エッチ‐アイ‐ブイ【HIV】
ヒト免疫不全ウイルス
ヒト後天的免疫不全症(AIDS)の原因ウイルス。CD4タンパクを発現しているT細胞に感染するレトロウイルスである。
生物の名前総称など: | バクテリオファージ バクテリオファージλ ヒトデ ヒト免疫不全ウイルス ブラックバス ブルーギル プラス鎖RNAウイルス |
HIV(ヒト免疫不全ウイルス) ( human immunodeficiency virus )
HIV-1
【概要】 世界の大半をHIVの大きなグループ。西アフリカやヨーロッパに一部あるのはもう一つの亜種でHIV-2型である。HIV-1はさらに3つのグループに別れ、そのうちのグループMは、さらにサブタイプが細かく別れる。
【詳しく】 遺伝子の配列をできるだけ大きな範囲で読み込んだデータをもとに、「配列で良く似たものは進化上類縁関係にある」という近接結合法Neighbor-Joining法(NJ法)で系統樹をつくる。このような系統分類であるが、感染の地域や感染経路の推測にも利用される。
HIV-2
【概要】 HIV-2型は西アフリカ地域と、交流が深いヨーロッパで発見される第2のエイズウイルス。HIV-2の遺伝子配列は猿のエイズウイルスであるSIVに近い。アメリカでは供血者で数十人がみつかったが、いずれも西アフリカに関連がある人たちであった。
【詳しく】 日本では1993年初めに東アジアの男性旅行者とアフリカからの留学生から検出された。現在実施されている通常のスクリーニング検査ではHIV-1とHIV-2の両方の抗体を検出することができる。日本人の感染者はまだ確認されていない。
HIV
【概要】 ヒト免疫不全ウイルス。エイチ・アイ・ヴイと読む。エイズウイルスは一般語あるいはマスコミ用語。エイズなど一連のHIV感染症の原因ウイルス。タイプ、グループ、サブタイプなどに細分類される。直径は100ナノメーター程度。外膜はヒトの細胞膜である。この膜にHIV特有のgp120という木が生えており、gp41は根っこにあたる。外膜の裏をp24という蛋白が袋を作り、その中にHIVの遺伝子RNAが2本と特有の酵素が入っている。
【詳しく】 HIVの増殖サイクルはつぎの通り。HIVの遺伝子はRNAでHIVが持ち込んだ逆転写酵素の力で人間の遺伝子の形であるDNAにコピイされる。さらにインテグラーゼという酵素の力で人間の細胞の核内にある遺伝子に組み込まれる。これをプロウイルスDNAという。プロウイルスDNAの情報が転写されると核内でメッセンジャーRNAとゲノムRNAが作られ、細胞質に移って設計図に従った酵素や膜などの構成分が作られ、蛋白分解酵素で成熟蛋白になり、部品が組み合わせられ、細胞から出てくる。
ヒト免疫不全ウイルス
HIV/AIDS
1981年に米国で、免疫不全症状がありカリニ肺炎を発症していた男性同性愛者の患者が現われ、それまでに記載されたことのない新規の疾患らしいということで、米国のCDCはこれを後天性免疫不全症候群(Acquired ImmunoDeficiency Syndrome :AIDS)と名づけた。1983年には、この疾患の原因ウイルスが患者のリンパ節培養から発見され、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus: HIV)と名づけられた。このウイルスはRNAでできているレトロウイルスのレンチウイルス亜科に属し、免疫機能をになうTリンパ球やマクロファージの細胞膜上のCD4分子をレセプターとしてそこから細胞内に侵入し、自らの逆転写酵素を用いて二本鎖DNAとなり、宿主ゲノムに組み込まれる。
HIVの感染経路は血液・体液感染、性感染、母子感染の3つで、感染効力は血液感染が強いが世界で最も比重の高いのは性感染である。いったんHIVが感染すると10年前後はほとんど無症状で経過し、血液検査をしない限り気がつかれない。この無症状期の間、CD4+細胞の破壊と増殖のせめぎあいが続いているが、通常1ulの血液中に1000個前後あるCD4+リンパ球が200以下くらいになってくると、ついに免疫不全症状を呈するようになる。すなわち通常の免疫能があれば感染しても症状を出さない弱い病原体による日和見感染が頻繁となる。このような症状を呈するようになって以降をAIDS(エイズ)という。このためHIV感染があるが無症状の状態と有症状のエイズを総称してHIV/AIDSと呼んでいる。(若杉なおみ)
参考資料:Atlas of AIDS Science Press Tokyo Japan 2002
ヒト免疫不全ウイルス [Human immunodeficiency virus]
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