カミンズとは? わかりやすく解説

カミンズ(NYSE:CMI)

住所: 500 Jackson StreetBox 3005Columbus, IN 47202United States
電話: 1- (812) 377-5000
FAX: 1- (812) 377-4937
ウェブサイト: http://www.cummins.com
業種: 資本財
業界: その他の資本財

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カミンズ

名前 Cummins; Cammins; Comins; Commins; Comyns; Kamins

カミンズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/06 02:31 UTC 版)

カミンズ・インコーポレイテッド
Cummins Inc.
種類 株式会社
市場情報 NYSECMI
S&P 500 Component
本社所在地 アメリカ合衆国
47201
500 Jackson Street, インディアナ州コロンバス
設立 1919年 (105年前) (1919)
業種 製造業
事業内容 ディーゼルエンジン発電機などの製造・販売
代表者 ジェニファー・ラムジー (会長CEO)[1]
資本金 22億1000万US$(2017年12月)
売上高 連結 204億2800万US$(2017年12月期)
営業利益 連結 23億6500万US$(2017年12月期)
純利益 連結 9億9900万US$(2017年12月期)
総資産 連結 180億7500万US$(2017年12月期)
従業員数 約61,600人(2019年)
決算期 12月末日
主要子会社 Cummins Power Systems LLC
Cummins Turbo Technologies Ltd.
Cummins Emission Solutions Inc.
Cummins Filtration Inc.
関係する人物 クレシー・ライル・カミンズ(創業者兼技術者)
ウィリアム・グラントン・アーウィン(創業時の投資家)
外部リンク www.cummins.com/jp/
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カミンズCummins Inc.)は、アメリカ合衆国エンジンメーカー。ディーゼルエンジンを中心に、代替燃料エンジン、発電機などの動力源、各種コンポーネントの生産・販売・アフターサービスを行っている。

1919年創業。本社はインディアナ州コロンバスにある。

概要

2019年時点で、190以上の国と地域に600以上の販売会社・代理店、7,200店以上のディーラー、約61,000人の従業員を擁する、国際的エンジンメーカー。ニューヨーク証券取引所に上場しており、同年12月期の売上高は約236億US$、純利益は約23億US$[2]。アメリカ国外での売上高が全体の約43 %を占める(2019年)。

エンジン事業では排気量2.8 - 95.0 Lのディーゼルおよび天然ガスエンジンのサプライヤーとして国際的に大きなシェアを持つ。北アメリカでの大型トラック用エンジンの市場占有率は約38 %を占める(2017年[3][4]

エンジン本体のほか、発電機や各種コンポーネント事業も展開している。プレジャーボート用発電セット(発動発電機)は“Onan”(Cummins Power Systems社)[5] [6]ターボチャージャーは“Holset”(Cummins Turbo Technologies社)、エアクリーナーなどのフィルター類は“Fleetguard”(Cummins Filtration社)のブランド名を持つ。

拠点

海外拠点・現地法人

主要生産拠点

※は合弁会社による生産。

略歴

インディ500参戦時のカミンズエンジン(1950年)

1919年に創業者のクレシー・ライル・カミンズ ( Clessie Lyle Cummins 1888-1968) が、カミンズ・エンジン社を設立したことに始まる。

カミンズは1908年からしばらくの間、コロンバスの銀行家投資家でもあったウィリアム・グラントン・アーウィン(William Glanton Irwin 1866-1943)の自家用車運転手を勤めていたことがあったが、次世代の内燃機関であったディーゼルエンジン開発に強い関心を抱いており、アーウィンに懇請したことでその後援を得て、エンジン開発事業に乗り出したのである。

当初はオランダのHvid社のライセンス供与を受けた6馬力の農業用エンジンを生産した。この小型エンジンは流通大手シアーズ・ローバックでも扱われた。

高速エンジンの大型化を図ったカミンズ社であったが、1924年には船舶用エンジン開発に失敗して倒産の危機に瀕する。それでも辛うじて事業の継続を得、この過程で、技術者のヌードセン (H.L. Knudsen) の協力をも得て効率に優れる直噴式高速ディーゼルエンジンの開発を進展させた。

