イデアとは? わかりやすく解説

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イデア

英語:idea

イデア(英: idea)とは、要するに「理念」のことです。哲学用語としては「理念」および「観念」と訳されます。哲学関係ない文脈においては考え」「案」「見解」「着想」「思いつき」などのように訳せますが、この場合は大抵「アイディア」のように表記されます。

哲学用語としての「イデア」は、古代ギリシア哲学巨頭プラトンPlatōn)の哲学的体系根幹位置づけられるキーワードです。ギリシア語では ιδέα と表記されます。元々は「見られるもの」、転じて「姿」といった意味の語です。

イデアは英語では ideaアイディア)、フランス語では idée(イデー)、ドイツ語では Ideeイデー)と表記発音します日本語カタカナ表記の「イデア」は、(英語・仏語独語語源でもある)ギリシア語の「ιδέα」(イデア)に最も忠実な表記いえます

プラトン哲学におけるイデアは、知覚超越したところにあり、直接には知覚できない、ただ想起によってのみ認識し得る、抽象化された純粋な理念であり、しかも対象対象たらしめている根拠であり本質真の存在です。理念として思い描かれた(想起された)、理想的理念的な、「それそのもの」という理念観念概念です。

現実において直接的に見た触れたりできる対象は、個体差あるよう不完全な存在です。しかしながら、その不完全な対象知覚する際、頭の中では「それそのもの」という純粋で完璧な姿を、理念として思い描くことができますプラトンいわく、この思い描かれた姿こそがイデアであり、真の存在です。

たとえば、目の前に1匹のがいたとします眼前にいるは、ではありますが、個体の1例に過ぎず、「そのもの」「真の」の体現であるとまでは言い切れません。しかし、眼前見たモフモフしたりしながら、頭の中では「何たるか」が抽象化され、いわば「そのもの」という理念抽出されています。こうして頭の中に思い描かれ理念上のの姿がイデアです。人は眼前個体通じてのイデアを想起している、という叙述集約されます。

イデア【(ギリシャ)idea】

読み方:いであ

見られたもの、知られたもの、姿、形の意》プラトン哲学で、時空超越した物体的、絶対的な永遠実在感覚的世界個物原型とされ、純粋な理性的思考によって認識できるとされる中世キリスト教神学では諸物原型として神の中に存在するとされ、近世になると観念理念の意で用いられるようになった


イデア 【idea】

事物本質価値判断基準、をさすギリシア語プラトン哲学は、これを中心概念とする。超越的原理。もともとは、見られたもの・知られたもの・姿・形の意。中世では神の思想として理解されていたが、近世になると、人間観念アイデア)や理念イデーとしての意味を持つようになった

トッホ:イデア

英語表記/番号出版情報
トッホ:イデアIdeas Op.69作曲年1946年 

イデア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/22 01:19 UTC 版)

イデア: ιδέα、idea)とは、

語源

「イデア」という言葉は「見る」という意味動詞「idein」に由来していて、もともとは「見られるもの」のこと、つまりものの「姿」や「形」を意味している[1]

プラトンの哲学

まず、ギリシア語の語彙体系について若干説明しておくと、ギリシア語では、見るideo系統の用語としては、ideinとeidoがあった。eido の過去形 eidon に由来する「eidos エイドス」という言葉は「」とか「図形」という意味でごく普通に用いられる言葉であった[2]。「イデア」も「見え姿」や「形」を意味するごく普通の日常語で、プラトン自身は「イデア」と「エイドス」を専門用語として区別して使用していたわけではなく、同義の語として使用していた[3][4][5][6]

プラトンは、イデアという言葉で、われわれの肉眼に見える形ではなく、言ってみれば「心の目」「魂の目」によって洞察される純粋な形、つまり「ものごとの真の姿」や「ものごとの原型」に言及する。プラトンのいうイデアは幾何学的な図形の完全な姿がモデルともとれる。

プラトンにおけるイデアの理解は一定しているわけではなく、書かれた時期によって変遷が見られるという。一般にプラトンのイデア論というと中期のそれを指していることが多い。

中期

「徳とは何か?」という問いがある。これについて「不知なる対象の探求は不可能だ」と説く立場(探求のパラドックス説)もあるが、これに対してプラトンは「学習は想起(アナムネーシス)である」との想起説によって、このパラドックス説を斥ける。想起説は、は不死だとする説と、輪廻転生の説と連関がある。

プラトンは次のように説明する。

我々の魂は、かつて天上の世界にいてイデアだけを見て暮らしていたのだが、その汚れのために地上の世界に追放され、肉体(ソーマ)という牢獄(セーマ)に押し込められてしまった。そして、この地上へ降りる途中で、忘却(レテ)の河を渡ったため、以前は見ていたイデアをほとんど忘れてしまった。だが、この世界でイデアの模像である個物を見ると、その忘れてしまっていたイデアをおぼろげながらに思い出す。このように我々が眼を外界ではなく魂の内面へと向けなおし、かつて見ていたイデアを想起するとき、我々はものごとをその原型に即して、真に認識することになる[7]

つまり、真の認識とは「想起」(アナムネーシス)にほかならない、と言うのである[7]

想起説が導入されることでプラトンの哲学は、劇的な展開をとげ、強固な二元論の立場となった。そしてphilosophia(=愛知)とは「死の練習」なのであり、真の philosopher(愛知者)は、できるかぎりその魂を身体から分離開放し、魂が純粋に魂自体においてあるように努力する者だとした。この愛知者の魂の知の対象が「イデア」である。

イデアは、それぞれの存在が「何であるか」ということに比較して、「まさにそれであるところのそのもの」を意味する。

近世

イデアという語は、英語 idea, ドイツ語 Idee であるが、近世においては、プラトンとは違った近世哲学独自の解釈を与えられることになり、「アイディア」「イデー」と聞いて現代人がまず思い浮かべる用法が現れた[8]

文献

  • 『哲学キーワード事典』
  • 岩波『哲学・思想事典』

出典

  1. ^ 岩波『哲学・思想事典』
  2. ^ 『哲学 キーワード事典』p.49
  3. ^ 内山勝利 「プラトン」『哲学の歴史 第1巻 哲学誕生【古代1】』内山勝利編、中央公論新社、2008年、464-465頁。
  4. ^ プラトン『饗宴/パイドン』朴一功訳、京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2007年、297頁注1。
  5. ^ プラトン『パイドン――魂について』納富信留訳、光文社〈光文社古典新訳文庫〉 、2019年、201頁注347。
  6. ^ プラトン全集4 パルメニデス ピレボス田中美知太郎訳、岩波書店、1975年、復刊2005年、27頁注27。
  7. ^ a b 『哲学 キーワード事典』p.50
  8. ^ 『世界大百科事典』「イデア」

関連項目


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