米 米の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/19 09:39 UTC 版)

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日本の農業百科事典のイラスト(1804)
短粒種の玄米
成熟期のイネ長粒種
形態 部位名
A (1) 籾殻
B 玄米 (2)
C 胚芽米 (3) 残留糠
D 白米 (4) 胚芽
E 無洗米 (5) 胚乳

イネの系統と米

国際稲研究所 (IRRI) による米の種子の収集

イネ科植物にはイネのほかにも、コムギオオムギトウモロコシなど、人間にとって重要な食用作物が含まれる。イネはトウモロコシ、コムギとともに世界三大穀物と呼ばれている[1]

イネ科イネ属の植物には22種が知られている[1]。このうち野生イネが20種で栽培イネは2種のみである[1]。栽培イネは大きくアジアイネ(アジア種、サティバ種、Oryza sativa L.)とアフリカイネ(アフリカ種、グラベリマ種、Oryza glaberrima Steud.)に分けられる[1][2][3]。また、両者の種間雑種から育成されたネリカがある。

アジアイネと系統

イネは狭義にはアジアイネ (Oryza sativa)を指す[2]。アジアイネにはジャポニカ種とインディカ種の2つの系統があり[2]、これらの両者の交雑によって生じた中間的な品種群が数多く存在する[2]。アジアイネ(アジア種、サティバ種)の米は、ジャポニカ種(日本型米、ジャポニカ・タイプ)、インディカ種(インド型米、インディカ・タイプ)、そして、その中間のジャバニカ種(ジャワ型米、ジャバニカ・タイプ)に分類されている[4][3]。それぞれの米には次のような特徴がある。

ジャポニカ種(日本型、短粒種、短粒米)
粒形は円粒で加熱時の粘弾性(粘り)が大きい[1][5]日本での生産は、ほぼ全量がジャポニカ種である。主な調理法は、炊くか蒸す。他種に比べ格段の耐寒冷特性を示し、日本の他では朝鮮半島中国東北部で生産されている。
インディカ種(インド型、長粒種、長粒米)
粒形は長粒で加熱時の粘弾性(粘り)は小さい[5]。世界的にはジャポニカ種よりもインディカ種の生産量が多い。主な調理法は煮る(湯取)。
日本のジャポニカ種は中国江南から伝搬したと言う説が有力であるが、江南地域自体は、10世紀ころにインドシナ半島を経由して流入したインディカ種の一種である占城稲チャンパ米)が、旱害に強く、早稲種で二期作が容易などの理由から普及し、江南をはじめとした中国南部はインディカ種の生産地域となっている。
ジャバニカ種(ジャワ型、大粒種)
長さと幅ともに大きい大粒であり、粘りはインディカ種に近い。東南アジア島嶼部で主に生産されるほか、イタリアブラジルなどでも生産される。

なお、日本型とインド型に分類した上で、このうちの日本型を温帯日本型と熱帯日本型(ジャバニカ種)として分類する場合もある[1][6]

品種・銘柄

日本においては、農産物規格規程に、品位規格と、「産地品種銘柄」として都道府県毎に幾つかの稲の品種が予め定められている。玄米は、米穀検査で、品位の規格に合格すると、その品種と産地と産年の証明を受ける。輸入品輸出国による証明を受ける。

日本国内での米の銘柄(品種)の包装への表示は、玄米及び精米品質表示基準に定められている。

  • 原料玄米の産地、品種、産年が同一で証明を受けている単一銘柄米は、それらと、「使用割合100%」を表示する
  • ブレンド米は「複数原料米」などと表示し、原産国毎に使用割合を表示し(日本産は国内産と表示)、証明を受けている原料玄米について、使用割合の多い順に、産地、品種、産年、使用割合を表示できる

証明を受けていない原料玄米については「未検査米」などと表示し、品種を表示できない。情報公開より偽装防止を優先しているともいえる。

種類

インドネシアの米屋に並ぶ多種多様のコメ

米は各種の観点から以下のように分類される。

なお、日本では農産物検査法による公示の「農産物規格規程」や、JAS法に基づいた告示の「玄米及び精米品質表示基準」[7]に一定の定めがある。

水稲と陸稲

水田で栽培するイネを水稲(すいとう)、耐旱性や耐病性が強く地で栽培するイネを陸稲(りくとう、おかぼ)という[4][5]。水稲と陸稲は性質に違いがあるが、同じ種の連続的な変異と考えられている。

一般的に圃場の整備については水稲の方がコストがかかる一方で、面積当たりの収量が多く、連作障害が殆ど無い[8]などのメリットと、全国的に水田整備が行き渡ったことから、現在、日本の稲作では、ほとんどが水稲である。水稲の収穫量は798万6000tで陸稲の収穫量は2700t(2015年見込み)おおよそ水稲は陸稲の2957倍となっている。また、栽培面積においても水稲が99.9%以上を占めている。

日本では水稲と陸稲の区分は農産物規格規程においても規定されている。日本では水稲と陸稲は明確に区別されているが、他の国では明確には区別されていない[1](世界的に見ると水稲といっても灌漑稲、天水稲、深水稲、浮稲のように栽培の環境は大きく異なっている[9])。

粳米と糯米

デンプンの性質(糯粳性)により、粳性のものを粳種あるいは粳米(うるちまい、うるごめ、あるいは単に粳〈うるち、うる〉)、糯性のものを糯種あるいは糯米(もちまい、もちごめ)という[4][6]

日本では玄米及び精米品質表示基準で、「うるち」と「もち」に分けられている。

粳米(うるちまい)
デンプン分子が直鎖のアミロース約20%と分枝鎖のアミロペクチン約80%から成る米。もち米より粘り気が少ない[3]。粳米は通常の米飯に用いられる。販売で「うるち」を省略されることが認められていて、「もち」と断りが無ければ「うるち」である。団子などの材料とする上新粉は、粳米を粉末に加工したものである。
糯米(もちごめ)
デンプンにアミロースを含まず、アミロペクチンだけが含まれる米[10]。モチ性の品種のデンプンは調理時に強い粘性を生じるという特性を持つ[11]強飯に用いられる。白玉の材料とする白玉粉や和菓子の材料とする寒梅粉は、糯米を粉末に加工したものである。

アジアイネではジャポニカ種だけでなくインディカ種にも糯米が存在するが[3]、アフリカイネについては糯性のものは知られていない[2]

なお、糯粳性のある植物としては、イネのほか、トウモロコシ、オオムギ、アワキビモロコシアマランサスなどがある[12]

軟質米と硬質米

米は軟質米と硬質米に分けられる[5]。軟質米は食味の点で優れるが貯蔵性の点では劣る[5]

飯用米と酒造米

醸造用の酒造米(酒造用米、酒米)は飯用米と区分される[6][5]。農産物規格規程には、「うるち」と「もち」に加えて醸造用が定められている。酒造酒税法規制されている為、個人用には売られていない。

新米と古米

米は新米と古米と区分される[5]新米と古米を参照。

有色米

黒米赤米、緑米などを総称して有色米という[3]。野生種に近い米である[3]。古代から栽培していた品種あるいは古代の野生種の形質を残した品種の総称として古代米と呼ばれることもある。

1993年、青森県田舎館村村おこしで行ったこれら有色米を使った田んぼアートが好評となり、その後全国に広まった。

香り米

強い香りを持つ品種を香り米という。東南アジア、南アジア、西アジアなど、地域によっては香りの少ない品種よりも好まれる。インドバスマティなどが有名。 日本でも北海道・宮城県・高知県・鳥取県・宮崎県など各地で独自に香り米を作っていて、生産は増加傾向にある。




  1. ^ a b c d e f g 農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』農山漁村文化協会 p.105 2006年
  2. ^ a b c d e 日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.218 2010年
  3. ^ a b c d e f 『料理食材大事典』主婦の友社 p.307 1996年
  4. ^ a b c 『丸善食品総合辞典』丸善 p.411 1998年
  5. ^ a b c d e f g 杉田浩一編『日本食品大事典』医歯薬出版 p.11 2008年
  6. ^ a b c 杉田浩一編『日本食品大事典』医歯薬出版 p.9 2008年
  7. ^ 玄米及び精米品質表示基準(最終改正 平成23年7月1日消費者庁告示第 6号) (PDF)
  8. ^ 黒田治之、「わが国果樹栽培技術の課題と展望」『日本調理科学会誌』 1999年 32巻 2号 p.151-160, doi:10.11402/cookeryscience1995.32.2_151
  9. ^ 日本作物学会編『作物学用語事典』農山漁村文化協会 p.220 2010年
  10. ^ 平成18年11月 農林水産省総合食料局総務課発行資料より。
  11. ^ 農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』農山漁村文化協会 p.1126 2006年
  12. ^ 農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』農山漁村文化協会 p.1525 2006年
  13. ^ fao.org (FAOSTAT). “Countries by commodity (Rice, paddy)”. 2013年1月30日閲覧。
  14. ^ 農林水産省『海外統計情報』
  15. ^ a b c d 『食料争奪』柴田明夫 日本経済新聞出版社 2007年
  16. ^ その後、価格の安定を受け生産額は、2018年(平成30年)には1兆7,416億円(年間生産量約778万トン)程度まで回復。
  17. ^ 農林水産省『生産農業所得統計』等
  18. ^ 農林水産省『食料・農業・農村政策審議会食糧部会 資料(30年7月27日開催)
  19. ^ 農林水産省『米の輸出について
  20. ^ ヒドロキシ-5-メチルィソキサゾールの作物の生育調節作用に関する研究 (PDF) (2012年1月14日時点のアーカイブ
  21. ^ 小川正巳、太田保夫、3-ヒドロキシ-5-メチルイソキサゾールの作物の生育調節作用に関する研究 第1報 Japanese Journal of Crop Science 42(4), 499-505, 1973-12-30, NAID 110001727446
  22. ^ 原田信男 『和食とはなにか 旨みの文化をさぐる』 角川ソフィア文庫 2014年 p.21
  23. ^ a b 新谷 尚紀 他 『民俗小事典 食』 吉川弘文館、2013年、ISBN 978-4-642-08087-3、26-28頁
  24. ^ a b 増田 昭子 『雑穀の社会史』 吉川弘文館, 2001年, ISBN 4-642-07545-3, 40, 46, 79頁
  25. ^ 江原 絢子 他 『日本食物史』 吉川弘文館, 2009年, ISBN 978-4-642-08023-1, 188-190頁
  26. ^ 有薗正一郎『近世庶民の日常食:百姓は米を食べられなかったか』 海青社、2007年。ISBN 9784860992316、第2章
  27. ^ 香田徹也「昭和15年(1940年)林政・民有林」『日本近代林政年表 1867-2009』p420 日本林業調査会 2011年 全国書誌番号:22018608
  28. ^ a b 江原 絢子 他 『日本食物史』 吉川弘文館, 2009年, ISBN 978-4-642-08023-1, 265-284頁
  29. ^ a b c 原田 信男 『和食と日本文化』 小学館、2005年、ISBN 4-09-387609-6、200,201,204頁
  30. ^ a b 「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活
  31. ^ 渡部忠世 『稲の大地』 小学館、1993年、ISBN 4-09-626178-5、17-18頁
  32. ^ 磯辺俊彦、池上甲一・岩崎正弥・原山浩介・藤原辰史『食の共同体―動員から連帯へ』 村落社会研究ジャーナル 2011年 17巻 2号 p.43-44, doi:[https://doi.org/10.9747%2Fjars.17.2_43 10.9747/jars.17.2_43
  33. ^ 藤岡 幹恭 他 『農業と食料のしくみ』 日本実業出版社、2007年、ISBN 978-4-534-04286-6、126頁
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  36. ^ 米寿直前の研究者、日本平均の3倍の多収米開発「爆食」中国、主食自給に希望の芽『日経ヴェリタス』2018年2月4日(アジア面)
  37. ^ 【グローバルViews】中国コメ収量 日本の3倍/人口膨大、食料 輸入に頼れず『日経産業新聞』2018年12月4日(グローバル面)。
  38. ^ 「世界的なコメ危機の実態 背後に潜む問題点とは何か」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年5月14日付配信
  39. ^ デンプン糖類が結合した巨大分子でそのままでは栄養として吸収できない。水と一緒に加熱することで小さなに分解され、栄養として吸収されやすくなり、食感もよくなる。
  40. ^ 「舂く」の字は「春」とは異なる。
  41. ^ コトバンク『日本大百科全書(ニッポニカ)』 - 「餅」
  42. ^ 五明紀春、胚芽米のすべて 女子栄養大学
  43. ^ 調理再現HP
  44. ^ 石毛直道『世界の食べもの 食の文化地理』p145 講談社学術文庫
  45. ^ 渡辺昭五『日本人の秘境』(産報)115p、1973年
  46. ^ コトバンク『世界大百科事典 第2版』 -「粢」
  47. ^ 『出雲大社教布教師養成講習会』発行出 雲大社教教務本庁 平成元年9月全427頁中167頁




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