1929年には、パッカードの中古リムジンに、自社製のディーゼルエンジンを搭載した試作車をウィリアム・アーウィンが運転し、ニューヨーク自動車ショーに直接乗り付けて出展した。特製パッカードはディーゼルエンジンならではの経済性を発揮し、「1ドル39セント(当時)の燃料費でインディアナ州からニューヨーク市へ行けた」とアピールされた。これによって市場の評価を得たことで、カミンズ社は自動車用エンジンメーカーとしても販路を広げることになり、経営はようやく軌道に乗った。小型船舶やトラック用のエンジン開発などの実績を積み、第二次世界大戦中はアメリカを筆頭とする連合国軍に各種の軍用エンジンとして採用された。

1950年代はアメリカにおける州間高速道路網の拡充を受けて、大いに業績を伸ばした。出力・経済性のみならず、耐久性・信頼性にも優れていることが評価されて、多くの大型トラック・メーカーから標準エンジンとして採用され、当時で売上高は1億USドルにも達している。またこの時期にインディ500にも参戦、1952年にはターボ・ディーゼルエンジンを搭載する「カミンズ・ディーゼル・スペシャル」(レース史上初のターボカー)でポールポジションを獲得した。

さらに1950年代以降はアメリカ国外にも大々的に進出し、自社工場および合弁会社の生産拠点を世界各地に設置したことで、98か国2,500箇所にサービス拠点を擁するまでになった。

コンポーネントや発電機事業は企業買収を通じて強化されており、1973年イギリスターボチャージャー製造メーカーのHolset Engineering Co.を買収[7]1992年に発電機メーカーのOnan Corporationを買収[8]1999年には排気ガス後処理装置メーカーのNelson Industries Inc.を買収した[9]

2019年カナダ水素燃料電池プロバイダーのHydrogenics Corporationの株式の80%を買収[10]、鉄道車両やトラック向けの水素燃料電池開発を行っている[11][12]

エンジンラインアップ

汎用タイプ

2016年IAA国際商用車ショーのカミンズブース。“L9N”は天然ガスエンジンである。
ISB6.7エンジン(Euro 5仕様)
QSK38エンジン(船舶用)

カミンズの汎用ディーゼルエンジンは、自動車[13]向けのオンロードエンジンとそれ以外の産業用途のノンロードエンジン英語版に大別される。前者が“IS*”+数字(Interact System、* はシリーズ名、数字は排気量をリットルで示す)、後者が“QS*”+数字(Quantum System、以下同じ)でエンジン型式が分かれていたが、2017年以後の新たな排出ガス規制適合エンジンから統一された(Xシリーズ英語版の場合、オンロードのISX15、ノンロードのQSX15 → 双方X15)。なお、原設計が1970年代以前のエンジンは型式表記方法が異なり、排気量を立方インチで表し、ターボには“T”、アフタークーラーには“A”を付ける(NTA-855、VTA-903、VTA-1710など)。

汎用エンジンはオンロード/ノンロード用途ともに、エンジン全体が赤く塗装されているのが特徴である(旧世代エンジンを除く)。旧カミンズ・マークルーザー・ディーゼル社[14]製など、一部の船舶用エンジンは白く塗装されている。

動弁機構はF・Xシリーズを除きOHVで、固定容量のウェイストゲート型ターボの採用も多く、保守的な構造となっている。

最新世代(欧州ノンロードStage V適合エンジン)は排出ガス後処理装置にDOC[15]DPF、尿素タンク、SCRを一体化した“Single Module”を採用、従来の別体式に対し省スペース化を図っている。一方、X15を除きEGRを省略している。

