四万十川

デジタル大辞泉

しまんと‐がわ〔‐がは〕【四万十川】

読み方：しまんとがわ

高知県の西部を流れる川。四国山地に源を発し、中流部で著しく蛇行し、四万十市の中村平野で土佐湾に注ぐ。清流として知られる。長さ約196キロ。渡川(わたりがわ)。

下流部の佐田沈下橋

日本の川

四万十川

日本最後の清流「四万十川」

四万十川は、高知県高岡郡東津野村の不入山に源を発し、上流部の大野見村、窪川町を緩やかに南下し、中流域の大正町で流れを西に向け、十和村、西土佐村で激しく蛇行して再び南下し、下流の中村市から太平洋に注いでいます。流域面積2,270km2、流路延長196㎞で流域面積に比べ流路延長が長く、河床勾配が緩いのが特徴です。

西土佐村を流れる四万十川

河川概要

水系名 渡川水系 河川名 四万十川 幹川流路延長 196km 流域面積 2,270km2 流域内人口 約100,000人 流域関係都県 高知県・愛媛県

○拡大図

１．四万十川の歴史

"清流四万十川は、時に恐ろしい暴れ川となり、流域の人々に多大な被害をあたえてきました。昭和4年に渡川改修計画が定められ、築堤や支川中筋川の合流点付替工事等により、洪水による被害を軽減していきました。こうした一方、明治・大正期には舟運が活発であり、物資の輸送と同時に文化も伝えてきました。"

四万十川は、河川法制定時に登録された正式名称は「渡川(わたりがわ)」でした。元々下流の中村市周辺では渡川と呼んでおり四万十川は通称でした。しかし、「日本最後の清流・四万十川」として一躍脚光をあびることとなり、地元から名称変更の希望が起こり、平成6年7月25日に「四万十川」に変更されました。 清流で知られている四万十川ですが、時には恐ろしい暴れ川となることがあり、流域の人々の暮らしは、洪水との闘いの歴史でもありました。 【昭和10年8月 大洪水】 四万十川流域は台風常襲地帯であり、古くから度々大洪水に見舞われ、その都度多大の被害を被っていました。しかし、明治時代には、交通の便が悪いことから、道路の改築が急務であると考えられ、度重なる明治の大洪水にもかかわらず、河川改修は村費、私費をもってわずかに在来堤の修復等が行われていたに過ぎませんでした。 昭和4年に渡川改修計画が定められ、新堤の築造や河道掘削、支川後川のショートカット等により中村町を洪水により防御しました。 中でも支川中筋川の合流点付替工事は、当時の中・四国地建管内では一、二を争う大規模な工事でした。中筋川は低奥型内水地形で、河床勾配が極端に緩やかであったため、四万十川本川の洪水が逆流し、洪水の度に中筋川低地帯は、水没していました。そのため、稲を植え付けしても収穫できるのは10年に1度の干ばつの年しかないというような悲劇を繰り返していました。合流点付替工事は、ドラグラインやラダエキスカー、機関車等の大型機械化施工部隊を編成して行い、合流点を4.9㎞下流に付替え、本川の背水影響を軽減させました。 現在までに、本支川の主要地区を防御する堤防が次々と整備され、洪水による被害は軽減していきました。 【背割堤工事状況】写真左：四万十川　右：中筋川 【背割堤工事完成直後の航空写真（Ｓ41）】 【四万十川流域図】 【昭和初期、渡川の帆掛け舟（舟母）】 幡多郷土資料館提供 こうした一方、地域の人々は、川の恵みを生活に取り入れてきました。 とりわけ舟運については藩政期を経た明治・大正期に最も活発であり、上流の大正町(たいしょうちょう)から河口まで、多数の川舟が往来し、物資の輸送とともに京阪神の文化を伝えてきました。 西土佐村江川崎(えかわさき)と中村市下田(しもだ)の間を「舟母(せんば)」と呼ばれる帆掛け舟が運行し、木炭や農林産物などを中村市へ運んでいました。 しかし、昭和30年以降の高度経済成長期には、陸上交通網の発達により、舟による物資輸送は衰退の道をたどり、そして130隻以上あった舟母も昭和37年頃には1隻も見られなくなりました。

２．地域の中の四万十川

"国の重要無形民俗文化財の津野山神楽を始め、多くの民俗芸能や伝統漁法など地域の個性を表した流域の文化が今も伝えられています。また、河川を生かした様々なイベントやキャンプ、釣り、カヌーなどレクリエーションに利用されています。"

【津野山神楽】 四万十川源流域の津野山(つのやま)地域（梼原町(ゆすはらちょう)・東津野村(ひがしつのむら)）には、神楽をはじめとする信仰文化や、厳しい山里の暮らしを支える農耕文化や生活文化など様々な山の文化が生まれました。100年の伝統を持つ国の重要無形民俗文化財の指定を受けた津野山神楽を始め、花取踊り、回り舞台での農村歌舞伎等の民俗芸能が今も伝承されています。 【神様の結婚式】 下流域の中村市では、河口に近い一宮(いっく)神社の女神輿(おんなみこし)が、満潮に乗って、上流にある不破八幡宮(ふばはちまんぐう)の男神輿(おとこみこし)のもとへ赴き、そこで三三九度や神輿(みこし)合わせなど行う、「神様の結婚式」と呼ばれる全国でも珍しい神事が川を舞台に執り行われています。 四万十川流域では、河川を生かしたさまざまなイベントが行われています。十和村(とうわむら)では、約200mの川幅いっぱいに、数百匹のこいのぼりが舞い泳ぐ「こいのぼりの川渡し」、中村市では、四万十川の清流を舞台に5㎞、2.5㎞のコースで競われる「清流四万十川水泳マラソン」、また、中村市・西土佐村・十和村の3市村を経由して、清流沿いのコース100㎞を走り抜く「四万十川ウルトラマラソン」など様々なイベントに全国各地、また海外からも参加者が集まってきます。 【こいのぼりの川渡し】 【四万十川水泳マラソン】 【四万十川ウルトラマラソン】 【火振り漁】 【柴漬け漁】 四季折々に営まれる「火振(ひぶり)り漁」や「柴漬(しばつ)け漁」などの伝統漁法は、流域の人々の生活を支えると共に、四万十川の自然と調和し、のどかな風景を作り出しています。 また、伝統漁法は川魚の習性を基に独特の工夫を施し後世に伝えられており、漁の道具と共に地域の個性を表した流域の文化となっています。

３．四万十川の自然環境

"四万十川には水中、陸上ともに多くの生物が生息しています。源流のセイランをはじめトサシモツケや汽水域の天然スジアオノリ、高知県天然記念物のヤイロチョウやミサゴ等の猛禽類をはじめ、アユや幻の魚アカメなどの魚介類も多数生息し、今も豊かな自然環境が残されています。"

【四万十川源流部】 【セイラン】 四万十川の源流は不入山(いらずやま)にありその源からわき出た水は苔むした岩組の中を絶え間なく流れ、下流へと下ります。かつてこの一帯は藩政期時代からの保護林であり、ブナ、ヒメシャラ等が茂り、モミ、ツガを主とする原生林が残されています。また、その源流部を流れる清流には、セイラン（川のり）が自生しその清らかさを表しています。 【四万十川中流部】 四万十川中流域は、豊かな森林に囲まれた自然河岸の中を激しく蛇行しながら岩場を勢いよく流れるところや、ゆったりと流れる場所など変化があります。中流部は比較的自然度の高い森林が存在し、アカマツ－オンツツジ群集やシイ・カシ萌芽林が見られます。 生物の特徴としては、高知県の天然記念物であるヤイロチョウや夏場に川筋で乱舞するゲンジボタルが上げられます。 【ヤイロチョウ】 【トサシモツケ】 川の中では、アユ、テナガエビ、モクズガニ等の四万十川では水産資源として重要な生物が数多く生息しています。また、川沿いの岩上には、トサシモツケやシチョウゲ等が群生しています。 【四万十川下流部】 四万十川下流域は、大きく蛇行しながらゆったりと流れ、全川の中でも最も四万十川らしい景観を呈しています。 汽水域には、四万十川の幻の魚と呼ばれるアカメをはじめ多くの魚介類が生息しています。また、全国生産の約7割を占める天然スジアオノリや仔稚魚の生育場となっているコアマモが自生しています。 【アカメ】 鳥類ではミサゴ、オオタカ、ハヤブサ等の猛禽類が数多く見られ、餌条件や生息環境が良いことがわかります。 昆虫類では、トンボ類も多く、全国で215種記録されているトンボのうち、四万十川流域で88種見つかっています。また、世界初のトンボ保護区であるトンボ自然公園が造られる等、まさにトンボの楽園となっています。 【スジアオノリ】 【コアマモ】 【ミサゴ】 【トンボ自然公園】

４．四万十川の主な災害

発生日 発生原因 被災市町村 被害状況 昭和38年8月 台風9号 中村市 床上浸水 2,145戸 床下浸水 1,100戸 平成4年8月 台風11号 中村市 床上浸水 165戸 床下浸水 116戸

