アワーレコード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 22:17 UTC 版)
1人が1時間でどれだけの距離を走れるかを競う1時間競走の自転車版である。この節では主にUCIのレギュレーションによるものについて述べる(節の最後に付けた一覧などでは、流線型のカウル付きのリカンベントによるものも含めた記録についても述べる)。挑戦するには一般的な自転車競技のトップクラスの選手でも困難を伴うとされ、フランチェスコ・モゼールをして「頭がおかしくないと挑戦できない」と言わせるほど、競技中は肉体的にも精神的にも、非常に苦しいという。同様に、“カンピオニッシモ”(イタリア語:チャンピオンの中のチャンピオン)と呼ばれたエディ・メルクスすらアワーレコード記録更新時に「寿命が三年縮んだ」と発言している。そのため、挑戦すること自体が名誉とされ、記録を更新した者は、自転車競技の歴史に名を残すほど讃えられている。 この種目は他のトラック種目に比べ、長距離を停止せずに走る必要があることから、過去のレコードホルダーにはエディ・メルクスやジャック・アンクティル、ミゲル・インドゥラインなど、主にロードレースで活躍する(中でもタイムトライアルを得意とする)選手が数多く名前を連ねている。また、クリス・ボードマンのようにロードレース選手でありながらアワーレコードの更新に比重を置く者や、グレアム・オブリーのようにトラック選手だが「アワーレコード職人」とも呼ぶべき特化選手も存在している。 1990年代に入り自転車の改良が進み、一般的な自転車のスタイルと異なる乗車ポジションを取る(いわゆる「スーパーマン」スタイルなど)自転車による記録の更新が相次いだことから、UCIは2000年に規則改正を行い、1972年にメルクスがコルナゴでアワーレコードを更新した際と同様の機材(一般的なトラックレーサースタイルの自転車)による記録のみを公式の「アワーレコード」と認め、それ以後に作られた専用自転車による記録は「UCIベスト・ヒューマン・エフォート」として非公認扱いとすることとした。 この改正により、空力効果のあるヘルメット やディスクホイール・バトンホイール、モノコックフレームを持つ自転車、ファニーバイク(前輪が極端に小さいフレーム形式の自転車)などを使用した場合は公式な「アワーレコード」とは認められず、全て「ベスト・ヒューマン・エフォート」扱いになった。 2000年のルール改訂後のアワーレコードの変遷エディ・メルクス 49.431 km(1973年10月25日 - 2000年10月27日) クリス・ボードマン 49.441 km(2000年10月27日 – 2005年7月19日) オンドジェイ・ソセンカ 49.700 km(2005年7月19日 – 2014年9月18日) このため一時アワーレコードへの挑戦を行う選手が激減したが、2014年5月にUCIが再び規則改正を行い、アワーレコード挑戦時に使用できる機材を「トラック競技に準じる」と改めたため、UCIトラックレースの規則に則りエアロヘルメットやディスクホイール・エアロバーなどの使用は再び認められた。これを受けてアワーレコードへの挑戦を行う動きが再び活発化している。 2014年に改正される以前の2000年改正ルールにおいてはチェコのオンドジェイ・ソセンカが2005年7月19日にモスクワで出した49.700 kmが最高記録であったが、ルール再改正直後の2014年9月には引退間際のイェンス・フォイクトが51.115 kmの当時の新記録を樹立し、その後も新記録の更新が相次いだ。 2014年のルール改訂後のアワーレコードの変遷イェンス・フォイクト 51.115 km(2014年9月18日 – 2014年10月30日) マティアス・ブレンドレ 51.852 km(2014年10月30日 – 2015年2月8日) ローハン・デニス 52.491 km(2015年2月8日 – 2015年5月2日) アレックス・ダウセット 52.937 km(2015年5月2日 – 2015年6月7日) ブラッドリー・ウィギンス 54.526 km(2015年6月7日 – 2019年4月16日) ヴィクトール・カンペナールツ 55.089 km(2019年4月16日 - ) IHPVA(International Human Powered Vehicle Association、国際人力車両協会)/WHPVA(World Human Powered Vehicle Association、世界人力車両協会)が認定するアワーレコードはカウル付きリカンベントなど、トラックレーサーやロードバイク以外のバイクの使用が認められている。
※この「アワーレコード」の解説は、「トラックレース」の解説の一部です。
「アワーレコード」を含む「トラックレース」の記事については、「トラックレース」の概要を参照ください。
- アワーレコードのページへのリンク