ロシア 経済

ロシア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 22:29 UTC 版)

経済

ソビエト連邦の崩壊後の経済成長。GDPPPP)は1990年代から2000年代で2倍以上に成長している

ロシアはブラジル中国インドとともに「BRICs」と呼ばれる新興経済国群の一つに挙げられているが、この中でロシアは1人あたりのGDPが最も先進国に近い。

IMFによると、2021年のロシアのGDPは1兆5800億ドルであり、世界第11位である[54]。一方、1人あたりのGDPは1万1,163ドル[55] で首都モスクワと地方の格差もあり、ロシア全体では先進国より低い水準である。中村逸郎は、GDPの約70パーセントを国民の1パーセントである富裕層が持っている[56] としている。

ソ連解体後、ボリス・エリツィン大統領の主導のもと市場経済化が進められたが、このために却って急速なインフレーションを招き、1990年代半ばには経済的に落ち込んだ。その後、成長に転じつつあったが1997年アジア通貨危機の影響を受けて1998年財政危機を招き、再び落ち込んだ。

2014年のクリミア併合による欧米から経済制裁と石油価格の下落により経済は低迷している[57]

資源依存の経済

2019年現在、ロシアはアメリカサウジアラビアに次ぐ世界第3位の原油生産国[58] であり、同時にサウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油輸出国である[59]。2003年以来の原油価格上昇によって貿易収支が改善し、市場経済転換後の長い経済停滞を脱し、急速な景気回復が見られた。豊富な地下資源を武器に石油の価格が高いときに成長が続く。その石油産業への依存の重さや自由化の恩恵に与った者(オリガルヒ新富裕層、体制転換の混乱で成り上がった新ロシア人ロシア語版に代表される)とそうでない者の貧富の格差の拡大、チェチェン独立派武装勢力によるテロのリスクなど、不安定要因もいくつかは見られる。石油価格が高かった2000年にはGDP成長率が10パーセントを越える一方、インフレーションも抑制され、好調が続いた。一人当たり名目GDPも、1999年には1,334ドルに過ぎなかったのが、2006年には6,879ドルと5倍強の増加を見せた。しかし、輸出の6割以上を原油や天然ガスなどの鉱物資源に頼る経済構造となっている、いわゆるモノカルチャー経済である。モーリー・ロバートソンは「石油の値段が世界的に右肩上がりのときはお金がどんどん入ってくるが、原油が安くなるとあっという間に貧乏に転落するという図式」と説明している[56]

農業

農産物の自給自足にも力を入れており、ロシアは世界における「最大の小麦輸出国」ならびに「の栽培の北限地」として知られている。米国農務省は、2016年度・2017年度(2016年7月 - 2017年6月)のロシアによる小麦輸出量の推定量を50万トン引き上げ、記録的な2,500万トンとしている。なお、2015年度・2016年度に米国(2,120万トン)とカナダ(2,250万トン)を抜いて世界の主要輸出国となっている[60]2014年、同国での米生産量は113万8,000トン(うち90パーセントがクラスノダール地方での栽培)で生産量は記録的に高いものとなっている。加えて、米の栽培効率は1ヘクタールあたり7,100キロで、ヨーロッパにおいて米を生産する国で知られるスペインイタリアに比較しても多いものとなっているうえ、アジア諸国より多い。同国の米はウズベキスタンタジキスタントルクメニスタン、トルコにも輸出されている[61][62]

米国農務省による2021-22年度推計では、ロシアの小麦は生産量が過去最多の8600万トン、輸出量は4000万トンで世界一を維持する見通しである。ソ連時代は大量の穀物を輸入していたが、平坦な国土に農地が広がっており、ロシア経済の安定化に伴い農機や肥料の投入増、畜産の効率向上による飼料に使う小麦の節約で、生産性や輸出余力が高まった。欧米の経済生産による通貨ルーブルの下落も輸出競争力を高めているが、パン価格の上昇に国民が不満を抱くと輸出関税などで国外への出荷を抑えようとする政策も採られている[63]

漁業

鉱業

ロシアから伸びる原油天然ガスパイプライン

ロシアはもっとも鉱物資源が豊富な国の一つである。産出量が世界シェア10位以内となる資源だけで20種類に及ぶ(以下の統計数値は経済産業調査会『鉱業便覧 平成14年版』による2002年時点のもの)。

