銭湯 建築様式

銭湯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 22:09 UTC 版)

建築様式

レトロ建築の梅ヶ枝湯兵庫県高砂市

宮大工によって造られる寺社建築のような外観の共同浴場を全国的に見ることができる(主として温泉が湧出する観光温泉地)が、これが関東大震災後に東京で成立する宮型造り銭湯の様式としても採用された。主に関東近郊にこの建築様式が集中しており、地方の銭湯では見られず、極めて数が少ない。この宮型造り銭湯の都心での発祥は東京墨田区向島の「歌舞伎湯」に始まる。一般的に建物入口に唐破風もしくは破風が正面につく建築様式を「宮型」という。

こうした宮型造りの銭湯は昭和40年代頃まで関東近郊で盛んに建てられたが、各家庭において内風呂(自宅内の風呂)が普及し、またビルに建て替えられる銭湯も多くなったため、現在では減少傾向にある。一方、近年の懐古趣味であるレトロブームに乗って、中には新築で宮型造りの銭湯が建てられる物件もある。

各地の銭湯の建築様式は様々であるが、コミュニケーションの場として日常生活に彩りを与える工夫がなされている所に共通点がみられる。

営業・サービス面

営業時間・営業日

現代の日本では、午後あるいは夕方から深夜12時前後までの営業が一般的。「朝風呂」と称して早朝より営業している店もある。また、昨今の利用客の減少から、最近では近隣の銭湯で定休日が重ならないように調整し合うこともある。

料金

入浴料金は物価統制令(現・日本国憲法発布前に出された勅令法律としての効力を持つ)の規定により、各都道府県知事の決定で、金額の上限が定められている(「定義」節も参照)。いずれの都道府県においても「大人(中学生以上)」「中人(小学生)」「小人(未就学乳幼児)」の料金分けを採用。また、洗髪する場合は追加の洗髪料金を徴収する地域もある。共通回数券を発行している地域や、特定施設でのみ利用可能な回数券を発行している施設もある。

女性の洗髪料金を徴収できることは、過去に厚生省令で認められていた。東京都では、1970年に洗髪料金(当時5円)を徴収しない旨の告示をすると、都の公衆浴場商業組合が厚生省令に反するものとして抗議。自主料金を設定するなどの軋轢が生じた。結果として洗髪料金は無料となったが、その後、入浴料金そのものが値上げされることで浴場側の減収分は補填されることとなった[22]

こどもの混浴年齢

厚生労働省が公衆浴場の衛生管理について示した要領はこれまで、混浴を禁じる年齢を「おおむね10歳以上」としていたが、浴場組合など業界団体から「引き下げるべきでは」との意見が寄せられた。聖心女子大の植田誠治教授(学校保健学)らが厚労省の補助事業で実施した研究結果も踏まえ2020年12月、「おおむね7歳以上」に下げて各自治体に通知した[23]

サービス

それぞれの施設で異なるが。一般的に番台やフロントなどで入浴に必要な道具や石鹸、入浴後に飲まれることの多い飲料である牛乳サイダー、ジュース、缶ビール(一部の施設)などを販売している。脱衣所ではテレビや体重計、扇風機、ドライヤーがあり、マッサージチェアも一部有料で利用できる。喫煙についてはできる場所もあるが、時代の変化に伴い分煙もしくは全面禁煙化した銭湯も多い。頻繁に利用する入浴客には、割安な回数券も販売されている。

柚子湯菖蒲湯(しょうぶゆ)などの伝統行事をに合わせて行ったり、子供や年配客向けの割引・無料サービスを行ったりする銭湯もある。最近では保育園幼稚園小学校に通う子供達を「裸のつきあいの意義を知る」としてクラス単位などで全員一緒に入浴させる「体験入浴」を学校行事とともに地域のふれあい行事として、一部の施設で行っている例もある。

施設によっては、浴場以外にサウナ風呂を有する場合もあり、東日本の一部の銭湯では200 - 300円程度の追加料金でサウナへ入浴が可能なことが多いが、西日本では追加料金のない施設も多い。料金を支払った客を区分しやすくするために、サウナ専用のカラータオルを貸しだすこともある。雑誌新聞などの持ち込みなどはほとんどの場合、入浴客の安全を考慮して制限される。

プール/温泉施設/ジムなどと同様に、刺青を入れた人の入場を認めるかどうかが問題になることがあるが、公衆浴場法上の「普通公衆浴場」である銭湯については「地域住民の日常生活において保健衛生上必要なものとして利用される施設」という性質上、単に刺青が入っているというだけで入場を拒否することは困難であるというのが通説であり、日本政府も2017年に同様の閣議決定を行っている。一方でスーパー銭湯は、公衆浴場法上「その他公衆浴場」に分類され、ある程度の顧客の選別が許されていることから、刺青客の入場を拒否することも合法であると解されている[24]

その他

登録有形文化財

大阪市生野区にある源ヶ橋温泉は外観・内装とも昭和モダニズムの面影を残す貴重な建物のため、1998年(平成10年)に風呂屋(銭湯)の建造物では初めて国の登録有形文化財に登録された。一方、同じく2000年(平成12年)に登録有形文化財となった同市阿倍野区美章園温泉は、燃料費の高騰や耐震補強工事が困難であることなどを理由に廃業、2008年(平成20年)2月より開始された解体作業にともない[25][26][27]、同年12月に文化財としての登録を抹消された[28]。この他にも2000年代以降、京都市北区にある船岡温泉、東京都台東区上野にある燕湯鳥取県倉吉市にある大社湯(第三鶴の湯[注 2]三重県伊賀市にある一乃湯が登録有形文化財に登録されている。

現在は銭湯として使われていないが、かつては銭湯だった登録有形文化財の建造物として、京都市北区の旧藤ノ森湯(現在は飲食店等に転用)[30]愛知県半田市にかつて所在した半田東湯(解体後に同県犬山市明治村に復元、足湯あり)[31][32]熊本県人吉市の芳野旅館従業員棟(銭湯として開業後に料亭となり、更に従業員室や倉庫となった)[33]がある。また、愛媛県今治市今治ラヂウム温泉2014年(平成26年)3月に休業したが、建物はそのままの姿で残されており、2年後の2016年(平成28年)になって登録有形文化財に登録されている[34][35]

歴史のある銭湯・古銭湯

江戸時代より現在まで続く歴史のある銭湯が全国に複数存在している。1773年安永2年)に創業した東京都江戸川区のあけぼの湯は都内でも最も創業が古い銭湯(廃業した銭湯を除く)である[36][37]。この他、江戸時代より続く銭湯として都内には江戸川区の鶴の湯や台東区の蛇骨湯、中央区の金春湯があり、全国では長野県のアルプス温泉(創業当時:忠兵衛のお湯)[38]新潟県の千代乃湯[39]熊本県のくすり湯[40]などがある。

一方、建物自体の建築年代が古い銭湯としては、1907年(明治40年)に建築され登録有形文化財でもある鳥取県倉吉市の大社湯、1915年(大正4年)に建築された愛媛県八幡浜市の大正湯[41]、明治末期から大正初期頃に建築された千葉県勝浦市の松の湯[42]1923年(大正12年)に脱衣場の建物が建築され登録有形文化財でもある京都市の船岡温泉など、明治から大正にかけて建築された銭湯が現存している。

歴史のある銭湯にも老朽化や利用客の減少などから廃業を決めた銭湯もある。


注釈

  1. ^ 1879年(明治12年)10月3日東京府令湯屋取締規則により、混浴禁止とともに石榴口は1885年(明治18年)11月末日までに改装すべきとされた(小木新造『東亰時代 - 江戸と東京の間で』、p.96)。
  2. ^ 元々の屋号は「第三鶴の湯」であったが、隣に出雲大社倉吉分院があることから「大社湯」の名前で呼ばれるようになった[29]

