日本放送協会 問題点と批判

日本放送協会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/05 03:35 UTC 版)

問題点と批判

内部組織と組織改革

内部組織については以下のような問題点が内外から指摘され、組織改革が進められている。また、民営化計画もある。

人事制度の抜本見直し

NHKでは、従来、ほとんどの職員が入局時の職種を全うしていた。しかしそのことにより、それぞれの職域で「セクショナリズム」が跋扈し、組織全体の風通しが良いとはいえなかった。2009年度からの3か年中期計画において、この「セクショナリズム」を打破するため、人事制度が以下のように抜本的に改められた。

  • 東京本部に集まっていた流れを逆転させ、各放送局の人員を計50人程度増やす。7拠点局においてはコンプライアンス専門管理職を計20人程度新たに配置する。
  • 本部レベルでは報道記者、番組制作従事に人員をシフトし、技術職は、技術革新などを進めることによって人員増の抑制を図りコンパクト化する。
  • 他の職域は引き続き人員削減の対象となり、特に営業については一部で外部委託を強化する。
  • 高い専門性と幅広い視野の両立を図るため、若い段階から本人の希望によらない入局時とは異なる職種への異動を従来以上に強化する。

2011年に会長となった松本正之は、旧国鉄→JR東海時代“労務の鬼”として恐れられていたが、そのことが会長指名の理由ともなっていた。国会で職員給与の高さが問題とされたこともあり、NHKは2013年2月12日、「基本給1割カット」「給与水準の一部地域別化」「手当見直し」「管理職登用に試験導入」などの人事制度見直し方針を決め、経営委員会と労働組合に示し[59]、同年4月4日に概ね労使合意に至っている[60]

役職定年制度

NHKの人事制度には「役職定年制度」がある。これは「一定以上のポストについた場合」「54〜57歳でその役職としての定年を迎える」というものである。その後は地位を維持したまま嘱託職となるほか、転籍した上でNHKエンタープライズやNHK出版、NHKテクニカルサービスなど関連団体へ“天下る”ことが多い。最長で65歳まで勤めることができるが、60歳以降については、一般の嘱託職扱いとなり、ポストも変わるケースが大半である。

アナウンサーの場合は、57歳が役職定年に当たり、この年齢に達するとアナウンスの一線を退くことになる。宮本隆治のように定年でNHKを退職する者や、松平定知のように定年後も嘱託として勤務を続けた者、三宅民夫のように嘱託での定年(65歳)を超えてもなおシニアスタッフ(事実上専属的に番組出演契約を結ぶ)や日本語センターに転籍してアナウンサーの活動を続ける者もいる。

法令の改正により、60歳が事実上の定年となっている。この制度は子会社整理と絡み、次期経営計画で見直しの対象となっている。

企業年金と巨額欠損

NHKでは退職者向けの企業年金制度を運営しており、勤務年月などで異なるものの平均月12万円(2008年時点)とされている。しかし2006年度に年金積み立て必要額算定のための利率(割引率)を従来4.5%としていたものを2007年度では市場実勢に合わせた2.5%に引き下げたところ積み立て不足は前年度比2.4倍の2700億円に及び、さらに2008年度では約3300億円に増大、同時点での積立額約3000億円を超える事態にまで発展している。この問題に対してNHK側では15年計画で償却を進めているが、関係筋によると2007年度に約100億円、2008年度には約120億円が放送受信料収入から補填されているという。また労働組合側には確定拠出型年金への移行か確定給付型の維持を条件に現役職員への給付額を引き下げる意向を示したが、職員側からは「なぜOBの優雅な生活のために現役の職員たちがツケを払わされなければならないのか」との不満の声も上がっているという[61]

関連組織への天下り

NHKエンタープライズをはじめとしてNHKには子会社・公益法人・関連会社が存在する。そのいくつかはNHK本体が営利活動が禁止されているため、営利活動を行うための「抜け道」として営利活動を行っているとして批判もある上に[62]、本体を退職した元社員の天下り先となっているという指摘もある。

国家・政治との関わり

NHKは、予算や人事をはじめとして国会承認事項があり、国会の総務委員会や予算委員会等で、国会議員から質問されることもある。このように政治が国会を通してNHKに影響を与え得る構造がある(同じ公共放送の英国放送協会にはないとされる)ことから、政治との関わりが否定的に取り上げられることがある。

吉田茂を茶化すなどの風刺で人気を集めていた『日曜娯楽版』が日本の独立回復直後に打ち切りとなったことへの政治的な背景が臆測された。ただし武田徹は、同番組の放送作家三木鶏郎が政治風刺に飽きたことが打ち切りの原因として政治的な影響を否定している[63]

1976年、NHK会長であった小野吉郎が、ロッキード事件で逮捕され保釈中だった田中角栄を見舞ったことは、小野を引責辞任に追い込むスキャンダルに発展した。

2004年に『週刊現代』が、NHK職員の中に国会議員や閣僚経験者の子弟が少なくないことを報じている。

2008年の9月に行われた自民党総裁選関連の話題を、NHKが連日に渡り長時間報道したため「総裁選報道が長過ぎる」といった抗議が多数寄せられた。その中でNHKの意図を尋ねるため電話していた女性に対し、視聴者コールセンターの対応責任者が、「はいはいはい、分からないんですか。自民党のPRですよ」と発言していたことが明らかになった[64]

イギリスの日刊紙「タイムズ」は2014年10月17日付の記事において、NHKは編集の独立性を放棄していると批判的に報じた。同紙が入手した内部文書によると、NHKの英語版担当記者らは最も論争の対象となっているいくつかのテーマを報道するに際して、安倍晋三政権の政治的立場を反映したフレーズを用いるよう指導されており、また南京事件従軍慰安婦中国との領土問題への言及を禁止されているという[65]

籾井会長(当時)の政府との癒着発言

籾井勝人元会長は、2017年1月19日に行われた任期中最後の記者会見において、NHKと政府の癒着関係の一つや二つはあるという趣旨の発言をした[66]

軍用地所有

2009年5月、東京・赤坂アメリカ軍基地・『赤坂プレスセンター』の敷地の一部をNHKが保有し、40年以上も国に対し賃借してきたことが判明した。歴史的経緯によるものとされるが、報道機関、さらにはNHKそのものの中立性との整合性の面で、論議となっている[67]

原発問題

2012年11月28日、『クローズアップ現代』「“ジャパンプレミアム”を解消せよ〜密着LNG獲得交渉」に対する出演を日本エネルギー経済研究所顧問の十市勉に依頼。事前の打ち合わせにおいて、「(1)LNG調達方法の多様化(2)LNG代替手段の確保のために原発再稼働や石炭火力の活用(3)制度改革で発電市場の競争の促進」の3点を指摘したところ「番組に出演するには意見を変えて頂くことになる」「原発ゼロを前提にどう価格を引き下げるかを趣旨にしている」とディレクターが主張。チーフプロデューサーがその後、「総選挙前」であり放送の「公正・中立」を考慮したと釈明したものの「中立」に対する説明がないまま出演ができなくなった[68]

その後、2014年1月30日放送のラジオ第1『ラジオあさいちばん』では、コーナー出演の予定だった外務省元首席事務官で東洋大学教授の中北徹脱原発の立場での事前原稿の変更を要求され、出演を取り止めた。前日にNHKに原稿を送ったところ、担当者から「(東京都知事選挙の)投票行動に影響を与える可能性があるのでやめてほしい」と言われ、これに対し中北は「特定の人を応援しているわけではない」と回答。さらに「原発ゼロでも経済成長が実現できる」との表現を変更することを提案したが、局のラジオセンター長から「選挙が終わったらゆっくり語ってください」と言われ出演を見送った[69]。これについて、毎日新聞社説を出して「これはNHKの過剰反応だろう」「反対の考え方を詳しく紹介するなど、番組内でバランスをとる工夫はいろいろとできる」と論じた[70]

天皇陛下のお言葉

2013年12月23日、天皇陛下(現・上皇陛下)80歳の誕生日にあたりお言葉が発表され、NHKはお言葉を一部編集した上で放送した。この件に関して、NHKは憲法改正議論を進める安倍政権に配慮し、憲法に関する部分を恣意的に削除して放送したとの批判を受けた[71]

受信料制度・未払い問題

1973年、朝日新聞記者の本多勝一が『NHK受信料拒否の論理』を発表し、視聴者が視聴するかしないかを問わずに一方的に料金を先払いで徴収すること、NHKの無責任な組織体質、無責任などを指摘したうえで、公共放送としてのNHKを改善するためには受信料拒否という方法があると主張した[72]

