霊装(れいそう)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 18:48 UTC 版)
「とある魔術の禁書目録の用語」の記事における「霊装(れいそう)」の解説
魔術を行使する時に用いる道具や、魔術的効果が付加された武器・装備の総称。いわゆる魔法の道具。 儀式や戦闘の際に、より精密な手順や効率化が求められる場合に要し、杖を始めとして多種多様な形状や効果の霊装が存在する。魔術師は霊装を掴むことによって体の一部と見做し、自身の魔力を流し込み循環させ、魔術を発動する。基本的に霊装は術者とセットでのみ力を発揮する道具に過ぎないが、遠隔地から魔力を供給しつつ自律稼働させるタイプもあり、「歩く教会」のような一部の例外は魔力がなくとも効果が永続する。 霊装とは言っても必ずしも伝説の品や古めかしい道具である必要はなく、形と役割さえ整っていれば身の回りの日用品でもある程度機能する。ただし、やはり魔術的な細工を施した専用の霊装や、伝承上の道具と似た効果を付加させた霊装の方が機能性が増す。また中には現代では代用不可能な神話級の効力を持つ霊装も存在し、場合によっては起動の際にそういった霊装が必要な大規模魔術もある。 霊装の規模としては、手に持って扱えるサイズの比較的小規模な霊装から、身の丈を優に超える大型霊装・魔術兵器、さらには神殿や教会のような魔術的施設や儀式場、果ては巨大な魔術要塞まで多岐に渡る。 なお、本作に登場する霊装の杖は、いずれも何らかの植物をモチーフにしたデザインとなっている。 以下では作中に登場した主な霊装について列挙する。特定の個人専用の霊装については当該項目を参照。 象徴武器(シンボリックウェポン) 近代西洋魔術において用いられる、火・風・水・土・エーテルの五大元素(エレメント)を象徴する武器の総称。魔術師の持つ典型的な霊装であり、それぞれが「杖」「短剣」「杯」「円盤」「蓮の杖」に対応し、それぞれの属性に合わせた効果を発揮する。儀式道具から個人が持つ武具まで様々な場面で用いられており、これから派生した霊装も多い。 昔は霊装が破壊されると循環が断たれて魔術師がダメージを負うということがあったため、象徴武器の場合は下手な干渉が循環不全を起こさないよう、「製造も聖別も使用者本人が行い、他者には触れさせるな」とされていた。ただ、最近は安全装置も開発されている。 四属性の1つ1つはそれぞれの力の端を担っていながら、1つの属性を操るという事は広義において他の全ての属性にも影響を与えるものとなるので、即物的な戦闘行為を除く大規模な儀式では象徴武器は1つではなく一式全て揃えるのが基本。タロットカード 愚者から宇宙までの22枚の大アルカナと、「棒」「杯」「剣」「盤」の4種56枚の小アルカナからなるカード群。小アルカナは、4種を基に「火」「水」「風」「土」に対応する象徴武器になる。本来であれば占いに使う霊装で、大規模な儀式系の魔術に向く。 「黄金」系組織では術式発動のために最適化された象徴武器として特殊なタロットを製造する。「黄金」が既存のタロットカードをカバラの秘儀的に再解釈したGD正式モデルは、神の子の誕生から処刑、復活までを描く事で、その力の一端を引き出そうとする意味合いが強く、大アルカナ22枚はセフィロトの樹を繋ぐ22本のパスと同期していて、人の身で神の領域に踏み込む術を獲得しようとしているが、あくまで十字教で説明できる範囲内の奇跡を扱っている。 西旗(せいき) 近代西洋魔術の象徴武器。巨大な正三角形の中心に十字が配置されているという外見で、儀式場において人に仇なす悪しき力の塊を監視し、その接近を拒絶することで術者を守る、数ある象徴武器の中でも極めて便利な追儺の印。悪にして無益な力の塊のみに斥力を働かせ、善にして有益な力には影響を及ぼさない事から、使い勝手がいいのも特徴。 アレイスターはコロンゾンへの対症療法として、学園都市の幹線道路を利用して巨大な西旗を構築し「暫定封印」を行った。 歩く教会 インデックスが着ている修道服。物理・魔術を問わず、どんな攻撃も無効化する法王級の結界を持つ霊装。トリノ聖骸布をコピーした布地と教会の魔術的構造を集約した刺繍や裁縫などにより、「服の形をした教会」と称される。また身を守ると同時にその存在を探知させないという効果もある。 インデックスと上条が出会った際に「幻想殺し」によって破壊されてしまった。現在は各所を安全ピンでとめて修道服の体裁を整えているが、すでに魔術的効力は無い。 これの簡易版として(イギリス清教のアレンジが加わった)ケルト十字架があり、姫神はこれによって自身の能力を消している。ステイルや神裂にも支給されていない非常に高価で特殊な方式の霊装である。 聖霊十式 ローマ正教が誇る強力な10個の霊装。作中では「使徒十字」と「アドリア海の女王」が登場したが、いずれも失われた。使徒十字(クローチェディピエトロ) 「聖霊十式」の1つにして、ローマ正教史上最大級の霊装。十二使徒ペテロの処刑に使われペテロの墓に建てられた「ペテロの十字架」(伊: Croce di Pietro)と同一の物品。 材質は大理石製、外観は剣に似て、長さは縦1.5メートルに鍔の幅が70センチメートル、太さ10センチメートル強で、下端が尖っている。起動の際には、霊装の下端を大地に突き立てて夜空の星の光をアンテナのように受け止め、見た目の星座を魔法陣とする必要があるなど条件がある。88星座の一部分を使うことで、一地方につき1年周期でしか使えず、各地によって日付が限定される(バチカンならペテロが殉教した6月29日、学園都市を含む日本の関東西部では9月19日のみ)という制約があるものの、世界中のあらゆる場所で使用することが可能である。 発動後、その効果範囲内は幸運と不幸の確率が捻じ曲げられ、ローマ正教にとって都合の良い出来事しか起きなくなり、さらに他の人々もそれが幸福と感じるようになってしまい、物理と心理の両面から強制的にローマ正教の支配下に置かれる。最大有効範囲は最盛期のローマ教皇領と同じ4万7000平方キロメートル(=約200キロメートル四方)とされている。あくまで「ローマ正教全体にとって都合の良い方向へ、自動的に導いていくだけ」の術式なので、錬金術の「黄金錬成」ほど人間の意志を汲み取ってくれるわけではないが、神話上の心理効果も利用した幸福の「すり替え」により、特定の手順を踏む事でマイナスとマイナスの天秤を操り、幸福の相対価値を下げて「たとえ何が起きても幸せだと感じるように」なり、理不尽な要求を突きつけられても「なぜかそれを納得して受け入れてしまう」、ローマ正教徒にとっては極めて居心地の良い「聖地」となる。ペテロが自身の死を利用するために用意した霊装であり、その墓の跡地でのローマ教皇領建国や歴史上のローマ正教にとって都合の良い出来事は全て「使徒十字」の影響である。 骨董的な価値も高く、歴史上において一度も公開されたことがない。そのためローマ正教外部では伝承が変化し、「竜をも貫き地面に縫い止める剣」といういわくのある、切っ先を向けただけで距離に関係なく聖人を確実に即死させる剣状の霊装「刺突杭剣(スタブソード)」と認識されていた。 大覇星祭初日にリドヴィアによって学園都市に対して使用されるが、ナイトパレードの光に阻まれ失敗し、その後リドヴィアの捕縛に伴いイギリス清教に回収された。 アドリア海の女王 / 女王艦隊 「聖霊十式」の1つ。ヴェネツィアの別名を冠する対都市殲滅用大規模攻撃術式。術式本体は、200メートル級の大型帆船「アドリア海の女王」に備わり、さらにそれを取り囲むように100隻に及ぶ100メートル級の護衛艦群「女王艦隊」が配備されている。 大天使「神の力」がソドムとゴモラに「あらゆる物から価値を奪う」効果を持つ火の矢の雨を降らせた天罰をもとに、ヴェネツィアを背徳の都に対応させており、術式を発動すると、まず第一段階として対象となる都市に火の矢を発射しヴェネツィア全土を完全に破壊させ、第二段階ではその都市から発祥した人・物品・文化も根こそぎ消滅させる。元は9世紀、教皇領からそう遠くない位置にあり、破門状を何度出されても発展し続け、バチカンと対抗しつつあったヴェネツィアを警戒したローマ正教によって作り上げられた霊装だが、結局一度も使われなかった。 材質は、いずれの艦も外壁から内装まで全てが淡く光る半透明の氷で出来ており、魔術によって融点が変動されているためか常温の氷となっている。内部では船体の一部として鎧の氷像がロボットのように稼働し、外部には「聖バルバラの神砲」などの武装も備わり、また破壊されても海水を元にいくらでも再生可能。海上および空中の索敵圏は「女王艦隊」から半径5.5キロメートルほどで、当初は海中からの接近・離脱を察知しにくい欠陥があったが、2度の失敗から対策を講じている。アドリア海の女王は船体の全てが女王艦隊の制御機能を有し、内装の一つ一つが艦隊一隻一隻の操作に対応しており、中心に位置する特殊な四角錐状の一室が全ての中枢機関である。なお、表向きの建前ではアドリア海の監視施設および罪人の労働施設とされている。 強力過ぎるために、誰かに奪われて自分たちへ向けられる危険性を考慮して照準制限が設けられ、ヴェネチア専用にしか使えなかったが、ヴェントが考案・開発した術式「刻限のロザリオ」を併用することによって、制限を解除し任意の都市への攻撃が可能となった。 ヴェントが実用レベルまで再調整を行い、ビアージオの指揮とアニェーゼ部隊の作業により稼働し、学園都市を標的とするべく準備が進められていたが、上条らによって阻止・破壊された。 C文書 正式名称は "Document of Constantine" 。約1700年前のローマ皇帝コンスタンティヌス大帝が十字教を公認する際、十字教のトップがローマ教皇である事と、コンスタンティヌス大帝が治めた土地権利などを全てローマ教皇に与える事を記したとされる、ローマ正教にとって有利な権利証明書。本体は古めかしい羊皮紙の束。ただし、文書としては偽物である。 霊装としての真の効果は、ローマ正教徒に対して「ローマ教皇の発言をどのようなものであろうと正しいと信じさせる」というもの。外敵や騒乱などローマ正教存続の危機に際し、「神は絶対」を貫いて人々の希望を守り人心を保つために作られた霊装とされる、「理想と現実の間を埋めるための霊装」と言われる。ただし、対象は信者のみに限られ、「正しいと人に信じさせる」だけで「黄金練成」のように事実や物理法則を捻じ曲げるほどの効果はなく、ローマ正教にとっての正しさに関心のない者や善悪を問わない者を操る事はできない。それでも効果は強力で、一度宣言した事柄はC文書の力を以ってしても取り消すのは難しい。それゆえ使用には上層部全体の承認を得るなど慎重かつ莫大な手順が必要であり、教皇の独断で乱用することは出来ない。また発動にはC文書をバチカンの中心に据え置く必要があり、そこから地脈を通じて全世界に命令を発信する。ただしバチカン以外でも、13世紀末のアビニョン捕囚の関係で術的なパイプラインがバチカンに繋がっているフランス南部アビニョンの教皇庁宮殿に限り発動でき、その場合には枢機卿の意見をまとめずに使用することが可能だが、その代わりバチカンでの操作に比べて準備に時間がかかる。 左方のテッラがバチカンからアビニョンに持ち込み学園都市への抗議デモの煽動に利用したが、上条の「幻想殺し」によって破壊された。 スレイプニル ロシア成教で使われる霊装。8本足の馬の形をした銀色の金属製で、凍土や雪原での走行に特化した移動用霊装。全面が金属板で覆われた、ダンゴムシや西洋鎧のような外観の馬車を後部に付随させている。 カーテナ イギリス王室に代々伝わる霊装。イングランド式の戴冠用の儀礼剣であり、「王を選ぶための剣」とも称される。外観は全長80センチメートルほどの両刃の西洋剣だが、刀身は切っ先や刃がなく四角い板状で、鞘も付いていない。 この剣の所有者はイギリス国内限定で天使長「神の如き者」と同等の「天使の力」を獲得し、さらに配下の騎士達を「天使軍」に対応させて「天使の力」を分け与えることが出来るという、イギリス最大の霊装。1500年代に近隣諸国との煩雑な政治に悩まされていたヘンリー8世が、4という「大地」を示す数字から、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの4国を利用して、「4国のみで成り立つ『全英大陸』」という魔術的意味を生み出し、ローマ教皇よりも偉いものとして国王の立ち位置を「天使長」に定める、という特殊な法則に従っている。いわば、四文化の地理的条件を組み込んだ巨大術式を制御する指揮棒である。これらの経緯から、「イギリスの王様を決めるための剣」から「イギリスの天使長を決める剣」にレベルアップした。なお、王侯貴族にしか作用しないため一般の民に対しては効果がなく、「清教派」も恩恵を受けられない。 天使長と同等とはいっても疑似的な物であり、実際の天使と比べれば力の差は歴然で、振るうのが人間であるために天使の術式を扱うことは出来ないが、所有者は聖人を遥かに凌ぐほどの超人的な力を手に入れる。