こう‐ぼ〔カウ‐〕【酵母】
読み方:こうぼ
子嚢菌(しのうきん)類の球形または楕円形の単細胞の菌。ふつう、出芽によって増殖し、アルコール発酵を行うので、酒の醸造やパン製造に利用される。酒酵母・ビール酵母・ぶどう酒酵母・パン酵母など、多くの種類があり、それぞれ別種の固有の菌で醸造または発酵される。イースト。酵母菌。
こうぼ〔カウボ〕【酵母】
酵母 [Yeast(s)]
このように酵母は真菌ではあるが、単細胞性の世代だけをもち、糸状菌のような典型的な菌糸をつくらない菌群にあたえられた便宜的な名称である。酵母の種類は多く、現在、約40属、350種が知られている。代表的な酵母としてはアルコール発酵酵母であるサッカロミセス・セレビジアエ(Saccharomyces serevisiae)、病原性の菌種もあるカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、通称、海洋酵母とよばれるロドトルラ・グルチヌス(Rhodotorula glutinus)などがある。酵母は栄養分に富み、実用的には発酵工業をはじめ種々の食品工業で使用されている重要な菌種が多く、酵母から種々の酵素が製造されている。
酵母による発酵の基本的な意義は19世紀末にL.パスツール(フランス)によって実証され、次いで、H.ブフナー(ドイツ)が発酵は酵母の細胞内に発酵素(チマーゼ)と名づけられた因子によっておこることを発見し、それが酵素という概念の発端となって、生物を生化学的に研究する方向へと発展した。
酵母(こうぼ)
酵母
食品名(100g当たり) | 廃棄率(%) | エネルギー(kcal) | 水分(g) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 炭水化物(g) | 灰分(g) |
調味料及び香辛料類-調味料及び香辛料類/酵母/パン酵母、乾燥 | ![]() |
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調味料及び香辛料類-調味料及び香辛料類/酵母/パン酵母、圧搾 | ![]() |
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酵母
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/11 08:47 UTC 版)
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酵母 | ||||||
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![]() S.cerevisiae : 右上は出芽中
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分類 | ||||||
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門 | ||||||
酵母(こうぼ)またはイースト(英: yeast)は、広義には、生活環の一定期間において栄養体が単細胞性を示す真菌類の総称である。狭義には、食品などに用いられて馴染みのある出芽酵母の一種Saccharomyces cerevisiae(英読み: サカロウマイシーズ・セレヴィシエ、羅読み: サッカロミュケス・ケレウィシアエ)を指し、一般にはこちらの意味で使われ、酵母菌(こうぼきん)と俗称されている。
名称について
広義の「酵母」は正式な分類群の名ではなく、いわば生活型を示す名称であり、系統的に異なる種を含んでいる。
狭義の「酵母」は、発酵に用いられるなど工業的に重要であり、遺伝子工学の主要な研究対象の1つでもある。
日本語では、明治時代にビール製法が輸入されたときに、yeast の訳として発酵の源を意味する字が当てられたのが語源。微生物学の発展とともに、その意味するところが拡大していった。
特徴
基本的には真核で単細胞性の微生物で、運動性はなく、細胞壁を持っている。光合成能はなく、栄養は外部の有機物を分解吸収することによる。形態的には特徴の少ない円形か楕円形をしている。このような性質の微生物は、ひとまずは酵母と考えられる。これらは出芽または分裂によって増える。また、それによって増殖した細胞が、互いに不完全にくっついて樹枝状を呈する場合もある。
多くの酵母は、子嚢菌門に属している。子嚢菌門半子嚢菌綱には、酵母の仲間、酵母的な性質の強いカビなどが含まれる。この類に属する酵母は、細胞そのものが融合する形で接合を行い、その結果、融合細胞の減数分裂によって細胞内に胞子を形成する。つまり、減数分裂によって内生胞子を生じるので、細胞そのものを子嚢と見なすわけである。
しかし、担子菌門に属するものも知られている。同種の菌であっても生活史の中で酵母型と菌糸体型の双方の形をとることすらある。例えばシロキクラゲは担子胞子から発芽すると酵母として増殖し、性の異なる相手と接合すると菌糸体の状態で増殖する二核菌糸となる。他に有性生殖の知られていない酵母も少なくない。それらは不完全酵母と呼ばれる。
自然環境では、果汁や樹液の溜まるところに多産するほか、淡水や海水中にも広く分布することが知られている。
