戴冠とは? わかりやすく解説

たい‐かん〔‐クワン〕【戴冠】

読み方:たいかん

[名](スル)国王即位のしるしとして王室伝来王冠を頭にのせること。

「戴冠」に似た言葉

戴冠

読み方:タイカン(taikan)

帝王即位初め王冠を頭にいただくこと


戴冠式

(戴冠 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/08 09:33 UTC 版)

ボヘミア王フェルディナンド5世の戴冠(1836年)
ナポレオン1世の戴冠式(1804年、部分)

戴冠式(たいかんしき、coronation)は、君主制国家で、国王皇帝即位の後、公式に王冠帝冠を聖職者等から受け、王位帝位への就任を宣明する儀式

日本では、即位の礼の中心儀式である即位礼正殿の儀がこれに相当する。非キリスト教国でも、タイブルネイマレーシア東南アジア諸国や、中近東の君主制国家では、戴冠式やそれに類似した即位式が行われる。

概要

『カール大帝の戴冠式』。16世紀ラファエロ画。

戴冠式は、高僧や神官、高位貴族が、新君主に王冠・帝冠をかぶせることにより行われる。先代君主が存命中に、先代君主自身の手により行うこともある。また、全ての君主制の国に王冠・帝冠が存在するわけではなく、国家の象徴として製作しただけで戴冠式を挙げたことがない国もある[1]

古くは、アケメネス朝ペルシア帝国紀元前550年 - 紀元前330年)で、ゾロアスター教の大司教が皇帝に戴冠したとされる。

キリスト教国では、高僧が新君主の頭に聖油を注ぎへの奉仕を誓わせる儀式が主体となる。このため、英国では聖別(せいべつしき、consecration)、フランスでは成聖式(せいせいしき、sacre あるいは sacre de roi)といわれた。

聖別式の起源は、『旧約聖書』の「列王記下」に記された故事にある。同書には、ソロモン王が王冠を受けたことが記され、また、イスラエルユダヤの諸王が聖別式を行ったことが記されている。「油塗られた者」(ヘブライ語の「マスィアッハ」)は「王」の婉曲的表現となり、後には救世主ラテン語の「メシア」)を指すようになる。

ヨーロッパ大陸では、カール大帝西ローマ帝国神聖ローマ帝国)を再興して、ローマ教皇から帝冠を受けた西暦800年から、皇帝フリードリヒ3世ローマに赴いてローマ教皇から帝冠を受けた1440年まで、聖油を注ぐ慣習が行われた。

アングロ・サクソン年代記には、デーン人の大軍を破ってイングランドを死守したアルフレッド大王が、872年に聖油を頭に受けて即位したとある。また、1066年には、ハロルド2世ロンドンウェストミンスター寺院で戴冠式を行ったと記録され、12世紀まではローマ教皇から王冠を受けた。その後、多少の改変はあったものの、1189年リチャード1世のとき、英国の戴冠式の様式がほぼ確立した。

カトリック国では、国王・皇帝のほか、ローマ教皇が即位する際にも戴冠式が行われた。14世紀クレメンス5世(在位:1305年 - 1314年)のときからは、三重冠(教皇冠英語版:Papal Tiara)が戴冠された。バチカン市国国旗国章にも、この三重冠が描かれている。しかし、三重冠の戴冠は、1978年ヨハネ・パウロ1世即位の際廃止された。ヨハネ・パウロ1世は、三重冠をアメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.にある無原罪の御宿りの聖母教会に寄贈した。2005年に即位したベネディクト16世は、紋章からも三重冠を廃した。ヨハネ・パウロ1世以降のローマ教皇の即位式は「着座式」(ちゃくざしき)と呼ばれる。

1977年12月4日には、中央アフリカ共和国ジャン=ベデル・ボカサ大統領が、約2000万ドル(国家予算の1/4)もの巨費をつぎ込んで、贅を尽くしたフランス風の戴冠式を行い、中央アフリカ帝国初代皇帝ボカサ1世に即位した(「黒いナポレオン」)。

