重油とは? わかりやすく解説

じゅう‐ゆ〔ヂユウ‐〕【重油】

読み方:じゅうゆ

原油から揮発油灯油・軽油などを分留したあとの、残りの高沸点の油。黒色粘度高く比重0.9〜1.0真空蒸留すると潤滑油アスファルト得られるディーゼル機関大型ボイラーなどの燃料使用

コールタールから得られるクレオソート油

[補説] JIS規格では粘度少ない順に1種A重油)・2種B重油)・3種C重油)の3種分類される

「重油」に似た言葉

重油 (じゅうゆ)

 原油常圧蒸留したときの残滓油に軽油灯油などをブレンドしたもので、動粘度引火点残留炭素水分灰分硫黄分などで性状示し動粘度により1種A重油)、2種B重油)、3種(C重油)に分類する。重油はボイラー金属加熱炉等の各種産業用燃料として大量に使用されている。

重油

英語 heavy oil

炭素数の多い炭化水素主体とする精製油をいう。炭化水素加え多く酸素硫黄窒素金属化合物含んでいる。

参照 石油精製
※「大車林」の内容は、発行日である2004年時点の情報となっております。

重油

読み方じゅうゆ
【英】: fuel oil

重油は、ディーゼル・エンジン用およびガス・タービン用などの内燃用と、ボイラー各種工業炉用などの外燃用の燃料として適当な品質有する鉱油として、日本工業規格JIS)でその種類品質定められている。重油は、常圧蒸留残油減圧蒸留残油溶剤脱瀝{ようざいだつれき}残油などの高粘度油に直留軽油分解軽油などの低粘度油を調合して、その用途に応じて粘度硫黄分流動点引火点残留炭素分などの性状合わせて製品とされる
重油は、褐色または黒褐色重質油で、比重は 0.82 ~ 0.95 程度発熱量10,00011,000 kcal/kg 程度である。重油の成分炭化水素主なもので、若干0.1 ~ 4 %程度)の硫黄分および微量無機化合物含まれている。重油成分中の炭素水素重量比(C/H 比)は 6.5 ~ 7.8 くらいである。近年大気汚染防止上の要請から重油の低硫黄化のため、直接脱硫間接脱硫により残油脱硫が行われることが一般的となっている。重油は便宜上粘度によって A 重油50 において 20cSt 以下)、B 重油20超え 50cSt 以下)および C 重油50超え 250cSt 以下)の 3 種分類使用されている。すなわち、A 重油は重油中最も軽質で粘度低く主成分軽油で、これに 10 %程度残油加えて製造するが、ディーゼル・エンジン小型バーナー燃料として最も一般的に使用されている。A 重油軽油主体なので硫黄分が低い(1 %以下)ため、大気汚染防止対策用として、従来B 重油C 重油からの切り替え使用が目立つようになったまた、流動点貯槽加熱不要な程度に低い(0 ~ 10 )。B 重油A 重油C 重油中間的な性質持ちおおよそ軽油 50 %残油 50 %程度混合によって製造されディーゼル・エンジンバーナー燃料使用されるC 重油は、重油中最も粘度高く常温では流動性失い加熱保温設備を必要とするものもある。しかし、石油製品のうち最も安価な燃料として大型ディーゼル・エンジン大型ボイラー用などに使用されている。C 重油なかには粘度が 250cSt を超えるものもあり、その分貴重なカッター材を少なくできるため、高粘度 C 重油標準的な粘度C 重油よりも安価である。また、船舶燃料用使われる重油はバンカー重油または単にバンカー呼ばれている。

重油

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/23 15:54 UTC 版)

重油

重油(じゅうゆ)とは、原油常圧蒸留によって蒸留塔底から得られる残油、あるいはそれを処理して得られる重質の石油製品である。ガソリン灯油軽油より沸点が高く、粘質であることから名付けられている。しかしの一種であるため、比重よりも軽い。英語では、一般に、重油 (heavy oil) よりも燃料油 (fuel oil) と呼ばれる。

重油の性状

重油は、褐色又は黒褐色の重質油で、比重は0.82 - 0.95程度、発熱量は10,000 - 11,000 kcal/kg程度である。成分は炭化水素が主なもので、若干(0.1 - 4 %程度)の硫黄分及び微量の無機化合物が含まれている。

大気汚染の原因となる重油中の硫黄分を低減するため、直接脱硫や間接脱硫などによる脱硫を行うことが近年では一般的となっている。

消防法により、危険物に指定されている。区分は第4類第3石油類。引火点は70 以上200 ℃未満で、非水溶性である。

重油の製造

重油は、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、減圧軽油、溶剤脱れき(瀝)残油などの高粘度油に直留軽油や分解軽油などの低粘度油を調合して、その用途に応じて、粘度、硫黄分、流動点引火点、残留炭素分などの性状を合わせて製品とされる。

重油は原油から各種石油製品を精製した後の残渣油であるが、最近はアスファルト燃料とした発電も進んでおり、また二次装置[1]の整備が進むことで重油からガソリンや灯油など重油よりも利益が上がる油種をより多く精製するようになったことから、製品としての重油は供給量減少や品質悪化の傾向にあるといわれる。また熱分解でガス化してジメチルエーテルを製造することも可能である。

重油の規格・品質

重油の種類は、動粘度により1種(A重油)、2種(B重油)及び3種(C重油)の3種類に分類される。

さらに1種は硫黄分により1号及び2号に細分される。3種は動粘度により1号、2号及び3号に細分される。

  • A重油は軽油90 %に少量の残渣油を混ぜたものである。
  • B重油は残渣油と軽油を半量程度ずつ調合したものである(なお、最近B重油はほとんど生産されない)。
  • C重油は90 %以上が残渣油である。

一般的に、残留炭素の多い重油は粘度が高い。重油の硫黄の大部分が有機硫黄分として存在している。

品質は、内燃機関用、ボイラー用及び各種用などの燃料として適当な品質鉱油であって、次の規定に適合しなければならない。

重油の規格 (JIS K 2205)

性状→
種類↓
反応 引火点
動粘度
(50℃)
cSt
(mm2/s)
流動点
[※ 1]
残留炭素分
質量%
水分
容量%
灰分
質量%
硫黄分
質量%
1種(A重油) 1号 中性 60以上 20以下
(20以下)
5以下 4以下 0.3以下 0.05以下 0.5以下 (LSA重油)
2号 中性 60以上 20以下
(20以下)
5以下 4以下 0.3以下 0.05以下 2.0以下 (HSA重油)
2種(B重油) 中性 60以上 50以下
(50以下)
10以下 8以下 0.4以下 0.05以下 3.0以下
3種(C重油) 1号 中性 70以上 250以下
(250以下)
- - 0.5以下 0.1以下 3.5以下
2号 中性 70以上 400以下
(400以下)
- - 0.6以下 0.1以下 -
3号 中性 70以上 400を超え1000以下
(400を超え1000以下)
- - 2.0以下 - -
  1. ^ 1種及び2種の寒候用のものの流動点は0℃以下とし、1種の暖侯用の流動点は10℃以下とする。

A重油の1種1号は、硫黄分(Sulfur、サルファー)が0.5 %以下とされ、LSA重油 (Low Sulfur A Fuel Oil) とも呼ばれる。この低硫黄のA重油の色は生産施設にもよるが半透明の黒色か黄色である。また、低硫黄のLSA重油はメーカによってはSCF(出光興産)またはSCFO (Super Clean Fuel Oil) とも称されることがある。

同じくA重油1種2号は、硫黄分が0.5 %以上2.0 %以下とされ、HSA重油 (High Sulfur A Fuel Oil) とも呼ばれる。

再生重油

上記の通常重油の他に、自動車用エンジンオイルや工業用潤滑油などの廃油を原料に濾過・精製した「再生重油」が生産され、A重油・C重油の代用として使用される事例も出ているが、これについては通常重油とは別途の規格(JIS K 2170)が2013年に制定され、1種(低硫黄・低塩素・低水分仕様)と2種(1種より水分条件を緩和)に規格が分けられている。さらに、再生重油と廃食用油を混合した「バイオ再生重油」についてもこれを規定する規格(JIS K 2171)が制定されている。

