ディーゼルエンジン ガソリンエンジンとの比較

ディーゼルエンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/19 05:19 UTC 版)

ガソリンエンジンとの比較

大型低速であるほどディーゼルエンジンの長所が引き立ち、短所が目立たなくなる傾向にある。逆に小型高速ではガソリンエンジンが有利になる。このため小型車のエンジンはガソリンで、大型車のエンジンはディーゼルになることが多い。鉄道の気動車はディーゼルがほとんどであり、船舶も、軍用や高速船、小型船(20トン未満)の船外機などの例を除き、ディーゼルエンジンであることが一般的である。

ガソリンエンジンは点火方式が「火花点火」、燃焼方式が「均一予混合燃焼」である。あらかじめ燃料を気化させた混合気をシリンダーに吸入、圧縮したのち、電気火花により点火する。均一混合気に満たされた燃焼室に火炎面伝播が発生し燃焼域が半球状に広がって間欠燃焼する。シリンダー直径が大きすぎると火炎伝播速度が間に合わずシリンダーの外周に近い混合気まで点火できなくなるので、シリンダ直径(ボア)に限界(自動車用の場合10 cm、容積で800 ccほど)がある。一方で予混合燃焼では粒子状物質 (PM) は発生しない。ただし圧縮行程で燃料噴射する直噴ガソリンエンジンは気化できない液滴の残る不均一な成層燃焼なので、粒子状物質が発生する。

ディーゼルエンジンは拡散燃焼なので容積に制限はない。ただし、高圧下の拡散燃焼速度は遅いので大容積エンジンは低回転に限られる。これは、むしろ大型船舶やポンプ、発電機などの大出力エンジンにとって都合が良い。1万馬力を超える巨大出力の歯車減速機は信頼性に乏しいので、低速エンジンの直接出力が求められるため。ただし速度変化の激しい車両には多段変速機が必要になる。

ガソリンエンジンは混合気の吸入量をスロットルバルブによって絞ることで出力を制御するのに対し、ディーゼルエンジンは燃料噴射量だけで出力制御するため、ポンピングロスが少なく、効率が良い。また同じ理由でディーゼルは負荷変動によって空燃比も変わり、全般的にも希薄燃焼であり、理想空燃比は実現できない。これは容積あたりの燃料の充填が少ないことを意味し、気筒容積あたりの出力が低い傾向にあるが、過給により補完できる。特にスロットルがないため低回転から排気量が多いのでターボチャージャーとの相性が良い。

ただし、最近では両者の構成が近づいている。2012年に圧縮比を同じ14にした、高圧縮比ガソリンエンジンと低圧縮比ディーゼルエンジンがマツダから出荷されている。他社のガソリンエンジンでも吸気可変バルブタイミング機構により吸入量を変えたり、低温多量EGRバルブにより排気と吸気の割合を変えて出力を調整するようになり、スロットルバルブは必須でなくなった。これらの改善のため近年ガソリンエンジンの効率が上昇し、ディーゼルとの差が縮まっている。

さらに事実上、同じ点火、燃焼モードを持つエンジンが開発中である。まず、ガソリン燃料でありながら圧縮比14台にて圧縮着火を目標としているHCCI(Homogeneous-Charge Compression Ignition:(均一)予混合圧縮着火)エンジンが開発中[注釈 4]であり、通称ディゾットエンジンとも呼ばれる[注釈 5][6] 一方で、1995年にはディーゼルエンジンでありながら低負荷領域で予混合を用いる PCCI(Premixed Charged Compression Ignition:(不均一)予混合圧縮着火)が実用済みであるなど、ガソリンとディーゼルエンジンの区分けが曖昧になりつつある[2]