出典

  1. ^ 銭湯(せんとう)の意味”. goo国語辞書. 2019年12月10日閲覧。
  2. ^ 【輝け★わが街 地域おこし協力隊】(2)「温泉銭湯」愛着持って『毎日新聞』朝刊2021年5月1日(北海道面)
  3. ^ 河合敦 『目からウロコの日本史―ここまでわかった!通説のウソと新事実』、p.42
  4. ^ 藤浪剛一『東西沐浴史話』、p.142
  5. ^ 奥野高広『戦国時代の宮廷生活』、p.143
  6. ^ 河合敦『目からウロコの日本史―ここまでわかった!通説のウソと新事実』、p.40
  7. ^ 町田忍『銭湯遺産』、p.178
  8. ^ 東大寺・大湯屋(奈良県の名所・古跡)
  9. ^ 東大寺大湯屋 - 国指定文化財等データベース(文化庁)/同庁運営「文化遺産オンライン」内のデータベースページ
  10. ^ かんでん e-Patio. “昔、お風呂は蒸し風呂だった!”. 2011年5月15日閲覧。
  11. ^ 藤浪剛一『東西沐浴史話』、p.134
  12. ^ 藤浪剛一『東西沐浴史話』、p.157
  13. ^ 池田勝, 池田正男「古今(こきん)用語撰」『らん:纜』52巻 2001年 p.30-34, 日本船舶海洋工学会, doi:10.14856/ran.52.0_30, 2020年6月19日閲覧。
  14. ^ a b 町田忍『銭湯遺産』、p.181
  15. ^ 朝湯まかりならぬ、警視庁お達し(『中外商業』昭和14年5月26日)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p331 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  16. ^ 東京で二百軒が既に廃業(『東京日日新聞』昭和14年8月30日夕刊)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p331
  17. ^ 厚生労働省 平成8年衛生行政報告例 統計表(公営と私営の普通浴場の合計) https://www.e-stat.go.jp/
  18. ^ 厚生労働省 保健・衛生行政業務報告(衛生行政報告例) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/06-2/toukei9.html
  19. ^ 厚生労働省 平成28年度衛生行政報告例の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/
  20. ^ 厚生労働省 平成30年度衛生行政報告例の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/18/
  21. ^ 町田忍さん:後編 まずは、いちばんお近くの銭湯へどうぞ。(くるまあるき賛成派!第22回) - 日産カーウィングス(日産自動車、2010年9月28日閲覧)
  22. ^ 「都のフロ代騒動解決 業者、自主料金を撤回」『朝日新聞』昭和45年(1970年)5月5日朝刊12版15面
  23. ^ 厚生労働省「公衆浴場における衛生管理理要領等の改正について〔公衆浴場法〕」(生食発1210第1号)(令和2年12月10日改正) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5492&dataType=1&pageNo=1
  24. ^ 入れ墨は「温泉NG」なのに「銭湯OK」の意外なワケ - PRESIDENT online・2019年12月26日
  25. ^ ミヤコ蝶々さんも通った…「大阪最古の銭湯」解体へ(MSN産経ニュース 2008年2月16日)
  26. ^ 大阪市阿倍野、美章園温泉が廃業・解体(月刊旧建築 2008年2月16日)
  27. ^ さよなら美章園温泉(まちかど逍遥 2008年2月25日)
  28. ^ 解体等による登録抹消(文化庁サイト)
  29. ^ 大社湯 - YouTube感動!動画で体験倉吉
  30. ^ 旧藤ノ森湯(文化遺産オンライン:データベース/文化庁)
  31. ^ 明治村半田東湯(文化遺産オンライン:データベース/文化庁)
  32. ^ 半田東湯(博物館明治村のサイト)
  33. ^ 芳野旅館従業員棟(文化遺産オンライン:データベース/文化庁)
  34. ^ 水口酒造文化財に 今治ラヂウム温泉も 文化審答申」『愛媛新聞』2016年7月16日
  35. ^ 今治ラヂウム温泉本館(文化遺産オンライン:データベース/文化庁)
  36. ^ 「あけぼの湯」の経営者のサイト
  37. ^ あけぼの湯〜歴史は深く、施設は最新!都内屈指の人気銭湯(Walkerplus:湯シュラン 2009.02.12)
  38. ^ 営業中の銭湯(2)アルプス温泉(長野・門前暮らしのすすめ 2013.01.03)
  39. ^ 新潟市内18軒の銭湯を巡ってみました(非温泉)(SOCCER温泉blog 2010.04.14)
  40. ^ 電信町・くすり湯(熊本市新町)(風呂屋の煙突 2007.02.03)
  41. ^ 今も現役です、大正湯(レトロ旅えひめ巡り 2013.04.23)
  42. ^ 現存銭湯一覧(千葉県)(銭湯探訪人が行く)
  43. ^ 銭湯 花の湯(十和田八幡平 『のんびり探検隊』 2013.01.06)
  44. ^ 花の湯(廃業・秋田県鹿角市) 文化浴場(廃業)(銭湯・奥の細道(東北の銭湯巡り) 2013.09.10)
  45. ^ 月の湯(東京都浴場組合)
  46. ^ 【文京区】東京最古級の木造銭湯『月の湯』見学会に参加しました(前編)/(後編)(東京銭湯 - TOKYO SENTO - 2015.05.07/05.09)
  47. ^ 道内最古の公衆浴場 120年超える歴史に幕へ 小樽「小町湯」”. 北海道新聞(2021年10月22日). 2021年10月23日閲覧。


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