りゅう‐ひょう〔リウ‐〕【流氷】
流氷(りゅうひょう)pack-ice, drift-ice
流氷(drift ice/pack ice)
流氷
流氷
流氷
流氷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/07 04:13 UTC 版)

流氷(りゅうひょう、英: drift-ice[1]、driftice[2])とは、海に浮かび漂流している氷のことである。海で見られる氷(海氷)は、その運動形態から、海を漂っている「流氷」と、岸にへばりついている「定着氷」とに分けられ、定着氷は流氷には含まれない。組成に注目すると、いずれも海氷が凍ってできた氷である。ただし、一般用語の「流氷」は、河川から流下した氷も、氷山や氷河が崩れた氷も、海を漂う全ての氷の意として広義に用いられる(世界気象機構海氷用語集の「浮氷」に相当する)。また、海面上の氷に限らず、より広く河川や淡水湖の氷が水面に漂っているものも含めて流氷と呼ぶこともある。北極海や南氷洋(南極海)などのほか、日本近海ではオホーツク海で見られる[3]。
北風によって海岸に打ち上げられた流氷が重なり合って、小さな丘のような形を作ることがある。これを氷丘(ひょうきゅう)と言い、氷丘が水辺にあたかも山脈のごとく、高さ数メートル、長さは長いときには1キロメートル以上にもわたって造り出されたものを流氷山脈という。
オホーツク海の流氷
自然
日本では北海道の北東に位置するオホーツク海の流氷が有名である。北海道立オホーツク流氷科学センター(紋別市)によると、オホーツク海北岸付近で寒風により海水が凍っては流されを繰り返し、東樺太海流に乗って北海道へ南下してくる。オホーツク海は北半球における流氷の南限である[4]。
北海道沿岸から流氷が確認できたそのシーズンの最初の日を「流氷初日」という。日本での流氷初日は、平年では北海道のオホーツク海沿岸で1月中旬から下旬頃であり、その後1月下旬から2月上旬頃にかけて接岸する。接岸した初日を「流氷接岸初日」という。その前に、海上自衛隊八戸航空基地(青森県)に所属する哨戒機が空中から流氷を発見・観測し、報道されるのが1960年から恒例となっている[5]。
風向きによって流氷はさらに南下を続け、太平洋側に位置する釧路市周辺に接岸することもある。春が近づき、沿岸から見渡せる海域に占める流氷の割合が5割以下となり、かつ船舶の航行が可能になると「海明け」が宣言される。また、沿岸から最後に流氷が見られた日を「流氷終日」という。
オホーツク海のアザラシの中には天敵の少ない流氷の上で子育てをするものもいる。オジロワシなどの鳥類、キタキツネなども流氷に乗ってシベリアから北海道東部までやってくる。
流氷には植物プランクトンが付着している。春になると植物プランクトンは一気に増殖し、これを餌に動物性プランクトンも増えオホーツク海の漁場を豊かにする。なお、流氷の下にはハダカカメガイ (クリオネ)などのプランクトンを捕食する生物も多い。
道東の流氷は観光資源であると同時に、接岸している冬季に巨大地震などによる津波が押し寄せると建物などにぶつかって被害を増大させるおそれがあり、十勝沖地震(1952年)で実例がある[6]。
観光
日本人にとってオホーツク海といえば北の最果ての地という印象が強い。しかし、例えば網走市の位置する北緯44度にはモナコやコートダジュールなどの地中海沿岸の温暖な保養地が位置するように、オホーツク海沿岸などの北海道周辺の海域は、世界で最も低緯度の流氷が見られる場所である。
流氷は、日本のオホーツク海沿岸の観光資源ともなっている。北海道網走市の流氷観光砕氷船 (道東観光開発の「おーろら」)、北海道紋別市の流氷砕氷船「ガリンコ号II」が観光資源としての活用で知られる。運航は主に流氷の来る1月半ばから3月末日までで、天候により流氷が沿岸にいないときには、港内運航とするか、流氷のいる沖合まで足を延ばすなどしている。網走のおーろらは491トン、定員450名、おーろら2は489トン、定員450名で、流氷観光を目的とするパッケージツアー客を中心に観光時期はにぎわう。紋別のガリンコ号は、2007年時点では「ガリンコ号II」が就航しており、網走よりも小ぶりながら、人気を博している。
JR北海道の釧網本線では、流氷を眺める列車として、網走 - 知床斜里間に、流氷ノロッコ号というトロッコ列車を運行していた。この列車は、釧網本線のオホーツク沿岸の区間で列車からゆっくり流氷を眺め、酷寒体験も行えるというもの。かつては吹きさらしの展望車両を設置していた。2017年からは後継列車として流氷物語号が運行されており、オホーツク海を望む展望台がある北浜駅 (北海道)と、道の駅が併設された浜小清水駅で長時間停車するために降車して観光を楽しめる[7]。
アクティビティでは、北海道斜里町をはじめとしたオホーツク海沿岸で、民間会社等により流氷の上を歩いたり、ドライスーツを着て流氷の海に浮かんでみたりするツアーが企画されている。
また流氷の下の海中に潜るスクーバダイビングも実施されている[8]。
五大湖の流氷
北米大陸の五大湖と大西洋を結ぶセントローレンス川も流氷が流れ着くことで知られている[9]。カナダのケベック市で毎年冬に開催されるアイスカヌーレース(Ice Canoe Race)は、カヌーで流氷をかき分けて対岸を目指すレースで冬の風物詩となっている[9]。
楽曲
- 流氷の手紙(歌: 城之内早苗、作詞: 秋元康、作曲: 後藤次利)
- 流氷の街(歌: 渡哲也、作詞・作曲: 小椋佳)
- 流氷(歌: 石川さゆり、作詞: 阿久悠、作曲: 中村泰士)
- 荒涼(歌: ハイファイセット、作詞・作曲: 松任谷由実)
- 流氷(歌: 秋庭豊とアローナイツ、作詞: 松岡はじめ、作曲: 聖川湧)
ギャラリー
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網走沖の流氷 (1)
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網走沖の流氷 (2)
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網走沖の流氷 (3)
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警告の看板
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流氷ウォーキング中の人。ドライスーツを着用し、インストラクターが付いている。
脚注
- ^ 文部省編『学術用語集 地理学編』日本学術振興会、1981年。ISBN 4-8181-8155-2 。
- ^ 文部省、日本気象学会編『学術用語集 気象学編』(増訂版)日本学術振興会、1987年。ISBN 4-8181-8703-8 。
- ^ 流氷ってなに?-10の質問-北海道立オホーツク流氷科学センター(2018年3月6日閲覧)
- ^ わかるかな?流氷Q&A 北海道立オホーツク流氷科学センター(2018年3月6日閲覧)
- ^ 【防衛最前線】(21)哨戒機P3C 職人芸で敵潜水艦を追い詰める「世界一いやらしい部隊」『産経新聞』朝刊2015年3月20日
- ^ 【津波が来る!】沿岸 流氷伴う被害懸念/千島海溝地震想定「全壊最大5千棟増」『朝日新聞』朝刊2021年12月23日(北海道面)2022年1月9日閲覧
- ^ 北海道旅客鉄道株式会社. “流氷物語号|JR北海道- Hokkaido Railway Company”. 流氷物語号. 2019年12月18日閲覧。
- ^ 知床ダイビング企画(2018年3月6日閲覧)
- ^ a b 「流氷かき分け進む究極のカヌーレース、カナダ・ケベックの冬の風物詩」AFP(2017年4月16日閲覧)
関連項目
外部リンク
- 第一管区海上保安本部海氷情報センター. “海氷情報センター”. 2012年2月3日閲覧。
- 気象庁. “海氷の知識”. 気象等の知識. 2012年2月3日閲覧。
- 気象庁. “海氷に関する診断表、予報、データ”. 気象統計情報. 2020年2月29日閲覧。
- 気象庁. “海氷のデータ 北海道沿岸の海氷観測(平年値と極値)”. 気象統計情報. 2012年2月3日閲覧。
- オホーツク・ガリンコタワー株式会社. “ようこそオホーツクへ/流氷砕氷船ガリンコ号Ⅱ”. 2012年2月3日閲覧。[リンク切れ]
- 道東観光開発(株). “網走流氷観光砕氷船 おーろら 公式ホームページ”. 2012年2月3日閲覧。
- 株式会社ノア. “流氷サイト”. 2012年2月3日閲覧。
流氷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 15:57 UTC 版)
詳細は「ポリニヤ」を参照 アムール川(黒龍江)の水が流入する河口付近では塩分の濃度が低く、密度成層が強くなるため冬季には厳しい寒気団であるシベリア高気圧の影響も受けて海氷が形成される。河口付近以外の海域北部でも12月から結氷が見られ、最盛期の2月にはオホーツク海の7から8割が海氷で覆われる。日本海北部とともに、オホーツク海が北半球海氷が分布する海域で最も低緯度であるのは、このアムール川の河川水の流入によるところが大きい。風と海流(東樺太海流)に運ばれた海氷は流氷と呼ばれ、樺太東岸に沿って南下し、時には太平洋岸の釧路市付近まで到達することがある。
※この「流氷」の解説は、「オホーツク海」の解説の一部です。
「流氷」を含む「オホーツク海」の記事については、「オホーツク海」の概要を参照ください。
「流氷」の例文・使い方・用例・文例
- 私は流氷を見るために北海道に行った。
- 港は流氷ですっかり閉ざされてしまった.
- 北海道沖に流氷が出現
- オホーツク海の流氷は北海道の冬の風物詩の1つだ。
- 多くの観光客が陸地や砕(さい)氷(ひょう)船(せん)から流氷を見るために北海道を訪れる。
- 網(あ)走(ばしり)地方気象台は,1月17日に今年初めて流氷が網走から観測されたと発表した。
- 流氷の表面積は標準よりやや小さい。
- 通常,流氷は4月上旬まで見られる。
- 青森県八(はちの)戸(へ)市(し)に駐(ちゅう)屯(とん)している海上自衛隊の航空部隊は,気象庁の要請で流氷の監視を行っている。
- 海での事故を防ぐため,同部隊の航空機がパトロール飛行を行って流氷の位置を測定する。
- 海上自衛隊は流氷シーズン終了の4月までに計10回のパトロール飛行を行う予定だ。
- 地球温暖化のため,海氷や流氷がだんだん減少しており,今では大型船が砕氷船の助けを借りて北極海航路を進むことができるのだ。
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