（注：この情報は2008年2月現在のものです）

日本の名水百選

四万十川（しまんとがわ）

河川 高知県県西部 流域面積の85％が森林で、人工改変度が小さい。中流域は流れが激しい蛇行を繰り返し、それは多くの瀬や淵を作り、豊かな自然景観が残る。天然アユの漁場としても名高く、火を振りながら追い込む火振り漁は独特のものである。 5月鯉のぼりの川渡し（雄大な四万十川の両岸をワイヤーで結び数百匹のこいのぼりが空中を泳ぐ姿は雄大／四万十町十和地区）　5月～9月は、四万十川流域の市町で夏のイベントあり、鮎釣り、水泳、カヌー、キャンプ等川の遊びも多種多様で楽しめる。（場所・時期等は要問合せ） 源流域から河口に至る間に、非常にバリエーションに富んだ自然の姿を見せてくれる。カルスト台地から河口堆積層に至る地質、ブナ・ササの冷帯林からヤナギ林までの植生、約160種にも及ぶ魚種や豊富な鳥獣類・昆虫類などの生物相と、自然環境の多様さ豊富さは全国でも類を見ないものである。 アユの「火振り漁」をはじめとする伝統漁法による川漁、水浴・カヌーなどの水遊び、屋形船による遊覧、農業用水、発電など。 四万十町：家地川桜まつり(4月) 中土佐町：アメゴ釣りな祭(4月) 四万十町：こいのぼりの川渡し(4～5月) 津野町：四万十川源流点ウォーキング（5月） 梼原町：土佐牛まるかじり大会(6月) 四万十町：下津井ホタル見学・遊覧船(6月) 四万十市：フェスティバル西土佐(7月) 四万十市：四万十川ウルトラマラソン（10月） 水質は水質調査の結果をみると良好な状態を保っている。水量は6～10月までが出水期となっており、四万十市の具同では、月平均100～200m3／日。11～3月の冬期は30～60m3／日と出水期の3分の1程度になっている。例年訪れる台風の影響については、大雨の降った直後の2～3日は茶褐色のうえ、水量も多く遊びには危険であるが、4日目頃から青い清流に戻る。この頃が水量が豊富で釣りやカヌーなどの遊びに最適。 ①シ・マムタ(大変大きく、美しい川の意)というアイヌ語説　②梼原町の支流四万川と旧十和村の地名の十川の合成語説　③多くの谷や支流を集めた川という形状説　④四万石の木を10回、流送する森林があったという林業説　などいくつかの説があるが、定説にはなっていない。 流域住民による四万十川の一斉清掃、NPOや任意団体による植林・間伐作業など、川や川の保全活動を積極的に行っている。また、流域住民グループや高校生による定期的な水質調査活動も行われている。 【 鉄道・バスでお越しの場合 】 下流から上がる場合は四万十市を起点に、源流から下る場合は津野町を起点に、また中流域では四万十町窪川を起点とすると便利です。JR：高知から特急列車で窪川まで約1時間、高知から特急列車で中村まで約2時間　 高知県文化環境部清流・環境課 〒 780-8570 高知県高知市丸ノ内1-2-20 TEL : 088-823-9795 shimanto@pref.kochi.jp 四万十川流域の市町や高知県では四万十川を保全し流域の振興を図るため、「四万十川の保全及び流域の振興に関する基本条例」を制定し、様々な取り組みを行っています。

河川・湖沼名辞典

四万十川

読み方：シマントガワ（ｓｈｉｍａｎｔｏｇａｗａ）

所在 高知県、愛媛県

水系 渡川水系

等級 1級

短編小説作品名辞典

四万十川

作者木原音瀬

収載図書嫌な奴
出版社ビブロス
刊行年月1998.4
シリーズ名ビーボーイノベルズ

近代文学作品名辞典

四万十川

読み方：シマントガワ（ｓｈｉｍａｎｔｏｇａｗａ）

作者 大江満雄

初出 昭和17年

ジャンル 詩

ウィキペディア

四万十川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2024/04/27 07:18 UTC 版)

四万十川（しまんとがわ）は、高知県の西部を流れる一級河川で渡川水系の本流。全長196km、流域面積2186km²。四国内で最長の川である。本流に大規模なダムが建設されていないことから「日本最後の清流」、また柿田川・長良川とともに「日本三大清流の一つ」と呼ばれる。名水百選、日本の秘境100選にも選ばれている。