特種用途自動車とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 特種用途自動車の意味・解説 

とくしゅようと‐じどうしゃ【特種用途自動車】


特種用途自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 10:25 UTC 版)

自動車 > 日本における自動車 > 特種用途自動車

特種用途自動車(とくしゅようとじどうしゃ)とは、道路運送車両法施行規則(昭和二十六年運輸省令第七十四号)に基づく「自動車の用途等の区分について(依命通達)」により定められた自動車の用途による区分。特殊自動車と発音が同一であり、混同を避けるため「特種(とくだね)」とも呼ばれる。

定義

道路運送車両法施行規則に基づく国土交通省自動車局長からの「自動車の用途等の区分について(依命通達)」では、特種用途自動車等とは、主たる使用目的が特種である自動車であって定められた構造や装置などの要件のすべてを満足するものをいう[1]。そのうち特種用途自動車とは特種用途自動車等から貸渡特種用途自動車を除いたものをいう[1]

車両に対して付与されるナンバープレート[注 1]の「車種を表す数字(分類番号という)」が8で始まることから、一般に「8ナンバー車」とも呼称される。

特殊自動車と区分する必要があるときは、「特種=とくだねじどうしゃ」、「特殊=とくことじどうしゃ」などと呼び分けられることがある。

特種用途自動車(8ナンバー)の運転には乗車定員数、車両総重量、最大積載量に応じ、普通免許・準中型免許・中型免許・大型免許のいずれかが必要である。クレーンなどの特殊な設備などの運転や操作に別の資格が必要なものもある。

なお、大型特殊自動車として登録されるもの(9ナンバー、0ナンバー)を運転する際は、大型特殊免許が必要要件となる。

例えば、クレーン用台車にクレーンが載っている車は特種用途自動車3-3なので8ナンバーとなり大型免許等で運転が可能であるが、ホイールクレーンは特殊自動車の例示「一イ」に該当するので9ナンバーとなり、運転には大型特殊免許(1種または2種)が、また作業の際にはそれぞれの重機に合った特別教育や技能講習の修了・作業主任者資格などが必要となる。

使用目的

特種用途自動車は、主たる使用目的が特種である自動車であって、かつ、構造や装置などの要件のすべてを満足するものでなければならない[1]。以下では主たる使用目的の区分について述べる。

以下は国土交通省自動車局長からの「自動車の用途等の区分について(依命通達)」(平成19年(2007年)1月4日付国自技202号)による区分[1]

緊急自動車

通達では「専ら緊急の用に供するための自動車」として、道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第13条により指定又は届出された緊急自動車であって、かつ、構造上の要件に適合する設備を有するものをいうとしている[1]

以下の13の形状である[1]

  1. 救急車
  2. 消防車
  3. 警察車(パトロールカー[注 2]事故処理車など)
  4. 臓器移植用緊急輸送車
  5. 保線作業車
  6. 検察庁車
  7. 緊急警備車(刑務所その他の矯正施設の使用する自動車で、逃走者の逮捕や連れ戻し、被収容者の警備のために使用するものをいう[2]
  8. 防衛省車
  9. 電波監視車
  10. 公共応急作業車(電気事業、ガス事業、水防機関、道路管理、電気通信事業などの公益事業を行う者が応急作業のために使用するものをいう[3]
  11. 護送車
  12. 血液輸送車
  13. 交通事故調査用緊急車

法令特定事業

通達では「法令等で特定される事業を遂行するための自動車」として、使用者の事業が法令等の規定に基づき特定できるもので、その特定した事業を遂行するために専ら使用する自動車であって、かつ、構造上の要件に適合する設備を有するものをいうとしている[1]。法令には法律、政令、府令、省令及びこれらの規定に基づく告示並びに地方自治体の条例を含む[1]

以下の13の形状である[1]

  1. 給水車
  2. 医療防疫車(検診車、健診車など)
  3. 採血車
  4. 軌道兼用車
  5. 図書館車
  6. 郵便車(郵便配達車ではなく、被災地や遠隔地で郵便業務を行うための移動郵便局車)
  7. 移動電話車
  8. 路上試験車(道路交通法の規定に基づく技能試験に使用される助手席に補助ブレーキを有するものをいう[4]
  9. 教習車(公安委員会から指定を受けた、もしくは、公安委員会に届出た自動車教習所等で自動車の運転に関する技能の検定又は教習・講習に使用される助手席に補助ブレーキを有するものをいう[5]
  10. 霊柩車
  11. 広報車(国、地方自治体、公益社団法人、公益財団法人又は電気、ガス等の公益企業の所有する車両に限られる)
  12. 放送中継車
  13. 理容・美容車

特種な目的に専ら使用するための自動車

通達では「特種な目的に専ら使用するための自動車」として4つの区分を設けている[1]

運搬

特種な物品を運搬するための特種な物品積載設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(15形状)[1]

  1. 粉粒体運搬車
  2. タンク車(危険物や高圧ガスなど液状の物品を輸送するものをいう[6]
  3. 現金輸送車
  4. アスファルト運搬車
  5. コンクリートミキサー車
  6. 冷蔵冷凍車
  7. 活魚運搬車
  8. 保温車
  9. 販売車
  10. 散水車
  11. 塵芥車
  12. 糞尿車(いわゆるバキュームカー
  13. ボートトレーラ(被牽引車)
  14. オートバイトレーラ(被牽引車)
  15. スノーモービルトレーラ(被牽引車)

患者等移送

患者、車いす利用者等を輸送するための特種な乗車設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(2形状)[1]

  1. 患者輸送車
  2. 車いす移動車

特殊作業

特種な作業を行うための特種な設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(32形状)[1]

  1. 消毒車
  2. 寝具乾燥車
  3. 入浴車(寝たきり老人や障害者などの入浴)
  4. ボイラー
  5. 検査測定車
  6. 穴掘建柱車(地面の掘削や建柱に使用するものをいう[7]
  7. ウインチ
  8. クレーン車
  9. くい打車
  10. コンクリート作業車
  11. コンベア
  12. 道路作業車
  13. 梯子車
  14. ポンプ車
  15. コンプレッサー
  16. 農業作業車
  17. クレーン用台車
  18. 空港作業車
  19. 構内作業車
  20. 工作車(電気、ガス、水道、電気通信等の設備工事作業に使用するものをいう[8]
  21. 工業作業車(工業製品の粉砕作業、鉱物の選別作業などに使用するものをいう[9]
  22. レッカー車
  23. 写真撮影車
  24. 事務室車(移動先で事務室や教室として使用するものをいう[10]
  25. 加工車(食料品の原料等の加工作業に使用するものをいう[11]
  26. 食堂車
  27. 清掃車(下水道等の清掃作業用のものをいう[12]
  28. 電気作業車
  29. 電源車
  30. 照明車
  31. 架線修理車
  32. 高所作業車

キャンプ・宣伝活動を行うための自動車

キャンプ又は宣伝活動を行うための特種な設備を有する自動車で、車体の形状が次に掲げる自動車(3形状)[1]

  1. キャンピング車(2001年より構造要件を厳格化)
  2. 放送宣伝車(政党・労働団体・右翼団体などの街宣車
  3. キャンピングトレーラ(被牽引車)

構造と装置

要件

特種用途自動車は、主たる使用目的にあわせて定められた構造や装置などの要件をすべて満たすものでなければならない[1]

  1. 主たる使用目的の遂行に必要な構造及び装置を有すること[1]
  2. 最大積載量を有する自動車にあっては、自動車の乗車設備と物品積載装置との間に、適当な隔壁か保護仕切などがあること(ただし、最大積載量500㎏以下の自動車で乗車人員が座席の背あてにより積載物品から保護される構造の場合を除く)[1]

特に「特種な目的に専ら使用するための自動車」に区分される特種用途自動車の場合は以下の要件も必要になる[1]

