クリプトスポリジウム
クリプトスポリジウム[Cryptosporidium parvum]
このC. parvumは、腸管粘膜の上皮細胞の微絨毛内に寄生して、無性生殖と有性生殖を激しく繰り返しながら増殖し、オーシストと呼ばれる直径約5μmの楕円形の時期を持つ。人獣共通伝染病としての特徴があり、保有している動物の糞便と共に排泄された成熟したオーシストが食品や飲料水、手指などを介して経口的に摂取される。
オーシストは手指や器具の消毒に用いる濃度の消毒薬に対しても抵抗性を示すので、院内感染の原因菌としても重要である。オーシストの大きさが約5μmと小さい為、通常の上水道用の浄水処理で凝集・沈降・濾過を行っても完全に除去することは困難で、浄水処理に用いる塩素消毒濃度では全く死滅しない。一旦、C. parvum の汚染が起こると、上水道を介しての大規模な集団感染になる。日本でも、1996年6月に埼玉県内で発生した町営水道の汚染例では、対象地区の住民の約65%に当たる約9千人が下痢を発症し、24人が入院した。
1リットルの水道水に数個程度が含まれていても感染者が発生した事から考えると、この原虫の感染力は強いのでしよう。一般に原虫は培養することが難しいので、培養試験はできません。患者の糞便に顕微鏡で見ると4本のバナナのような構造物(オオシスト)が検出されます。水道水の検査では、1リットルの水道水をフィルターで濾過をして、顕微鏡でオオシストを見付けるか、またはフィルター上に存在する原虫を免疫抗体を用いて検出します。クリプトスポリジュウムと似た原虫にイソスポーラがあり、下痢を起こします。
クリプトスポリジウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 23:04 UTC 版)
クリプトスポリジウムは、アピコンプレックス門に属する原虫であり、ヒトを含む脊椎動物の消化管などに寄生する。種と宿主の組み合わせ次第ではクリプトスポリジウム症を引き起こし、致死的になる場合もある。クリプトスポリジウム・パルバム(遺伝子型1または2)は病原性原虫としては唯一、感染症法により特定病原体等(四種病原体)に指定されている。分類学上はクリプトスポリジウム属(Cryptosporidium Tyzzer, 1907)とし、この1属をもってクリプトスポリジウム科 Cryptosporidiidae Leger, 1911 を構成する。学名は、ギリシア語でkryptos隠れた + ラテン語のsporidium担子胞子(sporaで種)に由来する。
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- ^ “Ultraviolet Disinfection and Treatment”. AWWARF.org. 2007年5月6日閲覧。
- 1 クリプトスポリジウムとは
- 2 クリプトスポリジウムの概要
- 3 歴史
- 4 対策
- 5 その他
クリプトスポリジウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 17:26 UTC 版)
クリプトスポリジウムは伝統的にコクシジウム類だと考えられてきたが、分子系統解析の結果では典型的なコクシジウム類からは外れ、グレガリナ類に近縁な可能性が示されている。クリプトスポリジウムはアピコンプレックス門の中では例外的に色素体(アピコプラスト)がないことが示されているが、最近になって真グレガリナ目に属する Gregarina niphandrodes にも色素体がないという研究が報告された。
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クリプトスポリジウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 19:15 UTC 版)
1993年に米国ミルウォーキーで原虫のクリプトスポリジウムによる上水道の汚染があり、40万人の感染者と400名の死者を出した。また、日本においても1996年に埼玉県越生町で8812名の感染があった。この5μm程の大きさの微生物は上水道の通常の消毒に用いられる程度の塩素濃度では死滅しないため、日本を含めた多くの国の上水道ではこの原虫の混入がないように随時注意が払われている。コストを掛けて濾過フィルターを設置している水道事業者もある。
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