ケブラー
2個の芳香族環がアミド結合(NHCO)で結ばれた構造をもつアラミド(芳香族ポリアミドの一般名称)繊維のこと。アメリカ・デュポン社の商品名。鋼並みの1mm2当たり280kgの高強度をもち、高弾性で、強靭性、高耐熱性の優れた高分子繊維である。産業用資材を中心に、(1)強化繊維としてプラスチックを補強し(FRP、FRTPなど)、ブレーキの摩擦材、スキー板など、(2)ゴムの補強材としてタイヤ、タイミングベルト、CVT(無段変速機)用ベルト、ホース類など、(3)この繊維自身を使ったロープ、ケーブル、防護服、作業手袋、などに使用されている。

ケブラー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/04/06 03:58 UTC 版)
ケブラー (Kevlar) とはアラミドの登録商標である。1965年に化学者でデュポン社に勤めていたステファニー・クオレクによって発明された。1970年代初期に商業的に使用され始めた。
正式名称はポリパラフェニレン テレフタルアミド(英: poly-paraphenylene terephthalamide)。
長所・短所
長所
- 引張り強度が高い
「引張り強度」が高く、同じ重さの鋼鉄と比べて5倍の強度を持つ。
ケブラーはp-フェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドの重合によって得られ、分子構造が剛直で直鎖状の骨格を持っている。 ケブラーの強度は、周囲のポリマー鎖との、カルボニル基と水素間の水素結合や、ベンゼン環のπ結合の部分的な重なり(π-π相互作用)による。
ケブラーには、ケブラー、ケブラー29、ケブラー49の3種類があるが、なかでもケブラー49はすべてのアラミド繊維の中で最高の引っ張り強度を持つと考えられている。
- 高耐熱
高温に強い。
- 有機溶剤に溶けない
また、ケブラーは結晶性のポリマーであり、一般の有機溶媒に溶けず、溶融もしない。 そのため成形が困難であり、濃硫酸に溶解することで成形している。
短所
- 紫外線(UV)にさらされると分解する。他の素材と比べて、普通の屋外環境に弱い[1]。(UVを遮断する対策を講じないと、アウトドア用途で中・長期に使うことはできない。)
- アルカリ性の環境に置かれたり、塩素にさらされても分解する。
- (引張り強度は高いが)圧縮力には弱い[1]。
- 切断するには特殊な切断道具を必要とする[1]。また、ひとたび積層して繊維強化プラスチックにすると、普通のドリル刃では穴をあけることすらできなくなる[1]。
用途
繊維強化プラスチックの補強、飛行機、船体、自転車などに使われる。(UV遮断措置を特に講じるか、UVにさらされない箇所。)
ヨットレースで使用するセイル(帆)は、セイル表面にケブラー繊維を縫い付けるような加工・補強をして引張強度を高めることがある(ただしUVに晒されるので中・長期使用には向かない。)
警備業界・警察・軍隊などでは、ボディアーマーや防刃ベストなどに使用されている。
楽器のボンゴの素材としてもケブラーが使われている。伝統的な木材では、サルサプレーヤーがボンゴを床に落としてプレーするスタイルや地元のクラブや最大のアリーナやスタジアムでのプレーの厳しさに耐えられないため、ラテンパーカッション (LP) 社がケブラーを使ったボンゴを製造している[2]。LP社はケブラーを「鋼鉄の二倍の強度」 (which is twice as strong as steel.)[3] としている。
脚注
- ^ a b c d O'Shea, Colette (2025年1月10日). “Carbon Fibre versus Kevlar” (英語). Tricel Composites. 2026年4月6日閲覧。
- ^ “LP Galaxy Fiberglass Fausto Cueves III Sig. Bongo”. モリダイラ楽器. 2022年1月13日閲覧。
- ^ “LP® Galaxy® Fiberglass Bongos”. Latin Percussion. 2017年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月13日閲覧。
関連項目
ケブラー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 02:29 UTC 版)
「ステファニー・クオレク」の記事における「ケブラー」の解説
クオレクはデュポンに勤務している間にケブラーを発明した。1964年に彼女の研究グループはガソリン不足を見越してタイヤに使う軽量かつ強靭な繊維を探していた。その時に彼女が取り組んでいたポリマー(高分子化合物)はポリパラフェニレンテレフタラートとポリベンズアミドで、それらは溶融状態で液晶を形成し、その状態で200℃以上にしてメルトスピニング法にかけると、より弱く硬さを欠いた繊維が生成された。彼女の新しいプロジェクト独自の技術と溶融・凝結の重合反応プロセスは、その温度を0℃から40℃の間まで切り下げるものだった。 彼女が後に1999年のスピーチで語ったところでは、 その溶液は風変わりで(低粘度)、汚濁し、かき混ぜたオパール色の、バターミルク状の外観をしていました。従来のポリマー溶液は通常、澄んだ半透明で、糖液の粘性を多少なりとも持ちます。私が作った溶液は濁ってはいましたが、細かい小孔のフィルタで完全に濾過できるものでした。これは液状の結晶体からなる溶液だったわけですが、私はこの時点ではそうだと分かっていませんでした。 この種の濁った溶液は通常は捨てられてしまう。しかしクオレクは、スピナレット(英語版)(紡糸口金)を操作する技師の Charles Smullen を説得し、彼女の溶液を試させた。そして、ナイロンが概して壊れるような状況にもあってもその繊維が壊れないことに彼女は驚いた。ナイロンより強いどころか、ケブラーは重量あたりにして鉄の5倍の強度があった。彼女の上司と研究所長はいずれも彼女の発見の重要さを理解し、高分子化学の新分野がたちまち立ち上がった。1971年には、いま見られるようなケブラーが姿を現した。クオレクはこの繊維を熱処理することでさらに強度を高められることを知った。棒状をしたこの重合体分子は極めて志向性が高く、これがケブラーに並外れた強度を授けた。クオレクは脂肪族と塩素族を含んだサーモトロピックなケブラーの研究を続けた。
※この「ケブラー」の解説は、「ステファニー・クオレク」の解説の一部です。
「ケブラー」を含む「ステファニー・クオレク」の記事については、「ステファニー・クオレク」の概要を参照ください。
固有名詞の分類
- ケブラーのページへのリンク