  1. 4つの区分(特種な物品を運搬するための特種な物品積載設備を有する自動車、 患者、車いす利用者等を輸送するための特種な乗車設備を有する自動車、特種な作業を行うための特種な設備を有する自動車、キャンプ又は宣伝活動を行うための特種な設備を有する自動車)ごとに定められた構造上の要件に適合する設備を運転者席以外に有していること[1]
  2. 乗車設備及び物品積載設備を最大に利用した状態で特種な設備の占有する面積が1平方メートル(軽自動車にあっては0.6平方メートル)以上であること[1]
  3. 特種な設備の占有する面積は、運転者席を除く客室と物品積載設備の床面積並びに特種な設備の占有する面積の合計面積の2分の1を超えること[1]

除外

専ら緊急の用に供するための自動車を除く以下の自動車は特種用途自動車から除外される[1]

  1. 型式認証等を受けた自動車の用途が乗用自動車であって、車体の形状が箱型又は幌型で、その車枠が改造されていないもの[1]
  2. 型式認証等を受けた自動車の用途が貨物自動車であって、その物品積載設備の荷台部分の2分の1を超える部位が平床荷台などであるもの[1]
  3. 型式認証等を受けた自動車の用途が貨物自動車であって、セミトレーラをけん引する連結装置のあるもの[1]

脚注

注釈

  1. ^ 自動車検査証に記載されナンバープレートにより対外的に表示される。
  2. ^ ただし、覆面パトカーの場合は秘匿性の観点から、分類番号が3桁化されてしばらくたってから以降はベース車両に応じた通常の5・3ナンバーとなっていった。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y 自動車の用途等の区分について(依命通達) 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  2. ^ 緊急警備車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  3. ^ 公共応急作業車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  4. ^ 路上試験車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  5. ^ 教習車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  6. ^ タンク車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  7. ^ 穴掘建柱車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  8. ^ 工作車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  9. ^ 工業作業車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  10. ^ 事務室車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  11. ^ 加工車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。
  12. ^ 清掃車 国土交通省、2020年6月25日閲覧。

関連項目

外部リンク


特種用途自動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 06:42 UTC 版)

改造車」の記事における「特種用途自動車」の解説

詳細は「特種用途自動車」を参照 メーカー製の市販車中にも生産プロセス実際に改造施されるものがある。特装車少量生産車では、コスト負担大き型式指定かたしきしてい)の作業省略し既存型式車の改造車として取り扱う場合がある。各社福祉改造車両(手または足に障害を持つドライバー向けの改造施した車両)や救急車消防車教習車などの特種用途自動車などのほか、日産自動車オーテックジャパン)のアクシスシリーズ/ライダーシリーズダイハツ工業のハイゼットデッキバンやオープンカーのリーザスパイダーがある。 このほか、電気自動車LPG自動車天然ガス自動車オートマチック車などにも改造扱い車種がある。 また初期型ノンステップバスにも、ワンステップバス改造扱い製造され車種がある。これらは前ドアから中ドアのみ床の高さを下げてノンステップ化しており、車両後部エンジンルームから後車軸にかけてはワンステップバスツーステップバスと共通の部品用いている。このようなノンステップバスは、型式取得上は改造車であるが、カタログにも正式に掲載され公営交通を含む多く事業者納入されている。これらは製造段階からノンステップバスとして製作されており、後天的な改造改造車になったものではない。尚、バス全体では2000年代にはメーカー純正以外のボディ架装することも改造扱いとされたこともあった。 その他、小型トラックエアサスペンション改造道路清掃車左ハンドル改造特殊な荷台架装するためのフレーム改造配送トラックオートマチック車改造などが見られるが、これらはアフターマーケットでの趣味改造車とは趣旨異なるものの、法律上一定範囲上の改造施され車両」という点では同一扱いを受け、車検証いわゆるマル改」となる。

※この「特種用途自動車」の解説は、「改造車」の解説の一部です。
「特種用途自動車」を含む「改造車」の記事については、「改造車」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「特種用途自動車」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

特種用途自動車

出典:『Wiktionary』 (2021/08/16 00:43 UTC 版)

名詞

特種 用途 自動車 (とくしゅようとじどうしゃ)

  1. 道路運送車両法定められ特種用途使用するために必要設備構造備えた自動車


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「特種用途自動車」の関連用語

特種用途自動車のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



特種用途自動車のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの特種用途自動車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの改造車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの特種用途自動車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS