杉森久英とは? わかりやすく解説

すぎもり‐ひさひで【杉森久英】

読み方:すぎもりひさひで

[1912〜1997小説家石川生まれ雑誌文芸」の編集長として、戦後派作家数多く世に出した後、自らも作家となるさまざまな分野活躍した人々伝記小説書き昭和史の発掘にも尽力した。「天才と狂人の間」で直木賞受賞。他に「近衛文麿」「天皇の料理番」など。


杉森久英

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/05 23:41 UTC 版)

杉森 久英(すぎもり ひさひで、1912年明治45年)3月23日 - 1997年平成9年)1月20日)は日本の小説家

略歴

石川県七尾市の公務員の家庭に生まれ、金沢市で育つ。旧制石川県立金沢第一中学校(現・石川県立金沢泉丘高等学校)から第四高等学校を経て、1934年昭和9年)に東京帝国大学文学部国文科卒業。地方公務員(公立学校教員)となり、旧制埼玉県立熊谷中学校(現・埼玉県立熊谷高等学校)の教師となった。

教員を退職後、中央公論社編集部に入社。編集者という職に自信を失い退職後、大政翼賛会文化部、日本図書館協会などを経て、戦後河出書房に入り『文藝』の編集に従事。1947年『文藝』編集長に就任。

1953年デイヴィッド・ガーネットフランツ・カフカの影響が色濃い短篇小説『猿』が芥川賞の候補になったのを機に作家専業となる。伝記小説の分野で活動し、1962年には同郷の作家島田清次郎の伝記小説『天才と狂人の間』で直木賞受賞。

1963年には千葉真一主演で『白い熱球』が映画化された。

晩年は「邦楽を楽しむ会」を主催[1]宇野信夫栗本薫夫妻、小杉健治泡坂妻夫夫妻、娘の佐々木涼子杉浦幸雄峯島正行大歳克衛らが会員だった[1]

フランス文学者・舞踊評論家の佐々木涼子は長女。

1997年(平成9年)10月、遺族によって七尾市に蔵書が寄贈された[2]。寄贈された蔵書や直筆原稿は約1万冊にのぼる。「杉森久英記念文庫」は馬出町にあったが、「杉森久英記念文庫」室として2014年(平成26年)7月に馬出町から寿町の文化財資料整理室内へ移転した(七尾市立図書館が管理)[2]

受賞・叙勲歴

著書

  • 森鷗外(福村書店 1952 (国語と文学の教室) )
  • 黄色のバット(角川書店 1959)のちソノラマ文庫
  • 天才と狂人の間 島田清次郎の生涯(河出書房新社 1962)のち角川文庫、河出文庫 
  • 早稲田の虎・猿(河出書房新社 1962)
  • 海の見える窓(講談社 1963)のちソノラマ文庫
  • 回遊魚(新潮社 1963)
  • 辻政信(文藝春秋新社 1963)「参謀・辻政信」河出文庫
  • 徳田球一(文藝春秋新社 1964)
  • 啄木の悲しき生涯(河出書房新社 1965)のち角川文庫
  • 大風呂敷(毎日新聞社 1965)のち角川文庫、集英社文庫(後藤新平の伝記小説) 
  • 動物的、あまりに動物的(明治書院 1966)
  • 滝田樗陰 ある編集者の生涯(中公新書 1966)
  • 美酒一代 鳥井信治郎伝 日本ウイスキー物語(毎日新聞社 1966)のち新潮文庫
  • 苦悩の旗手太宰治(文藝春秋 1967)のち角川文庫、河出文庫  
  • 頭山満と陸奥・小村(毎日新聞社 1967)「浪人の王者頭山満」河出文庫 
  • 伝説と実像 昭和人物伝(新潮社 1967)「昭和の怪物たち」河出文庫
  • 明治の宰相 伊藤博文伝(文藝春秋 1969)のち角川文庫 
  • アラビア太郎(文藝春秋 1970)のち集英社文庫
  • 小説三木武吉(集英社 1970)
  • 中国みたまま(文藝春秋 1972)
  • 毛皮を買うヴィーナス(毎日新聞社 1972)
  • アジアの憂鬱 台北・香港・バンコク・アラブ(浪曼 1974)
  • 錆びたサーベル(河出書房新社 1974)のち集英社文庫 
  • 暗殺(光文社 1974)のち文庫 
  • 昭和史見たまま 戦争と日本人(読売新聞社 1975)
  • 大谷光瑞(中央公論社 1975)のち文庫 
  • 椰子の木蔭(時事通信社 1975)
  • 夕陽将軍 小説・石原莞爾(河出書房新社 1977.7)のち文庫
  • 風雲を呼ぶ男(時事通信社 1977.2)「挑戦する経営者」集英社文庫(一部)
  • 食後の雑談(筑摩書房 1977.12)
  • 小説坂口安吾(河出書房新社 1978.9)のち文庫 
  • 怒るべからず一癖斎(河出書房新社 1979.5)
  • あわてるな一癖斎(毎日新聞社 1979.9)
  • 天皇の料理番(読売新聞社 1979.12)のち集英社文庫(料理人秋山徳蔵をモデルとした作品。のちドラマ化)
  • 一癖斎放言(あずさ書房 1981.5)
  • 侠骨 昭和水滸伝青春篇(集英社 1982.2)
  • 荒野に骨を曝す(光文社 1984.1)
  • 食いしん坊一癖斎(河出書房新社 1984.12)
  • 能登(集英社 1984.9)
  • 近衛文麿(河出書房新社 1986.11)のち文庫
  • 明治天皇(中央公論社 1986.11)のち人物文庫
  • 小説菊池寛(中央公論社 1987.10)
  • 大政翼賛会前後(文藝春秋 1988.12)のちちくま文庫 
  • 間違いだらけのニッポン 一癖斎酔話(読売新聞社 1989.12)
  • 食べて美味けりゃすべてよし 一癖斎食話(日本経済新聞社 1990.6)
  • わが後に洪水あれ(潮出版社 1990.10)
  • 仕事部屋(日本古書通信社 1991.10 (こつう豆本))
  • 新渡戸稲造(読売新聞社 1991.12)のち人物文庫 
  • 人間の鑑賞 昭和の人々はかく生きた(PHP研究所 1991.3)
  • 私の英学修業(日本古書通信社 1993.2 (こつう豆本) )
  • 塀の中のこおろぎ 一癖斎酔話其の2(読売新聞社 1993.12)
  • すぐそこまで来ていながら(PHP研究所 1994.9)
  • ニッポン人を叱る 一癖斎直言(読売新聞社 1996.3)
  • 天才横綱 輪島大士物語(河出書房新社 1998.1)
  • 戦後文壇覚え書(河出書房新社 1998.1)
  • 人われを漢奸と呼ぶ 汪兆銘伝(文藝春秋 1998.6)

出典

  1. ^ a b 峯島正行「さらば銀座文壇酒場」青蛙房 P.98
  2. ^ a b 施設について”. 七尾市立図書館. 2022年2月12日閲覧。
  3. ^ 中日文化賞 受賞者一覧”. 中日新聞. 2022年6月2日閲覧。

関連項目




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「杉森久英」の関連用語

杉森久英のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



杉森久英のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの杉森久英 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS