慣用音とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > > 音響 > > 慣用音の意味・解説 

かんよう‐おん〔クワンヨウ‐〕【慣用音】

読み方:かんようおん

呉音漢音唐音のいずれでもなく、日本広く使われている漢字音。「消耗」の「耗(こう)」を「もう」、「情緒」の「緒(しょ)」を「ちょ」と読む類。


慣用音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/14 13:54 UTC 版)

慣用音(かんようおん)とは、音読み(日本漢字音)において中国漢字音との対応関係が見られる漢音呉音唐音に属さないものを言う。多く間違って定着したものや発音しやすく言い換えられたものを指す。古くからこの語があるのではなく、言語学的研究が進んだ大正時代以降に呼ばれた言葉である。

百姓読み

間違いが定着したものが多いのは、声符であるから勝手に類推して読んだ音、いわゆる「百姓読み」である。たとえば「輸(シュ)」「滌(デキ)」「涸(カク)」「攪(コウ)」「耗(コウ)」などは旁の音に引かれて「輸入(ユニュウ)」「洗滌(センジョウ)」「涸渇(コカツ)」「攪拌(カクハン)」「消耗(ショウモウ)」と読まれる。このような音を慣用音と表記している。

分類できない字音

明らかに中国から来た字音で広く流通しているにもかかわらず、呉音・漢音・唐音に分類できないものがある。例えば、は呉音では「ダ」、漢音では「タ」、唐音では「サ」である。「チャ」という字音は院政時代の字書『色葉字類抄』などから見られ、漢音と唐音の間の時期に流入したと考えられる。また、「椪柑」(ポンカン)の「椪」は呉音・漢音・唐音いずれも不明で、「ポン」は台湾語音に由来するのではないかと見られる[独自研究?][1][リンク切れ]。このような字音も慣用音に入れられている。

字音の混同

漢字には多数の字義をもち、字義に応じて複数の字音を使い分けるものがある。例えば、「易」は「たやすい」の意味では「イ」、「変える」の意味では「エキ(漢音)・ヤク(呉音)」となる。このような多音字において、字義に対する字音を取り違えて使われるものがある。例えば、「罷」は「つかれる」の意味では「ヒ」、「やめる」の意味では「ハイ」であるが、罷免などは「ヒメン」と読み、「ハイ」ではなく「ヒ」が使われている。このとき「やめる」の意味に対する「ヒ」という字音は慣用音とされる。

入声「フ」の変化音

また漢字の入声(語末の破裂音)[k][p][t]のうち、[p]は後続語の語頭子音が破裂音や摩擦音である場合を除いて、母音挿入され「フ」とされた(「フ」の子音はもともと[p]であったと推測されている。)。例えば「蝶(テフ)」。しかし、その後、「フ」の子音は[ɸ]に変わり、さらに後には語中・語尾のハ行はワ行へと変化した(ハ行転呼)。この変化を受けて一般的に入声「フ」は「ウ」に変化した。例えば「蝶(チョウ)」。しかし、もともとは[p]であったため、古語で後続音が破裂音・摩擦音の連語の場合に破裂音を促音として残しているものもある。例えば「甲子(カッシ)」「合戦(カッセン)」「入声(ニッショウ)」「集解(シッカイ)」「法度(ハット)」など。しかし、現在では多くが後続音が破裂音・摩擦音であっても促音化せず「ウ」とするのが普通である。「甲子園(コウシエン)」「合成(ゴウセイ)」「入賞(ニュウショウ)」「集会(シュウカイ)」「法廷(ホウテイ)」など。これに対して促音を維持しつつそれ以外の「フ」を「ツ」に変えるものも現れた。例えば「立(リフ)」「執(シフ)」「圧(アフ)」「接(セフ)」などは後続音に関わらず「リツ」「シツ」「アツ」「セツ」とする。例えば、それぞれ「立面(リツメン)」「確執(カクシツ)」「圧力(アツリョク)」「直接(チョクセツ)」など(実際のところ、「建立(コンリュウ)」「妄執(モウシュウ)」など、「立」「執」には「リフ>リュウ」「シフ>シュウ」の字音も共用されている。)。漢和辞典の見出しにも「アツ」「リツ」「シツ」と書かれ、[p]の系統からはずれてあたかも[t]の体系に属するように見えるため、漢和辞典ではこれを慣用音と表記している。

字訓の字音化

「奥」は漢音「オウ(アウ)/イク(ヰク)」、「早」は漢音「ソウ(サウ)」で、「奥意」「奥地」の「オク」、「早急」「早速」の「サッ」という読み方は、それぞれ字訓「おく」、「さ‐」(「早乙女」「早苗」)に由来する。「オク」、「サッ」は「奥」、「早」の慣用音と認められている。

慣用音認定の問題点

従来、上記のようなはっきりしたものでなくても、呉音・漢音・唐音の体系からはずれるものはすべて慣用音としてきたが、最近ではこれを見直す動きがある。特に呉音はきっちりした体系をもつものではないにもかかわらず、学者たちが自ら立てた体系に合わないものをすべて慣用音に回してきた経緯がある。最近では、これを仏典に注記されている漢字音をもとに呉音に戻す立場もある。また清音濁音が違うだけで慣用音に回すといったこともなされてきたが、もともと日本漢字音が中国音の清濁の区別をきっちり反映しているとは言い難く、これにこだわるべきではないとの指摘もある。このように慣用音の認定にはいまなお困難な問題を多く有しており、漢和辞典によって僅かな差異を生んでいる。

出典


慣用音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/17 00:32 UTC 版)

朝鮮語新綴字法」の記事における「慣用音」の解説

漢字音について、慣用音が通用しているものは慣用音を認めている(第44項~第47項)。ただし、/ㄹ/と発音されうる「ㄴ」は、南の表記「ㄹ」とは異なり原音の「ㄴ」で表記するとしている。また,現行正書法とは異なり、유리(ガラス), 나팔(ラッパのような固有語化した語彙表記に関する例外規定はない。 노예(奴隷原音:노례)、시월(十月原音:십월) 곤난(困難。南の正書法:곤란)

※この「慣用音」の解説は、「朝鮮語新綴字法」の解説の一部です。
「慣用音」を含む「朝鮮語新綴字法」の記事については、「朝鮮語新綴字法」の概要を参照ください。


慣用音

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 23:28 UTC 版)

漢語」の記事における「慣用音」の解説

詳細は「慣用音」を参照 呉音漢音唐宋音以外にも日本語において字音として慣用されるものがある。例えば、比較新し時代から現れた「」の字がある。この字は唐音で「サ」 だが、一般には「チャ」で慣用する。この字は漢音唐音移行期流入した考えられ呉音漢音辞典にも掲載されていないことが多い(資料によって は、中古音元にジャ」「ダ」「タ」などとすることもある)。

※この「慣用音」の解説は、「漢語」の解説の一部です。
「慣用音」を含む「漢語」の記事については、「漢語」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「慣用音」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

慣用音

出典:『Wiktionary』 (2018/07/05 19:50 UTC 版)

名詞

慣用音:かんようおん

  1. 漢字字音のうち、呉音漢音唐音のどれでもない通用しているもの。百姓読みなど間違って定着したものや発音しやすく言い換えられたものなど。また、中国から伝わった伝統的であるが反切から求めた呉音漢音合わないものは、慣用音とされることがある

慣用音の例

関連語


「慣用音」の例文・使い方・用例・文例

  • 慣用音という,漢字の音
Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



慣用音と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「慣用音」の関連用語

慣用音のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



慣用音のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの慣用音 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの朝鮮語新綴字法 (改訂履歴)、漢語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの慣用音 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS