ディーゼルエンジンの暴走
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/04 06:12 UTC 版)
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ディーゼルエンジンの暴走(ランオン、ディーゼリングとも)とは、エンジンが意図しない箇所から余分な燃料を取り込むことによりエンジンが高速回転する現象である。エンジンはオーバースピードになり、機械的な故障や潤滑不足により焼付き、破壊されるまでエンジンは回転し続ける[1]。焼玉エンジンやジェットエンジンも同じプロセスで暴走することがある。
原因
ディーゼルエンジンでは、トルクと回転速度はトルクコントロールシステムによって制御されている。つまり、吸気過程のたびに、エンジンは燃料と混合されていない空気を吸入し、燃料は圧縮過程で圧縮された後にシリンダー内に噴射される。圧縮過程の終わり付近では空気温度が高いため、燃料が噴射されると混合気が自然燃焼する。出力トルクは、噴射される燃料の量を調整することで制御され、燃料が多く噴射されるほど、発生するトルクは高くなる。ストロークあたりの燃料供給量を調整することで、空気と燃料の混合比が変化する。したがって、混合比の調整そのものが不要となるため、スロットルバルブは不要となる[2]。
ディーゼルエンジンは、様々な種類の石油や可燃性ガスなど、多種多様な燃料を燃焼させることができる。つまり、何らかの漏れや故障があり、意図せずに燃焼室に入るオイルや燃料の量が増えると、空気と燃料の混合比が上がり、トルクと回転数が上がる。
エンジン暴走の原因となる燃料漏れやオイル漏れは、内部と外部の両方に原因がある。ターボチャージャーの故障は、大量のオイルミストがインテークマニホールドに侵入する原因となり、インジェクションポンプの欠陥は、意図せず大量の燃料が燃焼室に直接噴射される原因となる。ディーゼルエンジンを可燃性ガスが使用される環境で運転する場合、ガス漏れがエンジンのインテークマニホールドに侵入すると、エンジンの暴走につながる恐れがある。
停止方法
ディーゼルエンジンの暴走を止めるには、カバーやプラグを使って物理的に吸気口を塞ぐか、あるいは二酸化炭素消火器を吸入口に噴射しエンジンを窒息するといった方法がある。また、MT車では、フットブレーキとサイドブレーキを完全にかけた状態で、4速、5速、6速などのハイギヤを入れ、クラッチを素早くつなぎ、意図的にエンストを起こすことによりエンジンの暴走を止めることができる。この方法はトランスミッション全体に大きな損傷を与える可能性があるため、最終手段とすべきである。
脚注
出典
- ^ Wellington, Barry F.; Asmus, Alan F. (1998). Diesel engines and fuel systems (4. ed., reprinted ed.). Melbourne: Longman Australia. ISBN 978-0-582-90987-8
- ^ Pischinger, Stefan; Seiffert, Ulrich, eds (2016). Vieweg Handbuch Kraftfahrzeugtechnik (8., aktualisierte und erweiterte Auflage ed.). Wiesbaden: Springer Vieweg. ISBN 978-3-658-09528-4
ディーゼルエンジンの暴走
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「ディーゼルエンジン」の記事における「ディーゼルエンジンの暴走」の解説
詳細は「ディーゼルエンジンの暴走」、「en:Diesel engine runaway」、「ディーゼルエンジンの問題」、および「en:Diesel_engine_problems」を参照 インテークにスロットル弁を持たず、アクセルペダルの操作が噴射ポンプの噴射量のみを制御するディーゼルエンジンは、噴射ポンプのリンケージの不具合や調速機の破損などにより燃料供給が過多となった場合、エンジン回転数が過回転(英語版)となったまま、オペレーターの操作ではエンジン回転数を制御できなくなるディーゼルエンジンの暴走(英語版)事故が発生する事がある。ディーゼルエンジンの暴走は、ターボチャージャーの軸受部のオイル漏れや過度のブローバイの発生などで霧化したエンジンオイルが吸気系統に大量に混入した場合、あるいは可燃性のガスが充満した空間に稼動状態のディーゼルエンジンが置かれた場合などの外的要因によっても発生しうる。 ガソリンエンジンは燃料装置の不具合、たとえばチョーク弁の誤作動などで燃料の供給が吸入空気量に対して過多となった場合は、点火プラグが失火してエンジンストールを起こすか、著しくドライバビリティが低下していく。ガソリンエンジンでもスロットル弁のリンケージの破損により、エンジン回転数が過回転となったまま制御不能になる暴走が発生する可能性はあるが、この場合メインキースイッチやキルスイッチを作動させるか、カーバッテリーの配線やプラグコードを切断するなどして強制的に点火装置や点火プラグへの給電を断つことで、オペレーターは暴走を容易に停止させることができる。機械式燃料噴射装置や機械式燃料ポンプ付キャブレターのガソリンエンジンで、ランオンを併発するという特殊な状況でのみ、オペレーターの操作だけではエンジンを完全停止できない事態が発生しうるが、それでもスロットル弁を閉じれば回転数は下がり、更にマフラーの排気口を塞ぐ事で容易に暴走は止められる。 しかし、スロットル弁(バタフライ・バルブ(英語版))を持たず、圧縮圧力のみで自己着火するディーゼルエンジン、とりわけ噴射ポンプが機械式の場合、吸入空気量を制限する機構が何もないため、ひとたび暴走が発生してしまうとメインスイッチやアクセルペダルをいくら操作してもエンジンの過回転を停止することができなくなってしまう。更にはターボチャージャー付ディーゼルエンジンの場合は、暴走が発生するとターボチャージャーも過回転状態となるため、過給圧のオーバーシュートも併発する事でブローバイが燃焼室から大量にクランクケース側に吹き抜け、そのブローバイがPCVバルブやEGRを通じてインテーク側に大量に吸引されることにより、例え噴射ポンプへの燃料供給が絶たれたとしても、多量のブローバイによりインテークに吹き抜けるエンジンオイルのみでディーゼルエンジンの暴走が継続する、ポジティブフィードバック状態が成立してしまう場合すらある。 このようなディーゼルエンジンの暴走をエンジンブローに至る前に停止させるには、燃料タンクから噴射ポンプへの燃料供給を遮断するのみでは不十分で、エアクリーナーボックスや吸気口に蓋や栓をはめ込んだり、二酸化炭素消火器を吸気口に大量に吹き込む事で吸入空気(酸素)を遮断する、或いは変速機をトップギアやオーバートップに入れた状態でフットブレーキやサイドブレーキを目一杯掛けてクラッチを一気に繋ぎ、クランクシャフトの回転を無理矢理停止させエンストを狙うなどの方法を採るしかない。自動車では走行中にアクセルペダルを戻してもエンジン回転の上昇が止まらない、ディーゼルエンジン暴走の兆候が見られた場合は、マニュアルトランスミッションでは直ちにクラッチを切り、オートマチックトランスミッション、セミオートマチックトランスミッション、無段変速機ではシフトレバーをニュートラルに入れてドライブトレインへの動力伝達を絶った上で、路肩に停車して上記の暴走停止の措置を行う。アメリカ海軍では船舶用ディーゼルエンジンで暴走が発生した場合には、燃料供給弁を閉じた上でデコンプを開いて停止を図るようにトレーニングマニュアルに記載している。 欧米ではディーゼル機関車や、デトロイトディーゼルなど旧式のディーゼルターボエンジンをレストアした際の試運転時に度々こうした暴走事故が起きており、キャタピラーは燃料系統を修理したディーゼルエンジンを初めて始動する際には、作業助手は燃料系統の修理ミスに伴う暴走に備えて吸気口に直ちに栓が出来るように備えておく事を推奨している。日本でも2000年代初頭に、三菱自動車工業の三菱・デリカや三菱・チャレンジャーにて噴射ポンプの製造工程のミスに伴うディーゼルエンジン暴走事故が発生し、リコールに至っている例がある。 可燃性ガスの充満が発生しやすい石油化学プラントや鉱山では、ディーゼルエンジンの暴走事故が数多く起きており、アメリカ合衆国労働省など海外の労働行政機関は、産業用ディーゼルエンジンに対して、万が一暴走が発生した際に備えて吸気系統と燃料供給系統の双方にシャットダウン・バルブ(英語版)や安全遮断弁(英語版)を備え付けるように義務付けている が、それでもすべてのディーゼルエンジンの暴走のフェイルセーフの確立までには至っておらず、2005年のテキサスシティ製油所爆発事故でもその過程において自動車のディーゼルエンジンの暴走が関連していた事が確認されている。 フィルター直前に追加インジェクターを持たない、燃焼再生式のDPF・DPR等が装着されるディーゼルエンジンについては、軽油によってエンジンオイルが希釈されることとなるが、燃料を含むエンジンオイルによって発生したブローバイガスが、EGR機構によって吸気系に戻されることによっても、ディーゼルエンジンの暴走が発生する。
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