教皇庁とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 社会 > 団体 > 中央機関 > 教皇庁の意味・解説 

きょうこう‐ちょう〔ケウクワウチヤウ〕【教皇庁】


ローマ教皇庁

(教皇庁 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/15 03:36 UTC 版)

教皇庁紋章

ローマ教皇庁(ローマきょうこうちょう、ラテン語: Curia Romana)は、使徒ペトロに由来するとされる使徒継承教会の首長としての地位の継承者として存続するカトリック教会聖座使徒座)の(統治)機関のこと(Can. 360 CIC 1983)。また、ローマ教皇の下に全世界のカトリック教会を統率する組織であり、国際法上の主権実体として外交使節の派遣や大使館の設置も行う(バチカン市国基本法第二条)。現在の所在地はローマバチカンであり、バチカン市国という世界最小の主権国家の中に置かれている。

かつて教皇は世俗の領主のように自らの領地(教皇領)を持っており、事実上国家と同様に独立した行政権を領地内で行使していたが、19世紀末のイタリア統一運動の中で失っている。ラテラノ条約によって成立したバチカンは、聖座が支配する国際法上の主権国家であるが、かつての教皇領のような世俗的支配を行う領地ではなく、国民は教会関係者のみである。教皇庁はローマ司教である教皇の所在地に存在するものであるが、時の政情によってはローマから移動することもあった。13世紀にはヴィテルボヴィテルボ教皇英語版)、オルヴィエートオルヴィエートと教皇英語版)、ペルージャペルージャ教皇英語版)などイタリア北部を転々とし、14世紀のいわゆる「アヴィニョン捕囚」の時代には南フランスのアヴィニョンに遷座された(アヴィニョン教皇庁)。

日本語の呼称について

日本において教皇庁の呼び方として「教皇庁」と「法王庁」が混用されてきた。

日本のカトリック教会の中央団体であるカトリック中央協議会では、1981年ヨハネ・パウロ2世の来日時に、それまで混用されてきた「教皇」と「法王」の呼び方を統一しようと、世俗的な君主を思わせる「王」の字が入る「法王」でなく、「教皇」という呼び方への統一を定めた。教会や歴史関係では、それ以前にも「教皇」の方が多く用いられていたようである。

その後、カトリック中央協議会は、マスメディア等の一般に「教皇」の名称を使用するよう呼びかけてきた。カトリック中央協議会は、東京大使館においても「法王庁」から「教皇庁」への名称の変更を行おうとしたが、日本政府から「日本における各国公館の名称変更はクーデターなどによる国名変更時など特別な場合以外認められない」との理由からほとんど即答に近い形で却下され、「ローマ法王庁大使館」の名称が残ったとしている[1]。このため日本のカトリック教会が「教皇」という名称に統一している現在においても、マスメディアでは日本の外交界における公式名称である「ローマ法王庁」が用いられることが多いとしている[1]

2018年には、山内康一立憲民主党衆議院議員)が衆議院予算委員会において「教皇」に変更するべきではないかと質問を行っている。これを受けて外務省はバチカンとローマ法王庁大使館に問い合わせを行ったが、いずれも変更を求めていないという回答を得ている。河野太郎外務大臣グルジアからジョージアへ変更を行った事例のように、変更の要求があった場合にはしっかりと対応していくと答弁している[2]

2019年11月23日に教皇フランシスコが日本を訪問することを受け、政府は11月20日に「教皇」への呼称変更を発表した[3][4]。以降は日本政府の記録については基本的に「教皇庁」の表記が用いられている[5]。ただし駐日本国ローマ法王庁大使館ならびに駐日ローマ法王庁大使(教皇大使英語版)については「ローマ法王庁」の名称を用いている。

マスメディアの呼称

NHKでは、「ローマ法王」「法王」が慣用的に使われ、一般に定着しているとして原則的には「法王」の呼称を用いるとしていた[6]が、日本のカトリック関係者を中心に「教皇」と呼ばれていること、2019年11月22日の教皇フランシスコの訪日にあわせて日本政府が「教皇」に呼称変更したことを踏まえ、「ローマ教皇」の呼称に変更した[7]。また、読売新聞朝日新聞毎日新聞産経新聞日本経済新聞といった主要紙、共同通信時事通信も「ローマ教皇」の呼称に表記を変更した[8][9]

組織概要

2023年7月現在の教皇庁組織は以下のような構成になっている[10]

  • 国務省英語版 - 教皇職のバックアップを行い、バチカンの諸組織を統合運営[注 1]。現在の国務省長官ピエトロ・パロリン枢機卿
    • 総務局
    • 外務局
    • 外交官人事局
  • 英語版 - 省庁というより会議としての意味合いが強い。長官は枢機卿が任命される[注 2]
    • 福音宣教省 - 東方教会省所管地域以外の世界の福音化に関する業務を担う。所管地域の司教人事や教区に関する業務も司る。日本もここの管轄である。
      • 宣教事業
        • 信仰弘布事業
        • 使徒聖ペトロ事業
        • 児童宣教事業
        • 宣教者連合
    • 教理省英語版 - 教会の教義についての業務。
    • 支援援助省英語版
    • 東方教会省英語版 - 東方典礼を行うカトリック教会を管轄。
    • 典礼秘跡省 - 典礼秘跡に関する業務。
    • 列聖省英語版 - 列聖調査の運営・実施。
    • 司教省英語版 - 司教人事、教区に関する業務(福音宣教省の所管地域を除く)。
      • ラテン・アメリカ委員会英語版
    • 聖職者省英語版 - 教区司祭、教会財産を管轄。
    • 奉献・使徒的生活会省英語版 - 修道会や使徒的生活者に関する業務。
    • いのち・信徒・家庭省英語版
    • キリスト教一致推進省英語版
    • 諸宗教対話省英語版
    • 文化教育省英語版 - 司祭養成およびカトリック教育に関する業務。
    • 総合人間開発省英語版2016年8月、教皇フランシスコによって4つの既存の評議会を統合して設立された。 2017年1月に正式に活動を開始。[11]貧困・戦争・差別・環境問題などに苦しむ人々を支援し、人間の尊厳、正義と平和の実現に取り組む。[12]
    • 法制省英語版
    • 広報省英語版 - 2015年に「広報事務局」(Secretariat for Communications)として設立された。バチカンの広報関連の組織を整理統合するために設置された部署で、バチカン放送オッセルヴァトーレ・ロマーノなども集約されている。
  • 財務機関
    • 財務評議会
    • 財務事務局
    • 使徒座管財局英語版
    • 監査室
    • 機密保持委員会
    • 投資監査院
  • 弁護士
    • 教皇庁弁護士名簿
    • 聖座弁護団
  • 関連機関

脚注

注釈

  1. ^ 国務省というとアメリカに見られるように外務省のイメージが強いが、バチカンでは日本の内閣府相当である。ただし外務省相当の職務も担当している。
  2. ^ 大司教が任命される場合もあるが、程なく枢機卿にあげられる。

出典

  1. ^ a b 「ローマ法王」「ローマ教皇」という二つの呼称について”. カトリック中央協議会. 2018年4月23日閲覧。
  2. ^ 第196回国会 予算委員会 第9号 国会会議録
  3. ^ 外務省、「ローマ教皇」に呼称変更 安倍首相と25日に会談”. 毎日新聞. 2019年11月24日閲覧。
  4. ^ 【記者会見】大鷹外務報道官会見記録”. 外務省. 2019年11月24日閲覧。
  5. ^ 外交青書 2020 | 2 欧州地域情勢 | 外務省”. 2025年8月3日閲覧。
  6. ^ 「法王」と「教皇」 | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所”. 2013年2月27日閲覧。[リンク切れ]
  7. ^ 【お知らせ】今後は「ローマ教皇」とお伝えします”. NHK (2019年11月22日). 2019年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月22日閲覧。
  8. ^ “ローマ教皇、26日まで滞在し長崎や広島訪問…核廃絶へメッセージ”. 読売新聞. (2019年11月22日). https://www.yomiuri.co.jp/world/20191122-OYT1T50231/ 2019年11月22日閲覧。 
  9. ^ “「ローマ法王」が「ローマ教皇」に変更 政府発表で割れるメディアの対応”. J-CAST. (2019年11月22日). https://www.j-cast.com/2019/11/22373392.html 2019年11月23日閲覧。 
  10. ^ バチカンの組織”. カトリック中央協議会 (2023年7月3日). 2023年12月30日閲覧。
  11. ^ Holy See Press Office Communiqué”. press.vatican.va. 2025年10月15日閲覧。
  12. ^ Mission - Dicastery for Promoting Integral Human Development” (英語). www.humandevelopment.va. 2025年10月15日閲覧。

関連項目

外部リンク


教皇庁(ヴァチカン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 13:39 UTC 版)

トリニティ・ブラッド」の記事における「教皇庁(ヴァチカン)」の解説

ローマ教皇庁流れを汲む人類機関暗黒時代吸血鬼対し唯一組織だって抵抗したことから「人類守護者」と位置づけられ、その後出現した「黒い聖女」などの聖人たちの力を借りて吸血鬼たち東欧地域追いやることに成功しその後人類社会旗手として超大国的な存在となる。 しかし近年では吸血鬼脅威薄れ、また世俗諸侯呼ばれる各国国力をつけているためその影響力は薄れつつあり、また内部でも腐敗旧弊硬直化進んでいる。そのため若手聖職者の間では急進的な方針を叫ぶものも多い。 教会としての側面色濃く残るものの行政機関的な性質強く、また教皇枢機卿など高位聖職者位置づけ僧侶というよりは政治家のそれである。なお、作中ではカトリックのみが正当な宗教として人類全体信仰されており、イスラム教ユダヤ教もとよりプロテスタントなどキリスト教諸派異端みなされている。 なお原作では、サン・ピエトロ大聖堂サンタンジェロ城といった実在建造物施設として利用している。

※この「教皇庁(ヴァチカン)」の解説は、「トリニティ・ブラッド」の解説の一部です。
「教皇庁(ヴァチカン)」を含む「トリニティ・ブラッド」の記事については、「トリニティ・ブラッド」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「教皇庁」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「教皇庁」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



教皇庁と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「教皇庁」の関連用語

教皇庁のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



教皇庁のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのローマ教皇庁 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのトリニティ・ブラッド (改訂履歴)、よるのないくに (改訂履歴)、炎炎ノ消防隊 (改訂履歴)、カルロ・マリア・ビガノ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS