伝学の発展に大きな影響を与えた実験材料としてもよく知られる。




  1. ^ Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP), CDC. “Prevention of Pneumococcal Disease”. 2010年2月24日閲覧。
  2. ^ 万有製薬. “ニューモバックスNP FAQ”. 2010年2月24日閲覧。
  3. ^ 厚生労働省. “肺炎球菌感染症(高齢者)”. 2014年11月13日閲覧。
  4. ^ 国立感染症研究所. “高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期接種について”. 2014年11月13日閲覧。
  5. ^ 厚生労働省. “肺炎球菌感染症(高齢者)”. 2014年12月11日閲覧。
  6. ^ ワイス株式会社. “子どもと肺炎球菌.jp”. 2010年2月24日閲覧。
  7. ^ 厚生労働省. “小児用肺炎球菌ワクチンの切替えに関するQ&A”. 2014年12月11日閲覧。
  8. ^ ファイザー. “「プレベナー13」高齢者へ適応拡大”. 2014年11月13日閲覧。
  9. ^ Jackson LA, et al. Vaccine. 2013;31(35):3577-3584.


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