長所

燃費・効率面

圧縮比が高く、燃焼室内の空気過剰率が大きいため、作動ガスの比熱比が高く図示熱効率が高い(投入したエネルギーに対して燃焼ガスの温度上昇に使われる割合が低い)と言われている。ただし、これは大型低速エンジンの場合であり、高速エンジンでは損失も多い。2010年現在の大型舶用ディーゼルの熱効率が50 %に達するのに対し自動車用ディーゼルの熱効率は40 %、ガソリン機関の熱効率が30 %程度、ガソリンアトキンソンサイクル機関の熱効率は30 %台後半である。また重量、負荷変動、速度、変速の効率が加味される自動車の走行パターンを与えた場合には差が縮まる。以下に乗用車用エンジンのトップランナー方式の実効率の報告書の結果を示す。2005年の予備調査のときより2010年の結果のほうが、Tank to Wheel効率の差は半分に縮まっている。同じ程度の排気規制を満たすために差が縮まったともいえる。

この報告書の効率の算出方法について、まず燃料を比較すると軽油はガソリンに比べ密度が12 %大きく、容積あたりの熱量も9 %大きい。しかし質量あたりの熱量は5 %小さい。熱量あたりの二酸化炭素(CO2)発生量は2.5 %多く、質量あたりのCO2発生量は2 %少ない。容積あたりのCO2発生量は10 %多い[7]。このような燃料の異なるエンジンを燃料の容積や質量単位で比べられないため、生産エネルギーと消費エネルギーとを比べている。

このように補正したTank to Wheel効率ではJC08モードでディーゼルはガソリンより3.5 %しか良くない[8]。ただし、10・15モードなら8.5 %良い[9]。さらにWell to Wheel総合効率のJC08モードの効率とCO2排出量では11 %良い[10]。さらに Well to Wheel総合効率の10・15モードのCO2排出量では18 %良い[11]

まとめると、自動車用ディーゼルは現在の厳しい排気規制の下でもJC08モードのTank to Wheel効率ではガソリンエンジンより3.5 %エネルギー効率が良いが、軽油の熱量あたりのCO2発生量は2.5 %多く、クルマ単体でのCO2の排出量の差はほとんどない。ただし、Well to Wheel 総合効率のJC08モードのCO2排出量で11 %良い結論は変わらない。これはガソリンの精製に軽油よりもエネルギーを消費しているためである[12]

車両用ディーゼルは高速道路の定速走行など負荷が一定の状態なら熱効率どおりにガソリンより3割ほど効率が良い。しかし常用回転域が狭いことから市街地走行のような負荷変動と加減速を含む走行パターンでは一気にガソリンとの差がなくなる。変速が単純な10・15モードの効率がJC08モードより良いことからうかがえる。

構造・動作面

ディーゼルエンジンには点火装置とスロットルバルブが不要であるため、構造が単純化でき、信頼性が高い。

ディーゼルエンジンは拡散燃焼の範囲であれば圧縮時の筒内が空気だけなので、過給してもプレイグニッションノッキングデトネーションがない。スロットルバルブがないため、低速でも排気が多く、ターボチャージャーとの相性が良く、容積あたりの低出力を補うことができる。さらに大型エンジンでは排気エネルギーを出力軸に、より多く回収するターボコンパウンドも可能である。

ガソリンエンジンには点火時の火炎の伝播速度によりシリンダ直径に限界があるのに対し、ディーゼルエンジンにはその限界がないので大型化に適している。ガソリンエンジンでは、多気筒化で排気量を確保して高トルクを得るか、高回転化で出力を上げなければならないのに対し、ディーゼルエンジンでは気筒容積の拡大で可能となり、構造が単純化されフリクションロスも抑えられ、熱効率が高まる。大型エンジンほどディーゼルエンジンの利点が活きてくる。

ディーゼル燃料の引火点はガソリンに比べて80 ℃ほど高いため、爆発火災事故に対する余裕が大きい。特に被弾することを前提とした軍用車両で、このメリットが大きい[注釈 6]。軍用車両のエンジンは航空燃料のJP-8等と併用することも考慮され、ディーゼル化を進めている。ガスタービン燃料は軽油よりも上質油であるが、燃料を共有することで有事の兵站が合理化される。

逆回転運転

ディーゼルエンジンのうち、4ストローク機関は吸気系統側に掃気用の補機を持たず、噴射ポンプでシリンダー内に直接燃料を噴射する構造のため(ガソリン直噴エンジンを除く)、ガソリンエンジンと異なり始動時に何らかの方法でクランクシャフトを逆方向に回転させることにより、逆回転運転をさせることができる。例えば、自動車の場合は変速機を前進ギアに入れた状態で車体を後進方向に押したり、坂道で下り方向に空走させたりすると、クランクシャフトは逆回転するため、デコンプを開いておくなど始動の予防措置を講じない限りは逆回転状態でエンジンが押しがけ始動してしまう危険性[13]がある。自動車でこのような状態になると、変速機が前進ギアの際に車体は後退し、後進ギアの際に逆に前進が行われることになる。この現象は事故や労働災害を誘発する原因になる一方で、船舶などその特性を活用することで変速機を介することなく逆回転運転のみによる後退運転が可能となることも意味している。

4ストロークディーゼルで逆回転運転が始まった場合、吸排気弁の機能が逆転するため、排気管から吸気し、エアフィルター側に排気が行われる[14]。また、カムシャフトのバルブタイミングや噴射ポンプの噴射タイミングも適切に反転させたものを使用しなければ十分な出力性能が得られないため[15]、自動車ではあまり実用的とはいえないが、中・小型船舶用機関では古くはMANやスルザー、B&Wなどが前進用と後進用の2系統のカムシャフトを可変バルブ機構で4ストロークディーゼルの逆回転運転による後退航行を実現しており[16]、航空用エンジンではダイムラー・ベンツ DB 602が同様の機構を有していた。しかし、今日では小型船舶ではこのような逆回転運転機構ではなく、油圧または電動の遠隔操作で断続されるクラッチと[17] 後退用ギアボックスを組み込むことで後退航行が行われている[18]

なお、2ストローク機関では逆回転運転をさせても掃気孔と排気弁または排気孔の機能が逆転せず、掃気ポートタイミングも変化しないため、リードバルブ式ガソリンエンジン・ユニフローディーゼルエンジンどちらでも逆回転運転は可能であり、ディーゼルエンジン特有の長所とはなっていない。ただし、ガソリンエンジンでは逆回転が後退に利用される例は一部のスノーモビル程度に限られているが、船舶用ユニフローディーゼルエンジンにおいては、逆回転運転により直接スクリューを逆回転させ後退航行を行う手段として一般的に用いられている[19]

短所

自動車用ディーゼルエンジンの価格はガソリンエンジンのほぼ倍になる(国産車の車体価格で、だいたい40万から50万円程度高い)。スロットルと点火装置が要らない代わりに、高価な燃料噴射系と補機類が必要となりエンジン全体は高コストになる。

ディーゼルエンジンの主たる短所は、大きく重くかつ、振動が激しいことである。大重量ゆえエンジンの出力重量比が悪く、軽量化を要求される航空機では、一部を除いて従来あまり採用されず、レシプロエンジン全盛期においても主流足りえなかった。また、圧縮着火のため、高空(低温、低気圧)での始動性や信頼性に乏しいというのも、ディーゼルエンジンが敬遠された大きな理由の一つである。

拡散燃焼ゆえ、黒煙や粒子状物質 (PM) が発生しやすいうえに、燃焼室内が高温高圧かつ希薄燃焼域(軽負荷時は30:1から60:1)で酸素窒素も過多であるためNOxも発生しやすく、密閉コックピットが普及する前の飛行機においては、ディーゼルエンジンがパイロットたちに嫌われた理由でもある。排気対策をするにも、排気中の残留酸素が多い酸化性雰囲気では三元触媒を使えないため、PMとNOx対策に別々の後処理装置が必要となり、重量もかさむとともに高コスト化する。

健康面

燃費・効率面

高圧縮比のため、ピストンリングや軸受にかかる面圧が高く、十分な強度を持たされた可動部品の質量も大きい、高速回転させると摩擦損失などでエネルギーの損失が急増する。 高圧縮比のため高回転まで回らず、常用回転域が狭いため、車両用には走行速度に応じた変速が必要で、最適な回転数を外すと効率が低下する。この2点が調和しないため、自動車用ディーゼル機関は大型舶用ディーゼル機関より大幅に低効率となっている。

構造・動作面

ディーゼルエンジンでは燃料噴射装置が点火装置と出力制御装置を兼ねるため高価になり、燃焼制御も難しい。燃料噴射系がエンジンコストの半分を占める。

高圧縮比であるため、吸排気系の脈動も大きく、こちらの振動や騒音も大きい。船舶用、コジェネレーション用では脈動を抑えるためにアキュムレータを備えたものもある。

シリンダーヘッドシリンダーブロックピストンコネクティングロッドクランクシャフトに高い強度剛性が求められ重量が嵩む。

加減速や発進・停止を頻繁に求められる車両用途では、大トルクに耐えられる多段変速機が必要となる。副変速機込みで18段や24段にもなる変速機を手動で操作するのは煩雑すぎて現実的でないため、優秀な自動変速機が必要になり、さらにに重く、高コスト化する。

吸気管負圧を得にくいため、乗用車においてはブレーキブースターを別の経路からとる必要がある。これもまた高コストの原因となる。

寒冷地では燃料中のパラフィンが析出して燃料フィルターで目詰まりする場合がある。温暖な地域の軽油を入れて寒冷地に移動して駐車していると、燃料が流れなくなって始動しなくなるおそれがある[20]

ディーゼルエンジンの容積あたりの低出力を過給、ターボチャージャー、ターボコンパウンドなどで補うと、点火装置の単純さというメリットが相殺され、高コストになる。

乗用車用ディーゼル機関では振動軽減のため小排気量ながら多気筒化する傾向があり、気筒容積の拡大で大型化できる利点を生かしにくく、高コストになる。

ディーゼルエンジンの暴走

吸気系統にスロットル弁を持たず、アクセルペダルの操作が噴射ポンプの噴射量のみを制御するディーゼルエンジンは、噴射ポンプのリンケージの不具合や調速機の破損などにより燃料供給が過多となった場合、エンジン回転数が過回転英語版となったまま、オペレーターの操作ではエンジン回転数を制御できなくなるディーゼルエンジンの暴走英語版事故が発生することがある[21]。ディーゼルエンジンの暴走は、ターボチャージャーの軸受部のオイル漏れや過度のブローバイの発生などで霧化したエンジンオイルが吸気系統に大量に混入した場合[22]、あるいは可燃性のガスが充満した空間に稼動状態のディーゼルエンジンが置かれた場合などの外的要因によっても発生しうる[22]

ガソリンエンジンは燃料装置の不具合、たとえばチョーク弁の誤作動などで燃料の供給が吸入空気量に対して過多となった場合は、点火プラグが失火してエンジンストールを起こすか、著しくドライバビリティが低下していく。ガソリンエンジンでもスロットル弁のリンケージの破損により、エンジン回転数が過回転となったまま制御不能になる暴走が発生する可能性はあるが、この場合メインキースイッチやキルスイッチを作動させるか、カーバッテリーの配線やプラグコードを切断するなどして強制的に点火装置や点火プラグへの給電を断つことで、オペレーターは暴走を容易に停止させることができる。機械式燃料噴射装置や機械式燃料ポンプ付きキャブレター式のガソリンエンジンで、ランオンを併発するという特殊な状況でのみ、オペレーターの操作だけではエンジンを完全停止できない事態が発生しうるが、それでもスロットル弁を閉じれば回転数は下がり、更にマフラーの排気口を塞ぐことで容易に暴走は止められる。

しかし、スロットル弁(バタフライ・バルブ英語版)を持たず、圧縮圧力のみで自己着火するディーゼルエンジン、とりわけ噴射ポンプが機械式の場合、吸入空気量を制限する機構が何もないため、ひとたび暴走が発生してしまうとメインスイッチやアクセルペダルをいくら操作してもエンジンの過回転を停止することができなくなってしまう[23]さらにはターボチャージャー付きディーゼルエンジンの場合は、暴走が発生するとターボチャージャーも過回転状態となるため、過給圧のオーバーシュートも併発することでブローバイが燃焼室から大量にクランクケース側に吹き抜け、そのブローバイがPCVバルブEGRを通じてインテーク側に大量に吸引されることにより、例え噴射ポンプへの燃料供給が絶たれたとしても、多量のブローバイによりインテークに吹き抜けるエンジンオイルのみでディーゼルエンジンの暴走が継続する、ポジティブフィードバック状態が成立してしまう場合すらある[22]

このようなディーゼルエンジンの暴走をエンジンブローに至る前に停止させるには、燃料タンクから噴射ポンプへの燃料供給を遮断するのみでは不十分で、エアクリーナーボックスや吸気口に蓋や栓をはめ込んだり、二酸化炭素消火器を吸気口に大量に吹き込むことで吸入空気(酸素)を遮断する[24]、あるいは変速機をトップギアやオーバートップに入れた状態でフットブレーキサイドブレーキを目一杯掛けた状態でクラッチを一気に繋ぎ、クランクシャフトの回転を無理矢理停止させエンストを狙うなどの方法を採るしかない[25]。自動車では走行中にアクセルペダルを戻してもエンジン回転の上昇が止まらない、ディーゼルエンジン暴走の兆候が見られた場合は、マニュアルトランスミッションでは直ちにクラッチを切り、オートマチックトランスミッションセミオートマチックトランスミッション無段変速機ではシフトレバーをニュートラルに入れてドライブトレインへの動力伝達を絶った上で、路肩に停車して上記の暴走停止の措置を行う[26]アメリカ海軍では船舶用ディーゼルエンジンで暴走が発生した場合には、燃料供給弁を閉じた上でデコンプを開いて停止を図るようにトレーニングマニュアルに記載している[27]

欧米ではディーゼル機関車[28]デトロイトディーゼルなど旧式のディーゼルターボエンジンをレストアした際の試運転時に度々こうした暴走事故が起きており、キャタピラーは燃料系統を修理したディーゼルエンジンを初めて始動する際には、作業助手は燃料系統の修理ミスに伴う暴走に備えて吸気口に直ちに栓が出来るように備えておくことを推奨している[29]。日本でも2000年代初頭に、三菱自動車工業三菱・デリカ三菱・チャレンジャーにて噴射ポンプの製造工程のミスに伴うディーゼルエンジン暴走事故が発生し、リコールに至っている例がある[30]

可燃性ガスの充満が発生しやすい石油化学プラントや鉱山では、ディーゼルエンジンの暴走事故が数多く起きており、アメリカ合衆国労働省など海外の労働行政機関は、産業用ディーゼルエンジンに対して、万が一暴走が発生した際に備えて吸気系統と燃料供給系統の双方にシャットダウン・バルブ英語版安全遮断弁英語版を備え付けるように義務付けている[31] が、それでもすべてのディーゼルエンジンの暴走のフェイルセーフの確立までには至っておらず、2005年のテキサスシティ製油所爆発事故でもその過程において自動車のディーゼルエンジンの暴走が関連していたことが確認されている。

フィルター直前に追加インジェクターを持たない、燃焼再生式のDPF・DPR等が装着されるディーゼルエンジンについては、軽油によってエンジンオイルが希釈されることとなるが、燃料を含むエンジンオイルによって発生したブローバイガスが、EGR機構によって吸気系に戻されることによっても、ディーゼルエンジンの暴走が発生する。


注釈

  1. ^ ディーゼルは微粉炭を含むさまざまな燃料の使用を計画したが、粉末燃料の使用には成功しなかった。1900年パリ万国博覧会ではピーナッツ油での運転を実演した(バイオディーゼルを参照)。
  2. ^ フライホイールのリングギア上の何箇所かが、いつもスターターモーターのピニオンギアの位置に来る→偏磨耗の原因
  3. ^ ディーゼルエンジンはスロットルバルブによる回転数(出力)制御ではないものの、アイドル時や低回転域の吸気騒音を抑えるため、コンバインドガバナーのように負圧を必要とする調速機のため、アクセル全閉時に酸素過多となって発生するNOxを抑えるため、等の目的で、吸気管にバタフライバルブを備えているものがある。この場合、一般的に言われる「ディーゼルエンジンの吸気系は負圧にならない」は当てはまらない。
  4. ^ この方式を初めて実用化したエンジンがマツダSKYACTIV-Xである。
  5. ^ ディーゼルサイクルとオットーサイクルの性質を併せ持つことから、メルセデス・ベンツが名付けた造語
  6. ^ ただし、シリンダーブロック燃料タンクに直撃弾を受けた場合、ガソリンエンジンに比べ爆発の危険は少ないが、炎上する可能性はそれほど変わらない
  7. ^ 農業機械では主に耕運機トラクターコンバインや6条植以上の乗用田植機などがある。
  8. ^ 軽油引取税揮発油税よりも税率が低く、その結果として燃料そのものの価格は高額である軽油のほうが小売価格ではガソリンよりも1割強ほど安価になる。こうした軽油優遇税制は先進国に限ると日本のみ[35]
  9. ^ ただし灯油・重油を燃料油にした自動車で公道を走ると軽油引取税の脱税行為となる。
  10. ^ BTL燃料は、生産過程と消費過程でのCO2の量が等しいことから、カーボンニュートラルとみなされ、京都議定書の目標達成には非常に有効となる。葉や茎など、植物全体を原材料としたセルロースから作られるBTL燃料は、植物の種子から得られるデンプンを元にした植物油燃料(BDF/バイオ ディーゼル フューエル、SVO/ストレート ヴェジタブル オイル)に比べ、植物の質量あたりのエネルギー量は2倍、同じ耕地面積から得られる収穫量は10倍以上と言われる。雑草などを原料にできるため、食物価格の高騰や、水不足の問題を解決する一助ともなる
  11. ^
    圧気発火器による発火実験の観察

    冷凍機の発明で著名であったカール・フォン・リンデは、マレーシアペナン島での講演に招かれたときに土産として圧気発火器を譲り受け、ドイツへ帰国した[61]。1877年頃、リンデがミュンヘン工業学校での帰朝講演で、この圧気発火器を実演して、葉巻に火をつけた[62][61]。ルドルフ・ディーゼルは、この講演を聴講していた[62]。ディーゼルは「この体験は、高圧内燃機関を発明するのに、もっとも大きな刺激となったもののひとつだった」と回顧している[62]

出典

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  2. ^ a b 山口卓也、高過給ディーゼル機関における予混合圧縮着火燃焼の研究 学位論文.大分大学工学研究科 2010年
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  4. ^ 舶用大型2サイクル低速ディーゼル機関の技術系統化調査 田山経二郎
  5. ^ a b c 杉本和俊著 『ディーゼル自動車がよくわかる本』 山海堂 2006年7月24日初版第1刷発行 ISBN 4381077709
  6. ^ HCCI(予混合圧縮着火) 日産自動車>将来技術/取り組み
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  8. ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図4-6 単位走行距離あたりのエネルギー消費量(JC08モード)
  9. ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図4-4 単位走行距離あたりのエネルギー消費量(10・15モード)
  10. ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図5-3 標準ケースにおけるWtWエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX;JC08モード)
  11. ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図5-1 標準ケースにおけるWtWエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX;10・15モード)
  12. ^ 総合効率とGHG排出の分析報告書 平成23年3月 日本自動車研究所 図3-14標準ケースにおけるWtTエネルギー消費量・CO2排出量(J-MIX)/表3-20 国内大規模プロセス(その1)
  13. ^ 労働災害事例 タイヤローラーをトラックに積込み中、突然動きだしたローラーに挟まれる - 厚生労働省 職場のあんぜんサイト
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  16. ^ Reversing Of Marine Engines - Bright Hub Engineering
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