ジアルジア症とは? わかりやすく解説

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ジアルジア‐しょう〔‐シヤウ〕【ジアルジア症】

読み方:じあるじあしょう

giardiasis》⇒ランブル鞭毛(べんもう)


ジアルジア症


Giardia lamblia の感染によって引き起こされる下痢性疾患である。本症の感染経路いわゆる糞口感染で、ヒトヒト接触食品介した小規模集団感染と、飲料水介した大規模な集団感染知られている。Giardia種名については混乱があるが、わが国では慣例的にG.lamblia用いており、当面形態的G. lambliaみなされる原虫に対して一律に病原性があるものとして扱うこととしている。

疫 学
ジアルジア症の感染者数世界中で数億人に達すとされるG. lamblia地球規模でみればごくありふれた腸管原虫である世界中のほとんどの国で有病地を抱えており、特に熱帯・亜熱帯多く有病率20%超える国も少なくないわが国では戦後動乱期(19491956年)に感染率が3~6%であったとされている。多く感染症衛生環境改善とともに姿を消していったことは周知のことであるが、ジアルジア感染率次第低下し今日都市部での検出率0.5%を下回る程度となっている。
感染リスク要因海外、特に発展途上国への旅行男性同性愛とされる海外旅行での感染症例では赤痢菌下痢原性大腸菌赤痢アメーバなどとの混合感染例が少なくない一方水系感染による集団発生事例先進諸国問題となっている。これには都市化など社会形態の変化伴って水の再利用進んだことが大きく影響している。なお、感染症法施行から2003年12月までに届けられたジアルジア症例数は、年間100前後である。このうち6割以上が海外での感染推定されまた、集団感染事例知られていない

病原体

 病原体G. lamblia で、ランブル鞭毛虫とも呼ばれる。その生活史栄養型嚢子よりなる。栄養型体は洋ナシ型で、長径1015μm短径6~10μm程度大きさである(図1)。腹部前半部は、腸の粘膜などへ吸着するための吸着円盤発達し ている。その他、常時2であること、4対の鞭毛を持つなど、栄養型特徴的な形態有している。経口的に摂取され嚢子は胃を通過後、速やかに脱嚢して栄養型となり、十二指腸から小腸上部付近に定着する寄生胆道から胆嚢に及ぶこともある。 嚢子長径8~12μm短径5~8μm長楕円形で、4となり、他に軸子、鞭毛などが観察される(図2)。 嚢子糞便中に排泄され時点成熟となっており、感染性有している。通常ジアルジア嚢子外界環境によく耐え、報告によって異なるが、水中で3カ月上生存し感染性持続したという記録がある。ヒトでの実験では、1025個の嚢子摂取により感染成立している。

臨床症状徴候
現在、わが国みられるジアルジア感染者多く発展途上国からの帰国者(来日者)であり、特にインド亜大陸からの帰国者での下痢症例で検出率が高い。さらに、男性同性愛者間にも本原虫の感染みられることがあり、しばしばHIV感染者原虫証明される。ジアルジア症は過去数十年間わたってわが国では忘れ去られ感染症1つであったが、免疫不全者の感染水系感染による集団発生事例などから、重要な再興感染症1つとしての認識が必要である。
ジアルジア症の主な臨床症状としては下痢衰弱感、体重減少腹痛悪心脂肪便などがあげられる。有症症例では下痢必発であり、下痢は非血性で水様または泥状便である。排便回数1日数回20回以上と様々であり、腹痛を伴う例と伴わない例が相半ばし発熱多く場合みられない感受性普遍的であるが、成人よりも小児の方が高い感受性を示す。なお、分泌IgA低下症や低γ-グロブリン血症をもつ患者発症した場合には臨床症状激しく難治性あり、か再発性である。感染者多く無症状で、便中に持続的に嚢子排出している嚢子保有者cyst carrier)であるが、感染源としてはむしろ重要である。


