海
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 06:07 UTC 版)
海洋の生物生産
陸上でも海中でも、生命活動の基本となるのは植物による光合成である。海水中に太陽光が届く深さは200m程度までで、その範囲は海洋のごく表層に限られる。陸地周辺の数十mまでの浅い海では海底まで光が届くので海藻などの大型植物も繁茂できるが、大洋では植物プランクトンが光合成を行う。植物プランクトンの生命活動には太陽光以外にも栄養塩が必要である。地上の植物には肥料として窒素・燐酸・カリウムを施すが、海水中では窒素・燐酸とカリウムの代わりに珪素が必要となる。(陸地では珪素は地中に大量に存在するので肥料として施す必要は無い。逆に海洋ではカリウムは水中に大量にあるが珪素は少ない)
海中の食物連鎖は、海面近くで栄養塩を使って植物プランクトンが繁殖し、植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ、動物プランクトンが魚に食べられるという形を取る。プランクトンや魚の死骸や糞は徐々に分解されながら海中に沈んでゆくので、栄養塩は海の表面近くでは枯渇気味となるが、水深200m以深の深海の海水(海洋深層水)に栄養塩は多く含まれる。
一般に、黒潮などの暖流系の海流は栄養塩が少なく、親潮などの寒流系の海流は栄養塩が多い。また、日本の東北地方の三陸沖では、親潮の栄養塩に加えて、黒潮と親潮がぶつかり渦が発生して栄養豊富な深海の海水も表層に供給されることで、魚類の餌となる大量のプランクトンが発生し、日本有数の好漁場を形成している。 また、アメリカ大陸太平洋側のカリフォルニア州沿岸やペルー沿岸は海底地形の形状により深海の海水が湧昇する場所で、豊富な栄養供給により魚類の餌となる大量のプランクトンが繁殖して好漁場となっている。 また冬季に結氷するような寒冷な海では海面水温が低下して比重が高くなって沈み、海洋深層水の源となる。なお、海洋の表層を流れる暖流寒流の海流と水深200m以深の海洋深層水の海流は流れの方向が異なっている場合が多い。
陸地近くの浅い海は、河川や石、泥、生活工業排水、農業の肥料、畜産業の糞尿などの陸地からの栄養塩の供給が豊富にある上、海底が浅瀬から沖へ向かって緩やかに深くなっているため、潮汐や潮流によって攪拌されやすく、栄養塩やプランクトンが適度にかき混ざり(留まりにくいため)、一般に生物生産性の高い海域となる。イギリスの東にある北海のドッガーバンクは世界的に有名な漁場である。
ちなみに海の匂い、いわゆる磯臭さは藻類、植物プランクトンが作り出したジメチルスルホニオプロピオナートが分解されて生成されたジメチルスルフィドによるものである。
注釈
- ^ 日本に古来あった大和言葉では、もともと「う・み」という音である。「う」は「大」という意味で、「み」は「水」の意味。つまり、大水(おおきなみず)、という意味の言葉であった、というのが主流の説だという。(出典:語源由来辞典)。
- ^ seaに対してoceanのほうが広大さがある、というニュアンスが含まれている。なお英語では(成句以外では)「the sea」「the ocean」などと、(あえて、意識的に)theをつける。
- ^ 『広辞苑』では「地球上」と表現することで、あくまで「地殻表面」についてだ、とのニュアンスを伝えている。
- ^ 日本語の場合は「みず+うみ」という構成法によって語をつくりだしたが、それに対してラテン諸語のイタリア語、フランス語、あるいはゲルマン語系の英語でも「lac」「lago」「lake」などとして、基本的にもとから海とは別の語を立てている。
- ^ 陸地上の水面には川もあるが、これは海とつながっていても海には含めない。なお陸地上には、(淡水でなく塩水を湛えた)塩湖もあるが、これに関しては「lake 湖」に分類することも、「海」に分類されていることもある。
- ^ この値は『地球の水圏』[6]による大陸棚外縁のおよその水深。
- ^ 江戸時代の川柳。森田健作主演『おれは男だ!』など青春ドラマでも「海のバカヤロー!」(あるいは海に向かって「バカヤロー」)と叫ぶのが定番になっている。
出典
- ^ a b c 岩波書店『広辞苑』第6版「海」
- ^ 理科年表地学部「世界各緯度帯の海陸の面積とその比」
- ^ 理科年表地学部「おもな海洋」
- ^ “海はどうして塩からいのですか?”. 公式ウェブサイト. 国立研究開発法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC). 2024年2月11日閲覧。
- ^ “海の豆知識”. 2024年2月11日閲覧。
- ^ 青木他 1995, p. 26.
- ^ a b c 宇田 1969, pp. 80–82「IV 海の色、光、透明度」海の色。
- ^ 「広島大と静岡大、岩盤含水モデル構築/海水、年23億トン減少」」『日刊工業新聞オンライン』日刊工業新聞社、2017年10月25日、科学技術・大学面。2018年6月3日閲覧。
- ^ []国立極地研究所(2018年6月3日閲覧)。[出典無効]
- ^ a b 青木他 1995 [要ページ番号]
- ^ 宇田 1969, p. 8「 I 海とは何か p.8 第2表 海水中に溶けた塩類、元素(および河川との対比)」
- ^ 大浜 1994 [要ページ番号]
- ^ ピネ 2010, pp. 223, 201.
- ^ ピネ 2010, p. 223.
- ^ データブック オブ・ザ・ワールド 2008, p. 3.
- ^ “海洋政策”. 公式ウェブサイト. 内閣府. 2018年6月3日閲覧。
- ^ “防災情報”. 公式ウェブサイト. 気象庁. 2018年6月3日閲覧。
- ^ Selsis, F. et al. 2007, p. 453-.
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