百姓読みとは? わかりやすく解説

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ひゃくしょう‐よみ〔ヒヤクシヤウ‐〕【百姓読み】

読み方:ひゃくしょうよみ

漢字を旁(つくり)や偏(へん)の音から勝手に類推し我流に読むこと。また、その読み方。「絢爛(けんらん)」を「じゅんらん」、「懶惰(らんだ)」を「らいだ」と読む類。


百姓読み

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/23 23:39 UTC 版)

百姓読み(ひゃくしょうよみ)、または慣用読み(かんようよみ)とは、漢字または(つくり)から類推して我流に読むこと[1]

概要

音や訓の慣習によらず我流の読み方をすることとされ[2]、誤読として扱われる。田舎者、また、情緒を解さない者をののしっていう語としての「百姓[3]から、漢字の読み方を知らない教養のない者が読んでしまうことによる。

例えば「垂涎(すいぜん)」を「延(えん)」の読みから類推して、「すいえん」と読んだり、「鍼」の読みは「しん」であるが、これを「感」から「かん」、「減」から「げん」などと読んでしまうこと。

江戸時代から用いられている語である。江戸時代の用例を以下に示す。

享保前後に至り、仁齋、徂徠の二人いできて、かゝる古訓だにたえにたり、その甚しきに至りては、徂徠の說に、目と心とはかるなどいふは、世にいふ百姓讀だに、恥るにたえぬやうに成行くめり、豈あさましからずや 【以下略】
(上記の大意:伊藤仁斎荻生徂徠漢文訓読の伝統を破壊した。特に徂徠は伝統から著しく逸脱しており、俗にいう百姓読みの類で実に見苦しい。) — 山崎美成『海録』[4]より(文字強調と大意要約は引用者)
執筆時期は1820年文政3年)から1837年(天保8年)[注釈 1]
○百姓よみ 世俗に百姓よみと云ことあり、大抵はあたる者なれども、中には大に相違することあり、今その略をあぐ。 【以下略】 — 山本蕉逸『童子通』[6]より(文字強調は引用者)
底本は1839年(天保10年)出版[注釈 2]

百姓読みの例

例語 本来の読み 百姓読み 解説
洗滌 せんでき せんじょう 百姓読みが誤りと意識されている例。
ただし、「同音の漢字による書きかえ」の「洗浄」は「せんじょう」の読み方に基づく。
矛盾 むじゅん ほことん[2] 大正時代の書籍で挙げられている例。
誤読ではなく故意だとの指摘あり(ホコトン#誤読か故意かを参照)。
絢爛 けんらん じゅんらん[2] 大正時代の書籍で挙げられている例。
口腔 こうこう[8] こうくう 百姓読みが誤りと意識されている例。
ただし、医学界では「口孔」と区別するために「こうくう」の読みを採用している[9][10]
矜持 きょうじ きんじ 百姓読みが誤りと意識されている例。
輸贏 しゅえい ゆえい 本来の読みと百姓読みが両立している例。
ただし、「運輸」「輸送」などでは「うんゆ」「ゆそう」の読みが一般化。
消耗 しょうこう しょうもう 百姓読みが慣用音として一般化した例[11]
ただし、「心神耗弱」は「しんしんこうじゃく」。
円匙 えんし えんぴ 百姓読みが専門用語として定着した例。
輸入 しゅにゅう ゆにゅう
輸出 しゅしゅつ ゆしゅつ
漏洩 ろうせつ ろうえい
捏造 でつぞう ねつぞう
稟議 ひんぎ りんぎ

脚注

注釈

  1. ^ 『海録』の校訂者(本居清造・伊藤千可良)の序文[5]による。
  2. ^ 楳塢老人(荻野楳塢こと荻野八百吉)による序文[7]に「天保己亥夏日」(=天保10年の夏) とあり、天保10年(1839年)であることがわかる。

出典

  1. ^ 日本国語大辞典、第17巻(ひち-ほいん)、p.123、日本大辞典刊行会、小学館ISBN 978-4095220178、1976年4月15日第1版第2刷
  2. ^ a b c 松野又五郎(松野孤城)「第六章 重箱読みと湯桶読み百姓読み」『国語国文の常識』六合館、1925年、32頁。 オンライン版国立国会図書館デジタルコレクション)
    ただし、同書には「百姓」に関する差別的表現はなされていない。
  3. ^ 日本国語大辞典、第17巻(ひち-ほいん)、p.122、第4語義、日本大辞典刊行会、小学館ISBN 978-4095220178、1976年4月15日第1版第2刷
  4. ^ 山崎美成「巻二・五九 讀法幷訓點」『海録』国書刊行会、1915(大正4)年、61頁。NDLJP:945818/48 
  5. ^ 校訂者「例言」『海録』国書刊行会、1915(大正4)年、1頁。NDLJP:945818/3 
  6. ^ 山本蕉逸 著「童子通」、早稲田大学編輯部 編『漢籍国字解全書 : 先哲遺著 第7巻』1926(大正15)年、14頁。NDLJP:1020343/304 
  7. ^ 山本蕉逸 著「童子通 序」、早稲田大学編輯部 編『漢籍国字解全書 : 先哲遺著 第7巻』1926(大正15)年、2頁。NDLJP:1020343/296 
  8. ^ 公用文改善の趣旨徹底について p.3 最下段 「口腔(x)→口こう」、内閣閣甲第16号、内閣官房長官から各省庁次官宛て、1952年4月4日
  9. ^ ゆれる「腔」の読み 医学をめぐる漢字の不思議、漢字文化資料館、西嶋佑太郎、2019年12月10日、大修館書店
  10. ^ 西嶋佑太郎、「医学用語の考え方、使い方」、p.100 第4章医学用語各論 7.「腔」を「クウ」と読むのは間違いなのか、ISBN 978-4498148222中外医学社、2022-05-20
  11. ^ [1] 常用漢字表(2010年11月30日内閣告示)本表「モ-ヤ」のページ 「耗」の欄

関連項目

外部リンク


百姓読み

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 13:45 UTC 版)

慣用音」の記事における「百姓読み」の解説

詳細は「百姓読み」を参照 間違い定着したものが多いのは、声符である旁から勝手に類推し読んだ音、いわゆる「百姓読み」である。たとえば「輸(シュ)」「滌(デキ)」「涸(カク)」「攪(コウ)」「耗(コウ)」などは旁の音に引かれて「輸入ユニュウ)」「洗滌センジョウ)」「涸渇コカツ)」「攪拌カクハン)」「消耗ショウモウ)」と読まれるこのような音を慣用音表記している。

※この「百姓読み」の解説は、「慣用音」の解説の一部です。
「百姓読み」を含む「慣用音」の記事については、「慣用音」の概要を参照ください。

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百姓読み

出典:『Wiktionary』 (2017/02/23 09:09 UTC 版)

名詞

百姓 読みひゃくしょうよみ

  1. 漢字の音(音符)に引かれ元来誤った読み方慣用音として誤りとされなくなった例も多い。

語源

百姓教養のない田舎者侮蔑した語か?なお、「ヒャクセイ」と読むべきところをヒャクショウ」と読んだからとの説があるが、「ショウ」は呉音のため誤りでない。却って、「ヒャクセイ」は呉音+漢音入り混じった読み

百姓読みの例

漢字 百姓読み 本来の読み
撹乱 かくらん こうらん
矜持 きんじ きょうじ
涸渇 こかつ かくかつ
もう こう
消耗 しょうもう しょうこう
耗弱 もうじゃ こうじゃく
稟議 りんぎ ひんぎ
残滓 ざんさい ざんし
洗滌 せんじょう せんでき
堪能 たんのう かんのう
輸出 ゆしゅつ しゅしゅつ
輸入 ゆにゅう しゅにゅう

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