敢えて
「敢えて」とは、わざわざ、ある意図をもって、無理をしてでも、という意味で用いられる表現である。「それを行うことに困難やリスクがある状況であっても、特別な意図や理由があるため、困難やリスクがあっても行うのである」という意味合いを込めて用いられる。
「敢えて」は副詞であり、動詞に係る表現として用いられる。「あえて」とひらがな表記されることも多い。漢文では、否定語「不」を伴って「不敢(あえて~せず)」という形で、おおむね「無理に~することはない」もしくは「決して~しない」という意味の表現として用いられる。
古文や擬古文でも否定語「せず」を伴って「まったく~でない」という意味で用いる用法がある。また、「必ずしも」と同じ意味・用法の例もある。これらの用法は、現代の一般的な文脈では用いられなくなっている。
「敢えて」の発音・読み方・語源・由来
「敢えて」の読み方は、「あえて」である。「敢えて」は元々は動詞「敢う(敢ふ)」の連用形と接続助詞「て」からなる表現である。動詞「敢う(敢ふ)」は、「我慢する」「無理をする」といった意味の言葉である。
「敢う」という動詞そのものが単独で用いられることはなくなっているが、「敢えて(あえて)」「取り敢えず(とりあえず)」「敢え無く(あえなく)」といった連語表現は固定されて現代でも用いられている。
「敢えて」を含む熟語・言い回し
「敢えてする」とは
「敢えてする」とは、わざわざ行う必要がないこと・行わなくてもよいこと・行うべきではないこと・リスクを伴うこと等々について、特別な意図がある等の理由があるためわざわざそれを行う、という意味で用いられる表現である。「敢えてしない」とは
「敢えてしない」とは、「本来は行うべき・行う方がよい事であっても意図や思惑があるために行わないでおく」、あるいは、「わざわざ常識的な判断に背くような事はしない」「無理してまで行おうとは思わない」という意味で用いられる言い回しである。- 私は敢えて無料Wi-Fiは利用しない
(タダなら使えばよいのにと言われそうだがセキュリティ上の懸念がある等の思惑により無料Wi-Fiは使わないでおく) - 私は敢えて無料Wi-Fiを無駄であるとは言わない
(無料Wi-Fiからメリットを受ける人も多いことは承知しているため、わざわざ無料Wi-Fiが無駄であると批判するようなことはしない)
「敢えて言うなら」
「敢えて言うなら」は、「言いにくい事柄や本来は言うべきではない事柄を(言わないより言った方がよいと判断したため)言うのである」という意味合いか、もしくは、「これば最適な表現とは思えないし、他に上手い表現も思いつかないが、(何も言わないよりこう言った方がよいと判断したため)言うのである」という意味合いの言い回しである。- 敢えて言うなら君は完全に周りから浮いていた
(言いにくい事実だが相手の為を思って告げた) - 敢えて言うなら君は滑り倒した芸人のようだった
(最適とは思わないが他に上手い表現も思いつかなかったのでこう告げた)
「敢えて〜なかれ」とは
「敢えて~なかれ」は、「無理に~するな」もしくは「わざわざ~なんて事をするな」という意味の表現である。古い用法であり、現代の日常会話の文脈では用いられないが、擬古文めいた語調として用いられる場合はあり得る。「敢えて言おう、カスであると」
「敢えて言おう、カスであると」は、アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するセリフである。地球連邦軍との戦争を行うジオン軍は、大規模破壊兵器によって、連邦軍に大きな打撃を与える。そして、戦争に勝利する寸前のところまで持ち込む。その際に、ジオン軍総帥ギレン・ザビが演説で地球連邦軍を評して「敢えて言おう、カスであると」と言った。
地球連邦軍が破壊兵器によって主力を失い、脅威ではないのは明確であるが、それをわかった上で、カスであるということを言葉で表現しているセリフである。
この「敢えて」は「言いにくいことだが言ってしまおう」という意味とも取れるし、「カスという形容が最適かどうか分からないが形容してしまおう」という意味とも取れる。おそらく両方の要素を含んでいるのであろう。
あえ‐て〔あへ‐〕【▽敢えて】
「敢えて」の例文・使い方・用例・文例
- これらを敢えて実行する人はあまりいません。
- その単語を敢えて辞書で調べなかった。
- 私は危険を犯して敢えてソニーの株を500株買った。
- 好敵手と一快戦を試みるは敢えて辞するところにあらず
- 敢えて何々せん
- 敢えて不遜を顧みず思うところを述べん
- 敢えて言う
- 敢えて問う
- ドイツは亡国なりと言うも敢えて過言にあらず
- 彼の成功は敢えて怪しむに足らず
- 好敵子と一快戦を試むるは敢えて辞するところにあらず
- 敢えて弁を好まんや
- あに敢えてせんや
- 身体髪膚之を父母に受く、敢えて毀傷せざるは孝の始めなり
- 法に触れる結果が起こるかも知れないと思いながら,敢えて行う意識
- 失敗することが予想されるのに,敢えて行うこと
品詞の分類
- 敢えての意味のページへのリンク