ワイン 製法

ワイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/28 14:38 UTC 版)

製法

広い意味でのワイン作りはブドウの栽培と醸造に二分できる。ワイン産地では、ワイン作りといえば醸造(英語ではwinemaking)を指し、醸造学は英語でエノロジー(oenology/enology)という。これに対し、ブドウ栽培(英語でgrapegrowing)の技術や学問はヴィティカルチャー(viticulture)と呼ばれる。海外[どこ?]の大学はブドウ栽培と醸造学の両コースを持つのが普通である[要出典]

ワインの生産主体はフランスのボルドー地域においては「シャトー」、ブルゴーニュ地域においては「ドメーヌ」と呼ばれることが多い。フランス語の「シャトー」は、元々は城館を表す言葉で、ボルドー地域においては転じてブドウ園や管理場、生産者のことをも指す。主なものではシャトー・ムートン・ロートシルトシャトー・ラフィット・ロートシルトシャトー・マルゴーシャトー・ラトゥールなどがある。イタリアにおける「カステッロ」、ドイツの「シュロス」、スペインの「カスティーリョ」も同様である。「ドメーヌ」は、フランス語で「土地」を表す語である。カリフォルニアワインなどで「エステート」という語を使っているのもドメーヌと同義である。

ブドウ作り

鋏による収穫
自動収穫機による作業

どんなに醸造の技術が進歩しても、良いワインを作るためには良いブドウがなくてはならない。そのため、良質なブドウを収穫するための栽培技術方法は醸造技術以上に重要である。さらに、現代のワイン醸造では理想の味わいを生み出すために、醸造前あるいは醸造後に複数品種のブドウを組み合わせる手法が多く用いられている。したがって、ブドウ品種の選定とブレンド比は味の特徴を決定する大きな要因である。しかし、一方で品種の特徴を生かしたブレンドを行わない単一品種ワインも生産される。また、生育環境全体の栽培される畑の日当たりや局地的な気候などの要素を加え、それらを一括りにして「テロワール」と呼ぶ。実際には、品種、土壌、気候条件の違いを栽培技術や収穫時期の最適化で補うことで、広い地域で栽培が行われている。

その年のブドウの作柄のことをヴィンテージと呼ぶ。現在では[いつ?]転じてブドウを収穫した年のことをヴィンテージと呼び、その年の出来不出来によってワインの出来が変わる。そのために各国のワイン関連組織やワイン専門誌などによってヴィンテージチャートが発表される。ただし、現在では[いつ?]補糖や補酸、適切な酵母の選択などの醸造技術の進歩により、力のあるワイナリーであれば悪い年でもそれなりのワインができるようになり、味に関しては激しい差はない。その代わり、悪い出来のブドウでは長い熟成に耐えることが難しくなり、より早飲みになる。安価なワインでは品質を安定させるために複数の年のワインを混ぜた「ノン・ヴィンテージ」であることが多い。シャンパンはノン・ヴィンテージが一般的であり、産年表示された「ヴィンテージ・シャンパン」は、高級品に限られる。

品種

カベルネ・ソーヴィニョン

世界的にはワインに使われるブドウの種はヨーロッパ種(学名:Vitis vinifera)が主流である。品種はサルタナ(トンプソン・シードレス)種などごく一部に生食用品種を使用するものもあるが、ほとんどはワイン専用品種である。日本では、巨峰ナイアガラなどの生食用品種やヤマブドウも使われている。

一般にワイン専用品種は生食用品種よりも果実の粒が小さく、皮が厚く、甘みと酸味がより強い。代表的な品種としてリースリングカベルネ・ソーヴィニヨンメルローなどがある。また、伝統的な品種だけでなく、品種改良によって耐寒性や耐病性を向上[25]させたり、他産地との差別化を図ったりするための手法も行われている。

土壌

品種毎に適する土壌には違いがあるとされている。代表的な好土壌は、カリ白亜土、赤砂質粘土黄土土壌、混砂粘土、泥灰岩土壌石灰質土壌、粘陶土質土壌の水はけの良い土地が多く選ばれている。しかし、穀物栽培に適する腐植土壌の堆積平野や湿潤な土地、極度に乾燥した砂漠、塩分の多い土壌は良質なブドウの収穫は望めず不向きである。

気候

ブドウは気候に対する適応能力が高いため、温帯を中心に栽培されている。良質なワインを醸造できる特性を兼ね備えた果実を収穫できる地域の多くは、緯度20度から40度の地域に存在しているが、ヨーロッパでは北緯50度の地域においても栽培が行われている[26]。湿潤な気候区分では地中海性気候が適する。潅漑用水があればより乾燥したステップ気候地域でも栽培可能である。地球温暖化の影響により、2050年代には栽培に適した地域が変わる可能性がある[27]

冷涼な地域()では収穫期を遅らせ糖度の上昇を待つ、あるいは温暖(畑)な地域では適度な酸が失われる前に早期の収穫を行うことで収穫されるブドウの品質向上を図っている。

天候

その年に雨が多く、日照量が少ないとブドウの生育が悪くなり、そこからできたワインは糖分と果実味に乏しく腐敗果の混入のおそれが増える。逆に日照が良すぎて生育が早過ぎると酸が欠けて糖分が強くなり過ぎ、酸味とのバランスが悪くなる。

醸造

で熟成されているワイン

伝統的な方法では、搾った果汁をに入れ、自然酵母(野良酵母)によりアルコール発酵させたあと、滓(おり)引きを行い、樽で数か月から数年間熟成し瓶詰めされる。現在でも[いつ?]基本的な方法はワイン発祥の頃と変わっていない。近代的な醸造方法では培養酵母を添加し、ステンレス製タンク内で発酵させる。熟成(マロラクティック発酵)の際も、特別に培養した乳酸菌を添加する。

酸化防止剤の添加

ワインは、そのほぼ全工程で、なるべく空気、特に酸素との接触を断つ必要がある。これは多くの場合、空気とともに酢酸菌[28]が侵入して酢酸醗酵が行われることで、酸味の強過ぎるワインになったり、ワインが腐敗状態となったりするのを防ぐためである。このためワインの製造工程のいくつかの段階では、酸化防止剤としても知られる二酸化硫黄(亜硫酸ガス, SO2)またはそのの1種であるピロ亜硫酸カリウムが添加される。ただし、この二酸化硫黄には、確かに酸素の除去という効果もあるものの、その反応は遅い。しかも、二酸化硫黄は人体に有害な物質としても知られているため、これを添加をしない製法も存在する。このように酸化防止剤を添加しない場合は、醗酵させるタンク内の空気を窒素に置換することで、酸素との接触および雑菌の繁殖による腐敗を抑制する手法が多く用いられる。しかし、二酸化硫黄には酸化防止剤としての働きと雑菌の抑制および殺菌のほかにも、ブドウの果皮に含まれる酸化酵素の阻害、果汁中の色素の安定化、ワインで発生することのある過酸化水素の除去などの働きもあり、二酸化硫黄の添加を行うことでワインの品質をより簡単に安定させられるという利点がある。また、二酸化硫黄が含まれていても、少量であれば人体にほとんど問題はないとされていることから、簡単に品質を安定させる手段として、現在でも[いつ?]二酸化硫黄の添加が主流となっている。そして中には、フランスのワイン法のように、二酸化硫黄の添加を義務づけている地域も存在する。ただし、日本やヨーロッパ諸国、アメリカなどでは、製品中の二酸化硫黄の濃度が一定値を超えてはならないと規制されているため、使用には限度が存在する地域もある。なお、ワインへのこの他の酸化防止剤の使用は日本では認められていないが、南米などから気温が高い赤道を越えて船で輸送されるものは、多くの場合に保存料として認められているソルビン酸が添加される。

収穫から搾汁

古典的搾汁方法
果実の破砕、除梗、搾汁を同時に行う機械

醸造するには、まずブドウを収穫しなければならない。ブドウの収穫は糖度が14 - 26度程度になったところで、または機械で行う。収穫時期をいつにするかということもまたワインの味を決める重要な要素で、単純に糖度が高いだけでは酸とのバランスが悪い仕上がりになる。この際に病気の腐敗果や生育が悪いものは、必要以上に酸をもたらすため取り除く。この過程を選果という。

伝統的なワインの製造(発酵)方法は、ブドウの芯(果梗)を取り除き(除梗:じょこう)、実の皮を破る(破砕)。産地によっては、ワインにより強い渋みをつけるため果梗を混ぜる場合がある。スペイン、イタリアの農村では収穫期には伝統的に村人総出で、素足で体重をかけて搾汁する光景が見られる。最近の[いつ?]ワイン工場ではステンレス製の除梗破砕機を使用し搾汁する。多くのワイン専用品種では収穫した果実重量の55 - 65%程度の果汁が得られ、大粒生食用品種の巨峰などでは80 - 85%程度の果汁を得る。

この次に赤ワインの場合は、果皮や果肉の混ざったままの状態で醗酵させる。白ワインの場合は、圧搾機にかけて果汁を搾り出した(搾汁)後、果汁のみを醗酵させる。ただし、一部の白ワインではスキンコンタクト法という「破砕した果実と果汁を1 - 24時間接触させたあとに搾汁する」方法も取られる。このように、白ワインは醗酵させる前に果皮や果肉は捨てられるのが一般的であるものの、種子についてはグレープシードオイル(葡萄種油、食用油)の原料として利用される。ロゼワインの場合は、概要の節で述べたように様々な製法があり、この工程はそれぞれの製法によって異なっている。

なお、ワインの渋みとなるタンニンは果梗や果皮あるいは種子に由来し、タンニンはエタノールによって溶出する。したがって、果汁のみを醗酵させる白ワインにはタンニンが少ない。

主発酵(一次発酵)

発酵させるにあたり、ブドウの果実には自然酵母(野生酵母)が取りついており、さらに、果汁中には酵母が利用可能なブドウ糖が含まれているため、果汁が外に出ることで自然にアルコール発酵が始まる。伝統的な製法では酵母には手を加えない自然発酵が主流であったが、現在では[いつ?]安定した発酵をさせるため、特別に培養した酵母を使用した酒母として添加し、それ以外の菌を作用させない方法がとられる。さらに、ブドウ産地が高温で酸に乏しいブドウとなる場合は、酸を多く生じる酵母を用いる。その後、場合によっては糖(果糖ぶどう糖など)が添加される。この後、赤なら約20 - 30、白なら15 - 18℃に保ち、数日から数十日かけた「主発酵」を経て、圧搾によって液体成分を搾り出す。目的の発酵度合い(糖の残り具合)になったところで、温度を下げ発酵を停止させることもある。発酵の際の温度が20℃を越えると微香成分が失われるため、低温で長期間の発酵を行う場合もある。一緒に仕込んだ果皮や種が、アルコール発酵中に発生する二酸化炭素(炭酸ガス)により浮き上がり、好気的な微生物の作用を受けやすくなるため、ピジャージあるいは撹拌や循環により固形分が常に液体に浸った状態を維持する。

酵母による発酵の成果として十分に発酵した場合、糖度計による計測糖度の約2分の1の値のエタノールと二酸化炭素が生成される。目的の発酵度合いになったところで、液体と固形分を分離する。このとき、圧力をかけずに自然と流れ出た液体が「フリーランワイン」で、高級ワインの原料として使用される。一方、残った固形分を圧縮し搾った液体が「プレスワイン」である。「フリーラン」「プレス」は別々に二次発酵から瓶詰めを行うが、プレスワインはブレンド用のワイン原料として利用されるほか、一部ではフリーランと混合され、各々が特徴を持ったワインに仕上がる。

なお、酵母によるアルコール発酵で作り出せる酒のアルコール度数には限界が存在する。これは、エタノールがある一定濃度以上になってしまうと、酵母がそのエタノールによって死滅してしまうためである。この上限濃度は酵母の菌株によって異なっており、だいたい16 - 20%であると言われる。この上限濃度を超えると、酵母は自身の生産したエタノールにより死滅してしまう。したがって、シャンパンのように瓶内二次発酵を行いたい場合は、この濃度に達していない必要がある。なお、酒精強化ワインの場合は、ここで高濃度のエタノール(蒸留酒)を添加することによって、酵母が死滅するようにエタノールの濃度を上げてしまうため、酵母によって消費されなかったブドウ糖などが多く残るために、一般的に甘口に仕上がる。

二次発酵とマロラクティック発酵

搾り出された液体はステンレスやコンクリート製のタンク、木製(主にフレンチオーク、一部ではアメリカンオークも使用される)の樽に貯蔵される。木製の樽を利用するとその香りなどがワインに影響し、それが良い効果を与えるとされている。一方、ステンレス製のタンクではワインへの影響がないため品質管理がやりやすくなるという利点があり、ステンレス製タンクを利用する生産者が増えている。熟成期間は数十日から数年と様々である。底にたまった(おり)は随時回収する。アルコール発酵で生じた二酸化炭素を大気中に発散させず、液中に封じ込めたものはスパークリングワインとなる。

酸味の強いワインでは樽での貯蔵中に乳酸菌が投入されてマロラクティック発酵(Malolactic Fermentation, MLF)が行われる[29]。これを「熟成」とも呼ぶ。MLF発酵は酸味の主成分であるリンゴ酸乳酸と二酸化炭素へ分解する化学反応で、製品の酸度の減少と微量芳香成分の付与をする[30][31]。MLF発酵が行われる温度は15 - 18℃で、12℃以下では起こらない。多くの場合、MLF発酵が行われるのは冬期の寒冷期であることから、近代的な製法では乳酸菌スターターの添加と加温管理で行われる。さらに、ワインのpHは3.1 - 4.0の範囲になければならない。pH4.0を超えると失敗しやすくなる。ただし、最適なpHは使用される乳酸菌によって異なっている。また、マロラクティック発酵は赤ワインだけでなく白ワインでも行われる。

乳酸菌としては、 発酵の初期はホモ型(Lacobacillus paracasei , Lb. plantarum)、ヘテロ型(Leuconostoc mesenteroides)、発酵の後期になると Oenococcus oeni [32][33]などが作用をもたらす[34]。この乳酸菌が日本酒に作用すると腐造となる。

澱引き(おりびき)

発酵が終わったワインは、酵母や酒石(酒石酸水素カリウム)などの澱が沈降するため、セラミックフィルター、遠心分離濾過、静止などにより澱を分離する。また、熟成期間中のワインも澱が生じるため適宜澱引きを行う。発酵を停止させる方法は、静止のほか、冷却して酵母を沈殿させたり、50℃程度までの加熱を行い酵母を死滅させたりする方法が用いられる。なお、ここで取り除かれる酵母は、加工を行ったうえで健康食品として販売されることもある。また、蛋白質を除去して透明化させるため、卵白ベントナイトという粘土などを添加する方法はコラージ(collage)と呼ばれ、高級赤ワインでは広く行われている。

ブレンド

ワインを購入者が混ぜ合わせたり、カクテルの材料にしたりする以外に、製造工程の一環としてブレンドが行われることがある。フランスのシャンパーニュ地方におけるシャンパンづくりでは「アッサンブラージュ」と呼ばれる。購入者の希望に合わせてブレンドを受け付けるサービスもある[35]

