きょう‐そう〔キヤウ‐〕【競走】
競走
『十二支(えと)の起こり』(昔話) 神様が、「指定日までに駆けつけて来た者を十二支の仲間に入れる」と動物たちに言う。牛は足が遅いので、他の動物よりも早く出かける。鼠が牛の背中に乗り、一番に到着した牛の前に飛び降りる。それで、十二支のはじめは鼠に決まった(滋賀県蒲生郡竜王町山面)。
*鼠が猫を裏切る物語もある→〔猫と鼠〕1の『十二支の由来』(中国昔話)。
『狸と田螺』(昔話) 伊勢参りに行く狸と田螺が、大神宮の鳥居まで駆けっこをする。田螺は貝の蓋を開いて、走る狸の尾にくいつく。狸は鳥居に着くと喜んで尾を振り、それが石垣にぶつかって、田螺の貝が半分割れる。転がり落ちた田螺は、痛さを我慢して「狸君、遅いなあ。僕は先に着いて、肩を脱いで休んでいるところだ」と言う。
『平家物語』巻9「宇治川先陣」 源氏の武者たちが宇治川の先陣を争う。畠山重忠が川を渡って対岸に上がろうとする時、彼の烏帽子子(えぼしご)大串次郎が馬を流されて、重忠の背後に取りつく。重忠が大串を岸に投げてやると、大串は岸に立って「大串次郎、宇治川の先陣ぞや」と名乗りをあげ、敵も味方もどっと笑う。
『平家物語』巻9「宇治川先陣」 梶原源太景季と佐々木四郎高綱が宇治川の先陣を争って馬を走らせる。遅れた佐々木が、「馬の腹帯がゆるんでいる」と梶原に声をかけ、梶原は手綱を放して腹帯をしめる。その間に佐々木は追い抜いて川へ駆け入り、宇治川を一文字に渡って対岸へ上がる。
『変身物語』(オヴィディウス)巻10 俊足の娘アタランタは、求婚する男たちに競走を挑み、負ければ花嫁となり、勝てば求婚者を殺す取り決めをする。多くの若者が死んだ後、ヒッポメネスがアタランタと競走し、3つの黄金のりんごを投げる。アタランタがそれを拾っている間に、ヒッポメネスはゴールに入る〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第9章では、メラニオンが黄金のりんごを投げ、アタランテを妻とする〕。
『鯨となまこ』(昔話) 鯨となまこが、走りくらべをする。なまこは仲間たちに、「1人ずつ浦々に待機していてくれ」と頼んでおく。油良の浦から競走を開始し、鯨はえらい勢いで小浜の浦まで泳いで来て、「なまこ殿」と声をかけてみる。すると、なまこ(の仲間)が「鯨どの、今来たのか」と答えたので、鯨は驚く。下田の浦まで泳いで「なまこ殿」と呼ぶと、また「鯨どの、今来たのか」と答える。どこまで行っても、なまこに先を越され、とうとう鯨は負けてしまった(山口県大島郡)。
*類話である→〔兎〕1aの『亀とウサギ』(アフリカの昔話)では、多くの亀が方々に隠れて兎をだます。
『ベン・ハー』(ワイラー) ユダヤの名家の青年ベン・ハーは、ローマ軍の将校メッサラによって無実の罪におとされ、ベン・ハーの母と妹は地下牢に入れられた。ベン・ハーは母と妹が獄死したと聞き、メッサラへの復讐の念に燃えて、ローマ・カルタゴ・アテネなど諸国の代表が争う大戦車競技会に臨む。メッサラの戦車は車軸に鋭い刃物が取りつけてあり、併走する競走相手の戦車を破壊した。メッサラはベンハーの戦車をも破壊しようとするが、逆にメッサラの戦車の車輪がはずれてしまう。戦車は横転してメッサラは死ぬ〔*死ぬ間際にメッサラは、ベン・ハーの母と妹が生きていることを告げる〕→〔ハンセン病〕1。
『理由なき反抗』(レイ) 17歳のジムは、転校して来た高校で不良グループにからまれ、リーダーのバズと、チキン・ランをすることになる。2人がそれぞれ自動車を崖に向けて疾走させ、崖の直前で飛び降りる。先に飛び降りた方が負けになるのだ。ジムは車が崖から転落する直前に、うまく飛び降りた。しかしバズは服の袖がひっかかって車から出ることができず、車もろとも崖下へ落ちて死んでしまった。