ギャラリー

キリスト教文化圏の戴冠式

非キリスト教文化圏の儀礼

英国の戴冠式

英国の戴冠式で用いられる宝物(連合王国の戴冠宝器

今日の英国は、戴冠式を廃止していないヨーロッパで唯一の国である[1]

英国の戴冠式は、ロンドンのウェストミンスター寺院で行われる。

まず、カンタベリー大主教祈祷し、国王は宣誓して「スクーンの石」がはめ込まれた戴冠式の椅子「エドワード王の椅子」に着く。大主教は、国王の頭と胸、両手のてのひらに聖油を注ぐ。

次に、国王は絹の法衣をまとい、宝剣と王笏、王杖、指輪手袋などを授けられ、大主教の手により王冠をかぶせられる。国王は椅子に戻り、列席の貴族たちの祝辞を受ける。その後、国王の配偶者も宝冠(coronet)を受ける。

1953年昭和28年)6月2日に行われた女王エリザベス2世の戴冠式では、純製で重さ約2kgの「聖エドワード王冠」(St. Edward's Crown)が戴冠された。この王冠は重すぎるため戴冠式以外では用いられず、その後の儀式では「インペリアル・ステート・クラウン」(大英帝国王冠、Imperial State Crown)が用いられている。この式の際には、日本から皇太子明仁親王(当時)が、昭和天皇の名代として列席した。

1996年、戴冠式用の椅子である「キング・エドワード・チェアー」(エドワード王の椅子)にはめ込まれていた「スクーンの石」が、スコットランドに返還された。スクーンの石は、1296年エドワード1世が、スコットランドから持ち去った物で、スコットランド征服の象徴として、歴代イングランド王の戴冠式で王の尻に敷かれていた。

2023年5月6日には、チャールズ3世の戴冠式が行われた[2]

ギャラリー

脚注

関連項目

外部リンク


戴冠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/05 00:53 UTC 版)

婚配機密」の記事における「戴冠」の解説

冠は新約聖書において「死に打ち克つ」徴とされる(コリンフ(コリント前書9:24 - 25)。聖金口イオアンは、結婚の冠を、汚辱と死をもたらす無秩序な性欲打ち勝つ徴とみている(『ティモフェイ講解』1の9)。また、正義対す成聖永遠報酬ともされるティモフェイ後書テモテへの手紙二)4:7 - 8ペトル前書ペトロの手紙一)5:4)。 冠はこのような栄冠であると同時に苦悩象徴でもある。新婚愉楽だけでなく、その後夫婦生活悲しみ苦悩分かち合い表し瞬時激情ではなく互いに命をかけ合う心構えを基にして強く結びつくべきことが示される戴冠礼儀におけるポロキメンには、第20聖詠詩篇21篇)3節から4節が引用される。 「爾は純金の冠をその首(こうべ)に冠らせり(こうむらせり)、彼ら生命(いのち)を爾に願ひしに、爾これを賜へり。」「(句)爾は彼らに幸福を世々に賜ひ、爾が顔(かんばせ)の歓びにて彼らを楽しませり。」 この歌は、王と王妃荘重な神の光栄の讃歌である。 冠の形状については、ロシア系伝統にある諸教会ロシア正教会アメリカ正教会日本正教会など)では、華やかな金属製の冠が多くみられるほか、冠を自分で被るのではなく付添い人持ってもらう形式のものが多く見られる自分で被る形式のものもある)。他方ギリシャ系伝統にある諸教会ギリシャ正教会、およびアンティオキア総主教庁系など)では、簡素な冠をリボンで結びつけたものを、新郎新婦直接被る形式のものがみられる

※この「戴冠」の解説は、「婚配機密」の解説の一部です。
「戴冠」を含む「婚配機密」の記事については、「婚配機密」の概要を参照ください。

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戴冠

出典:『Wiktionary』 (2021/11/09 03:18 UTC 版)

名詞

たいかん

  1. 君主新たに即位したのち、聖職者などから戴くこと。

関連語

動詞


「戴冠」の例文・使い方・用例・文例

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