瓶詰め

貯蔵後はガラス瓶などの容器に詰め、コルクなどで栓をして出荷される。コルクには天然のコルクと、合成素材のみ、もしくは天然コルクと合成素材を組み合わせた合成コルクがある。合成コルクは主に安価なワインに使用される。汚染などが問題になるコルクの代りにスクリューキャップ(: Screw cap)も用いられる。安いワインはバッグ・イン・ボックスと呼ばれる段ボール箱に入った特殊な薄い袋(容量は2リットルから4リットル程度)に詰めて売られることも多い。これは、輸送コストが安く、空気が入りにくいため開栓後ワインが酸化しにくいのが特長である。また、ペットボトルや紙パック、缶が容器として使用されることもある。

特殊な醸造技術

補糖と補酸
ワインの醸造の過程では補糖が行われる場合がある。補糖の目的は、果汁の糖度の不足を補うことで発酵により生産されるアルコール度数を高め腐敗を防ぐとともに、赤ワインでは溶出する色素を増加させ色を濃くすることにある。また、果汁の酸が少なくても腐敗することから、酸の不足を補うために補酸が行われる場合があるが、過剰な酸を含む場合は除酸も行われる。多くの国では、この2つの同時使用は認められておらず、またどちらかが法律で禁止されている場合もある。たとえば、フランスのボルドーワインブルゴーニュワインでは同時使用が禁止され、カリフォルニアワインオーストラリアワインでは補糖が禁止されている。
炭酸ガス浸漬法
果実味に富んだ鮮やかな色とタンニンの少ないワインの醸造に用いられる。炭酸ガス浸漬法は、果実を房のまま入れた容器を密閉し、炭酸ガスを充満させて行う特殊な発酵方法で、「マセラシオン・カルボニック」や「カーボニック・マセレーション」とも呼ばれる。葡萄は果粒中の酵素によりアルコール(1.5 - 2.5%)を生じ、数日後に搾汁し補糖をして酵母による発酵へと移る。短期間で作られ、毎年11月の第3木曜日が解禁となる「ボジョレー・ヌーヴォー」もこの製法で作られる。数十年といった長期保存には向かない。
果汁再添加
ワインの生産過程で、時に果汁再添加(果汁再配合)が行われることがある。これは発酵により失われた香りや甘味を補うためで、主としてアルコール度数の低い日常消費用の甘口ワインに用いられる。ドイツで多く見られる技法で、添加される果汁は多くの場合、搾汁した際に醸造用とは別に保存していたものを混合する。「ジュースリザーヴ」あるいは「ズュースレゼルヴ」ともいう。

芳香成分

香りはワインの品質を決定づける重要な要素であり、原料のブドウと醸造の各々の段階で加わり複雑なアロマを形成する[36]

特殊な製法のワイン

発泡ワイン
発泡ワインは、瓶内二次発酵などの製法により製造される発泡性のワインである。フランスのシャンパン、スペインのカバ、ドイツのゼクト、イタリアのランブルスコスプマンテなどがある。
酒精強化ワイン
酒精強化ワインは、発酵の途中でブランデーなどブドウを原料としたアルコールを添加して発酵を止めたもので、糖分の多く残ったワインができあがる。スペインのシェリーポルトガルポートワインマデイラなどが代表的。日本の酒税法では甘味果実酒にあたる。
貴腐ワイン
貴腐ワインは、ボトリティス・シネレアという貴腐菌がついたブドウから作ったワインのことを指す。貴腐菌により果皮に無数の穴が開き、そこから余分な水分が蒸発して糖度が上がり、非常に甘いワインとなる。また菌による代謝を受けるため組成成分が変化し、貴腐香と呼ばれる独特の香りを持つ。食後酒・デザートワインとして珍重される。フランスのソーテルヌハンガリートカイが特に有名である。オーストリアの「ノイジードラーゼー」や、ドイツの「ベーレンアウスレーゼ」「トロッケンベーレンアウスレーゼ」も貴腐ワインとなる。
アイスワイン
アイスワインは、樹上で凍ったブドウから生産されるワインである。水分は凍るが糖やその他の固体成分は凍らないため果汁が濃縮され、非常に甘いワインとなる。自然に濃縮された果汁を発酵させる点は貴腐ワインと同じだが、アイスワインはボトリティス・シネレアの影響は受けていないため貴腐香は持たない。
アイスワインの誕生はドイツのフランケン地方であった。ブドウ畑が予想していない寒波に襲われ、ブドウが凍ってしまった。諦めきれなかった農民たちは、凍ってしまったブドウでワインを造ったところ、とても糖度が高く美味しいワインとなっていた。この偶然からアイスワインが作られるようになった。当時は非常に貴重で高価だったため貴族の飲み物であった。
アイスワインとして最も有名なものはドイツのアイスヴァイン(Eiswein)である。カナダオーストリアでも造られている。世界最大のアイスワイン生産国は安定した寒さが得られるカナダであり、本家ドイツを上回る高い評価を受けている。また、ナイアガラ地方にはアイスワインの生産で世界最大のワイナリーが存在する。日本ではアイスワインを定義する法律がないためにフルーツワインをアイスワインと称して販売しても違法ではないが、カナダ、ドイツ、オーストリアにおいてはアイスワインと名乗るためには、原料、収穫方法、温度などの厳格な基準を満たす必要がある。ドイツでは、アイスヴァイン用ブドウでとれる果汁は一房からティースプーン1杯である。地球温暖化に伴いブドウが凍結しにくくなり、2019年ヴィンテージでは史上初めて収穫できなかった[37]
氷結ワイン
氷結ワインは、冷蔵庫を用いて人工的にブドウを凍らせ、アイスワインと同様に水分を除いて濃縮された果汁を醸造するワインである。非常に甘い濃厚なワインとなる。
麦わらワイン(干しぶどうワイン)
麦わらワインまたは干しぶどうワインとは、収穫後に麦のやそれで編んだの上で乾燥させて糖度を高めた葡萄から作られるワインのことを指す。貴腐ワインやアイスワインと同様に濃厚な甘口ワインとなるが、特徴的な干しぶどうあるいはアンズ紅茶と思わせる風味を持つ[38]。麦わらワインは、フランスでは「ヴァン・ド・パイユ」、イタリアでは「パシート」、オーストリアでは「シュトローヴァイン」などと呼ばれている。ドイツでは法改正の影響で現在では[いつ?]製造されていない。
にごりワイン
にごりワインとは、発酵途中の、甘さが残ったもろみを濾過をしない状態で瓶詰めしたもの。瓶中に残る果実繊維や酵母、酒石酸などによりアルコール感を低減させ、ワインが苦手でも美味しく楽しめる味わいが特徴である。特に秋の新酒の時期に楽しまれている。最近では[いつ?]ブドウに限らずブルーベリーなどブドウ以外のフルーツ原料を使うものも増えている。
シュール・リー
白ワインで澱引きをせずに熟成させたもの。フランスのロワール川河口地域に古くから伝わる方法。日本では、5か月以上の接触を必要とし、かつ6月30日までに瓶詰めされたものと規定している[39]。6月30日という期日は夏期の高温による品質劣化を防ぐために定められている。
フレーバードワイン
フレーバードワインは、普通のワインにブドウ以外の果実、果汁、香草薬草などを加え、香りをつけたものである。カクテルマティーニの材料としても使用されるベルモットや、サングリアなどが知られる。
ビオ・ワイン
ビオ・ワインという場合、有機農法で育てられたブドウを原料とし、酸化防止剤を無添加、もしくは最小限の使用に抑えたビオロジック・ワインをさす。またその一部のバイオダイナミック農法で育てられたブドウを原料としたビオディナミ・ワインを指す場合もある。さらに野生酵母を用い、補糖や補酸を行わない、無濾過、無清澄、無着色などの様々な条件を満たして少量生産される。



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