『三国志演義』第68回 神通力を持つ左慈を捕らえて殺そうと、曹操の家来3百人が騎馬で追いかける。前方を左慈がゆっくりと歩いて行く。家来たちは馬を走らせるが、どうしても追いつくことができなかった。
『捜神記』巻1-18 薊子訓(けいしくん)は神仙の人である。彼が1人の老人と語り合っているのを見た男が、「薊先生、お待ち下さい」と呼びかけた。薊子訓と老人は歩きながら返事をした。ゆっくり歩いているように見えたが、男が馬を走らせても追いつけなかった。
★5b.言葉のトリックによって、速く走る者がゆっくり歩く者に追いつけない。
アキレスと亀の故事 ゼノンのパラドックス。俊足のアキレスがいくら速く走っても、前方をゆっくり歩く亀に追いつけない。アキレスが亀のいたA地点まで来た時には、すでに亀はA地点より少し前方のB地点へ進んでいる。アキレスがB地点まで来ると、亀はごくわずか前方のC地点へ進んでいる。アキレスと亀の距離は無限に縮まるが、どこまでいってもゼロにはならない。
*→〔尾〕5の『無門関』(慧開)38「牛過窓櫺」の、「牛の尾を無限に分割してもゼロにはならない」という考え方と同様である。
*夏目漱石は『思い出す事など』15で、アキレスと亀の故事に言及し、これと同様の論理として、柿の無限分割、意識の無限分割のたとえ話をする→〔分割〕11。
『坐笑産(ざしょうみやげ)』「かける名人」 追いかけっこの名人が、泥棒を追いかけて走る。向こうから友達が来て「何だ何だ」。名人「泥棒を追っかけている」。「その泥棒はどこだ?」「後から来る」。
★6.わざと競走に負ける。
『長距離走者の孤独』(シリトー) 感化院に収容中の17歳の「おれ(スミス)」は、クロスカントリーの選手に抜擢される。院長は「おれ」が全英長距離競走で優勝し、ブルーリボン賞を獲得することを期待する。「誠実を旨とせよ」と説教する院長とその同類たちを、「おれ」は軽蔑しつつも、うわべは院長に従う。競技当日、「おれ」は計画どおりわざと負けて、院長を落胆させる。
『不思議の国のアリス』(キャロル) アリスは自分が流した涙の海に溺れそうになるが(*→〔涙〕4)、他にも鼠や小鳥などいろいろな動物が海に落ち、皆はアリスを先頭に岸まで泳ぐ。ドードー鳥が、皆の濡れた体を乾かすための「コーカス・レース」を提案する。レースのコース線をまるく描き、一同はコースのあちこちに位置を定める。「スタート」の合図はなく、各自が好きな時に走り出し、好きな時にやめるのだ。そうやって30分もたつと、皆の体はすっかり乾いたので、ドードー鳥は「競走終わり!」と叫んだ。
競走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/08 17:58 UTC 版)
競走(きょうそう、英: race レース、あるいは英: racing レーシング)とは、一定距離を走り、その速さを競うことである[1][2]。
概説
「競走」を字義通りに解せば「走りを競うこと」となる。走るものであれば何でも、たとえば馬や自動車でも一定距離走ってその速さを競えば競走やレースという。
なお「その速さを競う」と言っても、通常あらかじめ一定距離を定めておき、ゴールに到着した順番(着順)や、かかった時間で、順位を決める。(通常「競走」というのは、途中の瞬間的な最高速を測定して比べるものではない)
なお速さを比べるには、いくつもの方法がある。
- あらかじめスタートラインの一定距離の先にゴールラインを定め、全員が同時にスタートし、ゴールラインに到着した順位で速さの順を確定する方法
- あらかじめスタートラインの一定距離の先にゴールラインを定めるが、全員が同時にスタートせず、時計を用い、スタート時刻とゴールラインに達した時刻をひとりひとり記録し、ゴール後に大会主催者がスタートからゴールするまでにかかった時間を引き算で算出し、事後的に順位を発表する方法(スタートラインに全員が並べない場合、コースが狭い場合などにこの方法が採用されることがある。人が山間部を走る過酷なレースなどでこの方法が採用されることがある。また自動車のラリーレースでもこの方法が採用される)
- あらかじめ一定の時間を設定して、その時間でより長い距離を走った者の順位が高いとする方法。たとえば自動車レースでは、一定時間をあらかじめ決めておいてその時間でどれだけのサーキットを周回した回数の多さで速さを競う「○○時間耐久レース」という方式もある。また自転車競技のアワーレコードもあり、人の競走でも1時間競走というものはある。
具体例
次に示すように、さまざまな競走(レース)がある。
- 陸上競技の競走 - 人間が徒足で行う競走。通常は距離を決め走るものを競走という。「50m 走」「100m 走」「200m走」「1500m走」「10000m 走」などがある。一方、「フルマラソン」と表示されている場合は、たとえ具体的な距離が書かれていなくても、通常は42.195kmを走って順位を決める競走である。リレー方式で行う競走もある。日本で新聞社が自社の宣伝のためにイベントとして始めた駅伝競走もリレー方式の競走である。トラックを走る「トラック種目」と公道を走る「道路種目」に大分類されることもある。また短距離と長距離にも大分類されることがある。
- 自転車の競走 - 人が自転車に乗り、一定距離を走り、着順を競う。オリンピック競技もあり、賭博の競輪もある。
- スケートの競走 - 細分化するとスピードスケート、ショートトラック、マススタート、アイスクロスなどがある。
- スキーの競走 - 細分化するとアルペンスキー、スキークロス、クロスカントリースキーなどがある。
- スノーボードの競走 - アルペンスノーボード、スノーボードクロスなどがある。
- ソリの競走 - ボブスレー競技などもあり、また犬ぞりレースは北欧やアラスカなどではさかんに大会が行われている。
- 馬の競走 - 競馬。人と馬が一体(人馬一体)となって(あるいは「人が馬に騎乗して」)、一定距離を走りその速さを競うもの。(着順は通常は馬の鼻先で決まるが、ばんえい競走ではソリの終端が基準)
- 犬の競走 - ドッグレース。犬が一定距離を走って速さを競う。(人は犬に乗らない)
- 自動車類の競走 - 自動車やオートバイ等を用いるもの。いわゆるモータースポーツ。一般的にはそれらはすべて「レース」と呼ばれるが、国際自動車連盟(FIA)では複数以上の車両が同時に競技を行う物のみをレースと呼び、レースへの参加にはより厳格な資格が必要になる。
- 人が泳ぐレース - 競泳。人が一定距離を水泳し、その着順を競う。広義では、遠泳も含まれる。
- セーリングのレース - 一定距離を、セイル(帆)を推進力とする船を操作して進み、その着順で速さを競う。「ヨットレース」とも。セーリングのレースは海上でスタートするため、陸上でおこなう競技とは違いスタートラインに白線などは引けないので、2つの船やブイ(海面に設置された目印)を結んだ《目には見えない、観念的なライン》をスタートラインとする。ゴールラインもやはり同様で、白いテープなどは用いず《観念的なライン》に達した順で順位を確定する。現代ではビデオカメラ類のおかげで微妙な差も判定できる。
- ボートのレース - オリンピックなどはオールを用いるローイング競技(ボート競技、競漕)である。一方、動力付きボートを用いるものはモーターボート競走として区別される(モーターボート競走はモータースポーツの一種にも分類される)。
- 飛行機のレース - エアレースとも。かつてはさまざまエアレースがあったが、近年では指定された飛行ルートを最短時間で飛ぶタイムレースがさかんである。日本人には馴染みが薄かったが、日本人パイロット室屋義秀がレッドブル・エアレース・ワールドシリーズで活躍するさまがNHKで放送されてからは広く認知されるようになった。
補足
公営競技の競走は、1回の競い合いも、それを複数回まとめたものも競走やレースと呼ぶ。このため、競走がどちらの意味で用いられているか注意する必要がある。前者の意味としては「1つの公営競技場では1日に最大で12の競走が行われる」といった用法になり、後者の意味としては「1つの公営競技場では数日間連続で1競走が開催される」といった用法になる。
開催
公営競技においては、数日間に亘る競走をまとめて開催(かいさい)という単位で呼ぶ。各公営競技の法令により、1つの公営競技場では年間開催数、および1開催の日数が決められている。
また、開催を数える単位には回(かい)が用いられる。例えば「第2回第3日」といえばその年に開催された第2回目の開催の3日目であることを表す。
節
公営競技における1開催は、日数をさらに何日間かに分割して行われるが、その分割された日数間の競走をまとめて節(せつ)と呼ぶ習慣がある。ただしこれは法令において正式に定義された用語ではない。
競輪・競艇・オートレースにおいては1節を1つの大会と捉えて、節内のチャンピオンを決定する方式(勝ち上がり方式、トーナメント方式ともいう)で行われている[3] が、競馬においては同一開催内で複数回出走することは稀であるため[4]、1つの開催を1つの大会と捉える概念が存在しない。
脚注
競走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 01:36 UTC 版)
レース距離は、コースを1周するものや、半周のみの場合が殆どである。1レースに出走する犬は6匹前後で、能力によってクラス分けされており、出走犬の能力に応じて重量によるハンデが付けられる。 出走準備が整った犬は、係員によってゲートまで連れて行かれ、箱状のゲートに入れられる。ダミーがゲート付近を通過するのに合わせて、係員がゲートを引き上げて競走がスタートする。 レース終了後は、コース上に柵が準備されて犬が暴走しない様にしており、係員に捕まえられた犬は、トレーナーの元に戻されて、レースを終了する。 賞金は、マカオのドッグレースを例にすると、1着賞金は1540〜3300マカオ・パタカで、4着(一律100マカオ・パタカ)まで賞金が出た。
※この「競走」の解説は、「ドッグレース」の解説の一部です。
「競走」を含む「ドッグレース」の記事については、「ドッグレース」の概要を参照ください。
「競走」の例文・使い方・用例・文例
- 彼らのところでは競走馬を育てている
- 私は競走しようという彼の挑戦に応じた
- その競走には多くの選手が参加した
- 私の心臓ではそんな競走は無理です
- 私は彼と競走をした
- その話の中でウサギはカメと競走した
- 曲がり角まで競走しよう
- あの電柱まで君と競走するよ
- オリンピックの800メートル競走は来週行われる
- 彼はやすやすとその競走に勝った
- ユウコはとても優秀なハードル競走者だ。
- あの馬は1マイル競走に特化している。
- アメリカの競走馬サンデーサイレンスは、フレグモーネが原因で亡くなった。
- その競走馬は最後の7リーグの試合のうち6敗している。
- 私たちは借り物競走を楽しみます。
- 彼女は競走で2着になった。
- 同社の競走上の強みは何ですか。
- 私は彼と競走した。
- 私たちは100メートル競走をした。
- 競走馬は互角でトラックをまわった。
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