立野信之とは? わかりやすく解説

たての‐のぶゆき【立野信之】

読み方:たてののぶゆき

[1903〜1971]小説家千葉の生まれ軍隊での生活を経てはじめプロレタリア作家として活躍するが、検挙された後は転向現代史題材とした作品執筆した。「叛乱(はんらん)」で直木賞受賞。「友情」は転向文学先駆けとされる。他に「明治大帝」「軍隊病」など。


立野信之

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/16 16:54 UTC 版)

立野 信之
(たての のぶゆき)
誕生 1903年10月17日
千葉県
死没 (1971-10-25) 1971年10月25日(68歳没)
職業 小説家
国籍 日本
代表作 『叛乱』(1952年)
主な受賞歴 直木三十五賞(1953年)
デビュー作 『標的になった彼奴』(1928年)
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立野 信之(たての のぶゆき、1903年10月17日 -1971年10月25日)は日本の小説家

千葉県市原郡五井町(現・市原市五井地区)生まれ[1]旧制関東中学校中退[1]

略歴

4歳で母と生別し、12歳で父を失い、祖父母に養育される[2]。中学時代に短歌を始め、窪田空穂らの「國民文学」に投稿[1]1921年山田清三郎・松本昌夫・奧貫信盈・元吉利義らとともに短歌同人雜誌「曠野」を発刊[1]1922年に親戚の伊藤恣・山田清三郎らとともにプロレタリア文学雑誌『新興文学』を発刊し、同誌に評論「階級の文学」を發表[1]。20歳で市原郡五井町役場に就職するも、2年後に佐倉步兵連隊に入営[1]除隊後の1925年頃より雑誌『文芸戦線』にエッセイや評論、を寄稿[1]

1928年、軍隊経験を元に書いた「標的になった彼奴」を雑誌『前衛』に発表し、小説家としてデビューする[1][2]。同年、山田清三郎らによって雑誌『戦旗』が発刊されると編集委員(のち編集長)となり、小説「軍隊病」「泥濘」「豪雨」などを発表[1][2]。また、プロレタリア文化団体「ナップ」の書記長もつとめた[2]

反戦的な作品を発表していたが、1930年治安維持法違反で検挙、翌年獄中で転向を表明した[1][2]1932年懲役2年・執行猶予5年の判決を受ける[1][2]。執行猶予期間中の1934年に『中央公論』に発表した小説「友情」は、転向文学の佳作として評価されている[1]1935年に自伝的長編小説『流れ』を雑誌『文学評論』に連載[1]

終戦後は現代史に取材した作品を多く書き、1952年に代表作となる二・二六事件を題材にしたノンフィクション小説「叛乱」を発表。1953年に同作品で第28回直木賞を受賞[1]文壇活動としては日本ペンクラブの運営に深く関わり、幹事長、副会長などを歴任している[1]1962年に回想集「青春物語-その時代と閣占領」を刊行[1]。なお、生母とは後年再会したが、1947年に死別している[2]

代表作である「叛乱」は1953年に新国劇が舞台化し、1954年には新東宝が映画化、1964年には東映が「銃殺」のタイトルで映画化した。また、1956年出版の「明治大帝」が1962年に舞台化されている。

受賞歴

著書

  • 『軍隊病 兵士と農民に関する短篇集』戦旗社(日本プロレタリア作家叢書)1929
  • 『情報』新鋭文学叢書 改造社 1930 のちゆまに書房から復刊 
  • 『新芸術論システム プロレタリア文学論』小林多喜二共著 天人社、1931 のちゆまに書房から復刊 
  • 『流れ』ナウカ社 1936
  • 『流れ・現代長篇小説全集 第14巻 立野信之集』三笠書房 1937
  • 『後方の土』改造社 1939
  • 『時局読本 第2輯』佐野豊太郎 1939
  • 『望楼』中央公論社(新作長篇叢書)1940
  • 『黄土地帯』高山書院 1941
  • 『爆竹』文林堂双魚房 1941
  • 『菊薫る』青磁社 1942
  • 『肉親の倫理』昭森社 1942
  • 『連翹』桃蹊書房 1942
  • 『明日の花』昭和出版社 1943
  • 『北京の嵐 義和団変乱記』博文館 1944
  • 『小説旅順 百五十五日間の死闘と一兵卒の生涯』金星堂 1944
  • 『鴎』世界社 1947 (文芸叢書)
  • 『いのちの構図』実業之日本社 1948
  • 『公爵近衛文麿』大日本雄弁会講談社 1950
  • 『太陽はまた昇る 公爵近衛文麿』六興出版社 1951
  • 『叛乱』六興出版社 1952 のち角川文庫春陽文庫学研M文庫
  • 『醒めて見る夢』白灯社 1953
  • 『落陽』六興出版部 1954 のち春陽文庫
  • 『黒い花』新潮社 1955 (小説文庫) のちぺりかん社から復刊 
  • 『東京裁判』角川書店・角川小説新書 1955
  • 『明治大帝』全7巻 毎日新聞社 1956 - 59
  • 『赤と黒』新潮社 1959
  • 『壊滅』新潮社 1961
  • 『青春物語 その時代と人間像』河出書房新社 1962
  • 『昭和軍閥』講談社 1963
  • 『日本占領』講談社 1964
  • 『首相官邸』講談社 1966
  • 『茫々の記 宮崎滔天孫文』東都書房 1966

関連項目

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『日本現代文学全集 第69 (プロレタリア文学全集)』講談社、1959年、418p
  2. ^ a b c d e f g 日本ペンクラブ編『現代日本文学選集 第5卷』細川書店、1949年、182p



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