物価統制令
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/17 16:29 UTC 版)
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物価統制令 | |
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![]() 日本の法令 | |
通称・略称 | 物統令 |
法令番号 | 昭和21年勅令第118号 |
種類 | 経済法 |
効力 | 現行法 |
公布 | 1946年3月3日 |
施行 | 1946年3月3日 |
所管 |
(大蔵省→) (物価庁→) (経済安定本部→) (経済審議庁→) (経済企画庁→) (内閣府→) 消費者庁 [物価局→国民生活局→取引対策課] 財務省[大臣官房] (厚生省→) 厚生労働省[健康・生活衛生局] (食糧庁→) 農林水産省[大臣官房] (通商産業省→) 経済産業省[商務情報政策局] (運輸省→) 国土交通省[総合政策局] |
主な内容 | 物価高騰の抑制 |
関連法令 |
国民生活安定緊急措置法 買占め等防止法 |
条文リンク | 物価統制令 - e-Gov法令検索 |
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物価統制令(ぶっかとうせいれい、昭和21年勅令第118号)は、物価統制について定めた日本の勅令である。略称は、物統令である[1][2]。1946年(昭和21年)3月3日公布、一部を除き即日施行。
大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)終結後の物価高騰(インフレーション)に当たり、物価の安定を確保して社会経済秩序の安定を維持し、国民生活の安定を図ることを目的として、有事である戦時中に施行された価格等統制令(昭和14年勅令第703号)並びに戦時刑事特別法(昭和17年法律第64号)に代わって制定された。
いわゆるポツダム勅令の1つであり、対日講和条約の付随法安本関連ポツダム命令移行措置法(昭和27年法律第88号)第4条により、1952年(昭和27年)4月28日以後、現在に至るまで法律としての効力を持ち、改正は法律によって行われる。
所管官庁
- 主所管
- 消費者庁取引対策課
- 副所管
- 連携
概要
十五年戦争後期の1940年(昭和15年)以降、食料品や衣料品などの生活必需品の小売りは次々と配給切符制へと切り替えられ、1942年(昭和17年)制定の戦時刑事特別法では、悪徳消費者や戦争ゴロによる買い占め行為、小売店による売り惜しみが犯罪とされた。
終戦直後の日本は、他の敗戦国の例に漏れず激しいインフレーションに襲われた。このため第44代内閣総理大臣幣原喜重郎は1946年(昭和21年)2月の新円切替に続いて、矢継ぎ早に物価政策を出さなければならなくなり、帝国議会の協賛を得た法律の制定では間に合わないと判断して、枢密院への諮詢だけで済む緊急勅令での制定に踏み切った。
この物価統制令による物価体系は、公布・施行された日(3月3日)にちなんで三・三物価体系と呼ばれた。戦前基準年(1934年から1936年の平均)に対して、物価が10倍、賃金が5倍のバランスで算定されたため、都市居住者は食糧や物品を求めるために窮乏化した。その上、国内での物資の絶対量が不足し、やむなく公定ルートに乗らぬ闇物資をヤミ市で購入しなければならなかったため、人々はいわゆる「たけのこ生活」(衣類・家財を少しずつ売って生活することを、タケノコの皮を剥ぐ様に見立てた)を余儀なくされた。
戦後の経済復興が進むにつれて価格統制も緩められ、1952年までにはほぼ統制が撤廃され、1972年にコメの消費者米価が、2001年に工業用アルコールの価格が対象外とされ、2002年以降は公衆浴場の入浴料金の統制が残るのみとなった。
1973年秋、第1次オイルショックによる物価上昇が懸念された際、物価統制令に基づいて閣議で決定して全ての物価を凍結することが検討されたが、管轄官庁である通商産業省が物価統制令違反を取り締まるのに人数が不足していることを理由に断念。その後、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)の制定に合わせ、一部改正された。
近年、人気が高く希少なチケット(プラチナチケット)を大量に購入し客に高額で転売するダフ屋行為に対して、物価統制令を適用しての取締りが警視庁により検討されたほか、府県の迷惑防止条例などにダフ屋を取り締まるための条項がない地域(1997年時点の京都府など)において物価統制令違反容疑での逮捕が行われている[3]。2020年2月には新型コロナウイルス感染症の流行拡大とともにマスクの高値転売が横行しているとして、通常の10倍以上の値段で販売する行為を物価統制令で摘発すべきではないかとする質問主意書が参議院にて提出されている。これに対し政府は物価統制令の利用には言及しないものの、全体として否定的な回答を行った[4]。この提案に対しては、統制的な手法を不用意に用いることで混乱が増幅する可能性が指摘されている[5]。
脚注
- ^ “略称法令名一覧”. e-Gov法令検索. デジタル庁. 2024年7月21日閲覧。
- ^ “物価統制令 昭和21年3月3日勅令第118号”. 日本法令索引. 国立国会図書館. 2024年7月21日閲覧。
- ^ 警察庁刑事局組織犯罪対策部長 近石康宏 (2004年4月20日). “第159回国会 参議院 内閣委員会 第11号 平成16年4月20日”. 国会会議録検索システム. 国立国会図書館. 2007年10月1日閲覧。 “京都府におきましては、御指摘のように、いわゆるダフ屋行為そのものを取り締まる条例の規定はありませんけれども、これまでに物価統制令を適用してダフ屋行為を取り締まった事案があるものというふうに承知しております。平成五年の京都競馬場、平成九年の京都駅ビルで、それぞれ数件、数名を捕まえておるという事案の報告を受けております。”
- ^ “第201回国会(常会) - 質問主意書情報”. 参議院. 2025年4月18日閲覧。
- ^ 岡崎哲二 (2020年4月10日). “不用意な統制的市場介入は混乱を増幅”. キヤノングローバル戦略研究所. 2025年4月18日閲覧。
関連項目
- 価格統制
- GHQ (連合国軍最高司令官総司令部)
- 経済安定本部
- オイルショック - トイレットペーパー騒動
- 群馬コーヒー事件
- 命令 (法規)
- ヤミ市 - ダフ屋
- 戦時刑事特別法
- 国民生活安定緊急措置法
- 生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律
- 迷惑防止条例
- 特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律
外部リンク
物価統制令
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 20:29 UTC 版)
物価統制令第9条の2および第10条では、「不当に高価な」または「暴利となるべき」価格によって売買の契約をし、又は売買により金銭を支払または受領する事を禁じており、違反すると同法第34条により「10年以下の懲役または500万円以下の罰金」に処されることとなっている。 迷惑防止条例等と異なり、客体の限定すらなく、一見すると資本主義、自由主義経済に矛盾する規定とも受け取られかねないが、1957年(昭和32年)の事件において「ダフ屋」と名指しして処断した最高裁判例が存在する(昭和36年2月21日最高裁判所第三小法廷判決、物価統制令違反事件、事件番号昭和32(あ)1039)。 物価統制令では売買の買い方も処罰の対象となる。1997年時点でダフ屋行為を処罰する条例がなかった京都府において物価統制令の適用による取り締まり事例が存在する。
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