日本放送協会 公共放送として

日本放送協会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/15 01:56 UTC 版)

公共放送として

NHKは、公共放送であり、国内向け放送については視聴者からの受信料を財源とした独立採算制がとられている。これは国家が直接運営し国費を財源とする国営放送や、広告コマーシャルメッセージ)を放送し広告料収入を主な財源とする民間放送と区別されるものである。

しかし、国営放送と区別される公共放送といっても、事業予算、経営委員任命には国会総務委員会本会議での承認が必要であるなど、経営、番組編集方針には国会の意向が間接的に反映される形となっている。総務大臣はNHKに対して国際放送の実施、放送に関する研究を命じることができ(法66条)、その費用は国(日本国政府)が負担することになっている(法67条)。

受信料制度

NHKは「政治的公平」「対立する論点の多角的明確化」など法4条が求める放送を行い、受信者は受信料を支払うことが規定されている(第64条)。NHKは法に定める要件を満たしたテレビジョン受信設備の設置者から、受信契約に基づく受信料を徴収することによって運営されている。このほか、受信料収入に比べれば極一部ではあるが、国際放送に対する日本国政府からの交付金がある。

フランスアメリカ合衆国韓国ドイツなどの公共放送では広告収入は認められているが、NHKが広告を行って収入を得ることは放送法で禁止されている。しかし自局の番組宣伝や、ACジャパンとのタイアップによる公共広告等は任意で流すことができる。

法人税の免除

NHKは法人税法上の公共法人とされているため、法人税の納税義務が免除されている。ただし地方税法上では非課税とされていないため、法人の道府県民税(都民税)市町村民税については、従業員数等に基づく「均等割」のみ納付している。

経営、財務

経営計画

NHKの事業一切は、中期計画である経営計画に基づいて行われる。放送法令での具体的規定はないが、法令に基づく毎年の計画は、この経営計画に基づいて作成される。経営計画では、ネットワーク・編成・人事・収支その他NHKの経営・事業活動一切について、概ね3年ないし5年の単位での目標とすべき事柄を定める。

経営計画の意思決定は以下のようにして決められる。

  1. 執行部が素案を作成し、経営委員会、与党の意見を仰ぐ。
  2. NHKオンラインなどで公表し、視聴者からの意見を募集。
  3. 各方面からの意見を集約して修正を加え、執行部が最終案を経営委員会に提出。
  4. 経営委員会が承認した場合に限り、最終案が確定。中期経営計画についてはここで最終決定。
    • 橋本元一の会長時代に、ここで承認が得られず、経営計画が単年度分になってしまったことがある。
    • 後任会長の福地茂雄の就任時代には、執行部が「白紙状態」とした受信料の扱いについて、経営委員会が「その次(2012年度開始)の経営計画実施から収入の1割を還元する」旨経営計画を修正して承認議決した。
  5. 4.の最終案を総務大臣に提出。総務大臣は差し戻しとしない場合意見を付けて衆議院に提出。
  6. 衆議院総務委員会で審議。承認される場合は、大抵附帯決議がなされ、本会議へ。
  7. 衆議院本会議で承認されると、参議院へ送付。
  8. 参議院総務委員会で審議。ここでも承認される場合に附帯決議がついて、本会議へ。
  9. 参議院本会議で承認されて、成立。

財務会計

日本放送協会の財務諸表は、会計検査院の検査を経て国会に提出することとなっており(法74条第3項)、会計についても会計検査院が検査する(法79条)。

財務内容

現預金を1000億円、国債等の有価証券を3500億円近く保有しており、資産は簿価で9000億程度計上されている。負債の大半は前受け受信料や退職引当金等の引当金になっており合計で3000億円程度である。そして、簿価ベースでの自己資本は6000億円程度である。なお、不動産の多くが簿価で計上されており、本社所在地の10万平方メートルに上る不動産含み益だけでも5000億円近くになり、実質的な自己資本は1兆円を超える。資産の質が高く、負債の質も高いため、極めて流動性の高い財務構成となっている。通常の優良と言われる営利企業と比べた場合でも、財務内容は極めて健全である。

また、キャッシュフローは営業キャッシュフローが毎年600億円、投資は有価証券投資等の非事業性のものに多くが費やされている[14]

2002年以降の決算

決算一覧表(単位:億円)[15][16][17][18][19][20]
決算期 経常事業収入
(売上高)
経常事業支出
(営業費用)
経常事業収支差金
(営業利益)
当期事業収支差金
(当期純利益)
2002 (平成14)年3月 7,356 7,169 187 165
2003 (平成15)年3月 7,347 7,220 126 142
2004 (平成16)年3月 7,445 7,284 161 160
2005 (平成17)年3月 7,617 7,457 160 146
2006 (平成18)年3月 7,471 7,476 △4 70
2007 (平成19)年3月 7,370 7,235 135 261
2008 (平成20)年3月 7,371 7,050 321 394
2009 (平成21)年3月 7,147 6,900 246 253
2010 (平成22)年3月 6,839 6,801 - 37
2011 (平成23)年3月 6,997 6,773 - 223

△は赤字を示す。

放送技術

技術開発は、国がNHKに開発を命じることが可能である。命じた場合の費用は国の予算から支出される。放送技術研究所には、ソニーパナソニックなど民間企業からの出向者も、放送技術に関する開発に参加している。

防災関連

NHKは、災害対策基本法第2条第5号に定められる指定公共機関に指定されており、同法第6条に基づき防災基本計画の作成等の義務を負うとともに、国や地方公共団体の防災計画に協力する責務を有している。また、気象業務法第15条第6項では、気象庁から気象警報等の通知を受けた場合に、直ちにその通知事項の放送をしなければならないと法律で義務づけられている。

地震・津波関連については、緊急地震速報を地域に関係なく放送しており、津波警報津波注意報大津波警報を含む)発令と同時に緊急警報放送を開始、緊急報道体制に移行している。また、警報発令時に備え、受信機の動作確認のための試験放送を月1回行う他、深夜の最終のニュースが終わった後、緊急報道体制の訓練をほぼ毎日実施している。

宣伝、広告の禁止

法83条1項に基づいて、NHKは広告放送(他人の営業に関する広告の放送)の禁止が規定されており、定款51条にも広告放送の排除が謳われている。一方で法83条2項では「放送番組編集上必要であつて、かつ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない」とも規定しており、必ずしも企業名や商標等の放送が一律に禁じられているわけではない。これについて、NHKが取材・政策の基本姿勢を示した『NHK放送ガイドライン』[21]では、放送で企業名などを扱う場合に、以下の観点を放送是非の判断基準として、さらに企業名の出し方や出す回数を工夫するなど、宣伝・広告と受け取られないような配慮を行い、テレビCMや雑誌のキャッチコピー、流行語などは安易な使用や連呼に注意することが示されている。

  • 本質的に必要なのか、その他の表現に置き換えることはできないのか
  • 視聴者の理解を助けることになるか
  • ライバル企業などから見て、著しく不公平ではないか
  • 構成や演出上やむを得ないか

これらの観点から、特に以下の事象についてはそれぞれ個別の取り扱いが定められている。

固有名称、登録商標
特定の商品、サービス(役務)の固有名称を、一般名と誤認して放送すると宣伝につながるおそれがある。
登録商標は一般に固有名詞であることが多いが、逆に、登録商標に含まれている名称であっても、一般名に過ぎないこともある。
地域団体商標制度
地域ブランド保護を目的に、広く知られた商品やサービス(役務)(例として「○○りんご」「○○牛」「○○織」(○○は地域の名称)などが挙げられている)を事業協同組合などが「地域団体商標」として登録を認める制度であるが、特定の企業や個人の宣伝・広告に直結するとは考えにくいため、一般名として扱って良い[23]
施設命名権冠大会
施設や大会の名称である以上、放送に使用することはやむを得ないが、名前の一部に企業名などが含まれているため、ニュースや番組の中では繰り返しを避けて、抑制的に名称を用いる。企業名などを除いた名称が定着している場合には、企業名などを除いた名称を使うこともある。
  • 具体例として、大相撲春場所が行われる大阪府立体育会館(命名権名称「エディオンアリーナ大阪」)と名古屋場所が行われる愛知県体育館(命名権名称「ドルフィンズアリーナ」)は、大相撲中継において「企業名などを除いた施設名が定着している」扱いとして正式名称で報じている。
  • その他のスポーツ中継(サッカー・バスケットボールなど)では会場に命名権名称が用いられている場合もそのまま放送し(B.LEAGUEなどでの上記2会場からの中継を含む)、報道(スポーツニュース)では会場の都市名のみを報じている。
スポーツ会場内の広告
会場内の広告看板や選手のユニフォームに記載された広告については「必要以上にアップで撮ることは避ける」などの工夫をする。
それ以外の広告類(交通機関のラッピング広告など)も、画面に出てしまうことは避けられないとしても、過度にならないようにする。
インターネットサイトを紹介する際も、画面上のバナー広告が入らないようにする。
  • アニメ『TIGER & BUNNY』では、登場人物がスポンサー契約を結んでいるという設定で実在の企業ロゴが頻繁に登場するが、NHK BSプレミアムでの放送の際、企業ロゴがない海外版を放送することで対処した。
歌詞の変更

かつては、放送法83条1項の規定を厳格に適用して、番組内で歌唱される楽曲の歌詞から商標等に相当する語を差し替えた、以下のような事例がある。

ただし近年では「芸術作品の放送にあたっては、NHKの国内番組基準をふまえて、番組の責任者が個別に判断する」との方針に基づき、歌詞の差し替え事例は無くなっている。一例として、aikoの『ボーイフレンド』には「『テトラポット』のぼって」と、消波ブロックの商標名を使った歌詞が登場するが、歌詞の差し替えは行われなかった[24]松平健の『マツケン』をタイトルや歌詞に含む曲も同様に差し替えずに歌われている。いきものがかりSAKURAも歌詞の中に私鉄小田急電鉄の通称小田急線の歌詞の差し替えずに歌われた。グループ魂第56回NHK紅白歌合戦で広告禁止のルールを逆手に取ったギャグを審査員の琴欧州の協力を得て披露した。またプレイバックPart2の差し替えが行われたのはレッツゴーヤングであり紅白歌合戦では歌詞通り歌われた。
テレビドラマやドキュメンタリー
番組で特定の企業を扱うことに関しては、連続テレビ小説において、2014年秋の『マッサン』以降、『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』『わろてんか』『まんぷく』と、企業の創業者をモデルにした作品が続いているとの指摘があるが、NHKプロデューサーの遠藤理史は「制作過程で企業を利することが想像されても、それを超える公共的理由があり、多くの方が楽しめるなら作る意義はある」と説明しており[25]、番組内では登場人物の名称や設定を変更した「史実に基づいたフィクション」とすることで対処している。
このような、番組で特定の企業を取り上げる傾向は、2000年に放送開始された『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』が転機になったという指摘がある[26]
ただし、民間放送が企業商品名ロゴの写り込みを同業他社が提供する番組や、ジャニーズ事務所に所属するタレントが出演する番組を中心にぼかし処理で隠すことがあり、番組によっては架空のデザインに差し替えることがあるのに対し、NHKの場合は企業や商品名ロゴの写り込み程度は広告放送とみなしていないため、原則として隠していない。



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