2000年代以降、相次ぐNHKの不祥事で受信料の不払いが増加していることから、今後の受信料のあり方について、国会や与野党、総務省などで議論されている。他方、2006年にNHKは受信料未払い問題に対して簡易裁判所に対する支払督促の申し立てを行っており、未契約者に対しても民事訴訟をできるだけ速やかに実施すると発表している[73]

受信料を巡る訴訟

  • 2007年 - 元職員がケーブルテレビ加入で、勝手にNHK-BSが観られるようになって、高い受信料を請求されているとして、請求を止めるよう訴訟を起こしたが、訴えは退けられた[74]
  • 2009年6月23日 - NHKが受信契約締結と受信料の支払いを拒否する埼玉県内のホテルに対して142万円の損害賠償を求める訴訟を起こした[75]。NHK未契約者に対する訴訟としては初めてのことである[75]。7月9日、会社側が訴訟で求めていた全額の支払いに応じたため、NHKは提訴を取り下げた[76]
  • NHKは東京都練馬区の男性と江東区の男性に対し、放送受信契約を結んでいるのに受信料の支払いに応じなかったとして、未払い分の支払いを求め東京地裁に提訴した。2009年7月28日、同地裁はNHKの請求通り男性2人にそれぞれ8万3400円ずつの支払いを命じた[77]
  • 2014年9月5日 - 最高裁判所の第二小法廷にて、NHK側は受信料の請求債権が10年であると主張していたが、鬼丸かおる裁判長はNHK側の上告を退け、「5年で時効」とする判決を下した[78][79][80][81][82][83]。この5年時効の確定判決は、最高裁判所としては初の判断である。この最高裁による確定判決により、5年以前に遡った受信料は回収不能となり、未払い受信料のうち最大678億円が回収不能になる見込みである[84][85][86]
  • ワンセグ機能付きの携帯電話については、埼玉県朝霞市の市議・大橋昌信(NHKから国民を守る党の党員)がワンセグ機能付きの携帯電話を所持しているだけ[87]でNHKの放送受信料を支払う必要があるかどうかの確認を求める裁判を起こしていた[87]。この裁判に関してさいたま地裁は2016年8月26日、放送法2条14号で「設置」と「携帯」が分けられていることから「携帯」は放送法の定める「設置」ではなく、携帯電話のワンセグは「設置」とするNHKの主張を「文理解釈上、相当の無理がある」とし、受信料を払う必要はないとする判決を下した[87][88]が、東京高裁で逆転敗訴。また、同様の裁判は2018年6月現在で5件あり、そのすべてがワンセグ所有者は受信料を払わねばならないとする判決となっている[89]

広告・商業主義

NHKは放送法によって広告放送で収入を得ることが禁じられているが、特定企業を宣伝しているかのような内容の番組が放送されているとの批判がある。その代表格であった『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』では、2004年に開催したイベント「プロジェクトX21」でNHKが番組で取り上げた企業に資料の提供と「協賛金」を要請したと報じられた[90]。このほか土曜ドラマハゲタカ』を東宝と映画化して展開する、インターネットでの有料配信「NHKオンデマンド」を始めるなど、受信料外収入以外にも収入があることが明らかになっている。

なお、フランス、イギリス、アメリカ合衆国、韓国、ドイツなどの日本国外の公共放送では広告収入は認められている。

民放との関係

民放は、NHKが建設した放送に必要な送信設備を軽い負担で使用しており、NHK批判が大々的にできないという。サッカーW杯オリンピックなどのスポーツ中継では、NHKは放映権料の負担分を全ては放送せず(ジャパンコンソーシアム)、一部を民放に譲り渡し、NHK批判をしないように牽制しているという。2001年、NHKは読売新聞から読売ジャイアンツ戦5試合分の放送権を、日本テレビでは4億円のところを8億円で購入した。読売1000万部を敵に回さないための組織防衛の金だという[91]

2004年9月、当時のNHK会長・海老沢勝二が国会に参考人招致された際、中村哲治民主党参議院議員)が、「もはやNHKが芸能番組を放送する意味はない。巨額のお金が動く番組を作るから、こういう不祥事が発生するのでは」と問い質したが、NHKの録画中継では全部カットされた。また、海老沢が呼ばれた総務委員会を生中継せず、NHKに不利な質問を全てカットしたものを深夜に放送した[91]

NHKの放送体制は民業圧迫を懸念する民放の反発も招いてきた[92]。なお、NHKは既存民放番組に対抗姿勢を打ち出した番組を制作することもある。

視聴率との関係

受信料で成り立つNHKは「視聴率に左右されないテレビ局」を謳っている[93]が、NHK以外のメディアにおいて「NHKも民放と同様、あるいはそれ以上に視聴率を意識している」との見解が示されているか、またはそれを前提とした報道・評論がされている例も多い[94][95][96][97][98][99]。また、かつてNHKの気象情報に出演していた気象予報士タレント半井小絵は、「チャンネルを変えられないようにとの指示が出ていた」と証言している[100]

番組内容に関する批判

韓国人氏名の呼称問題
かつてのNHKでは、ニュース内で韓国人名を日本語読みしていた。これを「人格権の侵害だ」と主張する北九州市在日韓国人(牧師)が、1988年にNHKを相手に、謝罪広告の掲載と、1円の慰謝料支払いを求めて提訴した。しかし最高裁は「日本語読みは当時、慣行として成立しており、NHKが牧師の人格権を侵害するなどの意思があったとは認められない」と、韓国人側の請求を退けた[101]。現在はハングル読み[102]に改められている。
番組改変問題
2000年代にはETV特集番組改変問題を巡り、取材を受けた市民団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワークから放送結果から「取材される際の期待を裏切られた」と損害賠償訴訟を起こされ、国家・政治とNHKの関わりが報道などで問題提起された。2007年の控訴審判決で東京高裁はNHKに200万円の賠償を行うよう命じたが、2008年上告審で最高裁は原告の請求を退ける判決を下した。
NHKスペシャル シリーズ 「JAPANデビュー」
2009年4月5日、6月25日放送の『JAPANデビュー アジアの一等国』」の内容について取材対象となった現地の台湾人・パイワン人、保守系メディアと視聴者、大学教授らが「放送法などに反した番組を見たことで精神的苦痛を受けた」として訴訟を起こした[103][104][105][104]。また、在台日本人の団体からはNHKに日台交流に支障をきたす恐れがあるとの意見書が出された[106]。東京、大阪などのNHK周辺で1000人を超える規模の抗議デモが行われた[106]。国会では公共放送のあり方について考える議員の会が設立された[107]
抗議活動を受けて、当時のNHK会長・福地茂雄は5月14日、「番組に問題はなかった」と述べた[108]。しかし、台湾人出演者からの抗議はないとした宣言文をホームページに掲載すると同時に[109][110]、プロデューサー等を台湾に派遣し、NHKが作成した「本件については不問に付します」とする文書に、署名捺印するよう求めたという[109]
佐村河内ゴースト問題
2012年11月放送の『情報LIVE ただイマ!』が「交響曲第1番HIROSHIMA」大ヒットのきっかけとなり、NHKスペシャル『魂の旋律〜音を失った作曲家〜』などでも反響を呼んだ、佐村河内守の曲が、新垣隆による作曲である事が『週刊文春』の報道で判明した。TBS系列『筑紫哲也 NEWS23』などを手掛けたTBS出身のフリーディレクター古賀淳也[111]が数年間も取材しており、「確かに共同制作者的な存在はいる」とゴーストライターの存在を認めていた関係者も存在し、問題化した[112][113]

著作権を巡る訴訟

2009年、札幌市写真家が撮影した風車の写真を無断でニュースに使用したとして、写真家から著作権侵害の賠償を求めての訴訟を起こされた[114]初公判は2010年に開かれた。




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  102. ^ テロップ表記も原則カタカナだが漢字表記が分かる人物については最初の表記分についてはカッコ書きで書かれている。 代表例:"キム・デジュン(金大中)氏"
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  109. ^ a b 「偏向報道」抗議者に「不問」求める 訪台のNHK番組関係者 産経新聞 2009.10.6
  110. ^ プロジェクトJAPAN 未来へのプレーバック。NHK 2009年6月17日
  111. ^ 魂の旋律―佐村河内守 [単行本]
  112. ^ 佐村河内守 なぜテレビはダマされたのか?ハフィントンポスト 2014年2月8日
  113. ^ 佐村河内氏のゴースト疑惑 NHKは知っていた?スポニチ 2014年2月5日
  114. ^ 札幌の写真家がNHK告訴 著作権法違反容疑 - 47NEWS(よんななニュース)(2008年6月24日 共同通信)





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