JIS規格と国際的名称

JIS規格 国際的名称
軽油 GO(Gas Oil : 軽油)
DO(Diesel Oil : ディーゼル油)
MDF(Marine Diesel Fuel : 船舶用ディーゼル燃料)
MDO(Marine Diesel Oil : 船舶用ディーゼル油)
A重油
B重油 -
C重油 MFO(Marine Fuel Oil : 船舶用燃料油)
HFO(Heavy Fuel Oil : 重質燃料油)
RFO(Residual Fuel Oil : 残渣燃料油)

重油の用途

A重油

低硫黄のLSA重油は、主として農耕機や中小漁船の燃料として使用されている。最近では環境問題や大気汚染問題に配慮するため、ビル、ホテル、寮、病院、学校の暖房・給湯用、食品工場の加熱用、クリーニング工場のプレス・温水供給に運用されるボイラーに多く用いられ、温室ビニールハウスのボイラー、温風暖房でも使用されている。

高硫黄のHSA重油は、低硫黄のLSA重油を特に必要としない非自動車用ディーゼルエンジン、及び工場、病院、学校、ビルなどの小・中規模ボイラーの燃料などに用いられる。

また、火葬場で遺体を火葬する際の燃料に使われる事が多かったが、環境面への配慮から灯油やガスに切り替わってきている。

B重油及びC重油

B重油、C重油は、船舶用の大型ディーゼルエンジン、工場や発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラーの燃料などに用いられる。

B重油及びC重油は粘度が高いため予熱した上で使用される。また、残渣油には不純物が多く含まれることから、船舶用のディーゼルエンジン燃料としてC重油を使用する場合、油清浄機により不純物を取り除いた上で使用される。それでもなお硫黄や分を多く含むため、レシプロエンジンで用いる場合には、燃焼時に生成される硫酸によるシリンダーライナー腐蝕や、アブレシブ摩耗に注意する必要がある。

再生重油

再生重油は、A重油よりさらに流動点が低い長所があり予熱の必要性が少ないが、主原料となる廃潤滑油の性状および添加剤に起因する性質から灰分がC重油よりも格段に多いという重大な欠点がある。またやはり廃潤滑油に起因して塩素分を多く含む。これらの性質から内燃機関向きではなく、工業用ボイラに使用する場合も、ボイラ内灰分の定期的除去を前提にする必要がある。主な用途は、アルミニウム溶融炉や石灰焼成炉などにおける直火燃料用途である。その欠点を補う策として、灰分の少ない廃食用油との合成によるバイオ再生重油の活用が図られている。

不正軽油問題

A重油には軽油引取税が課税されないため、軽油に比べて安価であるが、その品質は軽油に非常に類似している。そのため、しばしば貨物自動車用ディーゼルエンジンの燃料に流用される。これは不正軽油と呼ばれ、脱税行為であるだけでなく、環境対策上の問題ともなる。

このような脱税目的でのA重油の使用を防ぐために、A重油には1991年(平成3年)から識別剤としてクマリンが添加されている。

また、国土交通省では、不正使用の防止のため、2005年(平成17年)から、走行中のトラック等の燃料を抜き取り検査を行っている。これは軽油と重油の硫黄分の濃度の違いに着目したもので、硫黄分の濃度の分析を行うことで判別を行う。軽油は硫黄分の濃度が10 ppm程度であるのに対して、硫黄分の一番低いLSA重油でも硫黄分の濃度が5000 ppmにもなるので、抜取った燃料が、法令基準の50 ppm以上であれば、厳しく指導を行っている。

脚注

  1. ^ 原油蒸溜以降の、接触改質接触分解、脱硫、水素化分解、コーキングなどの工程を行う装置・設備。

関連項目

外部リンク


重油

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 02:28 UTC 版)

石油」の記事における「重油」の解説

沸点320上の蒸留で、船舶エンジンボイラー用いられる重油が精製される。これらの石油製品は、常温液体である。

※この「重油」の解説は、「石油」の解説の一部です。
「重油」を含む「石油」の記事については、「石油」の概要を参照ください。

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