病原診断
診断は、患者糞便下痢便)から顕微鏡下に本原虫証明することによる。さらに、原因不明下痢症脂肪便、あるいはその他の腹部症状精査する一環として十二指腸液や胆汁採取し原虫の検査が行われることもある。糞便中に見られる原虫の形態は、水様便では栄養型が、泥状便有形便では?子を検出することが多い。検査方法通常の検便か、遠心沈殿法で得られ沈渣をヨード・ヨードカリ染色することで比較容易に検出できる海外では診断用の蛍光抗体試薬市販されている。なお、栄養体検出する場合は、希釈液生理食塩水用いる。


予防・治療
ジアルジア治療には、メトロニダゾールチニダゾールなどニトロイミダゾール系の薬剤用いられる。これらはわが国では抗トリコモナスとして薬価収載されており、本症に対して健康保険の適用外である。
ジアルジア症は典型的な糞口感染で、嚢子汚染された食品飲料水を介して伝播する嚢子感染力強いため、排泄に対して排便の手洗い指導が重要である。一般に嚢子排出者は無症状下痢症状があっても軽微であり、身辺の清潔が保てるため、隔離の必要はない。また、嚢子水中数カ月程度感染力衰えず小型であるため、浄水場における通常の浄水処理で完全に除去することは困難とされる塩素消毒にも抵抗性を示す。したがってHIV感染者はじめとする免疫機能低下者は、日常生活の上生もの煮沸消毒されていない水道水摂取などには注意するべきである。

感染症法における取り扱い
ジアルジア症は5類感染症全数把握疾患定められており、診断した医師7日以内最寄り保健所届け出る報告のための基準以下の通りである。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断なされたもの。
病原体検出
 例 糞便または十二指腸液などから原虫の証明(鏡検)など





ジアルジア症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/26 23:28 UTC 版)

ジアルジア症
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
感染症内科学, 消化器学
ICD-10 A07.1
ICD-9-CM 007.1
DiseasesDB 5213
MedlinePlus 000288
eMedicine emerg/215
Patient UK ジアルジア症
MeSH D005873
GeneReviews
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ジアルジア症(ジアルジアしょう、giardiasis)とは鞭毛虫であるランブル鞭毛虫 (Giardia lamblia) を原因とする寄生虫病である。食品や水に含まれるシストを摂取することにより感染する。

人獣共通感染症であり、ランブル鞭毛虫はヒトを含む多くの哺乳類消化管で増殖する[1]。ヒトでの一般的な症状は下痢性胃腸炎である。日本では感染症法施行規則により五類感染症(全数把握疾患)に指定されており、診断した医師には届け出が義務づけられている。

本稿では、主にヒトの感染症について記述する。

特徴

ジアルジア症は下痢と腹痛を特徴とする胃腸炎である。鼓腸、膨満、疲労、吐き気、嘔吐、体重減少などを伴うが、患者によっては吐き気や嘔吐が主症状となることもある。病原体を摂取したあと、7日から10日程度の潜伏期間を経て症状が出る。これは2–4週間でおさまるが、乳糖不耐症の場合には6ヶ月続くこともある。程度は様々で、無症状キャリアも多い。自然治癒するが、免疫不全の場合には慢性化し胆嚢・胆管炎を併発することが多い。

疫学

地域分布

全世界的にはありふれた感染症で、世界中のほとんどの国で有病地を抱えている。特に熱帯・亜熱帯地域に感染者が多く、感染率は1-2割に達する。有病率が20%を超える国もあり、約2億人が感染している。

特にインド周辺を旅行した者の感染が増えており、旅行者下痢症 (traveler's diarrhea) の1つとして注目されている。現在の日本人の感染者は、海外旅行者に多く赤痢菌、下痢原性大腸菌やアメーバ赤痢などとの混合感染例が多いとされている。南アジア東南アジアなどを旅するバックパッカーの間では、ゲップが卵臭くなることから卵ゲップ病として知られる。

一方、欧米の都市化された地域でも、水道管に汚染水が混入したことによる集団感染が起きている。

日本では第二次世界大戦後の動乱期(1956年頃まで)に感染率が3〜6%であった。日本でも戦後すぐには感染率が数%だったとされている。現在、感染事例は年間100例前後でそのほとんどは輸入感染例であり、感染率は1%未満と考えられている。ただし飼育犬の1割以上から検出された例があり、また厚生省(当時)の調査で水源水域282地点中24地点で検出されたことがあるため、潜在的なリスクは現在でも無視できない。

感染経路

感染様式は糞口経路で、主な感染経路は感染患者や汚染された飲食物である。ヒト-ヒトの接触や食品を介した小規模な集団感染と、飲料水を介した大規模な集団感染が知られている。浄水場における通常の浄水処理で完全に除去することは困難で、塩素消毒にも抵抗性を示す。

ランブル鞭毛虫は食品や水に含まれるシストを摂取することにより感染する。感染源としては生水、生野菜、生ジュースなどが主であり、一見きれいにみえる渓流の水などが危険である。キャンプをしたり、川やビーバーダムのようなところで泳いだりすると感染することがあり、それゆえジアルジア症には「ビーバー熱」という俗称がある。また人間やペット[2]、動物の糞便から感染することもある。キャンプ場、デイケアセンターなどで感染するほか、飲料水由来の蔓延がおきたり、感染した家族からうつることもある。生食や、井戸や水道水、食器などが汚染されたことが原因になることもある。感染しても症状が出るとは限らないが、無症候性キャリアとなる場合がある。また性的接触による感染も知られている。

予防

シストは湿った条件下では強い耐久性があり、水中で数ヶ月生存し、−20℃でも10時間まで生存できる。塩素処理にもある程度の抵抗性があり、クロラミン処理ではほとんど死なない。一方で熱処理には弱く、60℃数分の加熱で死ぬ。したがって野外での飲料水浄化法としては濾過煮沸が推奨される。汲み置いて上澄みをすくうだけではランブル鞭毛虫を充分防ぐことは出来ない。

病原体

治療と診断

症状

感染者の多くは無症状で、便中に持続的に嚢子(ジアルジア症の病原体)を排出しており、感染源として重要視される。

主な臨床症状は非血性で水様 または泥状便の下痢、体重減少、腹痛悪心、脂肪便、衰弱感などで、発熱は少ない。下痢は有症症例では出現確率が多い。排便回数は患者により様々。

病原診断

患者の糞便から原虫を検出。

治療

ジアルジアの治療には、感受性のある抗原虫薬が使用がされる。

ヒト以外への感染

ネコは簡単に治癒し、仔ヒツジでは体重が減るだけだが、仔ウシの場合は致死的なこともあり、抗生物質や電解質を与えても効かないことも多い。一方、無徴候でキャリアとなる仔ウシもいる。チンチラでは致死的なので安全な水を与えるように特別の警戒が必要である。

イヌの場合は深刻で、犬舎にいる1歳未満のイヌの3割ほどが感染している。犬舎での処置は、感染した犬を特定して隔離するか、あるいは単に全部の犬を治療し、その後犬舎全体を消毒する。シストは最低1ヶ月は生存しているため、その間は運動のための草場は汚染されていると考えるべきである。予防のためには最低20日間隔離しておき、あまり多くのシストがないように給水設備を管理することが挙げられる。

過去の痕跡

2500年以上前のエルサレムの遺跡調査を通じて、過去の人々がジアルジア症に感染していた痕跡が見出されている[3]

出典

参考文献

関連項目

外部リンク


ジアルジア症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:21 UTC 版)

ランブル鞭毛虫」の記事における「ジアルジア症」の解説

詳細は「ジアルジア症」を参照 ランブル鞭毛虫は、ヒトなどのジアルジア症の病原体である。ジアルジア症はひどい下痢腹部痙攣特徴とする胃腸炎である。世界中分布するありふれた病気だが、とくに熱帯・亜熱帯地域多く感染率1-2割に達する。

※この「ジアルジア症」の解説は、「ランブル鞭毛虫」の解説の一部です。
「ジアルジア症」を含む「ランブル鞭毛虫」の記事については、「ランブル鞭毛虫」の概要を参照ください。

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