有機鉱物資源では、天然ガス(2,1807千兆ジュール、21.9パーセント、2位)、原油(3.5億トン、10.3パーセント、2位)、燃料に用いられる亜炭(8,668万トン、9.5パーセント、4位)、石炭(1.6億トン、4.4パーセント、6位)の採掘量が多い。原油と天然ガスの産出量は1位の国(サウジアラビアと米国)との差が小さく、いずれも2ポイント未満の差にとどまる。このため、統計年度によっては1位となることもある。

これらの有機鉱物資源のうち、国内で消費される比率が高いのが石炭と亜炭(88パーセント)と天然ガス(69パーセント)である。一方、原油の国内消費比率は29パーセントと低く、主に輸出されている。ロシアの原油輸出量は世界第2位(1億6,211万トン、2001年)である。

観光

ロシアは世界有数の観光地として知られている。観光スポットが各地にあり、海外から多くの観光客が訪れている。その中で最も代表的なものとして知られているのは、世界遺産に登録されているサンクトペテルブルク歴史地区と関連建造物群赤の広場である。

貿易

色と面積で示したロシアの輸出品目

ロシア経済に占める貿易の割合は急拡大している。1992年時点では、国民総生産3,978億ドルに対し、輸出が381億ドル、輸入が350億ドルであった。2003年には、国民総生産4,885億ドルに対し輸出は1,260億ドル、輸入524億ドルに増加しており、輸出の伸びが著しい。これは原油および、石油関連の生産・輸出拡大によるものである。ロシアの貿易構造は1992年から2003年までの約10年間で大きく変化してきた。1992年時点ではソ連を構成していた諸国に対する貿易が、輸出で7割、輸入で5割を占め経済ブロックを形成していた。品目では機械と原油、化学工業製品を輸出し、建設機械軽工業品、食料を輸入していた。ところが、2003年時点では輸出入とも相手国が分散する。原油,石油製品を輸出し、機械、自動車を輸入している。つまり、機械工業の落ち込みと原油輸出の大幅な伸びが特徴と言える。

1992年時点の輸出品の品目別の比率は、United Nations Statistical Yearbook 2003などによると建築機械(35.0%)、天然ガスを含む原油(14.7%)、化学品(10.6%)、軽工業品(8.1%)、鉄鋼(6.9%)。同輸入品は、建築機械(36.2%)、軽工業品(20.4%)、食料(16.7%)、化学品(7.5%)、鉄鋼(5.0%)。2003年時点の輸出品の品目別の比率は、原油 (27.6%)、石油ガス (13.0%)、石油製品 (10.4%)、鉄鋼 (6.1%)、アルミニウム(2.6%)である。2003年時点の貿易相手国は輸出相手国が順に、オランダ(6.2%)、中国、ベラルーシ、ドイツ、ウクライナ、輸入相手国が順にドイツ(14.1%)、ベラルーシ、ウクライナ、中国、アメリカとなっている。

日本との貿易は順調に拡大している。日本からの輸入額は15億ドルから45億ドルへ、輸出額は28億ドルから62億ドルに伸びている。品目は輸入を中心に変化した。日本への輸出の変化を見ると、1992年時点は魚介類、木材の2品目で5割弱を占め、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)、石炭、白金が続いた。これが2003年になるとアルミニウム(アルミニウム合金を含む、22.4%)、魚介類、石炭、木材、原油となった。輸入は、機械類(26.7%)、鉄鋼、電気機械、自動車、プラスチックであったものが、乗用車(62.1%)、建設機械(6.4%)、映像機器通信機器バスに変わった。品目が自動車に集中したことになる。

軍需産業

ロシアにとって軍需産業はソ連時代から重要な地位を占めており、今後[いつ?]も積極的に輸出拡大を続けるとしている[誰によって?]。輸出額は2011年は100億ドルを超え、2012年には150億ドルを超えるとされ順調に推移している。民間転用も積極的に行っており、宇宙航空情報通信産業など多岐にわたる。しかし、政治的な理由で輸出ができなくなるなど不安定な要素も含んでいる。しかし、ロシアを含め世界の軍事費は今後も増え続けるとされ、軍需産業は今後も拡大を続けるとされている。


  1. ^ ルーシは伝統的にギリシャからの文明的影響を受けてきており、より高等な文明の地であるギリシャの言語の使用はヨーロッパ国家として意義のあることであった。また、外国からも古東スラヴ語名の「ルーシ」ではなくギリシャ語で呼ばれることが少なくなかった。
  2. ^ 大ルーシロシア語版英語版
  3. ^ 小ルーシ。時期により指す地方が異なる。
  4. ^ 白ルーシ
  5. ^ いわゆる「モスクワ第3ローマ論英語版」であるが、この論は当初は宗教的側面からの戒めを説くもので、必ずしもロシアの帝国化を正当化するために考案された理論でもなかった。
  6. ^ 「ルーシ」の語には様々な地域概念があり、政治に都合よく使われてきた用語である。
    当初、モスクワ大公国が用いた意味での「ルーシ」はノヴゴロド・ルーシロシア語版を起源とした北東地域を指していたが(当時の宗主ジョチ・ウルス宛ての文書でモスクワ大公はその地域を指して「ルーシ」と呼んでいる)、やがてはジョチ・ウルスに対抗するためのアイデンティティーの拠り所として諸公の団結の合言葉に用いられ、その後モスクワ国家の強大化とロシア帝国の完成課程で「ルーシ」はかつてのキエフ・ルーシ全体の地域概念を指す用語にすり替えられた。
    そして、その用法における「ルーシの再統一」が、モスクワ国家=ロシア帝国がベラルーシやウクライナ全土、果ては「緑ルーシ」と名付けられたシベリア(無論、そう名付けられるまで「ルーシ」の地域ではなかった)を併合する大義名分となった。
    なお、その論法はソ連邦の結成時にも使用された(国歌に謳われるとおりである)。
  7. ^ 1991年12月のソビエト連邦崩壊直後、日本の新聞では『毎日新聞』や『産経新聞』が旧ロシア帝国と同じ「露」を使用する一方で、『朝日新聞』や『読売新聞』は旧ロシア帝国と区別するため「」と表記していた。
    ただ、片仮名で「」と表記すると「(くち)」と誤認され易いためか後に読売新聞も「露」に転換した。「ロ」の表記は朝日以外にNHK共同通信が使用しているものの少数となる。
    なお、日本国外務省は「露」を用いている。
  8. ^ 英語では、帝国時代を「Russian Empire」、大統領制時代を「Russian Federation」として両者を区別し、現行の大統領制時代を指す場合は単に「Russia」とせず、「Russian Federation」ないし「Russian Fed.」と、国号の「連邦」を強調する表記を用いる場合が多い。
  9. ^ のちにキエフ・ルーシ体制が崩壊して多くのキエフ人が北東部へ移住するまで、北東ルーシの諸スラヴ部族の言語は非常に多くのフィン語的特長を有していた。
  10. ^ フィン系民族の一部は同化せず、現在のロシア連邦内に少数民族として固有の言語と文化を保持している。
  11. ^ バルト海から黒海に至る交易路は「ヴァリャーギからギリシャへの道」と呼ばれ、東ローマ帝国やイスラム地域との交易でスラヴの地は大いに潤ったといわれる。
  12. ^ 厳密には、原初年代記のノヴゴロド系の写本。
  13. ^ ナポレオン戦争後、アレクサンドル1世の取り計らいもあり、両国はそれぞれスウェーデン、ロシアから独立を果たしているが、その国家元首をロシア皇帝が兼任した。
  14. ^ 詳細は北方領土問題参照
  15. ^ ロシアの国家元首は頭髪が「ツルツル」と「フサフサ」の交互になるというジンクスがある(いわゆる「つるふさの法則」)。
  16. ^ 言語による分類。
  17. ^ その場合の下限年齢は、16歳以上か連邦構成主体の立法による16歳より下の年齢である。
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  28. ^ なお、白川静の『字統』によると「魯」の原意は「おろか」でなく「よろこび」である。
  29. ^ 1877年(明治10年)に、ロシア領事館の抗議により、ロシアの漢字表記を「魯西亜」から「露西亜」に変更したとウィキペディアに書かれているがそれを確認するものは何かないか(神戸市立中央図書館) 国立国会図書館サーチ
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