海
『海の水はなぜからい(塩引き臼)』(昔話) 望みのものが出る挽き臼で弟が長者になる。兄がその臼と甘い菓子や餅を盗んで、小舟で沖へ行く。兄は甘い物を食べた後に塩が欲しくなって、臼を挽く。しかし止め方を知らなかったので小舟は沈み、臼は海底で今も塩を出し続けている(岩手県上閉伊郡)。
『パンタグリュエル物語』第二之書(ラブレー)第2章 昔ファエトン(パエトン)が父太陽神に代わって光明の車駕を操った時、技が拙かったために、車駕は黄道を逸脱して著しく地球に接近した。大地は熱せられて多くの汗を流し、それが海となった。それゆえ海は、汗同様に塩辛いのである。
『西遊記』百回本第42回 観音菩薩が浄瓶を海に投げ込むと、まもなく亀が背に浄瓶をのせて浮かびあがる。孫悟空が浄瓶を取ろうとするが、持ち上がらない。海に投げ込まれた時、浄瓶は海の水をすべて中に収めてしまったのだった〔*観音はこの浄瓶で、妖怪紅孩児の三昧火を消す〕。
*→〔無尽蔵〕2bの『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』第46~47章。
『太平記』巻10「稲村崎干潟と成る事」 新田義貞が、海上をはるかに伏し拝み「潮を退け道を開かせ給へ」と龍神に祈誓して、黄金作りの太刀を投ずると、稲村ヶ崎20余町が干上がった。6万余騎は、遠干潟を真一文字に鎌倉へ攻め入った。
*→〔玉(珠)〕3の『太平記』巻39「神功皇后新羅を攻め給ふ事」。
『出エジプト記』第12~14章 イスラエルの人々が葦の海(あるいは紅海)まで来た時(*→〔呪的逃走〕3)、主(しゅ)は一晩中、激しい東風をもって海を押し返し、水は2つに分かれた。イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んで行き、水は彼らの右と左に壁のようになった。ファラオの戦車部隊があとを追って海に入るが、主が水をもとの場所へ戻したので、ファラオの軍は全滅した。
『海と夕焼』(三島由紀夫) 13世紀のフランス。少年アンリはキリストに出会い、「お前ら少年が、聖地エルサレムを異教徒トルコ人から取り戻すのだ」と命ぜられた。「同志を集めてマルセイユへ行け。地中海の水が2つに分かれて、お前たちを聖地へ導くだろう」。アンリたち少年十字軍はマルセイユへ行き、懸命に祈ったが、海は分かれなかった。「船でエルサレムまでお連れしよう」と言う悪人に騙され、少年たちは奴隷として売られる。アンリは大覚禅師に拾われ、日本へ渡って、鎌倉建長寺の寺男安里となった。
『マハーバーラタ』巻3「森の巻」 神々との戦争に敗れて、悪魔たちは海底へ逃げ込んだ。彼らは夜ごとに陸地へ上がり、多数のバラモンたちを食い殺して、また海底に隠れた。このままでは世界が滅んでしまうので、神々の依頼によって、アガスティヤ仙人が、一気に大海を飲み干す。干上がった海に神々が攻め入り、悪魔たちを殺した。
*海の水を飲み干すが、川の水は飲まない→〔契約〕2の『寓話』(ラ・フォンテーヌ)第1集「フリギアの人イソップの生涯」。
『三宝絵詞』上-4 大施太子が龍王から得た如意珠を、諸の龍たちが奪い返し、海中に没した。太子は再び如意株を得るために、「海の水は多いといっても限りがある」と言って、貝殻で海水を汲みつくそうとする。龍たちはあざ笑うが、天人が力を貸し、太子が1~2度汲むだけで、海水の10分の8がなくなった〔*『宝物集』(七巻本)巻5の類話では、大海が半分に減じて龍宮が海上に現れた、と記す〕。龍王はあわてて如意珠を太子に返した〔*山を崩して平地にしようとする愚公の物語と類想→〔山〕6cの『列子』「湯問」第5〕。
『山海経(せんがいきょう)』第3「北山経」 炎帝神農氏の娘女娃(じょあい)は、東海に遊んで溺れ死んだ。彼女は、化して精衛という小鳥になり、以来、つねに西山から小枝・小石をくわえて運んで来ては、東海を埋めつくそうとしている。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第7章 イピメデイアは海神ポセイドンに恋していつも海へ行き、海水を掬っては懐に注ぎ込んでいた。ポセイドンはイピメデイアと会合し、彼女は2人の子供を産んだ。
★5.海上を歩く。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第4章 巨人オリオンは、一説では海神ポセイドンの子である。ポセイドンはオリオンに、海上を自由に歩く力を授けたという。
*イエスが湖上を歩く→〔湖〕2の『マタイによる福音書』第14章。
『丹後国風土記』逸文 水の江の浦の嶼子(=浦島)は、亀の化身である美女から「蓬山(とこよのくに)へ行こう」と誘われ、舟を漕いで海中(わたなか。*「遠い海の彼方」とも「海底」とも解釈できる)の大きな島に到った。7人の童子と8人の童子が出迎えて、「この人は亀比売(かめひめ)の夫だ」と言った。美女(=亀比売)は、「7人の童子は昴星(すばるぼし=プレアデス星団)。8人の童子は畢星(あめふりぼし=ヒアデス星団)」と説明した。
*天の雷が木に落ちて魚に化す→〔落雷〕3bの『日本書紀』巻22推古天皇26年8月。
『海神別荘』(泉鏡花) 欲深い男が、海中の財宝を得ることと引き換えに、1人娘を海へ沈める。娘は海底の琅カン殿(ろうかんでん。=龍宮世界)に到り、乙姫の弟である公子に迎えられる。娘は、自分が生きていることを父に知らせたいと思い、陸へ上がるが、人間の目には、娘が大蛇に見えた。父は鉄砲で大蛇を撃とうとするので、娘は悲しんで海底へ戻り、公子との幾久しい契りを誓う。
★6c.海の底にも都がある。
『平家物語』巻11「先帝身投」 壇の浦の海戦で平家は敗北し、源氏の兵たちが平家の舟に乗り移って来る。二位殿(=平清盛の妻・時子)は、神璽(=勾玉)と宝剣(=草薙の剣)を持ち、8歳の安徳天皇を抱いて船端に立つ。二位殿は、「極楽浄土へお連れいたしましょう。浪の下にも都がございますよ」と安徳天皇を慰め、2人は海の底深くへ沈んで行った。
『現代民話考』(松谷みよ子)6「銃後ほか」第9章の5 第2次大戦が終わり、満州や朝鮮から内地へ引き揚げる日本人たちは、暴行され、殺され、飢えや病気で多くの人が死んだ。朝鮮の海辺で1人の母親が、「海の下には町があるのよ。おにぎりもお菓子もあるから、お母さんと一緒に行きましょう」と、しきりに子供に言いきかせているのを、聞いた人がいた。
★6e.海の中はとても良い所だった、という嘘。
『俵薬師』(昔話) 海へ沈めたはずの嘘吉が(*→〔袋〕9a)、旦那の家へやって来て、「海の中は、とんだいいとこだった。牛ももらった。米ももらった」と言う。旦那は「そんないいとこなら、おれも1ぺん連れてってくれえや」と請う。嘘吉は旦那と一緒に海辺へ行き、旦那を海へ突き落とす(長野県上水内郡小川村稲岡東)。
★7a.海に沈む宝。
『今昔物語集』巻11-15 新羅国の宰相が、東天竺小天子国から弥勒菩薩像を盗み出し、船で帰国する。途中、海が荒れたので船中の財宝を投げ入れるが、風波はおさまらない。「命が助かるためには、第1の宝である弥勒菩薩像の眉間の珠を海に入れるしかない」と考えて投ずると、龍王がこれを取り、海は静まった。
『続日本紀』巻1文武天皇4年3月己未 道照は、玄奘三蔵から不思議な鍋をもらい帰国する。途中、船が波間に漂い7日7夜動かない。「龍王が鍋を欲している」との占い師の言に従い、海に鍋を投ずると船は進み出す。
『平家物語』巻11「内侍所都入」 壇の浦の合戦の時、三種の神器(=宝剣・神璽・内侍所)のうち宝剣(=草薙の剣)は、安徳天皇とともに海に沈んでしまった(*→〔海〕6c)。神璽(=勾玉)は海上に浮かび上がり、内侍所(=鏡)は船中で源氏の兵が確保して、内裏へ戻された→〔転生と天皇〕3。
『海士(あま)』(能) 唐土から興福寺へ贈られた3つの宝、花原磬・泗濱石・面向不背の玉のうち、面向不背の玉は讃州志度の浦沖で龍神に取られ、海底の龍宮に沈んでしまった。藤原淡海大臣の依頼を受けた海士乙女が海底に飛び入り、命を捨てて玉を取り戻した。
『古事談』巻6-9 唐人の船が沈みそうになる。種々の財物を投げても海中に入らず、水龍という笛を入れるとたちまち没して、船は無事であった。後、沙金千両と引き換えに龍王からこの笛を取り返し、平等院の宝蔵に納めた。
『冒険者たち』(アンリコ) 財宝を積んだ小型機が、アフリカのコンゴ沖に墜落する。中年男ローラン、青年マヌー、美女レティシアの3人が船で沖に出、潜水して海底から財宝を引き上げる。財宝をねらうギャングたちが現れ、まずレティシアが、次いでマヌーが銃撃されて死ぬ。怒ったローランは手榴弾を投げて、ギャングたちを皆殺しにする。ローランは、死んで行くマヌーに「レティシアはお前と暮らすと言っていたぞ」と語りかける。マヌーは「嘘つきめ」と笑って息絶える。
『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」 神々が、マンダラ山を地面から引き抜いて海に入れ、海をかきまわす棒軸とする。亀王クールマの背中にマンダラ山を乗せ、龍王ヴァースキを巻きつけ、その頭部と尻尾を引っ張って、マンダラ山を回転させる。海は攪拌されて乳状になり、ラクシュミー(=ヴィシュヌ神の妃)、神酒ソーマ、月、白馬ウッチャイヒシュラヴァスが現われる。そして神々の医師ダンワンタリが、不死の飲料アムリタ(甘露)の入った容器を押し戴いて、姿を現した。
★8.海の名前の起源。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第9章 ボイオティア王アタマスの息子プリクソスは、ゼウスへの生贄にされそうになったので、妹ヘレと一緒に、空飛ぶ金毛の羊に乗って逃げた。ヨーロッパからアジアに渡る海峡にさしかかった時、妹ヘレは羊の背から滑り落ちて、溺れ死んだ。その海は、彼女の名をとってヘレスポントス(=ヘレの海。現在のダーダネルス海峡)と呼ばれた。
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