類似の生物
単細胞で運動性が無く、周囲の栄養を吸収して増殖するものは酵母と見なされることがある。たとえばプロトテカはそれであり、現在ではこれはクロレラに近縁で、緑藻が葉緑体を失ったものと考えられている。
系統の問題
酵母は単細胞であるために菌類の中で原始的なものとの判断もかつてはあった。しかし、上記のように酵母とされる生物は複数の群に分類され、酵母はむしろ生活のあり方に対する適応による形の一つと見なされる。
他方で子嚢菌類では半子嚢菌、および古生子嚢菌に分類されるものに酵母型、および酵母型に近い糸状菌といった特殊なものが多く、子嚢菌類や担子菌類の祖先がやはり酵母であった可能性も指摘されている。
歴史
微生物学で酵母が「発見」される前から、人類は空気中など自然界に存在する酵母を酒やパンづくりに利用してきた[1]。
酵母の発見は、アントニ・ファン・レーウェンフックに溯るとされる。彼は手作りの顕微鏡で微生物を最初に発見し、その後も様々な微生物を観察しているが、発酵中のビールを調べてその中に微粒子状のものを見たことを記録している。彼は球形ないし楕円形のもののスケッチを残しており、これが恐らく酵母であろうとされている。その後これがパンなどの発酵の際にも見られることが分かり、これと発酵との関連が論じられ、ルイ・パスツールによって発酵が酵母の生理作用であり、無酸素条件下での呼吸であることが示された。これについては発酵の該当項目を参照されたい。なお、パスツールは酵母の純粋培養を最初に行った事でも知られる。
生物としての酵母の研究に関しては、19世紀までにはほとんど進歩が無かった。1825年ころより酵母の研究が行われるようになった。シャルル・カニャール・ド・ラ・トゥール、フリードリヒ・トラウゴット・キュツィング、テオドール・シュワンらは発酵している液を薄めて観察したり、観察中の乾燥を防ぐためにカバーガラスを掛け、周囲をパラフィンで封じる、あるいはホールグラスを使うなどの方法を使い、酵母が出芽によって増殖する単細胞生物であることを示した。
1839年にはシュワンが内生胞子を観察した。彼はそれが胞子であり、体外に出て新たな酵母となることには気づいたが、その分類上の意味には気づかなかった。これを明らかにしたのがアントン・ド・バリーで、彼は1839年に、この内生胞子を子嚢菌に属するカビの胞子と比較している。さらにリース(Reess)は1868年以降、多くの種類の酵母について内生胞子を観察し、それが原始的な子嚢菌の子嚢胞子に当たることを認めた。パスツールによる純粋培養の確立もあって、それ以降、酵母の研究は格段に進み、特にエミール・クリスティアン・ハンセンは研究法の改善を含め、30年にわたって各種酵母について研究を行い、この分野の開祖とも言われている。また、彼は酵母の系統の問題と分類に生活環を重視した。
利害
サッカロマイセス属(Saccharomyces)やシゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)は発酵によりアルコールを生じ、食品の加工に古くから利用されており、また生物学の研究材料としても用いられている。特に、出芽酵母と分裂酵母は真核細胞の基本メカニズムの解明に貢献している。一方で、デバリオミケス属(Debaryomyces)のように、発酵を行うものと行わないものの両方を含む属もある。
特殊な例では、ミジンコに寄生するメチニコービアは、イリヤ・メチニコフがその観察を通じて食細胞を発見したことで知られている。
ヒトの病気の原因になるものとして、白癬菌(水虫)、膣炎や皮膚炎の原因となるカンジダ、アスペルギルス症を起こすコウジカビ属菌、ニキビに似た脂漏性湿疹などの原因となるマラセチア属[2]などがある。カリニ肺炎(ニューモシスチス肺炎)の病原体ニューモシスチス・ジロヴェチ(Pneumocystis jiroveci) は従来『カリニ原虫』と呼ばれてきたが、現在では子嚢菌に近いことが明らかになっている。
種類
広義の酵母に含まれるものとしては例えば以下の種があげられる。
- 出芽酵母(アルコール発酵酵母など) Saccharomyces cerevisiae
- 分裂酵母 Schizosaccharomyces pombe
- カンジダ Candida albicans
- アルカン資化酵母 Yarrowia lipolytica
- メタノール資化酵母 Pichia pastoris
- メタノール資化酵母 Hansenula polymorpha
- キラー酵母 Kluyveromyces lactis
- トルラ酵母 Cyberlindnera jadinii
- Zygosaccharomyces rouxii[3]
脚注
- ^ 発酵の発見と利用の歴史 古代から酒づくりなどに使われた「神の恵み」の発酵サントリー ウィスキーミュージアム(2019年11月17日閲覧)
- ^ Malassezia の菌学 (PDF) 日本医真菌学会『真菌誌』48(4),177-190,2007
- ^ 東和男、山本泰、好井久雄「耐塩性酵母の微細構造」『日本釀造協會雜誌』Vol.82 (1987) No.2 P.121-124, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.82.121
参考文献
- H.J.Phaff,M.W.Miller&E.M.Mrak (長井進訳)『酵母菌の生活』1982年、学会出版センター
関連項目
外部リンク
- 『酵母』 - コトバンク
- 酵母の働きの具体例 - 『科学映像館』より
- 『生きているパン』(1958年) - 日本映画新社制作のモノクロ短編映画。
- 『ビール誕生』(1954年) - 日本麦酒(現・サッポロビール)の企画・提供の下で東京シネマが制作した短編映画。
酵母
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 15:45 UTC 版)
麹の中の米のデンプンから生成されたブドウ糖は、酵母によって分解され、エタノールと二酸化炭素が生成される。酵母は真菌類に属する単細胞生物であって原料ではないが、これが行うアルコール発酵が日本酒造りの過程において大きな要素であるためここに記す(詳細は清酒酵母を参照)。多種多様な酵母の中で日本酒の醸造に用いられるものを清酒酵母といい、種は80%以上がSaccharomyces cerevisiae(出芽酵母)である。何十万もの種類が自然界に広く存在しており、それぞれ異なった資質を持っている。酵母の多様性は酒の味や香りや質を決定付ける重要な鍵となる。 前近代には、麹と水を合わせる過程において空気中に自然に存在する酵母を取り込んだり、酒蔵に棲みついた「蔵つき酵母」(家つき酵母)に頼ったりするなど、その時々の運任せであった。このため、科学的再現性に欠けており、醸造される酒は品質が安定しなかった。 明治時代になると微生物学の導入によって有用な菌株の分離と養育が行われ、それが配布されることによって日本酒全体の品質の安定・向上が図られた。1911年(明治44年)第1回全国新酒鑑評会が開かれ、日本醸造協会が全国レベルで有用な酵母を収集するようになり、鑑評会で1位となるなど客観的に優秀と評価された酵母を純粋培養して頒布した。頒布された酵母(協会系酵母または協会酵母)には、日本醸造協会に因んで「協会n号」(nには番号が入る)という名が付けられている。アルコール発酵時に二酸化炭素の泡を出す泡あり酵母(協会1号から協会15号など)と、出さない泡なし酵母に大別される。泡なし酵母は突然変異により生まれた発酵時に泡を出さない酵母で、酒造りの過程において泡守り(あわもり)が不要であるなど利点も多いために研究が進み、従来の泡あり酵母のなかで優良な種株の泡なし版が多く作られていった。 元々、日本酒には米の持つ地味な香りだけがあり、ワインのようなフルーティーな香りは無かったが、鑑評会向けに優れた香りを持つ酒を醸造する工夫が重ねられて吟醸酒が誕生し、各地の蔵で吟醸造りが行われるようになった。これに大きな役割を果たしたのが協会系酵母の中の協会7号(真澄酵母)と協会9号(香露酵母・熊本酵母)であった。1980年代に吟醸酒が一般層にも広く受け入れられて消費が伸びてくると、この他にも少酸性酵母、高エステル生成酵母、リンゴ酸高生産性多酸酵母といった高い香りを出す泡なし酵母が作られ、1990年代以降はそれぞれ開発地の地名を冠する静岡酵母、山形酵母、秋田酵母、福島酵母などが登場し、吟醸造りに用いられる酵母も多様化していった。 最近では、アルプス酵母に代表されるカプロン酸エチル高生産性酵母や、東京農業大学がなでしこ、ベコニア、ツルバラの花から分離した花酵母など、強い吟醸香を引き出すものが注目を集めており、今も大手メーカーやバイオ研究所、大学などで様々な酵母が作られている。協会系酵母として現在頒布されているものの70%近くは泡なし酵母である。 一方、新たに開発された酵母によっては吟醸香が不自然に強すぎて酒の味を損なうなど、却って好まれない場合もあるため、一概に香りを強く鮮やかにすることが望ましいわけではない。
※この「酵母」の解説は、「日本酒」の解説の一部です。
「酵母」を含む「日本酒」の記事については、「日本酒」の概要を参照ください。
「酵母」の例文・使い方・用例・文例
- 酵母でビールは発酵する
- 彼が自家製酵母でパンを焼く
- 日本酒は、米と水と酵母で蒸留します。大吟醸に使われる米はほかのお酒に比べ、よく精米されています。
- ついにビールに酵母活性が始まっているのを確認した。
- 酵母はパンや酒を作るのに使われます。
- 醗酵母
- 酵母を入れてパンをふくらす
- しっとりとした圧搾酵母の小さいケーキ
- 酵母を入れないパン生地で作ったパン類
- 宗教儀礼(特に聖体拝領で)で使われる薄くて円い無酵母のパン
- 甘い酵母パンの薄切りを茶褐色にかりかりになるまで2度焼いたもの
- 下面ビール酵母で生成される(通常煎じることで麦芽汁を作ることで)ビールの一般的用語
- 子のう果が作られていない種類の菌:酵母菌やいくつかの寄生植物
- 代表的な酵母菌からなる菌類
- パンを焼く時や醸造する時の酵母として用いられる
- 寄生的で酵母のような不完全菌で、枝分かれ鎖に球状または卵形の分生子を持つ
- モニリア属の酵母のような不完全菌類の総称
- 酵母のような不完全菌類の属
- カンジダ属の酵母のような不完全菌類
- 病原性の酵母菌
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