ディーゼルエンジンをベースとしたオットーサイクル天然ガスエンジンもラインアップされており、型式末尾に“G”または“N”が付く。

以下、主要なノンロードエンジンを挙げる。すべて4ストロークの直噴式でターボ・アフタークーラー付きである。

ノンロードディーゼルエンジンラインアップ(2021年現在)
Stage V適合エンジン、および世界のノンロード排出ガス規制については[1]参照
型式名 動弁機構 シリンダ配列 ボア×ストローク
[mm]
総排気量
[cc]
定格出力[16]
[kW(HP)]
最大トルク[16]
[N・m(lb-ft)]
燃料噴射方式 過給器 排気ガス低減方法 適合排出ガス規制
米国/欧州
備考
QSF2.8 SOHC 直列4気筒 94 x 100 2,775 55 (74) 300 (221) HPCR[17] WGT[18] EGR,DOC Tier 4 Final/Stage IV
F3.8 102 x 115 3,758 129 (173) 620 (457) Single Module Tier 4 Final/Stage V
B4.5 OHV 107 x 124 4,460 149 (200) 780 (575) コマツ4D107系と同タイプ
B6.7 直列6気筒 6,690 243 (326) 1,375 (1,014) VGT コマツ6D107系と同タイプ
L9 114 x 144.5 8,849 321 (430) 1,846 (1,361) XPI[19] WGT コマツ6D114系[20]と同タイプ
X12 SOHC 132 x 144 11,823 382 (512) 2,305 (1,700) DPF,SCR
X15 137 x 169 14,947 503 (675) 2,779 (2,050) VGT EGR,DPF,SCR
QSK19 OHV 159 x 159 18,942 597 (800) MCRS[21] WGT SCR Tier 4 Final/Stage IV
QSK23 170 x 170 23,151 809 (1,085) コマツ6D170系と同タイプ
QST30 V型12気筒 140 x 165 30,479 1,119 (1,500) コマツ12V140系と同タイプ
QSK38 159 x 159 37,884 1,193 (1,600)
QSK50 V型16気筒 50,512 1,864 (2,500)
QSK60 159 x 190 60,361 2,237 (3,000)
QSK78 V型18気筒 170 x 190 77,627 2,610 (3,500) コマツ18V170系と同タイプ
QSK95 V型16気筒 190 x 210 95,265 3,281 (4,400)

このほか、排出ガス規制適用除外分野や開発途上国向けに旧式エンジンも継続生産されている。

ピックアップトラック用

2021年現在、ピックアップトラック用としてラム・トラックスステランティスの一ブランド)のラム(1500を除く車種)向けにエンジンを供給している。

ラムにはダッジブランド時代の1989年よりカミンズ製直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載したモデルが設定されており、2007年に排気量を5.9Lから6.7Lに増大させた。2019年には市販のピックアップトラック用エンジンとしては初めて最大トルクが1,000 lb-ft(1,356 N・m)の大台に達した[22]

ピックアップトラック用エンジンは、汎用タイプと異なりブロックが黒く塗装されている[23]。仕様は以下の通り。

ピックアップトラック用ディーゼルエンジンラインアップ(2021年現在)
型式名 動弁機構 シリンダ配列 ボア×ストローク
[mm]
総排気量
[cc]
圧縮比 最高回転数
[rpm]
最高出力
[kW(HP)/rpm]
最大トルク
[N・m(lb-ft)/rpm]
燃料噴射方式 過給器 排気ガス低減方法 搭載車種 搭載期間
Cummins 6.7L Turbo Diesel OHV 24バルブ 直列6気筒 107 x 124 6,690 19.0
(400 HP仕様:16.2)
3,000 268 (360)/2,800 -
298 (400)/2,800
1,085 (800)/1,800 -
1,356 (1,000)/1,800
HPCR VGT EGR,DOC,DPF,SCR ラム
2500/3500/4500/5500
2007-

なお、2016年から2019年まで北米日産タイタンにディーゼル車が設定されており、同社に“Cummins 5.0L V8 Turbo Diesel”の供給を行っていた。

日本での事業展開

カミンズジャパン株式会社
Cummins Japan Ltd.
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本
105-0022
東京都港区海岸1-16-1
設立 1961年10月
業種 卸売業
事業内容 ディーゼルエンジン・発電機などの販売・アフターサービス
代表者 エリック・ウォータース
資本金 9,000万円(2016年)
主要株主 Cummins Inc. 100%
外部リンク www.cummins.jp
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日本法人のカミンズジャパン株式会社は、1961年10月に小松製作所(コマツ)との合弁会社(出資比率50:50)小松カミンズ販売として設立された。同年11月にコマツはカミンズとディーゼルエンジン部門で技術提携し、のちにコマツ小山工場でカミンズNシリーズ(N743およびN855)のライセンス生産が開始される(エンジン総合工場開設は1968年12月)。

小松カミンズ販売は1985年1月にカミンズの完全子会社となりカミンズディーゼルと改称(2002年にカミンズジャパンと再改称)、コマツのライセンス契約も終了したが[24]1993年11月には合弁会社コマツカミンズエンジン(出資比率50:50)をコマツ小山工場内に設立し1995年11月より同工場でカミンズB・Cシリーズ(排気量3.3-8.3L)の生産を開始した[25]。また、1998年1月にはディーゼルエンジンの共同研究および開発を行う合弁会社アイ・ピー・エー(Industrial Power Alliance、出資比率50:50)を設立するなど、カミンズの日本進出当初よりコマツとは密接な関係にある。

アイ・ピー・エーが開発した[26]SSDA18V170エンジン(カミンズQSK78に相当)をはじめ、コマツのディーゼルエンジンにはカミンズと構造を同じくするものが複数存在する。

また、いすゞ自動車が2019年5月にカミンズとパワートレイン事業に関する包括的パートナーシップ契約を締結した[27](後述)。

自動車

2021年2月にいすゞ自動車が電動車など次世代車の開発に経営資源を集中させるため[28]、2021年中に北米で販売する中型トラック向けにカミンズB6.7エンジンを調達、その後日本などでも導入する計画が発表された[29]。日本国内で生産する車両向けには、いすゞ栃木工場で生産した同エンジンを搭載する計画。なお、日本国外では現地生産のいすゞブランド車にカミンズ製エンジン(Bシリーズ、L9)を搭載する例は既に見られる[30][31][32]

2024年7月23日には中型トラック「フォワード」およびいすゞ子会社のUDトラックスが販売する「コンドル」にいすゞとの共同開発による直列6気筒エンジン「DB6A」を搭載した車両総重量15トン以上のモデルが追加設定され、同日より販売が開始された[33][34]

日野自動車北アメリカで生産するトラックの2021年モデルで日野製エンジンの認証試験がクリアできないため2020年12月から生産を停止していて[35]、2021年3月にカミンズ製エンジンの供給を受けることで合意した。中型のLシリーズにB6.7エンジン、大型のXLシリーズにL9エンジンを搭載、2021年10月から生産を再開する予定[36]

それまでは日本の自動車メーカーが国内向け車両にカミンズ製ディーゼルエンジンを採用した例は全くなく、アメリカ車好きの好事家向けに上記ピックアップトラックが少数並行輸入される程度であった。日本ではアメリカ製トラックのように社外エンジンを自由に選べず、自動車メーカーがシャシとエンジンを一貫して生産するか、自社の系列企業(外資系メーカーの場合親会社も含む)からエンジンを調達するのが一般的であるため、日本でカミンズのような独立系メーカーのエンジンが自動車業界で普及しない要因となっていた。

いすゞ・カミンズ協業以前の事業用自動車での採用事例としては、中国揚州亜星客車製中型観光バスYBL6805Hの日本向け仕様車(日本国内ではオノエンジニアリングにより「オノエンスター」の名称で輸入販売)がカミンズ製ISB4.5エンジン(出力210HP、排出ガス規制はEuro 6適合)を搭載している[37]

公道を走らない構内車両や輸出車では、宇部伊佐専用道路を走行するケンワースのトラクタT609がカミンズISX15エンジンを搭載している。過去の事例では1950年代にチリへ輸出した富士重工業製バスにはカミンズ製エンジンが搭載されていた[38]。また、1980年にモリタがコマツと共同開発した空港用化学消防車KFM-125にカミンズ製VTA-1710エンジンが搭載されていた。

コンポーネント部門ではHolsetブランドのVGターボがUDトラックスのGH11エンジンに採用されている[39]

特殊自動車

建設機械などの特殊自動車にはカミンズ製ディーゼルエンジンの採用が多く見られる。通称“オフロード法”2014年排出ガス基準(米国Tier 4 Final に相当)適合のカミンズ製エンジン(QSF3.8、QSB4.5、QSB6.7、QSL9)を採用したメーカーに日立建機住友重機械建機クレーンコベルコ建機タダノトヨタL&F酒井重工業加藤製作所KATO HICOM諸岡古河ロックドリルなどが挙げられる[40][41]

過去にはコマツ製建設機械にカミンズNシリーズやVTA-1710エンジンを採用する事例も見られた。

船舶

国際海事機関(IMO)の定める第2次排出ガス規制(IMO Tier II、2011年施行)に適合する排気量2.8 - 60Lのディーゼルエンジンをプレジャーボートや商船向けに供給している。船舶向け排出ガス規制は他分野ほど規制値が厳しくないため、QSB5.9やQSM11などやや古い型式のエンジンも継続して採用されている[42]

鉄道車両

大井川鐵道DD20形ディーゼル機関車
JR東海キハ85系気動車

1950年代から東急車輛製造などの国外輸出用車両(台鉄DR2500系DR2700系など)には搭載実績があったが、最大ユーザーの日本国有鉄道が国産設計エンジンに偏重し、輸入エンジン採用を忌避したことから[43]、日本国内向けとしての導入は非常に遅くなった。

採用は専用線や私鉄が先行し、1976年に三井鉱山田川工場No.4、私鉄では1982年大井川鐵道井川線DD20形ディーゼル機関車に搭載されたのが最初となっている。大井川での導入当初は、コマツがライセンス生産したNシリーズの垂直シリンダ型・NTA-855系が採用されていた。

国鉄分割民営化後の1989年東海旅客鉄道(JR東海)の特急ひだ」「南紀」で使われていたキハ80系気動車を置き換えるべく開発されたキハ85系気動車に水平シリンダ型・NTA-855-R-1(JRグループの型式:DMF14HZ系)が搭載された。キハ80系等の旧式なDMH17H[44]自然吸気エンジンで、17.0Lの排気量に比し出力180馬力と非力だったが、DMF14HZでは基本設計こそ1960年代のものながら直接噴射式エンジンにインタークーラーターボチャージャーを装着して350馬力(または330馬力)とDMH17Hの1.5基〜2基分に匹敵する出力を発揮し、段数を増やした新型変速機との組み合わせで電車特急と遜色ない性能を確保した。この実績からJR東海では標準エンジンとして本格採用、日本のほとんどの鉄道事業者鉄道ファンから認識されていなかったカミンズは一躍メジャーな存在となった。

以後、東日本旅客鉄道(JR東日本)キハ100系・110系気動車[45]名古屋鉄道キハ8500系気動車(後に会津鉄道へ譲渡)[46]にも搭載、JR東海とJR東日本では一部在来車のエンジンもDMF14HZ (NTA-855-R-1) に載せ替えられている。

なお、日本向けNTA-855-R系エンジンは、スコットランドノース・ラナークシャーにあるカミンズUK社ショッツ工場(1998年3月閉鎖)で生産されていた。このため、日本の鉄道業界への本格導入当初、カミンズを英国企業と誤解する事例もあった。その後導入のN14系はブラジルやインドで生産されている(カミンズ(スペイン語版)参照)。

Nシリーズの排出ガス規制適合はEPA Tier 2にとどまり[47]、それ以上の規制への適合は困難なため、2000年代以降、欧米諸国向けでも日本向けでも既にカタログや公式サイトのラインナップから除外されて過去の形式となっている[48]が、日本国内では鉄道車両用エンジンについての排出ガス規制が存在しないことから、東海旅客鉄道(JR東海)をはじめとする旅客鉄道会社はいずれも後継形式エンジンの導入には極めて消極的であり、2010年代以降に至っても旧式化したNシリーズの採用が続くという、欧米では見られない現象が続いている。

Nシリーズ以外では、日本貨物鉄道(JR貨物)が、総排気量9Lクラスのカミンズ製エンジンをHD300形ハイブリッド機関車の発電用エンジンに採用している[49]。カミンズの具体的な形式名は公表されていないが、50万台以上の製造実績がある既存形式の産業用エンジンで、水冷4ストローク・直列6気筒、出力325PS(242kW)、定格回転数1,600rpm、最高回転数1,800rpmであり、燃料電子制御方式を採用し、国土交通省の定める排出ガス対策型指定建設機械の第3次基準値適合[50]に相当する。JR貨物における形式はFDMF9Z形である[49]

脚注

  1. ^ ジェニファー・ラムジー、会長兼CEO”. 2024年7月24日閲覧。
  2. ^ 2019 Annual Report on 10-K Form” (PDF) (英語) (2020年2月11日). 2020年12月6日閲覧。
  3. ^ Cummins Top Overall Supplier of Class 8 Diesel Engines in 2017” (英語). Transport Topics. 2018年4月15日閲覧。
  4. ^ アメリカの大型商用車メーカーは、純正エンジン以外にカミンズなどの社外メーカーのエンジンを別途設定していることが多い。
  5. ^ QD 40-110 KWモデルのエンジンはカミンズ・B4.5であるが、それ以下のエンジンはクボタ製の空冷および水冷ディーゼルである。
  6. ^ オナン 船舶用発電機”. カミンズ. 2024年7月11日閲覧。
  7. ^ A look back at 60 years of Holset and Cummins in our Examiner nostalgia archive: Do you know anyone pictured?” (英語). Yorkshire Live (2012年9月12日). 2021年9月4日閲覧。
  8. ^ Onan Generators History and Relation to Cummins” (英語). Generator Source (1997年12月4日). 2021年9月4日閲覧。
  9. ^ Cummins Engine buys Nelson Industries” (英語). DieselNet (1997年12月4日). 2021年9月4日閲覧。
  10. ^ Cummins、燃料電池および水素製造技術プロバイダーHydrogenicsの買収完了”. マークラインズ (2019年9月9日). 2020年8月14日閲覧。
  11. ^ エンジン製造のカミンズ、ドイツで水素燃料電池の生産を開始 列車向け供給から”. Ligare (2020年11月17日). 2020年12月6日閲覧。
  12. ^ カミンズの経営陣が成長持続のための水素技術戦略・計画を発表”. Business wire (2020年11月19日). 2020年12月6日閲覧。
  13. ^ ピックアップトラックを除いた商用車全般やモーターホームを指す。
  14. ^ マーキュリー・マリン英語版社との合弁会社。2012年4月解散
  15. ^ Diesel Oxidation Catalyst:ディーゼル酸化触媒
  16. ^ a b 同一型式中の最大値
  17. ^ High Pressure Common Rail:コモンレール
  18. ^ Wastegate Turbocharger
  19. ^ Xtra-High Pressure Injection:コモンレール(スカニアとの共同開発品)
  20. ^ SAA6D114E-5以降のもの。
  21. ^ Modular Common Rail Fuel System:コモンレール
  22. ^ Next Generation Cummins 6.7 Liter Turbo Diesel is First to Deliver 1,000 Pound-Feet of Torque” (英語). 2019年1月19日閲覧。
  23. ^ Cummins Engines for Pickups” (英語). 2017年11月4日閲覧。
  24. ^ Cummins Power Generation marks 50-Year milestone in Japan.” (英語). 2017年12月29日閲覧。
  25. ^ KOMATSU-CUMMINS PARTNERSHIP PRODUCES 500,000TH ENGINE AT OYAMA” (英語). 2017年10月25日閲覧。
  26. ^ 沿革 会社情報”. 株式会社アイ・ピー・エー. 2021年1月31日閲覧。
  27. ^ いすゞとカミンズ、パワートレイン事業に関する包括契約を締結”. いすゞ自動車株式会社. 2021年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月31日閲覧。
  28. ^ “いすゞ、米社からエンジン調達 コスト削減で電動車集中”. 日経電子版 (日本経済新聞). (2021年1月27日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ2547R0V20C21A1000000/ 2021年1月28日閲覧。 ※全文閲覧は会員登録が必要。
  29. ^ いすゞとカミンズ、中型ディーゼルエンジン及び先行技術分野での協業を合意”. いすゞ自動車株式会社. 2021年2月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月6日閲覧。
  30. ^ Citibus” (英語). Anadolu Isuzu英語版. 2021年2月2日閲覧。
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  32. ^ Citiport 18” (英語). Anadolu Isuzu. 2021年2月2日閲覧。
  33. ^ “いすゞ『フォワード』に15トン以上モデルを追加…カミンズと共同開発した直6ディーゼル搭載”. Response. (株式会社イード). (2024年7月23日). https://s.response.jp/article/2024/07/23/384372.html 2024年7月24日閲覧。 
  34. ^ 新型「コンドル」に車両総重量15トン以上モデルを追加』(プレスリリース)UDトラックス株式会社、2024年7月23日https://www.udtrucks.com/japan/news-and-stories/news/20240723/Condor_BV2024年7月24日閲覧 
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  37. ^ バスラマ・インターナショナル No.159 P16-17。なお、型式がYBL76805Hと記載されているが誤りである。
  38. ^ 鶴岡貞大 著、和田由紀夫 編『富士重工業のバス事業』 8巻、ぽると出版〈バスラマスペシャル〉、2003年9月8日、25-26頁。 ISBN 4899800061 
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  40. ^ 型式届出特定特殊自動車一覧 (2014年基準適合車)” (PDF). 環境省. 2017年11月11日閲覧。
  41. ^ 型式届出特定特殊自動車一覧(2017年2月15日以降に届出があったもの)” (PDF). 環境省. 2018年9月23日閲覧。
  42. ^ “舶用ディーゼル・エンジン : カミンズ”. 株式会社ナビテクス. http://www.navitechs.com/engines/cummins.html 2018年5月20日閲覧。 
  43. ^ 国鉄の場合、DD54形が採用した旧西ドイツマイバッハ社(現・MTUフリードリヒスハーフェン)の設計(三菱重工業がライセンス生産)による複雑な構造のエンジンの保守に手を焼き、またライセンス契約の関係から不具合の改良にも本国の了承を得るために時間がかかり、結果的に保守費がDD51形の18倍にも達してしまい、さらに当時の労使関係の悪化も重なり、早期に廃車せざるを得なくなったという苦い経験があったこともも影響している。なお、分割民営化後のJR貨物にはディーゼル機関車においてマイバッハの後身のMTU製エンジンの採用例がある。
  44. ^ 日本国有鉄道系気動車の1960年代以前の標準エンジン。1942年に渦流室式の原設計が完成、1953年に予燃焼室式に一歩後退した後、1960年に水平シリンダー方式への設計変更を受けたが、燃焼室が大きめで熱効率が悪く、極めて旧弊な設計であった。
  45. ^ キハ110系ではチューニングが異なるNTA-855-R-4を搭載し、定格420馬力。
  46. ^ キハ85系が走る高山本線に乗り入れ、併結も想定されたことから走行性能を合わせる目的があった。
  47. ^ カミンズ公式サイト(日本語版)掲載「船舶用N855」(2022年5月24日閲覧)
  48. ^ カミンズ公式サイト(日本語版)掲載「鉄道エンジン」(2022年5月24日閲覧)。ラインナップされているのはXシリーズ英語版及びクアンタムシリーズ英語版で、Nシリーズはラインナップされていない。
  49. ^ a b 『鉄道ホビダス』 2020年6月3日付特集・コラム「非電化区間の最新システム - ハイブリッド機関車 第1回 - 」(2022年5月24日閲覧)
  50. ^ 国土交通省 『建設施工・建設機械 - 排出ガス対策』(2022年6月21日閲覧)

関連項目

外部リンク


カミンズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 02:46 UTC 版)

日本の気動車史」の記事における「カミンズ」の解説

戦後日本気動車エンジン国産技術振興補修部品入手性の問題もあって徹底して国産押し通されてきたが、1989年JR東海特急用のキハ85搭載用として、世界的なディーゼルエンジンメーカーであるアメリカのカミンズ社 (Cummins Inc) 製NT-855系エンジン輸入し鉄道業界の注目集めた。もっとも実際に採用されたのは同社イギリス工場シリンダエンジンであるNTA855-R1 (350 PS) であった。 NT-855系エンジン古く1960年代設計され14 L級の直列6気筒機関であるが、鉄道・船舶自動車定置動力など広範に用いられ世界各国多数使用実績があるベストセラーであり、日本においてもJR東海沿線大井川鐵道同業他社先陣切ってNT-855L (355 PS) を1982年以降井川線向けDD20形採用安定した性能高評価得ていた。大井川鉄道でこの系列機関採用され背景には、静岡県内漁船でカミンズ製エンジン大量に採用されており、補修部品の調達コスト納期の面で国産品遜色ない条件提示できた、という事情があった。JR東海場合にもメーカーこだわらず高性能廉価なエンジン求めた結果選択ではあったが、この選択アフターサービス充実ランニングコスト低さをも重視したのである。NT-855系は以後その他のJR各社にも採用例が生じている。 しかしながら2010年代以降、NT-855系・N14系を含むカミンズのNシリーズエンジンは、排出ガス規制の関係で後継形式エンジン代替され、製品ラインナップから除かれた「過去の形式となっているが、にもかかわらずJR東海は、全ての気動車エンジンNシリーズ統一した後は後継形式導入はせず、2010年代至ってNシリーズ調達続けている(カミンズは、製品ラインナップから除かれ過去の形式であっても調達には応じている)。日本では鉄道車両排出ガス規制設けられていないという背景もあるとは言え新形式の導入消極となって環境性能に劣る旧形式機関調達続けるという状態であり、過去国鉄が、過度標準化思考から脱することができず、旧式化したDMH17系エンジン採用し続けたのと似た状況生じつつある。 これら3系統11 - 15 L級の直列6気筒エンジンが、21世紀初頭現在の日本における気動車エンジン主流であり、必要に応じチューニングをすることで、普通列車用レールバスから特急形車両に至るまで、広範に用い手法JR各社において半ば常識化している。しかし、上記のように、標準化達成してしまうとそれ以上刷新阻まれるという状況も再び生じつつある。 また従前日本気動車では、1両あたり400 PS上の出力要する場合には、構造複雑なDML30HS/HZ系機関搭載する以外に選択肢がなかったが、整備性経済性改善され新世代直列6気筒直噴エンジン出現すると、特急形車両中心にこれを1両に2基搭載する事例多く見られるようになったまた、非力だったキハ40系中心に、これらの新型エンジン新し変速機換装することにより走行性能改善させることも行われている。あわせて換装後の機関余裕出力により冷房化を図るケース見られる詳細次項参照のこと。

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