神・神殺し関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:36 UTC 版)
カンピオーネ(Campione) 「まつろわぬ神」を殺してその力(権能と称される)を簒奪した者に与えられる称号。 「カンピオーネ」とはイタリア語でチャンピオン、すなわち勝者を意味する。絶大な力を持つ彼らの第一の呼称が決して「強者」ではなく「勝者」であることが、この物語でのカンピオーネの本質にして正しい理解のあり方である。この名称は、19世紀半ばに賢人議会に所属していたイタリア人魔術師のアルベルト・リガノが、『魔王』と題した彼らについての論文を書いたことに由来する(故に19世紀以前には使われていない)。 その偉業から「神殺し」とも呼称され、あらゆる災厄とわずかな希望を詰め込んだ『パンドラの箱』の中からパンドラとエピメテウスが見つけ出したとされる転生の秘技を使うことから「エピメテウスの落とし子」「愚者の申し子」、人知を越えた力を持つことから様々な魔神の名を冠されて「ラークシャサ」「堕天使」「デイモン」「混沌王(アナーク)」、日本や中国などの漢字文化圏では「魔王」「羅刹王」などとも呼ばれる。魔術師たちの頂点に立つ存在であることからヨーロッパでは一時期「魔術師の王(ロード・オブ・メイガス)」とも呼ばれていたが、魔術師の上位存在というわけではなく、出自は様々で時にはヴォバン、アイーシャ、護堂のように魔術とは無縁の世界の人間から誕生することもある。 神と競うことすら不可能な転生前の人間の身ながら、生物としての実力と桁外れの強運によって自力で「神殺し」を成した埒外の存在。エリカによれば只の人間が神を殺すのは「厩で生まれた大工の息子が救世主になる」レベルで奇跡が重ならなければならないらしく、まぐれ程度では絶対に達成できないとのこと。 神を殺した瞬間、神具「簒奪の円環」を用いたパンドラの儀式により転生し、瀕死の重傷や四肢欠損などからも回復する。パンドラから生命の息吹を吹き込まれることで持てる野性が最大限に高まり、人間離れした生命力と回復力、さらに梟並みの暗視力、人間離れした直感力などの肉体的な能力を獲得する。加えて並みの魔術師の数百倍とされるほどのヒトを超えた呪力を得たことで、心身に直接の影響を与える魔術や呪術を一切受け付けない体質が備わり、魔術による直接攻撃は自動で無効化、呪力を高めるだけで神の権能さえも防いでしまう。例外は経口摂取などで体内に直接呪術を送り込むことのみであり、魔術的な治療行為や知識の教授なども口移しで行う必要がある。また、霊的なステージが高くなって優れた言語習得能力を会得する。これらの特性から並の人間や魔術師では抗うこともできないとされ、身体能力は基本的に人間時のままだが、闘争心に正比例して勘や反射神経といった集中力とコンディションが最良に近づくため、一度戦闘に入れば潜在能力が完全に発揮される。その性質は、手負いの方が恐ろしく戦う毎に強くなるなど魔獣に近い。『殺したぐらいでは死なない』とも形容される異常なしぶとさ(生き汚さ)から、彼らを知る者たちは殺される姿が想像できないと評し、大威力であっても遠距離から狙撃するような大味な攻撃では倒しきれないことが本能的に分かっているため戦いでこのような力を使うことはほとんどない。『力で無法を天に通じさせる生き物』とも評されており、少々つじつまが合わない程度の状況なら荒ぶる底力で強引にひっくり返してしまう。 カンピオーネとなってもまつろわぬ神の方が基本的に実力は上だが、前述のようにそもそも転生前の時点で実力差に関係なく勝利できる規格外の戦士であることに加え、神と対峙すると闘争心が湧く体質になるため、互いに討滅し合う関係が十分に成立する。カンピオーネ同士の場合はキャリアの長さが地力の違いという形で現れるが、前述の性質から若手が年長者を撃破する例も少なくない。なお、相性の良し悪しや相手が自分より強いことに頓着するような人間性はないため、権能の過多を気にすることはあまりない。ただし、そばにある物は何でも利用する傾向もあるので、持っている力はいくらでもいいように使い、権能を増やす機会があれば基本的に逃さない。 カンピオーネとしての体質や権能は遺伝しないものの、生殖能力は転生前と同じように保持している。その血筋は魔術の世界で王族同然の重みを持つため、魔術組織の長・創設者になることもあり、ブランデッリ家もその一つである。ただ、カンピオーネと人間の“異種族間交配”で子供ができる確率はきわめて低く、実際、ブランデッリ家の祖先も血を分けた嫡子は1人しか誕生せず、十数人もの女性を集めていたウルディンにも子供の気配はなかった。 100歳を超えても生存可能と極めて長命で、青年期に達した後は老化が非常に遅くなり、さらに至純の境地に達した魔術師の力を持つ者ならいつまでも若いままの姿を保つ。寿命は一応あるが、パンドラやアテナ曰く「天寿を全うした者は少なく、戦場で野垂れ死にが多い」とのこと。 ユニバース235において人類側が求めるカンピオーネの義務は、「まつろわぬ神が現れた場合、人類代表として戦うこと」のみ。その義務さえ果たせば何をしても許されるという暗黙の了解がある。逆に言えば、我欲のために人類の被害を顧みず神を呼び寄せて自身がその神を倒すという、ある種本末転倒なことをしても許される。その横暴さなどからカンピオーネに挑む者は歴史上多数存在し、理論上では人間でも殺すことは可能だが「利用することは可能でも暗殺は(異常な勘の良さで気づかれてしまうため)不可能」「理屈が通用しない生物」とその規格外さが言及されている。大手の魔術組織は歴史で逸話などからその理不尽さを学び、無闇に敵対しないようにきつく言い含めている。 カンピオーネの本質は非常に我が強く自己中心的であり、派手好きのお調子者にして激情家、良くも悪くも周囲を狂わせるなどといった共通点がいくつかある。鷹化曰く、その強引さは「鶏の首を刎ねるのに、牛刀どころかミサイルまで使いかねない」というレベル。パンドラによると、神殺しになるような人間はどんな出自でも「全員自分なりの『勝ち方』をわきまえている」らしく、陸鷹化も「神様だろうがどんな敵でも『勝ち方』を見つけて勝利する、キャリアや実力の差なんて関係ない化物」と表現している。また精神性は勝負師(ギャンブラー)に近く、当代のカンピオーネに関してはほとんどの者で異常に賭け事が強いという共通点を持つ。カンピオーネ同士で互いを同朋・同族などと呼び合うが、我が強すぎるために協力することは滅多になく、その関係はヴォバン曰く「宿敵となるか、相互不干渉の盟約締結や無視が基本」とのこと。ただし、護堂は例外的に作中登場した女性のカンピオーネとは良好な関係を築いている。非戦闘時には同族同士や優れた魔術師であっても神殺しか否かを見分けるのが難しいが、観相術の持ち主から見ると常人の尺度で言う幸運や凶運を超越した「覇者の相」とでも言うべき特異な人相をしているらしい。 カンピオーネに転生した者が再び神を殺した時も同様の儀式により更なる権能を簒奪できるが、カンピオーネの達成条件と同様に「神殺しの母パンドラを満足させうる勝利」を得なければならず、正々堂々の一騎討ちでなくとも相応の戦いぶりを見せる必要がある。また、ラーマの権能によりパンドラの力が及ばない状況下だったのか、斉天大聖やランスロットを倒しても権能は増えなかった。 誕生条件の厳しさから、儀式の開発者であるパンドラやプロメテウスですら当初は内心で徒労に終わると考えていた程で、それ故に全くいない時代もざらにあったらしく、1世紀に1人現れれば僥倖という程度だが、極稀に複数の神殺しが一つの時代に集中する「当たり年」が訪れることがある。現代や紀元5世紀後半頃など歴史上幾度かその時期があったことが確認されており、かつては王の下に民が集い覇権を争う末世のような状態だったと伝えられる。このような事態は《運命》にとって最も憂慮すべきイレギュラーであるため、それに対処させるべく「最強の《鋼》」と称される英雄神の『最後の王』ラーマが顕現し、魔王を殲滅するための戦いが発生する。 作中で存在が確認されているのは現代において護堂を含めて7名で、このうち100年以上前に神殺しを為した年長組3名を「旧世代」、近年神殺しとなった年少組4名を「新世代」と呼んで区別することもある。なお、約300年前には「智慧の王」と呼ばれる老カンピオーネがヴォバンと何度も戦ったと言われている。1つの時代に7人ものカンピオーネが集ったことで『最後の王』ラーマがおよそ1000年ぶりに復活するという事態になり、《盟約の大法》を封じるために神殺しを減らす策として作中2月に「魔王内戦」が勃発。東京都やアストラル界を舞台とする激戦の末、妖精王たちが細工したアイーシャの《妖精郷の通廊》により護堂以外の6名が「異なる時間軸の並行世界」へと追放される。2年後までにスミスとドニが救出され元の世界に帰還しているが、アレクや羅濠は自力で習得した次元間移動能力で旅を続けており、ヴォバンやアイーシャも別の世界に災厄をもたらしている。 作中世界とは別の並行世界にも神を殺した「同族」が存在している場合があり、世界ごとにいろいろな呼ばれ方があるが《神殺し》が最も一般的だとされる。なお、神話世界ヒューペルボレアでは、ユニバース235出身者の影響で「カンピオーネ」の呼称が流行している。ユニバース235のように、まつろわぬ神に対抗できる超人だからと世界の守護者として崇め奉るユニバースも存在するが、必ず暴走して世界を崩壊させるようになるので、大きなあやまちだと断じられる。 孤高となってもおかしくないはずだが、奇妙なほどに同じ『人』を惹きつけることがあり、しばしば《介添人》が同行し、さまざまに支援する。これには一族から神殺しの魔王を誕生させ、草薙護堂や六波羅蓮の《介添人》となったブランデッリ家の系譜をはじめ、羅翠蓮の直弟子となった陸鷹化、サルバトーレ・ドニに仕えたアンドレア・リベラ、何代にもわたってデヤンスタール・ヴォバン侯爵に仕えたクラニチャール一族などが該当する。 まつろわぬ神 人の紡いだ神話に背いて自侭に流離い、その先々で人々に災いをもたらす神々。神そのものだけでなく、神話において神と同義とされる神代の王や女王、伝承で語られる偉大な英雄に加え、天使に魔獣といった存在が顕現した場合も同様の呼称が使われる。 天災などに「神」を感じた人間が、畏敬の念からそれに名前と神話を与えたものは「真なる神」と呼ばれる。本来の「真なる神」であれば己の神話を逸脱する振る舞いをすることはないが、神話そのものともいえる『不死の領域』から何かのきっかけで神霊となり地上に出でて受肉することで顕現を果たすと、地上を彷徨ううちにまつろわぬ神としての性に飲み込まれ、次第に神話の制約が弱かった原始の性質に近づき性格が大きく歪んでいく。 決して朽ちない肉体を持ち、一部の例外を除き化学兵器を含めた地上の武器や魔術も通じず、「蛇」や「太陽」に由来する神格は不死の能力を持つこともある。闘いが生業の神であればデフォルトで人類最高峰以上の武技を持ち、魔術の神ならば周囲一帯を変化させるような大魔術を容易に行使する。さらには『権能』という神を神たらしめる聖なる力を持つ。これらの点からカンピオーネ以外にはまず抵抗すらできず、少し賢い人間なら神に喧嘩を売って弑逆するなど思いもしないが、とびきりの愚者が運だけでは決して成しえない様々な意味での実力と奇跡によって神々を殺せた場合、その人間はカンピオーネとなる。カンピオーネとは双方本能的に敵として捉えており基本的に殺し合うが、どちらも生命力自体が不死に近いので勝敗はハッキリつくことの方が稀。場合によっては神同士でも殺し合い、周りの被害を全く考えないため、どちらにしろ人類の災いとなる。 力の強大さは自我・妄執・アイデンティティーの強さに比例するという特性があり、その神の権威や知名度と強さは無関係である。ただし能力的な相性の問題は存在し、中には対カンピオーネ用の能力を持つ者もいる。自我が強いためにプライドも高い傾向がある。なお、神々のキャラクターを規定するのが人間たちが語り継いできた『神話』である以上、人類全体の文化が未成熟な古代の環境では神々の能力もシンプルで素朴なものになる。 意図的に大災害を招く禍つ神もいるが、存在するだけで無意識に超自然現象を引き起こし、世界に悪影響を与える神もいる。(一部のカンピオーネも同様だが)人類などは彼らにとって気に入れば加護などを与えるものの、ランスロット曰く「人間と蟻のようにその気になれば視界に入るが真に理解はできない」という関係で、蟻(人間)一匹を意識して力を揮うのはむしろ恥とする程の格差があるため、普段は視界にも入れていない。基本的に悪辣ではないのだが、卑小な人間を思いやる細やかさは皆無なので、多くの場合、無意識に残酷な振る舞いをする。 現世で死した神は、その神格そのものが『生と不死の境界』を経由して『不死の領域』へと戻る。逆に言えば、死なない限り神話の中に戻ることはできないので、長く地上をさまよったまつろわぬ神は現世での暮らしを倦み、眠りにつくか、『生と不死の領域』で隠居するかのどちらかを選ぶことが多い。死亡した神の肉体は基本的に砂となって崩れ去り石となって砕け散るが、稀に遺体の一部が「竜骨」として残される。なお、「殺す」とは言うものの神々は不滅であり、そのベースが神話である以上一度殺した神が再び顕現する可能性はゼロではないらしい。ただし、信仰心の低下や肉体の消滅などから神祖や神獣と同位の存在である神霊に零落することがある。また、カンピオーネ以外の人類にとっては誤差でしかないためあまり問題にされることはないが、顕現後の時間経過や宿敵の死などでモチベーションが低下することで神としての力量も弱くなるとされる。死した神がそのまま復活することは原則的にありえないが、『最後の王』ラーマの権能「鏃の円盤」の効果やカンピオーネの権能として条件付きで存在することができる場合もある。 まつろわぬ神の出現には『原則』が存在し、神の降臨の際には、その地と神には何らかの縁があり、降臨時の地上の神話をベースに肉体と精神が形成されてそれに沿った力を持つ。そのため、同じ神でも降臨した時代の伝承内容が変わることで性質が変わり、既に失われた神話の神が長い時間まつろわぬ神として過ごすことによって現代に現れることもある。作中ではナポリで竜が地上に現れた結果、竜蛇を退治するペルセウスがローマ神話の神として降臨した。 また、儀式によってまつろわぬ神を招来する方法も存在し、それには「きわめて巫力の高い魔女や巫女」、「神の降臨を狂気に近い強さで願う祭司」、「呼び寄せる神に血肉を与える触媒となる神話」の3つの《鍵》が必要となる。実際に、本編から5年半ほど前にアーサー王伝説を触媒としてグィネヴィアの手でまつろわぬアーサーが、4年前にニーベルンゲンの歌を触媒としてヴォバン侯爵の手でまつろわぬジークフリートが招来された。 地母神(じぼしん) 大地の恵みを司る女神たちの総称。大地母神とも呼ばれる。 春に芽吹いた命を冬には刈り取ることから、「生」のみならず「死」をも司るとされ、転じて「冬の女神」「冥府の支配者」としての面を持つものも多い。「毎年毎年死んでは繰り返し生まれる」ことから不死の属性を持ち、脱皮を繰り返すことから古来不死とみなされた『蛇(あるいは竜)』をその象徴とし、豊穣の大地の象徴として『牛』、『羊』、『豚』なども聖獣とする。海沿いなど、水と関係の深い地方では『水の女神』としての面を持つものもある。「殺害された神の体を大地に埋めると農作物がたっぷりと実り、人々は食料を得る」というエピソードを持つことも多い。大地にまつわる能力として重力を操作したり、死神の力で病や呪詛、冥界の冷気を呼び、冥界と戦争との関連から闘神としての性質を獲得した者もいる。冷気の攻撃など冥府に由来する力に対しては耐性を持つが、《鋼》にまつわる能力は天敵であり、太陽の力も弱点とする。 狩猟や採取を中心とする自給自足の文明黎明期にあっては豊穣を司る「神々の女王」としての高い地位にあったが、時代が下るに連れて武力で他を従える文明の変化とともにその地位は次第に落剥、最終的にその多くは後述する鋼の英雄によって竜蛇として討たれるという伝承が残る。更にこうした英雄譚において、竜討伐で『英雄の介添人』として登場することが多い乙女も、鋼の英雄に屈した地母神の零落した姿である。 地母神に連なる女神たちには、少年ないし青年のパートナーをともなうケースが多い。古くは『地母神と息子』という関係で、時代を経て姉弟あるいは恋人や配偶者として描かれることもある。さらに時代が下ると、鋼を鍛えるのもまた大地の恵みであることから、『魔力を持つ女性と、彼女に庇護される英雄』という形へ変化して、自らを討つ《鋼の軍神》を養育するようにもなった。神祖(しんそ) かつて神の座から追われた大地母神の一部が人の姿をとったもので、「大地の娘」「疑似女神」とでも言うべき存在。神祖の多くは『最後の王』ラーマによって命を吸い上げられて生まれているが、同じ原理で聖杯に命を捧げて神祖となったグィネヴィアなども存在する。人を超えた異能を持ち、強力な者では半神に匹敵すると言われ、不老不滅であるためたとえ殺されても数百年の時を経て転生し復活を果たす。原則的に前世の記憶は転生の度に失われるが、何らかのきっかけで記憶を取り戻すこともある。 本来なら神やカンピオーネには及ばないが、残りの寿命を捨てて「竜蛇の封印を解く」ことにより、まつろわぬ地母神としての神格を取り戻すという切り札を持つ。しかし元の姿に戻ることは出来ず、仮に延命処置を施しても長くは生きられないため最終手段と言える。神性を取り戻した状態で人間に殺害された場合にその人間がカンピオーネになるのか、あるいはカンピオーネに殺された場合にそのカンピオーネに新たな権能が増えるのかについては不明。 また、神祖達は『最後の王』に仕える巫女であり、主が再臨を果たしたときは麾下に馳せ参じて献身する者でもあるとされる。人間が神にダメージを与えうる魔術である『聖なる殲滅の特権』は、神祖が人間に伝えたものとアレクは推測している。 神祖達の末裔は、現代において「魔女」や「媛巫女」と呼ばれる特殊な異能を遺伝的に受け継ぐ存在として魔術界に血統を残している。その血が色濃く現れた先祖返りは高水準の霊力を備える傾向にあるが、その代償で肉体的に虚弱となる。 竜 東洋と西洋の双方で存在が語られる、大地と水の神霊にして大地母神の魔物としての相。古代の中央アジア(シュメール)にルーツを持つ、様々な生物の部分を組み合わせた合生成物であり、古くは『角の生えた馬』のような姿だったが、時代が下ると地母神を象徴する『蛇』と融合したことで、鱗や長い胴体を持って手足が短くなり、さらに西洋では翼を生やした姿、東洋では極端に四肢が短縮した姿で定着した。その影響か日本や中国でも、駿馬を意味する『竜馬』などの言葉の通り、馬と竜は互換可能なほど関わりの深いものとして扱われることがある。 前述の通り、鋼の英雄とは共生関係にある。 作中ではドニが神具『へライオン』を破壊した際にあふれた呪力から竜の神獣が生まれたほか、ウルディンも肉食恐竜の神獣を召喚する権能《竜使い》を持つ。また、神祖たちが竜蛇の封印を解いて前世の力を行使する場合も竜へと変身し、ヴォバンもドラゴンに変身する権能《冥界の黒き竜》を簒奪している。 鋼の軍神 軍神・武神・戦神・闘神の中でも、生ける剣として外敵をまつろわす性質を持つ神々の総称。不死の属性を持つ、竜と蛇の征服者。略称で《鋼》とも呼ばれる。存在自体が「剣」の暗喩であり、神話の上で、鉄の素となる「石」(鉱石)、鉱石を溶かす「火」、火を強める「風」、焼けた鉱石を冷やす「水」との共生関係にある。その発祥と伝播には軍神アーレスを信仰していた遊牧騎馬民族スキタイが深く関わっているとされる。「水辺に棲む怪物(大蛇、竜など)を英雄が倒し、人身御供として捧げられた乙女を救い出して妻とする」という「ペルセウス・アンドロメダ型神話」と呼ばれる逸話を持つことが多く、大地母神が落剥した姿である竜蛇を斃し、武力で国を治めて「世界を創造する」という役割を担う。その性質からほとんどが男神で、「鋼の女神」はアーレスの娘であるアマゾネスの女王などごく限られた例外のみ。 『大地を征する者』として、斃した竜蛇からは力や武具を得、乙女(ほかならぬ自らが倒した地母神の零落した姿)を恋人や支援者などとする伝承が多く伝わることから、竜殺しの権能や大地から搾取する(大地を傷つける)権能を有することが多く、竜蛇の存在を感じとると戦うための力が体にみなぎってくる。雷の申し子でもあり、雷撃を操る権能を持つ者も少なくない。また、竜蛇が持っていた不死の神性も、多くは「戦場における不死」という属性として取り込んでおり、作中では「鋼の肉体」(ジークフリート、斉天大聖、ハヌマーン)や「眷属の復活」(ランスロット、テュール、ラーマ)、実体を解く(ペルセウス→光、ランスロット→霧、ハヌマーン→風)などさまざまな能力が登場した。火山・鉱山は剣の神々にとって産湯に相当するため「火山の申し子」とも言え、火山の霊気を吸収して力を高められるが、鋼をも溶かす超高熱は弱点ともなるため、溶岩並みの高温であれば単なる自然現象によっても彼らに影響を与えることが可能。《英雄》としての支配の神力で、人間を庇護する代わりに下僕とする呪縛の言霊を操る者もいる。 より鋼の要素に忠実な伝承をもつ神格は「源流に近い」と称されるのに対し、さまざまな神格を取り込んで職掌を広げた「混淆神(ハイブリッド)」もいる。基本的に好戦的で血の気の多い性格をしており、混淆神は複雑な神格と性格を有するが、最源流の《鋼》の系譜に連なる純血ほど本分である戦いのことにしか興味を持たず、華々しく稲妻のように峻烈な戦い方をする傾向があり、暗殺者ような奇襲もほぼできない。魔術など多彩な特殊能力を操る混淆神と比べれば、より源流に近い神格の持つ権能はシンプルにはなるが、その分、一撃一撃の持つ威力がより強力であるため、対峙する神格やカンピオーネにとって(相性の要素はあれど)どちらが上といった問題ではない。 神でありながら地上へ生誕することから、人でありながら神と同列の存在となった神殺したちとは、特に激しく戦ってきた宿敵同士である。 最後の王 神殺しの魔王が地上にはびこるとき、『運命の担い手』とも呼ばれる運命神より救世の神刀と《盟約の大法》を授かり、それを全て打ち倒す《魔王殲滅の勇者》に与えられる異名であり、『この世の最後に顕れる王』の略称。魔王殲滅の勇者となりうるふさわしい軍神・神王は幾柱か存在し、多くがインド・ヨーロッパ語族の神話に登場する。ユニバース235では古代インドの英雄王ラーマが、またユニバース492では古代ペルシアの神王ミスラがその役割を担っていた。 『ロード・オブ・レルムズ』では、インド・ヨーロッパ祖語の原郷である最古の神話世界ヒューペルボレアで地球出身者が引き起こした急速な文明化によって後世の神話までが歪み、勇者降臨のシステムがうまく機能しなくなっている。そのため、救世の勇者として覚醒した雪希乃に与えられる力も弱まっているが、ステラの勘では『反運命の気運』が弱まるごとに彼女を段階的に強化していくというのが、今回の《運命》の方針である模様。 トリックスター 人や神々を欺くイタズラ者の神の総称。そのイタズラで世界に大きな混乱をもたらす神界の鼻つまみ者だが、それが文明の発展につながることもあり、『世界に新たな文化を広める英雄』でもあることから、文化英雄と呼ばれることもある。また神界・人界・冥界の垣根にとらわれず、神出鬼没に大移動を行うことから旅人や行商人の守護者とされることもあり、強制的な時間旅行を引き起こすのはほとんどがこの性質を持つ神々であるとされる。太陽をはじめ、様々なものを隠したり盗みだすという逸話が多く残るため、偸盗の権能を有している。中にはかなり残虐で血なまぐさい逸話を有する神格も存在している。どの神話体系でも少数派であるため、総数はそう多くはない。 神話世界ヒューペルボレアでは、未来の知識を伝えた地球出身者がこれと同じ役割を果たしている。 従属神 縁のある別の神に従う神格。関係性によっては同盟神とも呼ばれる。まつろわぬ神の強さがアイデンティティーの強さに比例するという原則により、自我の弱い従属神では必然的に弱体化してしまうため、窮地での打開力に欠け、単体でカンピオーネと戦った場合ほぼ勝ち目はない。しかし、従属神は主の庇護を、主は従属神の支援を受けて強大な力を得るため侮れない。 なお、召喚するためには莫大な神力を必要とし、作中では「古き盟約の大法」を使った斉天大聖とラーマ、自らの命を代償とする呪縛を用いたキルケーの3柱しか成功していない。「零れ落ちる分だけでカンピオーネ数十人分」とされる『魔導の聖杯』に蓄えた呪力を使うことで『神の贋作』を作れるが、自我が弱いために従属神以下の強さにとどまってしまう。 神裔(しんえい) ユニバース966における神々の子孫にあたる人間の呼称。まつろわぬ神や神殺しの魔王には及ばないが、強力な霊能を有している。その責務は運命の定めた『世界の行く末』をかき乱すほどのイレギュラーが発生したとき、それを速やかに排除し、修正すること。容貌はとびきり美しいか、とびきり個性的かのどちらかであることが多い。老化がいちじるしく遅いうえに異様な長命の者も珍しくない。 さらに、ごくごく稀に祖神と同じ魂魄を受け継ぐ生まれ変わりが誕生することがあり、彼らは神殺しの半分ほどに達する桁違いの力を持つ。ユニバース966では『魔王殲滅の勇者』の資質を持つタケミカヅチの転生体である物部雪希乃が生まれている。また、並行世界でも同様の存在が生まれることがあり、ユニバース492生まれの鳥羽梨於奈は霊鳥・八咫烏の転生体である。 日本国内で同族は700名ほど、地球全体で見ると8000人ほどで、世界人口の0.0001%にすぎない。聖なる血脈を絶やさぬよう、同じような血脈の人間同士で婚姻し、次代に伝えていくことも義務の一つ。 歪み 神のなりそこない。自然界に生まれた“荒ぶる精霊”たちは、たとえ今は小さくても、放置すれば、いずれ世界全体をおびやかす歪みになり、人間界に伝わる神話と同化してまつろわぬ神にもなりかねず、絶対運命の秩序を狂わせる原因となるので、バケモノが生まれる前に《神裔》が狩っている。 神獣 神やカンピオーネに仕える生物の姿をした眷属のこと。外見は神々と同じく、とびきり美しいか、とびきり異形かのどちらかであることが多いとされる。人間よりはるかに巨大なのも特徴で、全長7メートルでも小型の部類とされる。その力は人間からすれば非常に強力で、ものにもよるが、1対1なら伝説と謳われるほどの実力者が死力を尽くしてようやく太刀打ちできるかどうかというほどの力を持つため、彼らに対抗するためには「聖なる殲滅者の特権」「神がかり」「御霊鎮め」といった各分野で最高峰の術を使用する必要がある。最高峰の神祖なら生み出して使役することは可能だが、魔導の聖杯と一心同体だったパラス・アテナですら維持できるのは2、3日が限界だった。 あくまで眷属でしかないので、単独では神やカンピオーネに対抗できず、場合によっては瞬殺される。しかし、神やカンピオーネに直接操られたり力を注がれることで単独の時とは桁違いの力を発揮できるため、その脅威度は一気に跳ね上がる。 顕身 権能を行使する際に、それに適した形態をとること。カンピオーネ自身が狼や雷などへと姿を変える、神獣や使い魔を召喚するといったことを指す。 神速 作中では電光並の速さで動ける能力(権能)のこと。厳密には物理的なスピードを上昇させることなく、時間そのものを歪め「移動時間を短縮する」権能。最初から最高速度で動けるタイプや徐々に加速するタイプがあり、常人では捉えることができず精々何かが動いているという程度しか感知できない。秒速150キロメートルで降り注ぐ雷霆すらも、体感では遠くから投げられた石と同程度のスピード感まで減速して見える。通常の人間が2次元的な移動しか出来ないのに対し、驚異的な身軽さを得ることで3次元的に動けるようになり、さらに習熟すると時間のコントロール(落下速度の減速による空中浮遊など)により4次元的な運動が可能となる。 移動能力としては非常に優秀であるが、神速状態では細かい制御がきかないため、高速での突進ならばともかく肉弾戦には向かず、速度自体が上昇しているわけではないので空気抵抗の影響も受けないが衝撃波なども発生せず、神速で運んだ相手を放り出した程度ではそれほどダメージを与えられないなど、攻撃性はそれほど高くない。そのため、攻撃に利用する場合は、武器を使う、高所から地面へ叩きつけるなどの工夫が必要となる。加えて、カンピオーネが権能として獲得した場合は、人の身には余る力であるためか心身に様々な弊害が生じる。 発動中はほぼ無敵となるが、相手も神速を使う、相手が神速を見切る腕利き、神速を封じる力を持つという場合には優位に立てないほか、光速に達することはできないため光による攻撃は回避しきれない場合がある。神速を捉えるには特殊な素質を持つ者や修行を修めた者が得る心眼の極意たる「観自在」の境地に至る必要があり、最小・最短距離の打ち込みを行える武術などでなければまず当たらないが、裏を返せば心眼を持つ武神や人類最高峰の武術家を相手にした場合、「ただ速く動くだけ」の技量ではたやすくカウンターを当ててくるため逃走以外には役に立たない。しかし、神速の扱いに習熟して「遅さ」の制御まで可能となり、その極致たる「緩急自在」の域に達したならば武術の達人にとっても脅威となる。 邪眼 視界に映ったものを他の物質に変化させる権能のこと。作中には対象を石に変えるアテナの『蛇の邪眼』と生物を塩に変えるヴォバンの《ソドムの瞳》が登場している。対象物は権能の種類によって異なるが、あくまで「ふつうの生き物(や物質)」に対して効果を発揮する能力なので魔術耐性の高いまつろわぬ神やカンピオーネにはほぼ通用せず、彼らの戦いにおいては一時的に動きを止めて一瞬の攻防の役に立てる程度にしか使えない。 鋼鉄の肉体 《鋼》の不死性を体現する権能の中でも代表的なものの一つ。青銅、鋼鉄の硬さ、堅牢さを現した権能で、肉体に鋼鉄以上の硬度を持たせることで身を守る。中国では「鉄頭銅身」とも言う。その特性上攻撃にも転用でき、至近距離の殴り合いで最も効果的に機能する。《鋼》の中でも、炉で鍛えた剣を水で冷やす作業にちなんで「出生時に水につかる」伝承を持つ英雄で多く発現し、有名な所ではジークフリート・斉天大聖・アキレウスなどが所有している。ほぼ全ての攻撃を無効化できるが鋼の弱点である超高熱への防御は完璧ではなく、衝撃は防げないため吹き飛ばされてしまうことなどはある。 時間旅行 時の門を開いて対象を過去へさかのぼらせる権能。時間や旅を司る神々が保有する。時の旅路はあやふやなので、同じ時代をめざすことはできても、神々の力をもってしても数ヶ月のずれが生じるのは致し方ない。 竜骨 地上に顕現した「まつろわぬ神」が肉体を失うとき、まれに残される肉や骨、骸の一部。「竜骨」とは中華の道士たちによる命名で、北米では「天使の骸」と呼ばれるほか「聖遺物」といった別名もある。骸であっても神の一部なので神獣よりもはるかに格上の神格を持ち、魔術師たちに強力すぎる力をあたえることから崇拝の対象となる。ただし非常に希少で、竜骨を採取するのは神を探し出すより難しいと言われている。 作中では中国の創造神・女媧が四川省に残した乳白色の小石と、『最後の王』の救世の神刀が登場する。また、異世界でも「エフェソスのマリア」の竜骨《バレンシアの聖杯》が確認されている。 生と不死の境界 現世と『不死の領域』の境目に存在し、「妖精王」と呼ばれる幾柱かの神々が支配する異世界。「生と不死の境界」とは神々が主に使う名称で、欧州では「アストラル界」や「妖精境」、中国では「幽冥界」もしくは「幽界」、ギリシアでは「イデアの世界」、ペルシアでは「霊的世界(メーノーグ)」、日本では「幽世(かくりよ)」、「根の国」、「黄泉平坂(よもつひらさか)」、それ以外の地域では「霊界」、「星幽界」とも言われる。前述の名称通り冥界に極めて近しいと言える、端的に表現するなら「あの世の直前」「三途の川の手前」のような場所。不死の領域にいる「真なる神」は、この場所で神話による肉体が形作られ、それから現世に出現してまつろわぬ神となる。妖精の他にも、隠居した元『まつろわぬ神』や神祖、人の身を超えて不死に至った大魔術師や聖人などが住んでいることから、「命なき死にぞこないどもがたむろする領域」とも言われる。パンドラがカンピオーネたちを呼んで話をするのもこの場所である。 本来なら接点のない独立した不連続な異空間や結界が蜘蛛の巣のように寄り集まってできた、無数の階層で構成された世界であり、それぞれの空間は同じ水平線上には存在しない。護堂はその構造をマンションに例え、移動手段である転移を扉や階段に相当するものとしている。まつろわぬ神が隠居場所に選ぶのは、どれだけ天災を引き起こしても自分が居る『部屋』以外には影響が生じないためである。地上で致命傷を負った神が死の運命を曖昧にするためここへ逃げ込む場合もあるが、神としての矜持にかかわる問題なのでこの選択をする者はかなり稀。隠居した神や妖精は「はぐれ者」のような存在で、《運命の担い手》やラーマ王子とは対立関係にある。 宇宙開闢から未来にいたるあらゆる時代の記憶が存在しており、この世界の知識を天啓として受けることで霊視を得ることができる。そのため、この場所では比較的自由に霊視を呼び込むことが可能。 本当なら精神や魂だけの存在にならなければ訪問できないが、優れた魔術師や神殺しであれば生身のままでも行くことができる。肉体より精神、物体より霊体の方が優位な世界なので、移動するときには足ではなく瞬間移動を使うのが基本。魔術の素養を持つ者ならイメージしただけで転移が可能となるが、逆に素養の足りない者が迷い込んだ場合は転移に失敗して迷子になってしまう。魔術師が足を踏み込むためには、貴重な霊薬の服用と『世界移動(ブレーンウォーキング)』という高度な魔術の使用が不可欠となる。また、人の住むべき場所ではないため長居しすぎると人としての肉体を失う危険性がある。 妖精王 アストラル界に存在する支配者層の総称。『かつてはまつろわぬ神であったが地上を去ったもの』、『神とまでは行かないがかなり上位の霊性を備えた半神』、『生身の肉体を捨てて不死となった元人間』などが稀に至ることがある。異界のスペシャリストであり、彼らは自身のプライベートスペースを「禁足地」とし、直接転移できない結界空間としている。 現在在位中の妖精王は、盟主たる魔神王アル・シャイターンを筆頭に、神殺しジョン・プルートー・スミス、美貌の王女サロメ、北の暴風王ボレアス、黒小人の鍛冶王アルベリヒ、砂嵐の王シムーン、崑崙山に住む人虎大仙、聖木ガジュマルの森を治める聖なる雨の王、笑い声だけで死を招く亡霊王、花食べる鬼女の息子たちシュエピンジとシェピンゲ、妖婆キキーモラの12名。また、かつての妖精王としてスミスに討たれたオベーロン、アイーシャに斃された常若の国の妖精女王ニアヴが挙げられている。なお、アストラル界には妖精王以外にも、彼らに匹敵するほどの神力をそなえた上位妖精や精霊なども存在している。 プルタルコスの館 アストラル界でスミスが統治する領域の一角にある、ギリシア式の小さな神殿。主は時の番人と呼ばれる老人。地下部分は、実体化した「虚空の記憶」の保管庫となっており、番人が修正時に利用する『時の門』(望んだ時代に行くことの出来る、《妖精郷の通廊》の強化版といえる物)が存在する、あらゆる時代に通じる“時空の特異点”の1つとなっている。 魔王内戦において最終局面の舞台と成り、戦闘の余波で地上部分はほぼ全壊してしまう。 虚空(アカシャ)の記憶 『人』にまつわる記憶の積みかさねであり、全ての霊視のみなもととなるもの。地上・不死の領域・生と不死の境界で、過去に起きた出来事と今起きている出来事の全てが古ラテン語で綴られた文章として記録され、それを一辺が4、50センチメートルの方形の石板に記して「プルタルコスの館」の地下に保管されている。 なお、『最後の王』ラーマに関する記録だけは、『最後の王』と『十の命を持つ神殺し』の最終決戦の地を模した別の場所に、時の番人の手で封印されている。そのため、通常の霊視ではラーマに関する情報を知ることはできない。 桃源郷 幽冥界に存在する仙女達が住まう桃園。羅翠蓮がカンピオーネとなってからは、幽冥界における本拠地兼仮宿として利用されている。 オベーロンの森 妖精王オベーロンと部民が住まいとした広大な森で、現在はジョン・プルートー・スミスが領地としている聖域。樫(オーク)を中心とした常緑樹が生い茂り、スミスの居館として古代ケルト人が造ったような木造の家が建てられている。この場所にはフェアリー、レプラコーン、ゴブリン、トロウル、バンシー、デュラハン、サテュロス、シレノスなどの多様な妖精が住んでいる。自然豊かな土地ではあるが、アストラル界に流れ着いたオープンカーを愛車とするスミスが移動するための道路が整備されている。 評議場 常に夜となっている階層の草原に作られた巨石建造物で、野球場のダイヤモンドほどの大きさのストーンサークル。妖精王や賢人が集い会議をするための評議場。禁足地の呪法がかけられているため、所定の手順を踏まなければ到達できないようになっている。 運命神の領域 アストラル界の果てに位置する、《生と不死の境界》の中で最も《不死の領域》に近い場所。《運命》そのものである『運命の糸』を『絨毯』状に織りあげた色鮮やかな万色の織物が広大無辺に広がる空間で、地面は運命の糸のかたまりでできている。ただし、カンピオーネほどの力がない限り見通すことができず、灰色の虚無的な空間にしか見えない。パンドラがカンピオーネたちと会話するために呼び出すのも、厳密にはこの場所だとされる。 《運命の担い手》が織り上げた作品は護堂が『白馬』で焼き払ったが、それ以降に創造された糸から新しい織物が創られている。 歴史の修正力 ギリシア神話のヘルメスや日本神話の八咫烏、猿田彦神といった旅人の権能を有する神々や妖精によって過去に流された人間たちが、偶然と奇跡によって歴史を変えるようなことをしても、強制的に「なかったこと」になるという現象を「歴史の修正」といい、その際に働く時の流れが持つ無慈悲で冷酷な力のことを指す。運命修正の力とも。例えば、歴史の重要人物がタイムトラベラーに助けられ、『本来死すべき日時』に死ななかったとしても、数日後から数年後に横死し、逆に『本来死すべき日時』より早く亡くなった場合は周囲の者が身代わりを立てるなどされて、歴史はあるべき筋書きどおりに進んでいく。この力を恣意的に利用する権能が存在し、神かカンピオーネの全力攻撃でもない限り突破できない強力な攻撃無効化能力となる。 ごく稀に修正しきれないような改変が起こるが、その場合は時の番人が介入し影響を最小限に抑えた結果である「あるべき歴史」に落ち着くこととなる。修正が失敗した場合は改変時に新たな分岐が発生し、「異なる時間軸の並行世界」が生み出されることになる。 盟約の大法(めいやくのだいほう) 『最後の王』が「剣神の宿星」に祈願することで使用できる、「地上に複数の神殺しがいるとき、天地と星々から力を引き出し自身の呪力を爆発的に増やす」という魔王殺しのための大呪法。その正体は『勇者が魔王を倒した』という筋書きを全うさせるために一時的に支援するシステムのようなもので、『世界を滅びより救済すること』と『魔王殲滅』という困難な使命を成し遂げるための援助である。カンピオーネの数が増えるほど呪力増加率も上昇し、歴史を改変しかねない蛮行さえも“なかったこと”にする。ただし、あくまで「修正力」の応用なので、強さを無限大にすることは出来ない。 大法を使った勇者の力は全ての並行世界を合わせても最上位クラスとされるが、無条件に使えるわけではなく、地母神の命を得て完全覚醒を遂げているか、盟約を批准した神々が神殺しの手で殺された場合にのみ発動できる。また、『最後の王』以外でも、斉天大聖のように然るべき武勇と権威を有する一部の《鋼》ならば使用することも可能だが、その場合は効果が低下する上に発動条件も厳しくなる。 並行世界でも、その世界の『運命の担い手』から『最後の王』に授けられていることがある。
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