フェンシング【fencing】
フェンシング
歴史と沿革
フェンシングは中世の騎士道華やかなりし頃、「身を守る」「名誉を守る」ことを目的として磨かれ、発達してきた剣術です。その後、火器類の発達により、戦(いくさ)の場での実用性は急速に衰退していきましたが、その繊細かつ奥深いテクニックに魅せられる人が多く、軍人や貴族の基礎的な教養として、競技化への道を歩むこととなりました。
1750年に金網のマスクが開発され、危険性が大幅に緩和されたことが引き金となり、この頃からヨーロッパ各地で競技会が盛んに開催されるようになりました。オリンピックでは、1896年の第1回近代オリンピック(アテネ)で正式種目に採用されて以来、欠かすことなく現在に至っています。しかし、当時は国によって競技規則に違いがあり、問題が数多く発生しました。
1914年6月にパリで開催された国際オリンピック委員会(IOC)の国際会議で統一的な「競技規則」が制定され、これにより競技の公正さが保たれ、判定を巡る争いが無くなりました。この規則はフェンシングの国際性を確立する上で大きく貢献し、同時に現在の国際フェンシング連盟(FIE)の試合規則の原案ともなっています。
競技方法
フェンシングにはフルーレ、エペ、サーブルの3種目があります。使用する用具や有効面(得点となるターゲット)が違うなど、各種目で競技規則が異なります。
男女とも共通のルールでそれぞれ個人戦、団体戦があります。世界選手権などでは、上記3種目それぞれで、男女別、個人戦、団体戦の12種目が行われます。
個人戦の場合、プール戦(6~7名ずつの総当たり戦)は3分間で5本先取した方が勝利、トーナメント戦は3分間3セットで15本先取した方が勝利となります。時間内で終わらなかった場合は得点の多い方が勝ちとなります。時間が終了して同点の場合は、1分間1本勝負の延長戦を行います。1分経過しても同点の場合に備えて延長戦の前に抽選で一方の選手に優先権を持たせておき、延長戦終了時にも同点の場合は優先権のある選手の勝ちとします。
団体戦の場合、1チームの3名が相手チームの3名と合計9試合を戦い、3分間で5本単位の勝負を重ねて45本先取または、9番目の試合までの合計でリードしたチームの勝ちとなります。9番目が終了して同点の場合は、個人戦同様の1分間1本勝負の延長戦で決着をつけます。
「突き」の判定は電気審判器で行います。電気審判器と選手の持つ剣はボディコードと、審判器コードまたは無線により接続されています。
審判(通常1名)は試合の進行を指揮し、ランプの点灯した「突き」についての有効性を判定します。ランプの点灯のほか、ルールに則した攻撃か、選手以外の物を突いて審判器が反応していないか、ピスト(試合用コート)の範囲内で行われた攻撃か、などの条件を加味し有効な得点となるかどうかを決定します。
●フェンシングの有効面
有効面は種目ごとに範囲が異なります。各図の白地部分が有効面です。
○フルーレ (2009年1月以降有効)
○エペ
○サーブル
道具、コートなどの説明
○マスク: 絶縁マスク(フルーレ・エペ用)と伝導マスク(サーブル用)がある。フルーレ、サーブルでは透明バイザーマスクも使われる。メッシュ(金網)は一定条件の下、12kgの圧力に耐える必要がある。マスクの前垂れの素材は1600ニュートンの圧力に対する抵抗力がある。
※「ニュートン(N)」とは力の単位で、質量100gの物体にかかる重力の大きさは約1Nである。
○手袋: パッドが入っていて、手首から腕の半分までを覆う必要がある。
○試合用衣服(ジャケット・ズボン): 十分に丈夫な素材で作られており、800ニュートンの圧力に耐える布地である。胸部の特定の部分を覆うプラストロン(プロテクター)をジャケットの下に着用する。プラストロンも800ニュートンの圧力に耐える素材であることが必要。ジャケットの裾は、「構え」の姿勢をとった時に10cmまでズボンに重なる必要がある。ズボンはひざ下までを覆う形で、ひざ下は隙間なくストッキングを着用する。
○ボディワイヤー: 剣の鍔の内側のソケットにプラグで接続されるボディワイヤーは、剣を持つジャケットの袖を通り背中に出て、リールまたは無線機のプラグに接続される。フルーレ・サーブルの場合はボディワイヤーからメタルジャケットに接続される。
○シューズ: 軽快に動ければシューズに特別の制約はないが、前後に俊敏に動くためとその独特のフォームから、踵が低く底面が平板で滑りにくい形状のものが多く使用されている。
●ピスト (試合用コート)
床面(下図で囲まれたピストの全部)は、アルミニウムなどの通電性のある金属で構成されています。電気審判器に接続されていて、床面に接触した剣の突きや斬りでは信号を出さないようになっています。
フェンシング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/20 01:42 UTC 版)
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フェンシング | |
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2004年アテネオリンピック男子エペ個人競技2回戦
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統括団体 | 国際フェンシング連盟 |
起源 | 19世紀フランス |
特徴 | |
身体接触 | 無 |
選手数 | 1対1 |
男女混合 | 無 |
カテゴリ | 屋内競技 |
用品 | 剣 |
実施状況 | |
オリンピック | 1892 - |
フェンシング(英: fencing)は、フランスで発祥した剣を用いるスポーツ競技である。二人の選手が向かい合って立ち、片手に持った剣で互いの体を突いて勝敗を決める。攻撃(剣で相手の体に触れる)を成功させるとポイントとなり、規定のポイントを先取した選手が勝利する。
「フルーレ」「エペ」「サーブル」の三種目があり、使用する剣・ルールがそれぞれ異なる。フランスで発達した剣術が原型で、用語にはフランス語が多い。
歴史
フェンシングの原形は、中世の騎士たちによる剣術にあるとされている。これらは実戦的な剣術であったが、鎧や盾などの防具、そして火器の発達によって剣(特に長い剣)が戦場で使われることは少なくなっていった。しかし、剣という武器は騎士の名誉の象徴であり、戦場で役に立たなくなってもフランスの上流階級は剣術を嗜み続け、19世紀の末にはフランス各地で盛んに競技として行われるようになっていった。
国や地方によってルールがばらばらであったため、競技のルールを統一するために、1911年、国際フェンシング連盟(FIE[注 1])がパリに設立され、スポーツとしての近代フェンシングが始まった。
試合

試合はピストと呼ばれる細長い台の上で行われる。現代のフェンシングでは、ピストは幅1.5mから2m、長さ14mである。両選手はピスト中央に4mの距離をおいて構え(アンガルド)の姿勢から試合を開始する。
2人の出場選手がピスト(フェンシングの試合場)に入り、主審が剣と服装を検査する。「ラッサンブレ、サリュエ(Rassemblez ! Saluez !)」(気をつけ、礼)の合図で試合前の敬礼をする。「アン・ガルド(En garde !)」(構え)の合図でマスクを着用し、スタートラインに前に出す足の爪先を付けて構える。
主審が「エト・ヴ・プレ(Êtes-vous prêts ?)」[注 2]または「プレッ(Prêts ?)」(用意はいいか?)と確認し、選手は「ウィ(Oui.)」(よし)または「ノン(Non.)」(まだ)で答える。両者が「ウィ」となったのを確認後、主審による「アレ(Allez !)」(始め)の合図で試合が開始される。
勝敗の決着がついたら、再度「ラッサンブレ、サリュエ」の合図で試合終了の敬礼をし、対戦相手と握手を交わす。その後ピストから退出する。
3つの種目
フェンシングではフルーレ、エペ、サーブルの3種の武器があり、これらがそのまま種目名となっている。
これらの武器は19世紀末に標準となったものである。また、伝統的な教育の場では、大杖やレイピア、ダガー、ブロードソード、ツーハンデッドソード、ソードブレイカー、マン・ゴーシュといった歴史的なフェンシングの武器についても学ぶことがある。西洋剣術、サバットとも関連がある。
フルーレ
突きのみが有効で攻撃権(後述)がある。フルーレにはフェンシングの基本技術が集約されているため、初心者は最初にフルーレを教えられることが多かった。また過去においてフルーレは女性が行う唯一の種目であり、剣が軽いため子供が扱うことも容易であった。今日ではフルーレ以外の武器から始めることも多い。
フルーレはレイピアを軽量化したスモールソード用の練習剣に由来する。断面が四角でしなやかなブレード(剣針)をもつ軽い剣である。今日では電気剣が使用されており、最低5.00N(おおよそ0.510kgf)以上の力が剣先に加わることで打突が判定される。
有効面

