アキレス‐と‐かめ【アキレスと亀】
アキレスと亀
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 04:16 UTC 版)
「ゼノンのパラドックス」の記事における「アキレスと亀」の解説
「走ることの最も遅いものですら最も速いものによって決して追い着かれないであろう。なぜなら、追うものは、追い着く以前に、逃げるものが走りはじめた点に着かなければならず、したがって、より遅いものは常にいくらかずつ先んじていなければならないからである、という議論である」。 あるところにアキレスと亀がいて、2人は徒競走をすることとなった。しかしアキレスの方が足が速いのは明らかなので亀がハンディキャップをもらって、いくらか進んだ地点(地点Aとする)からスタートすることとなった。 スタート後、アキレスが地点Aに達した時には、亀はアキレスがそこに達するまでの時間分だけ先に進んでいる(地点B)。アキレスが今度は地点Bに達したときには、亀はまたその時間分だけ先へ進む(地点C)。同様にアキレスが地点Cの時には、亀はさらにその先にいることになる。この考えはいくらでも続けることができ、結果、いつまでたってもアキレスは亀に追いつけない。 ゼノンのパラドックスの中でも最もよく知られたものの一つであり、多数の文献は彼の手に帰しているが、ディオゲネス・ラエルティオスが引くパボリノスの説によれば、この議論を創始したのはパルメニデスであるという。 その議論やキャラクターの面白さから、アキレスと亀という組み合わせは、この論自体とともに多くの作家に引用された。たとえば、ルイス・キャロルの『亀がアキレスに言ったこと』や、ダグラス・ホフスタッターの啓蒙書『ゲーデル、エッシャー、バッハ』に主役として登場する。
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アキレスと亀
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「ゼノンのパラドックス」の記事における「アキレスと亀」の解説
二つの条件(亀がアキレスの前からスタートする、亀はアキレスより遅い)の下において、追付くか否かが問題とされている。純粋に数学的に見れば、この条件下では、それは定まらない。ゼノン式に捉えたとしてもそれは同じである。従って、ゼノンの誤りは、何れとも決せられないことであるのに、一方を断じていることである。そのことは、アリストテレスを始めとする、ゼノン式の捉え方そのものが問題を孕むのだとする論議は、追付かないケースもある事を見ていない限りにおいて、何処かに問題を孕んでいる可能性があることを示唆している。 追付かない事例は、亀がアキレスより遅い事を維持しつつ、両者の速度差が急速に縮まる設定にすれば、亀に追いつくまでのゼノン式捉え方での時間の積算が発散する事例を作ることが出来る。この事例は、古代ギリシャ時代の数学では困難であったかも知れない。 追付く事例も無数に作りうる。例えば、両者がそれぞれ等速度で動くと仮定すると、亀に追いつくまでの時間のゼノン式捉え方での各過程の経過時間の積算はコーシー列となる。よって上限を持ち、追付くと言いうる。この仮定の下での計算例を、以下参考に示す。 アキレスの走行速度を v m/s、亀の歩行速度を rv m/s とし、亀はアキレスより L m 前方にいるとする。亀の歩行速度はアキレスの走行速度よりも小さいので、0 < r < 1 である。両者が同時にスタートして、アキレスが亀の出発点まで到達する時間は (L/v) s である。その時亀はアキレスより rv × L/v = rL m 前方にいる。そしてアキレスがその位置まで到達するのはさらに (rL/v) s 後であり、その時亀はさらに r2L m 前方にいる。以下同様にそれを繰り返していくと、アキレスが亀の位置まで到達する時間の合計は L v + r 1 L v + r 2 L v + r 3 L v + ⋯ {\displaystyle {\frac {L}{v}}+r^{1}{\frac {L}{v}}+r^{2}{\frac {L}{v}}+r^{3}{\frac {L}{v}}+\cdots } となる。つまり、項が無限に続き、「常にいくらかずつ先んじて」いるかに見える。 これは初項 L/v, 公比 r の等比数列で、n + 1 項までの部分和(=各経過時間の積算)は L v + r 1 L v + r 2 L v + r 3 L v + ⋯ + r n L v = 1 − r n + 1 1 − r L v {\displaystyle {\frac {L}{v}}+r^{1}{\frac {L}{v}}+r^{2}{\frac {L}{v}}+r^{3}{\frac {L}{v}}+\dotsb +r^{n}{\frac {L}{v}}={\frac {1-r^{n+1}}{1-r}}{\frac {L}{v}}} となる。ここで n → ∞ とすると、0 < r < 1 であるので、rn+1 → 0 となる。つまり無限級数 L v + r 1 L v + r 2 L v + r 3 L v + ⋯ {\displaystyle {\frac {L}{v}}+r^{1}{\frac {L}{v}}+r^{2}{\frac {L}{v}}+r^{3}{\frac {L}{v}}+\cdots } の和は 1 1 − r L v {\displaystyle {\frac {1}{1-r}}{\frac {L}{v}}} (=各経過時間の積算の上限)となる。このように級数の収束の問題に還元される。 なお、最後の計算結果は、「アキレスが t 秒後に追いつく」として立てられる1次方程式 v t = L + r v t {\displaystyle vt=L+rvt} の解と一致している。
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