また、世界からイギリスを切り離し制御するという特性を応用し、「全次元切断術式」と呼ばれる文字通りあらゆる次元を切り裂く攻撃が可能となり、世界の壁越しでもでも当たりさえすればエイワスなどの異なる位相に潜む存在すらまとめて死亡させうる破格の斬撃を放てるようになる。この術式を空間に使用すると、三次元上の断面として白い帯状の「残骸物質」が形成される。これは見た目以上の質量を持つため投擲武器としても有用で、なおかつ異能による副産物であるため「幻想殺し」でも既に形成された残骸物質を消滅させることは不可能である。力を完全解放できた場合、戦略爆撃レベルの破壊力がないと体勢を崩す事もないほどの防御力を得るので、人類の魔術では傷一つつける事もできない可能性があり、本物の天使か「魔神」でもない限り拮抗できないとされている。 かつて存在した「カーテナ=オリジナル」はピューリタン革命の際に行方不明となり、現在使われているのは後世に作られた代替品「カーテナ=セカンド」である。ピューリタン革命の成功はカーテナの暴走が原因だと考えられており、1年で最も長い期間滞在しているバッキンガム宮殿には、暴走した力を的確に逃がし、大爆発を免れるための設備群として、普通の地下鉄路線から枝分かれした場所に控える魔法陣を施した特殊車両を速やかに宮殿の真下へ運び込む仕掛けがある。 ブリテン・ザ・ハロウィンにおいて、以前から密かに発掘されていたカーテナ=オリジナルが第二王女キャーリサの手に渡り、クーデター発生の発端となる。圧倒的な力で「清教派」ら抵抗勢力を苦しめるが、最終的にオリジナルは上条によって破壊される。この戦闘でセカンドの刀身にも損傷が生じたが、第三次世界大戦ではオリジナルとセカンドの激突で生じた欠片を利用した剣が複数登場する。だが、セカンドの刃が欠けてしまったことで、イギリス全体のオカルト的な統治体制が揺らいでおり、そこをコロンゾンに突かれることになる。カーテナ=ロスト 切っ先なき王の剣の、敢えて不要な切っ先を回収して穂先に取り付けた争乱と殺戮の獲物。数センチの破片を御するため、鋼管や装甲板で周囲を徹底的に固めており、一見して重量級の槍のように見える長物となっている。 移動鉄壁 イギリス王室専用の長距離護送馬車に付けられた通称。公道を走れるようにナンバープレートを取り付け、車輪や木材のフレームの強度などを調整されたパレード用の大きな馬車だが、同時に700以上の霊装や魔法陣によって徹底的に守りを固めた一品である。移動時には前後に10台以上の馬車が連なり、騎兵用の馬も隊列に加わる。1台1台の性能ではなく、古い街道を敷設する際にも一定の間隔で設置された魔法陣とも合わせた魔術効果によって、時速500キロメートルを超える速度で走行する。 鋼の手袋 「新たなる光」のメンバーが持つ槍に似た霊装。雷神トールのミョルニル以外に使った鉄の棍棒、力帯、鉄の手袋の効力を分析して融合させた霊装で、トールの本質である農耕神の力を柔軟に振るうための武器。 全長1.5メートル前後の金属製の柄と、先端に40センチメートルほどの4本の刃が付いた、マジックハンドのような形状をしている。鉄の棍棒を振るう莫大な破壊力と、それを自在に振るうための力帯による腕力増強、「高威力の霊装を正確に操るためのインターフェイス」と解釈した鉄の手袋による「掴む」に代表される応用性を併せ持ち、刃を人間の指のように駆動させてどんな物でも掴み取るという機能を有する。刃の部分で地面を掴み、魔女の箒のように柄に跨って移動に使う事もできる。ただし、霊装そのものには雷の属性はない。 大船の鞄(スキーズブラズニル) 「新たなる光」が所有する霊装。主神オーディン含む、アース神族を全員乗せる事ができ、折り畳むと袋の中に収納できるサイズになるという船「スキーズブラズニル」の名を冠する。 外見は古ぼけた四角いカバンだが、オーク材を主原料にして作られた全長10メートルを超えるカヌー状の船を手作業で強引にカバンの形に組み立てたもの。自分が持つカバンの中身を、半径約100キロメートル以内にある同系の霊装へ自由に空間移動させることができる。 ブリテン・ザ・ハロウィンの際、カーテナ=オリジナルの輸送のために使用された。 ロビンフッド 「騎士派」が有する遠距離狙撃用の霊装で、鏃を巨大化させた矢の形をしている。キャーリサ直属の部隊で開発され、強力で使いやすく確実に敵を殺せるように特化されている。 カヴン=コンパス イギリスが保有する石製の巨大円盤型移動要塞。大きさは直径200メートル、厚さ10メートル程で、迎撃術式を防ぎきるだけの大型防壁が搭載される。上面は大規模閃光術式の照射装置で、下面からは無数のロープが張られ魔女たちが搭乗する。 セルキー=アクアリウム イギリスが保有する水中活動する魔術師のための潜水型の母艦に当たる要塞。 ブリテン・ザ・ハロウィンでドーヴァー海峡航行中に「騎士派」の攻撃を受け6隻を残し活動不可能となるが、終盤で「清教派」を援護する。 グリフォン=スカイ イギリスが保有する地上の城塞を攻撃するために作られた無人式攻城戦用移動要塞。80メートル級のハンググライダーの形をしており、20 - 50メートルの高度を飛行し、地上で20メートル級の赤い「馬上槍」を要塞の動きと連動させて攻撃を行う。柔軟・応用性に欠けるが連携戦闘行動においてはイギリスの要塞中随一。標的の強度を自動算出し、最低限の消費で対象を破壊する自動判断能力が搭載されている。 グラストンベリ イギリスが保有する、侵略のための大規模霊装。石でできた立方体をランダムに組み合わせたような形の移動要塞。要塞の周囲を強引にイギリス領内であると規定する事で、カーテナ使用圏を飛躍的に延長させる。 第三次世界大戦において、ドーヴァー海峡で戦う「騎士派」を支援する。 ベツレヘムの星 右方のフィアンマが作り上げた巨大空中要塞。預言者が目撃した「神の子」の到来を伝える天体「ベツレヘムの星」の名を冠する。 世界各地にある十字教由来の物品を集結させて組み上げられた異形の要塞。前後左右の四方に伸びた(右側は特に突出している)構造をしている。20機の大型上昇用霊装を備え、姿を現してから自動でひたすら上昇・膨張し続け、最高で高度1万メートル以上、最大で半径40キロメートル超に達する。一定以上に膨らむと自己修復機能を手に入れるため、一部が削り取られた程度なら再び元に戻る。霊装の周囲は魔術的に地表と同じ気温・気圧が保たれる。広大な要塞には移動手段としてモノレールが1両だけ、バスとパラシュートを組み合わせたような緊急用の脱出コンテナが複数用意されている。 「プロジェクト=ベツレヘム」の鍵となる重要な儀式場であり、大規模空中神殿の役割も持つ。要塞最右部の端には、ミーシャという存在を呼び出し維持する根幹として、四大属性の「火」を集中的に運用する作りの儀式場が設けられ、オカルトな「力」を外部から内部へ呼び込むための「門」となる白と黒の液体が通る何十本もの柱が複雑に構築されている。フィアンマがロシア成教と手を結んだのは、この霊装を組み上げるための広大な土地を必要としていたためでもある。 第三次世界大戦でエリザリーナ独立国同盟近郊のロシア軍基地地下から浮上し、その後天空や地上の「浄化」の中心点となるが、上条達の活躍でフィアンマが倒されたことにより崩落・下降し始め、最終的に復活したミーシャを巻き添えに北極海に落下し完全に崩壊した。 主神の槍(グングニル) 北欧神話の主神オーディンが所持するという最強の武器。神話では世界樹と同じトネリコの柄に黄金の穂先が付けられ、黒小人の手で作られたベースに主神自らがルーンを彫った槍とされている。「本質は投げ槍」「投げれば必ず標的に必中する」「途中で打ち落とされる事も破壊される事もない」「標的を貫いた後で必ず持ち主の手に返る」といった特徴に加え、英傑シグルズの父が持つ伝説の大剣バルムンクを一撃で叩き折った伝説に起因して、「人間の権威の象徴を打ち砕く」他の神々の武器とは一線を画す力を持ち、人は神には勝てないという「神様の優位性」を端的に示している。作中では霊装として、ワルキューレのブリュンヒルドと「魔神」オティヌスが使用した2本が登場する。 ブリュンヒルドのグングニルは、全長3メートル、トネリコの樹の柄を中心に複数の鋼が複雑に絡むような槍とは言い難い形状をしている。完成度は70%程度だったが、神裂の「唯閃」を受けても破損しないだけの強度を備え、接近戦での運用にも耐える。「主神の槍」の様々な伝承を天変地異に対する恐怖心の発露と解釈して独自に設計した事で、真価としてあらゆる天候を制御する能力を持ち、北欧神話において世界構成の要素となった炎と氷と霜の属性を組み合わせて、純白の落雷や純白の溶岩などの様々な天候や自然災害を出現させ、自在に操作できる。ただ、ブリュンヒルドの「聖人」の性質が割り込みをかけるので、「ロンギヌスの槍」や「三位一体」の魔術的記号が入り込んで純度が濁ってしまう。この「槍」は「最後のルーン」と呼ばれるオーディンにしか文字の書き方も効力も分からない特殊なルーンを地球の中心核に刻み、「世界中の霊的・魔術的な力が主神の槍に集まるように」設定を組み替える事で完成する。この「最後のルーン」は原典と同じく破壊不可能。なお、地下6370キロメートルにある中心核への干渉方法として、直線距離で9000キロメートルをカバーする海洋牢獄の遠隔制御霊装「喜望峰」の技術を応用したり、そのセキュリティを解除する為にエーラソーンから技術情報を得るなど、準備を整える過程で神裂SS各話の魔術師や魔術設備と接触している。ブリュンヒルドが神裂に敗れイギリス清教に拘束された際に、「最後のルーン」と共に神裂により破棄されている。 オティヌスのグングニルは、彼女が「失敗100%」を手にした時に自らの眼窩から生み出したもの。トネリコの柄の長槍で、穂先は両刃剣のような幅広の刃を無理矢理繋げたような形状。オティヌスの「成功100%」を象徴する霊装で、「魔神」の力の制御に役立てており、ただ掲げただけでも致命的な破壊をもたらす強力な魔術を発動できる。元々は要所に黄金を打ち込んだ死体を腐らせずに動かすだけだった術式「死者の軍勢(エインヘルヤル)」は、「生み出す側」の極致として完璧な形でアップデートされ、新しい「位相」のフィルターを随時生産して世界に差し込む事で、世界の見え方を自在に変える事も出来るものに進化し、世界を一度破壊して再び作り直す事すら可能となる。ただし、生者と死者を明確に区切って設定ソフトを用意したため、生者と死者で合わせて2万で1つの思考生命体であるミサカネットワークの「総体」は操れなかったほか、オティヌスが「元の世界」を取り戻せなかった事から作り直しは完璧ではない事が伺える。さらに、この「槍」の投擲には「人の身では抗えない」というパラメータが設定され、新しい「位相」を埋め込まれた世界は空間ごと引き千切られるように粉々に砕け、1本の巨大な槍のようになった世界の破片があらゆる位相の壁を噛み砕きながら突き進む。だが、「幻想殺し」との激突で、上条の右手の指と引き換えに破壊されている。 また、知識を正しく使えば「魔神」に到達できるという魔道書図書館の援護を受けたレイヴィニアは、「槍を含む現象そのもの」を高純度で再現した対魔神術式「模倣神技」を使用している。破壊力は上条とオティヌスの記憶を転写したものなので、「槍」を作り出したレイヴィニアも「オティヌスが絶対の信頼を置く一撃になる」以上の事は想像できず、投擲すれば世界が吹き飛ぶと上条に言われても理解できなかった。レイヴィニアは「目」を捧げるというオーディンになるために欠かせないプロセスを経ていないため、「槍」は魔神の力の一端しか再現できておらず、魔神の力を整える性能も世界を作り直す力もない。加えて、インデックスの歌のサポートを受けている間しか使用できず、使用中は10万3000冊の魔道書の叡知に汚染され、強力すぎて細かな対処にも向いていない。上条とオティヌスを止めるために構築したが、上条のせいでインデックスのサポートが強制中断された事で制御を失い、使用する前に爆発四散してレイヴィニアに大ダメージを与えた。 タルンカッペ 身を包んだ者の力を増強し、同時にその姿を見えなくする霊装。元々は大きなマントだが、アルファルは仕組みを分解・再構築して細い糸を張り巡らせた魔術のスクリーンに変換していた。 フルングニル 雷神トールに一撃で殺害されるが、砕けた武器の破片がトールの額を割って突き刺さったという北欧の巨人フルングニルの逸話をもとに作られた霊装。「わざと敗北する事で、勝者に確実なダメージを与える」効果を持つ石の棍棒で、自身をとことん脆弱に設定する事で、標的になる者の強度や硬度は関係なく、ほとんど全ての扉を破壊する「最後の一撃」を放つ。 ホテルエアリアル イギリスが保有する移動要塞の一つ。 全長30キロメートル程の魚のような形をしており、地上1500メートルを浮遊する。オティヌスと行動を共にする上条を確保するために使用されたが、彼の説得でオティヌスを殺さない選択をした神裂がカーテナの砲撃を180度反転させたことで大破する。 断頭金貨 斧を使って罪人の首を切っていた時代に、苦しまずに一撃で死なせてくれるように罪人の家族が執行人に渡していた賄賂に由来する霊装。効果は凝視により集中力を高め、ほんの数秒だけ痛覚と恐怖を遮断するというもので、躊躇いなく自決するための補助霊装。魔術サイドの携行麻酔に相当する。絶望的な戦時下でしか使い物にならない。 「クロウリーズ・ハザード」がイギリス本土に上陸した際、ホレグレスの提案で全兵士へと支給されるが、クリファパズル545の敗北と共にビール栓へと姿を変えた。 神威混淆(ディバインミクスチャ) ローラ=スチュアートが虎の子として秘蔵していた首都決戦霊装。古代ギリシャ人が無理矢理自分の頭の中で処理していった歪なエジプトに由来する、神の名を冠する歪んだ兵器たち。起動前は純金とダイヤで組上げられた精緻な装飾品の形をしている。「イシスの時代」に該当する霊装で、アレイスターの見立てでは、ロゼッタストーンがソースになっている。正しいエジプト神話ではないが、純正品を上回る殺傷力を備えている。 異宗教の神々を似たような役割を持つ自分達の神に対応させようとする過程で生まれた歪みであり、作為的な混同は全てが綺麗に対応しているわけではなく、ギリシャ人が一応の納得を得られれば良いという程度なので数には限りがある。太陽神を称える石柱オベリスクから溶けた鉄に似た破壊の光を放ち巨大な樹のように広がり的確に対象を狙い撃つ「ラー=ゼウス」、着弾と共に地盤そのものを砕く規格外の投石器「テフヌト=アルテミス」、全長300mを超える巨大ワニ「オシリス=ハデス」、起動前はハゲワシ型の「ワチェット=レト」、後述の「イシス=デメーテル」の5種類が登場している。 「世界の結合を妨げる」コロンゾンの本領とも言える霊装で、構想の段階から偏見や先入観の溝を織り込んでおり、その本質は無理解や不寛容といった「お互いがお互いを諦めてしまう悪意を物理的な破壊へ変換したモノ」。概念としては電気工学的なトランスに近く、真の力を発揮するためには人間が体を捧げて霊装と融合する必要がある人体兵器で、お互いが頭の中で浮かべているモノが全く違っているほど自由度が増す。魔術変圧器を維持するために使用者の認識を強制的に歪めて思考と行動の連結をデタラメに繋ぎ直し、使用者と標的の間で会話を実行させた上で「会話が通じない」と失望させる。魔術変圧器で特定の圧に調整しないと内部にエネルギーを拾えないという扱いにくさがあり、意識のある人間しか使用者にできず、怒りや怖れを抱かずにまっすぐに見据えて使用者を受け入れるだけで殺傷力が削がれてしまうが、周囲の寛容や理解を期待しないアレイスターでは決して勝つことのできない最強の「クロウリーキラー専用」霊装であった。本来は悪意満点のクリファパズル545が装備することを想定しており、神にも等しい力を悪魔の力で引き出すというより手に負えない代物となるはずだったが、彼女がアレイスターに敗北したことで計画の歯車が狂ってしまう。 大英博物館の奥などでパズルのように詰まれた木箱に死蔵されていたが、「クロウリーズ・ハザード」に対してロンドンを防衛するために「騎士派」のホレグラスの指示で持ち出され、アレイスターの排除を最優先目標として運用される。ラー=ゼウス、テフヌト=アルテミス、オシリス=ハデスは、本来の用途から外れて地脈に接続する形で用いられ、ロンドン市街を「西欧人が勝手気ままに思い描くエジプトの情景」へと変化させるが、本来の1%に満たない力しか発揮できずにアレイスターに破壊される。レイヴィニアとレッサーが運搬していた「ワチェット=レト」は上条が「幻想殺し」で破壊したが、「イシス=デメーテル」はオルソラを核に起動してしまう。イシス=デメーテル 「神威混淆」の1つ。エジプトの生と復活の女神イシスと、ギリシャの春の女神・農耕の支配者デメーテルを対応させている。 起動前の状態では原寸大の薔薇の形をしており、金属質の触手を伸ばし使い手を求めて移動する。起動後は帆場広の白い絹や純金の飾り、背に負った巨大な花輪といった「エジプトらしい」装飾と化す。取り込んだ人間自身をオリーブの木に、指先に絡みつく金の糸をブドウの蔓に見立て、金の糸の回転回数と回転方向をトランスに類する象徴として攻撃を行う。少なくとも10指で10通りのコマンドを同時に重ねられ、所有者自身の軸を右5とし、そこからズレていくと殺傷力が生じる。右8がモウセンゴケ、左3が飛行、右2がハエトリソウ、左2がウツボカズラ、左8がラフレシア、右6がザクロ、左7がホウセンカに対応するサインとなり、他にもマキビシ、オナモミ、ムシトリスミレ、タヌキモ、ムジナモといった多様な極彩色の植物を作り出し武器とする。また、薄い葉で鼓膜のように空気の振動を読み取って音を、光合成ができればライトの光や息遣い(空気中の酸素や二酸化炭素の濃度)さえ読み取って、獲物の正確な位置情報を多角的に検索できる。惑星全土の水と緑を掌握するオアシスの女神として、総延長が地球2周半に相当するロンドンの地下構造体を一瞬にして掌握でき、防御機構である以上軽々しくは使わないものの、その気になれば首都ロンドン全体、半径数十キロメートルを陥没・壊滅させる事さえ可能。 ホレグラスの依頼を受けたオリアナが大英博物館へと運搬、元アニェーゼ部隊へと渡されるが、彼女たちが使用する前にオルソラが手に取ったことで起動する。アレイスターと上条に対し、彼らが逃げ込んだロンドン地下鉄網全域へ根や蔓を撒き散らし、食虫植物の「砲台」による集中砲火を開始する。相性差からアレイスターに重傷を負わせたが、彼女が周囲の草を片っ端から抜いて空白地帯を作ったことで自ら出向かざるを得なくなり、霊装の本質を理解した上条がオルソラに歩み寄ったことで使用者から排除され、次はアレイスターに規制しようとするが、「幻想殺し」と「霊的蹴たぐり」で半壊し、最後はオルソラが投げた石の塊によって砕かれた。 オナーズオブスコットランド スコットランド式の戴冠に用いられる、国家の剣、即位の冠、統治の笏、スクーン石でワンセットの霊装。力を最大限に発揮するためには、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北部アイルランド、4つの地方の中心地と等間隔になる一点で儀式を行う必要がある。クロウリー式Magick想定では、剣は「力の指向性を決めるもの」、笏は「棍棒の打撃を誘導するもの」、冠は「ケテルより術式を支えるもの」とされ、スクーン石は「正しき王がその上に立つと雄叫びを発して予言する」という伝説を持つ。 イングランドの戴冠剣カーテナと機能がバッティングする恐れがあるため、エドワード1世のスコットランド攻撃の際にスクーン石はロンドンに持ち去られて機能を封印されていたが、近年スコットランドへ返却され、エディンバラ城地下に保管されていた。しかし、コロンゾンが「モ・アサイアの儀」に利用するために強奪し、クイーンブリタニア号の儀式場へ持ち込んだ。これにより、「国家の剣」で真横から横殴りの雨のように襲いかかる閃光、「統治の笏」で水平に薙ぎ払う見えない打撃、「即位の冠」で頭上から豪雨のように降り注いでくる閃光、スクーン石でそれらの軌道をランダムに曲げる複数の爆発と衝撃波が、一度の斉射で4種40万発という「国家規模の」軍事力が引き出された。 アラクネ八式 近衛侍女が装備する8本のアーム型の霊装。節くれだった関節をいくつも持つ蜘蛛の脚を模しており、ピアノのように塗料とニスで艶やかな光沢を出した木の輝きを放っている。8本の脚を高速の「機織り機」と表現されるように動かし、空気に透けるほど細い絹糸で瞬く間に服を編み上げる。本来は、前線基地で破断した鎧や僧服を修繕して、騎士や僧兵を戦場へ叩き返すためのものなので、人を傷つける機能はない。 同タイプの霊装として、ワルキュリア・スワン三式やハベトロット二式がある。 ニコラウスの金貨 R&Cオカルティクスが作成、配布した霊装。500円玉より少し大きい金貨で、ひげの老人の横顔が刻印されている。祈る事で本来あるべき確率や統計を無視して行動の成功率を100.0%に固定する。一度使用すると次に使用するまで1時間のチャージが必要となり、目的の質や量は問わず、期間は一律である。ただ、何をどうしたところでできない事はやれない(ブラをしていない相手のホックを外す事はできない、致命傷を負った者を蘇生する事はできない、等)ほか、祈った本人が思い描いた通りの結果が起こるとは限らない(銃の爆発を祈って機関部の破裂ではなく引き金を引かずに弾丸が発射される、等)。また、同じ霊装を持ったもの同士が祈った時は、結果が出る前であれば祈りを後出ししたほうが優先される。 その名の通り、クリスマス限定の霊装である。霊装ではあるが、魔術師の肉体に依存せず地脈から直接力を吸い取って駆動するので、原理としては魔道書に近い。そのため、能力者でも副作用のようなペナルティなく魔術を行使する事が可能。 アンナが実験の余暇として、クリスマスの学園都市でランダムに配った。これにより、一方通行が計画した「オペレーションネーム・ハンドカフス」は秩序を乱され、失敗に終わった。
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