フルーレでの突きの有効面は、頭部と四肢を除いた胴体の両面である。これはフェンシングの練習に制限のある防具を使用していた頃の名残である。
- 当時は顔面を突くことは危険であったため、頭部は有効面からは除外されていた。その後有効面はさらに限定されることになり、命が存在すると考えられる胴体のみが有効面となった。
- 当時男子はキュロットパンツをはいていたため、臀部を除く胴体両面が有効面であり、女子は多数のひだを持つ足首までのスカートをはいていたため、腰から上の胴体両面が有効面であった。
- 男女ともにキュロットパンツをはくことになり、男女のフルーレ有効面は一致した。
エペ
エペは、伝統的なフェンシングで用いられていた決闘用の武器に最も近い剣である。フルーレと対照的に重量があり、断面が三角形で曲がりにくく長いブレードと大きくて丸いお椀型の鍔(ガルト)を持つ。電気剣での突きが有効となるには7.50Nの力が剣先に加わらなければならない。伝統的なフェンシングでは相手の上着を確実に捉えることができるように、剣先(ポアン)に三つ又の部品を取り付けることもあった。現在では剣身に二本の電線を埋め込み、フルーレより大きめの電気スイッチである剣先(ポアン)が必須である。同時突き(相打ち)が有効であり、攻撃権の概念も存在しない。さらに後述のように有効面が広いため、エペの試合は極端に防御的で慎重なものになる傾向がある。
有効面

全身と剣の内側の非絶縁部分が有効面である。大きい鍔をもつのは、剣を持つ手も体の他の部分と同様に有効面とみなされるため、敵の攻撃を防ぎやすくする意味がある。
サーブル
サーブルでは突きだけでなく斬りも有効となる。攻撃権がある。北部イタリアの決闘用サーベル術に由来し、長らく伝統的に男子のみの種目であったが、近年は女子も行われるようになり、オリンピックでは2004年から女子サーブルが正式種目となった[1]。今日では電気審判機が用いられ、相手の有効面(頭部、胴体、腕)を剣先か剣身で触れることで通電し攻撃有効が判定される。
有効面

サーブルの有効面は腰より上の上半身全てである。
- 相手の足への攻撃は防御側が足を後ろに滑らせることで避けることができる。このとき、攻撃者の頭部や腕部は剥き出しになっているため、防御側の高いラインの攻撃のほうが攻撃者の低いラインの攻撃よりも先に達する(足を滑らせる古典的な例が、1790年にヘンリー・アンジェロが著した「Hungarian and Highland Broadsword」に記載されている)。
- 非電気サーブルまでは両腕の指先までが有効面であった。センサー式電気審判器導入によって利き手の甲・非利き手の手首まで、非センサー式電気審判機導入によって両手首までが有効面となった。
防具
現代のフェンシングで用いられる防具は丈夫な綿かナイロンあるいはケブラーで出来ている。以下のようなものが防具に含まれる。
- 足の付け根までを覆い、足の間を通すストラップがついた、体にフィットするジャケット
- 有効面をカバーするジャケットの上に着用する金属糸を織り込んである素材を使用したラメ(フルーレ・サーブルのみ使用)
- ジャケットの下に着用し、横からの剣の衝撃を二重に保護するハーフジャケット(プラストロン、日本ではプロテクターということが多い)
- 手および、腕部を保護するグローブ
- みぞおちから膝下丈のズボン(ニッカーズ ジャケットと共に腹部二重に防護する)
- 膝までを覆うソックス
- 喉元を保護するバベット(垂れ)のついたマスク
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胸部プロテクター(女子用)
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ジャケット
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グローブ
-
プロテクター(プラストロン)
-
ニッカーズ
-
マスク
伝統的にユニフォームは白色である(マスク・メタルジャケットには色のついたものもある。)
- しかし1996年アトランタオリンピックでは各選手の背中に国籍・名前が入るようになった。
- 2000年シドニーオリンピックではこの伝統は無くなり、ユニフォーム・メタルジャケットに所属国を表す色彩・マークがFIEルール上の必須事項として表されるようになった。これは、テレビで見てどこの選手か解るように、ということである。
これらの防具は選手を保護する面で有用である。
- 一時、目の周辺に透明素材(バイザー)を使ったマスクも必須になっていたが、2009年11月に国際大会でバイザーが割れる事故が発生したため、FIEは暫定措置として直ちに透明マスクの使用を禁止し[2]、2010年に恒久化された。
現在の防具の制定のきっかけとなったのは、1980年モスクワオリンピック金メダリストのウラジーミル・ビクトロビッチ・スミルノフの死亡事故である。スミルノフはローマで行われた1982年の世界選手権で西ドイツのマティアス・ベーアの折れた剣がマスクを突き破り、眼窩から前頭葉に突き刺さったことにより脳死状態となり、9日後に死亡した。
攻撃権
フルーレとサーブルにおける「攻撃権」とは、先に攻撃したほうが優先権を持つという原則のことである。簡単に言えば、もし攻撃された場合(自分自身が突かれる可能性がある場合)には相手を攻撃せずに、まず自分を守らなければならないということである。
攻撃は、運が悪かった場合や、判断ミス、あるいは防御側の行動によっては、失敗することがある。
- パラード(相手の剣を払うこと)することにより攻撃権は防御側に移り、防御側は相手を攻撃することができる。
- たとえば、一方の選手が攻撃を行い、もう一方の選手がすぐに反撃して(コントルアタック)双方の攻撃が相手に突きを決めていた場合、先に攻撃した選手の攻撃が有効となり、反撃した選手は間違いを犯したと判定される。
- しかし、もし攻撃された選手がその攻撃をパラードした後で反撃を行った(リポスト)のであれば、この場合は反撃側に攻撃権が移ったことになり、先に攻撃した選手は防御しなければならないということになる。
現代のスポーツフェンシングにおけるフルーレとサーブルでは、両選手が一定の時間内で同時に突きを決める場合がある。
- この場合、主審(プレジダン)はどちらの側に攻撃権があってどちらの得点になるのかを決定しなければならない。もしそれができない場合は両者の突きは無効と宣言され、試合が再開される。
主審
主審は試合の進行役となる。
- 主審は得点、またはタイムキーパーがいない場合は時間の管理、および、突きがどのような順番でなされたのかの判定を行わなければならない。
- 主審はピストの横に位置し、試合経過を観察する。
電気審判機
電気審判機は大きな国際および国内試合のすべて、また地方大会のほとんどで使用されている。電気審判機を用いる場合、フルーレとサーブルではさらに別の防具が必要となる。
- フルーレ選手は胴体から足の付け根までを覆う通電されたベスト(メタルジャケット)を着用する。
- サーブル選手は通電されたベスト、および袖とマスクを着用する。
- どちらの種目でも、選手の剣は有線で結ばれる。
- 相手選手を突くことによって電気回路が閉じてブザーが鳴り、審判に突きが有効であったことを知らせる。
審判は理論上、自由に攻撃権を監視することが可能であり、突きが有効であったかどうかを判定する副審判も不要となる(非利き腕での防御などのルール違反を監視する副審は一定レベル以上の試合、また選手からの要求があった場合必須となる)。
フルーレとエペでは、先端がスイッチ状になって剣身に電線を埋め込んだ剣を用いる。
- 電気サーブルでは、導入当時はセンサーが感知した際にのみ電流が流れるように設定されたが、センサーの不具合の多さにより、非センサー式が導入された。
有効な「突き」「斬り」を決めた選手の側のピスト外周が発光する。
フルーレで「突き」が記録された場合
剣の先端が相手のメタルジャケットに触れ、FIEルール上の規定時間以上に押し下げられることで回路が閉じ、突きがあったことを知らせるようになっている。相手の剣への接触は感知されない。
エペで「突き」が記録された場合
剣の先端が押し下げられることで回路が生じ、突きがあったことを知らせるようになっている。相手の剣は絶縁されているので接触しても感知されない。
サーブルの場合
剣身まで電気が流れ、相手のメタルジャケット・籠手・マスクにふれた瞬間に回路が生じ、斬り・突きがあったことを知らせるようになっている。相手の剣への接触は感知されない。なお、サーブルはガードの部分で相手の有効面に触れても反応するが、これは反則である。
用語
フェンシングの用語はフランス語であり、「マルシェ」は一歩前へ、「ロンペ」は一歩後ろへ、「ファンデヴ」は突くという意味である。他にもマルシェやロンペをほかの技と組み合わせて使用する。他には、「ボンナヴァン」(前に飛ぶ)、「ボンナリエール」(後ろに飛ぶ)、「フレッシュ」(剣を前に突き出して、突進する)などの特殊な技もある。
「アロンジェ」は突く(腕を伸ばす)、「パラード」は剣をはらう(8種類の動作による呼び名がある)、「リポスト」ははらった直後につき返す、「ディガジェ」は剣を回してかわす、という意味である。
競技団体
国際的な競技統括団体として、国際フェンシング連盟がある。スポーツとしてのフェンシング、とりわけ国際試合のルールの成文化と管理を目的とした団体である。この設立に先立ち、国際試合が(特にライバル国であるフランス・イタリア間で開催されたことは特筆に価する)開催された。
今日的な視点で見ると、FIEの設立は次の二つを決定的に分断したものであったと言える。
- 「スポーツ的な」フェンシング:独自に決められたルールで行われる試合に勝つことを目的とするもの
- 「伝統的な」フェンシング:護身あるいは公式の決闘の手段としての剣術を探求するもの
バリエーション
車椅子フェンシング
夏季パラリンピックの正式種目。
ライトセーバー
2018年、フランスのフェンシング連盟が公式種目として採用した。樹脂製の刀身にLEDを仕込んだ競技用のライトセーバーを使用し、円形のピストで競技を行う。頭、腕、足、手先にそれぞれポイントがあり、15点を先取した方が勝利する。攻撃時には剣先を後ろに振りかぶる必要があるなど、フェンシングとは競技特性が異なるが、若い世代の取り込みを狙った種目であるという[3]。また、イタリアではルードスポーツという名前の、競技用ライトセーバーを使った競技がある。
スマートフェンシング
大日本印刷が開発した、簡易的にフェンシングを体験できる装置。 センサー付きのスポンジ性のサーベルと電導ジャケットを着て、行なう。 2022年とちぎ国体で公開競技でこれを使う競技が行われた。
日本におけるフェンシング
世界的、特に発祥の地ヨーロッパでは競技人口の多いスポーツの一つだが、日本ではあまり人気がなく、『uhbスーパーニュース』によると日本においては日本全国で1万人ほどしかいない。フェンシングの部活動を置いている学校も殆ど無く、ある程度の規模の学校に剣道部が大抵置かれているのとは対照的である。
日本で最初にフェンシング競技が導入されたのは、西洋の近代軍人が習得する教養としての剣技を日本陸軍が導入しようと図ったのが最初であり、1884年11月に西郷従道陸軍卿の命により、陸軍戸山学校において教官候補の選抜が始まった記録が残されている[4]。当初の指導はフランス陸軍から派遣された教官によって行われた[5]。
1935(昭和10)年にフランス留学経験をもつ岩倉具清(岩倉具綱の孫)がアルゼンチン臨時代理公使アルトゥーロ・モンテネグロらの後援を得て「日本フェンシング倶楽部」を設立し、その指導により同年法政大学に、翌1936年慶應義塾大学にそれぞれフェンシング部が創設された[6][7][8]。同年ベルリン五輪の総会で次期開催地が東京に決まったことにより、「大日本フェンシング協会」(会長・曽我佑邦子爵、理事長・本間喜一。現・日本フェンシング協会)が発足し、東京五輪の競技種目に採用されたことにより各大学でフェンシング部創設が相次いだ(東京五輪は1940年に開催予定だったが戦争により中止となった)[6]。
1937年、剣道家の森寅雄は剣道普及のため渡ったアメリカでフェンシングを学び始め、わずか6か月の練習で全米選手権を準優勝した。オリンピックでメダルを取ることを期待されたが、太平洋戦争勃発により出場はかなわなかった。
太平洋戦争で日本が敗戦し、連合国軍(GHQ)に剣道を禁止された際、代替する競技として考案された撓競技(しないきょうぎ)は、フェンシングを模した防具が使用された。
2008年、北京オリンピック男子フルーレ個人競技で太田雄貴が銀メダルを獲得し、フェンシング競技に於いて日本人初のオリンピックメダルを獲得した。また、同オリンピックでは女子フルーレ個人競技で菅原智恵子が7位に入賞しており、実はこれが日本人選手のフェンシング個人種目における初の入賞でもあった(団体種目では1964年東京オリンピックで男子フルーレ団体競技で4位に入賞している)。
2015年、モスクワでの世界選手権男子フルーレ個人で太田が金メダルを獲得した。フェンシング競技に於いて五輪も含めた世界大会で日本人が優勝したのは初めてである。
2021年に開催された2020年東京オリンピックでは、男子エペ団体においてフェンシングで日本初の金メダルを獲得した。
高校においては剣道ほど普及しておらず、指導者も少ないためフェンシング部がない高校も多い。このため、クラブチームで小中学生や社会人と共に練習する生徒も多い。1980年モスクワオリンピックフェンシング代表だった千田健一(千田健太の父)が監督を務める宮城県気仙沼高等学校や部活奨学金を用意している仙台城南高等学校などの宮城県勢、岐阜県立羽島北高等学校が強豪である。
大学においては、全日本学生フェンシング選手権大会、全日本大学対抗選手権大会、全日本学生個人選手権大会がある。男子は法政大学、中央大学、早稲田大学、日本体育大学、日本大学、専修大学、同志社大学、朝日大学など。女子は日本体育大学、早稲田大学、法政大学、日本女子体育大学、東京女子体育大学、専修大学、立命館大学、同志社大学などで盛んである。
大半の選手は実業団、大学職員、公務員など兼業が主流であるが[9]、三宅諒のように個人でクラブチームを立ち上げる有力選手もいる。2009年4月にNEXUSが実業団を立ち上げている。
日本におけるフェンシングを扱った作品としては、映画『リオの若大将』(1968年公開)がある。また、フェンシング経験者の高城高は複数の小説を執筆している。
著名な選手
海外
- ホルガー・ニールセン:1896年アテネオリンピックのサーブルで銅メダル、同大会の射撃競技でも銀銅2つのメダルを獲得。1898年には現在行われているハンドボールのルールを策定。
- アルド・ナディ:1920年夏季オリンピック金・銀メダリスト。古典的な教科書「On Fencing」著者。
- イタロ・ サンテッリ:1920年代に「ハンガリアン」スタイルで革命を起こした。
- ジョルジオ・サンテッリ:イタロの息子。ニューヨークの Santelli salle 創始者。
- ラズロ・サボ:コーチ育成の体系を作り上げたハンガリー人。
- イムレ・バス:エペの手引書を作成。
- ピーター・ウエストブルック:1984年夏季オリンピック銅メダリスト。「Harnessing Anger」著者。
- ボブ・アンダーソン:1952年夏季オリンピック英国代表。ファイト・コレオグラファー。
- トーマス・バッハ - 1976年モントリオールオリンピック金メダリスト。国際オリンピック委員会会長。
- ク・ボンギル:韓国代表。2012年ロンドンオリンピック金メダリスト。アジア初の世界選手権男子サーブル団体戦3連覇。
日本
- 森寅雄:剣道家。ローマ五輪、1964年東京五輪、メキシコ五輪アメリカ代表コーチ。
- 岡秀子:モントリオール五輪代表、モスクワ五輪(日本は不参加)代表。
- 千田健一:1980年モスクワ五輪フェンシング日本代表、指導者
- 市ヶ谷廣輝:バルセロナ五輪、アトランタ五輪日本代表。太田雄貴は教え子で、全日本選手権で師弟対決が実現。
- 太田雄貴:アテネ、北京五輪フルーレ日本代表。北京五輪では銀メダル(メダル獲得は日本人初)。2015年世界選手権で金メダル(日本人初)。
- 新井祐子:アトランタ、シドニー五輪日本代表。
- 菅原智恵子:アテネ・北京・ロンドン五輪3連続日本代表。北京五輪で女子初の7位入賞。
- 原田めぐみ:アテネ・北京五輪女子エペ日本代表。
- 千田健太:北京五輪フルーレ日本代表。ロンドン五輪団体銀メダリスト。
- 星野敏:1983年の全日本フェンシング選手権大会男子フルーレ個人で優勝。創業したNEXUSに実業団を創設。
- 藤木悠:1951年の全日本フェンシング選手権大会男子エペ個人で優勝。リオの若大将でフェンシングの監修を担当。
- 江村美咲:2022年、2023年のフェンシング世界選手権女子サーブル個人で2連覇。2024年パリ五輪団体銅メダリスト。
- 東晟良:2017年全日本フェンシング選手権大会女子フルーレ個人で史上最年少の18歳で優勝。2020年東京五輪代表、2024年パリ五輪団体銅メダリスト。
フェンシングを題材とした作品
小説
- 賭ける(1974年) - 高城高[10]。
- El maestro de esgrima(1988年) - アルトゥーロ・ペレス=レベルテ作。
- (邦訳)フェンシング・マエストロ(2022年) - アルトゥーロ・ペレス=レベルテ作、高城高訳[11]。
- 函館水上警察(2009年) - 高城高[12]。
映画
漫画
- タイガー・モリと呼ばれた男(1996年) - 松田尚正、早瀬利之、ミスターマガジン[14]。
- 銀白のパラディン -聖騎士-(2014年 - 2015年) - 岡啓介、週刊少年サンデー。
- DUEL!(2015年 - 2017年) - 藍井彬、ヤングガンガン。
- みなさまエト・ヴ・プレ?(2017年 - 2018年) - 田丸鴇彦、コミックNewtype[15]。
- ロマンスの騎士(2018年 - 2019年) - 武富智、裏サンデー[16]。
- さくらの騎士道(2019年 - ) - 温泉川ワブ、カドコミ[17]。
脚注
注釈
出典
- ^ “JOC - 競技紹介:フェンシング”. JOC - 競技紹介:フェンシング. 2023年3月4日閲覧。
- ^ Transparent visor mask FIE緊急通達 2009年11月5日
- ^ “In France, the Force is strong with lightsaber dueling”. AP NEWS (2019年2月18日). 2021年3月24日閲覧。
- ^ 陸軍省大日記 明治17年「大日記鎮台 11月木 陸軍省総務局」
陸軍省 明治17年11月
「第七六八号 教導団 東京鎮台 今方戸山学校仏国剣術伝習ニ付員外助教トシテ下士若干名同校泊中付右ニ就シテハ其台府下屯在歩兵隊ノ内ヨリ軍曹伍長ノ内五名左ノ項目ニ達該致候ハ至急取調人名可申出此旨相達候事 十七年十一月十四日 西郷陸軍卿 一、二十五歳以下ノ軍曹伍長ノ内服役年限多キモノニシテ停年未満ノ者 一体格強壮行方正勤務勉励ノ者 一剣術志願ノ者 教導団ヘ本文別ニ近衛局ニ移牒モ本文朱書該所ノ通リ 但年齢ハ本文ノ如ク限ルト雖モ実際ノ都合ニ依リ多少之ヲ超過スルモ妨ケナシ」
陸軍省大日記 陸軍省日誌・送達・受領日誌 明治17年 文書受領日記
戸山学校 取調委員今村少佐
明治17年1月3日 - 明治17年12月29日
「十一月二十九日 通報 庁名 戸山学校 西洋剣術用欽剣御渡相成度義ニ付伺 領収」 - ^ 陸軍省大日記 明治20年「貳大日記 7月」
陸軍大臣伯爵 大山巖 明治20年7月18日
陸軍省 総務局 仏蘭西共和国陸軍
「弐第二〇五九号 総務局 教師キエル氏帰国ニ付仏国陸軍大臣ヘ謝状之件 明治二十年七月十八日 戸山学校雇教師仏国剣術下副官キエル氏今般解雇帰国ニ付テハ該国陸軍大臣ヘ別封謝状送付相成度ト存候〜」 - ^ a b 小林倫幸「戦前における本間喜一先生によるフェンシング部創設」第22号、愛知大学東亜同文書院大学記念センター、2014年3月、ISSN 2188-7950。
- ^ フェンシングの歴史公益社団法人 日本フェンシング協会 公式サイト
- ^ 部史 慶應フェンシング・日本フェンシングの歴史KEIO FENCING TEAM official HP
- ^ “https://twitter.com/miyake_fencing/status/1242421622385987586”. Twitter. 2020年11月25日閲覧。[出典無効]
- ^ “宝石推理小説傑作選 第3巻 | NDLサーチ | 国立国会図書館”. 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ). 2024年6月2日閲覧。
- ^ 『フェンシング・マエストロ』 。
- ^ 『函館水上警察』 。
- ^ Gheorghe, Andrei (2014-09-26), It Takes Two to Fence, Olimpia Melinte, Silvian Vâlcu, Marian Adochitei, DaKINO Production, Diud Film 2024年6月2日閲覧。
- ^ “『タイガ-・モリと呼ばれた男』(早瀬 利之,松田 尚正) 製品詳細 講談社コミックプラス”. 講談社コミックプラス. 2024年6月2日閲覧。
- ^ “みなさまエト・ヴ・プレ?|カドコミ (コミックウォーカー)”. カドコミ (コミックウォーカー). 2024年6月2日閲覧。
- ^ “ロマンスの騎士 1巻 (裏サンデー) - 武富智 - 無料まんが・試し読みが豊富!電子書籍をお得に買うならebookjapan”. ebookjapan. 2024年6月2日閲覧。
- ^ “さくらの騎士道|カドコミ (コミックウォーカー)”. カドコミ (コミックウォーカー). 2024年6月2日閲覧。
関連項目
- 国際フェンシング連盟
- オリンピックのフェンシング競技
- フェンシング世界選手権
- フェンシング・ワールドカップ
- 車いすフェンシング
- ラ・カン - サバットに含まれるステッキ術。構えはフェンシングと類似している。
- 截拳道:映画俳優で有名なブルース・リーが開発した武術。フェンシングから多大な影響を受けており、パンチの打ち方やフットワークなど、動きがフェンシングと類似している。
- 剣道:日本で発祥の似たようなスポーツ。
外部リンク
フェンシング
出典:『Wiktionary』 (2021/06/12 13:05 UTC 版)
名詞
フェンシング
- 中世後期のヨーロッパで発生・発展した、刺突用片手剣による、護身と決闘のための西洋剣術(wp)。中世ヨーロッパの騎士が編み出した刺突用片手剣の技芸が、訓練や模擬試合に導入される形で、15世紀頃に発生したもの。西洋剣術の代表的な一つ。
- 近代スポーツ競技としてのフェンシング。スポーツフェンシング、フェンシング競技ともいう。金網のマスクと白いユニフォーム(wp)を装着し、刃が無い細身の片手剣を持った2人の選手(剣士(wp))が、直線的な一定区域内で相対して、突き技と斬り技で勝敗を争う形式の、フェンシング競技。剣の形状や有効面(得点対象となる身体部位)の違いなどによって、フルーレ(wp)、エペ(wp)、サーブル(wp)の3種に分けられる。
語源
翻訳
- アイルランド語: pionsóireacht (w:ga)
- アフリカーンス語: skermsport, skermkuns. (w:af)
- アラビア語: مبارزة سيف الشيش (ar)
- イタリア語: scherma (it) 女性
- インドネシア語: anggar (id)
- ウェールズ語: cleddyfa (w:cy)
- 英語: (フェンシング) fencing, (競技フェンシング) competitive fencing, (オリンピックフェンシング) Olympic (en) fencing.
- エスペラント: skermo (eo)
- オランダ語: schermen (nl)
- カタルーニャ語: esgrima 女性
- 現代ギリシア語: ξιφασκία (el)(xifaskía) 女性
- スウェーデン語: fäktning (sv)
- スペイン語: esgrima 女性
- セルビア語: мачевање (w:sr)
- チェコ語: šerm (w:cs) 男性
- 中国語: (繁): 擊劍/ (簡): 击剑 (jījiàn)
- 朝鮮語: 펜싱 (pensing)
- デンマーク語: fægtning (da) 中性
- ドイツ語: Fechten 中性
- トルコ語: eskrim (tr)
- ノルウェー語(ノルウェー語(ブークモール)): fekting (w:nb)
- ハンガリー語: vívás (hu)
- ヒンディー語: तलवारबाजी (hi)
- フィンランド語: miekkailu (en) (w:fi)
- フランス語: escrime 女性
- ブルガリア語: фехтовка (w:bg) (fehtóvka) 女性
- ベトナム語: đấu kiếm (vi) (w:vi)
- ヘブライ語: סייף (he)
- ペルシア語: شمشیربازی (fa)
- ポーランド語: szermierka (pl)
- ポルトガル語: esgrima 女性
- ラテン語: (フェンシング) ars gladii, ars gladiatoria, gladiatura rudiaria. (オリンピックフェンシング) ars gladii in Olympiis.
- ルーマニア語: scrimă (ro)
- ロシア語: фехтование (ru) (fextovánije) 中性
関連語
「フェンシング」の例文・使い方・用例・文例
- エペはフェンシングで使われる武器の1つである。
- 私はフェンシングをすることが好きです。
- フェンシングとボクシング以外にはほとんどスポーツをしなかった.
- フェンシングのけいこをする.
- フェンシングの剣で戦う
- アーチェリ、フェンシング、および他のスポーツに使用される手首や腕のための保護カバー
- フォイルと同様であるが重い刃を持つフェンシング用の剣
- フェンシング選手の顔を覆う細かいメッシュのフェイスマスク
- フェンシングのスポーツで使用される剣
- フェンシング一続きの間の平坦な長方形エリア
- V字形の刃と微かに曲がった柄のフェンシングの剣
- フェンシングで剣の代わりに使われる棒
- ボクシングやフェンシングでの防衛の姿勢
- フェンシングの技術
- フェンシングの達人
- 突然に前進する人(フェンシングなどで)
- エペという,フェンシングの競技
- フェンシングというスポーツ
- オンガードという,フェンシングでの構え方
- (フェンシングで)試合の前後に審判と相手に礼をすること
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