病態生理
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放射線療法は、主にDNA損傷を引き起こし細胞死を誘導することで癌を破壊する 。癌の腫瘍細胞では、正常で健康な細胞が放射線による損傷から回復することを可能にするDNA修復機構の変異が高頻度で生じているため、放射線による損傷を受けやすくなっている。しかし、照射が過剰であれば正常細胞でもDNA損傷が生じ、組織変化や壊死をきたしうる。 放射線性骨壊死が1922年にRegaudによって最初に報告されて以来、科学者は正確な機序を調査し治療法の確立を支援してきた。何年にもわたっていくつかの競合する理論が出現し、その結果承認されている治療法が変更された。 当初、放射線性骨壊死は放射線照射・外傷・感染が組み合わさって生じるとされていた。この考えによれば、放射線による損傷は骨を弱くし、外傷による微小骨折の影響を大きくし、細菌の侵入を可能とする 。この理論によって放射線性骨壊死は骨髄炎の延長として位置づけられ、主に抗生物質による治療がなされた 。 1983年になると、著名な口腔外科医・顎顔面外科医であるRobert E. Marxが外傷と感染を要件とする主張に反論した 。Marxによれば、放射線性骨壊死は放射線による累積的な組織損傷の結果であり、細胞代謝・恒常性が障害されることで細胞死・低細胞化が生じる。さらに放射線は血管内皮細胞の損傷を引き起こし、血管の乏しい、ひいては低血流かつ低酸素の状態を作り出す 。下顎骨が主に下歯槽動脈に栄養されるのに対し、上顎骨はさまざまな動脈によって栄養され血液供給が豊かであるが、これは下顎骨が上顎骨よりも影響を受けやすいことに合致する。つまるところMarxは、放射線性骨壊死は本質的には低細胞(hypocellular)・低血流(hypovascular)・低酸素(hypoxic)の組織であり、慢性の難治性外傷のように振る舞うと考えた(hypoxic-hypocellular-hypovascular theory) 。 高気圧酸素療法(HBO)が放射線性骨壊死を予防することを示すMarxらによる最初の報告もこの理論を支持した 。しかしその後の研究ではHBOの有効性について疑問が生じ始め、Marxの理論が治療の決定にあたって十分包括的かどうかが疑問視され始めた。 現在の理解は主に放射線誘発性線維症(Radiation-Induced Fibroatrophy)的な過程を提案したDelanianとLefaixの研究に基づいている(fibroatrophic theory)。実験技術の進歩とともに骨壊死標本についてより詳細な研究を行えるようになったが、標本の分析により、放射線性骨壊死をきたしている組織が1)前線維化期、2)構成的組織化期、3)後期線維萎縮期の3段階を経ていると知られた 。 前線維化期では、放射線による内皮細胞の損傷のため血管が破壊され、 TNF-α ・FGF-β ・TGF-β1などの炎症性サイトカインを介して炎症細胞と線維芽細胞がリクルートされる 。さらに骨内の骨芽細胞が損傷・破壊され、正常な骨組織の産生が減少する 。 構成的組織化期では、線維芽細胞は残存し、上記のサイトカインによって筋線維芽細胞に変換され、骨内で線維性の細胞外マトリックス(ECM)になり始める。筋線維芽細胞による細胞外マトリックス産生増加は、骨芽細胞による類骨の産生減少と相まって骨組織の脆弱化をもたらす 。 最後に、後期線維萎縮期では筋線維芽細胞が死に始め、弱い線維性組織が残るため骨は低細胞性となる 。これらの組織は脆く、外傷・感染による損傷を生じやすく、前線維化期に血管が減少しているため修復能力・防御能力をほとんど失ってしまう 。病態生理をこのように捉えると、現在の治療法は炎症性サイトカインの減少・DNAのフリーラジカル損傷の減少を目的としていることになる 。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/03 09:43 UTC 版)
ほとんどの場合、すべてのプロテオパチーではないにしても、3次元フォールディング (コンフォメーション)の変化により、特定のタンパク質がそれ自体に結合する傾向が高まる。この凝集形態では、タンパク質は除去 (clearance; クリアランス) に対する抵抗性があり、影響を受ける臓器の正常な能力を妨害する可能性がある。場合によっては、タンパク質のミスフォールディングにより、通常の機能が失われる。例えば、嚢胞性線維症は、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(英語版) (CFTR) タンパク質の欠陥によって引き起こされ、筋萎縮性側索硬化症/前頭側頭葉変性症 (FTLD) では、特定の遺伝子調節タンパク質が細胞質内で不適切に凝集し、核内での通常の役割を実行できない。タンパク質は、ポリペプチド骨格として知られる共通の構造的特徴を共有しているため、すべてのタンパク質は、ある状況下でミスフォールドされる可能性がある。しかし、おそらく脆弱なタンパク質の構造的特異性のために、比較的少数のタンパク質のみがタンパク質変性疾患に関連している。例えば、通常はアンフォールド (折り畳まれていない) されているか、またはモノマーとして比較的不安定なタンパク質 (つまり、単一の非結合タンパク質分子) は、異常なコンフォメーションにミスフォールドする可能性が高くなる。ほぼ全ての場合において、疾患を引き起こす分子構成には、タンパク質のβシート二次構造の増加を伴う。いくつかのプロテオパチーにおける異常なタンパク質は、複数の3次元形状に折りたたまれることが示されている。これらの変性タンパク質構造は、それらの異なる病原性、生化学的、およびコンフォメーション特性によって定義される。これらはプリオン病に関して最も徹底的に研究されており、タンパク質株と呼ばれている。 プロテオパチーが発症する可能性は、タンパク質の自己組織化を促進する特定の危険因子によって増加する。これらは、タンパク質の一次アミノ酸配列の不安定化変化、翻訳後修飾 (過剰リン酸化(英語版)など)、温度やpHの変化、タンパク質の生産量の増加、またはその除去 (クリアランス) の減少が含まれている。加齢は、外傷性脳損傷と同様に、強い危険因子である。老化した脳では、複数のプロテオパチーが重畳する可能性がある。例えば、タウオパチーとAβアミロイドーシス (アルツハイマー病の重要な病理学的特徴として共存する) に加えて、多くのアルツハイマー病患者は脳内にシヌクレイノパチー (レビー小体) を併発している。 シャペロンやコ・シャペロン (タンパク質のフォールディングを助けるタンパク質) が、加齢や蛋白質ミスフォールディング病において、タンパク質の毒性に拮抗し、タンパク質恒常性(英語版)を維持しているのではないかという仮説が立てられている。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/14 04:41 UTC 版)
どのようにして急性脳症を発症し、どのようにして重症化していくかといったことや、同じウイルスに感染してもなぜごく一部の人だけが急性脳症を発症するのかといったことは、十分に明らかになっていない。中枢神経疾患のような基礎疾患を持つ患者では急性脳症が重症化しやすい、といったことは経験的には知られているが、科学的に証明はされていない。 感染を起こしたウイルスに対する過剰な免疫反応が、全身の血管(脳の血管を含む)に炎症を起こすことにより、中枢神経症状や多臓器不全を発症するという仮説がある。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:01 UTC 版)
「急性汎発性発疹性膿疱症」の記事における「病態生理」の解説
詳細は「en:Severe cutaneous adverse reactions#Pathophysiology」を参照 AGEPは、他の薬剤性SCAR疾患と同様に、薬剤またはその代謝物が細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞)またはヘルパーT細胞(CD4+T細胞)を刺激し、自己の組織を攻撃する自己免疫反応を開始するIV型アレルギーである。SCARは、サブタイプIVb(DRESS症候群)、サブタイプIVc(SJS、SJS/TEN、TEN)、サブタイプIVd(AGEP)に分類される。AGEPは、不適切に活性化された好中球による組織傷害作用と、好中球の産生、組織への動員、活性化 を刺激するサイトカイン(インターロイキン8、インターロイキン17、GM-CSF)や自然免疫反応および自己免疫反応を促進するサイトカイン(インターロイキン22)の過剰産生を伴う点で、他のSCAR疾患とは異なる。 AGEPは、薬物またはその代謝物がCD8+TまたはCD4+T細胞を刺激する基本的なメカニズムを裏付ける証拠のレベルに関しても、他のSCAR疾患とは異なる。研究によると、薬物またはその代謝物がCD8+TまたはCD4+T細胞を刺激するメカニズムには、自然免疫系の抗原提示経路の崩壊が関与している。薬物またはその代謝物は、身体のタンパク質と共有結合して、非自己の薬物関連抗原決定基(エピトープ)を形成する。抗原提示細胞(APC)は、これらのタンパク質を取り込み、消化して小さなペプチドにし、そのペプチドを主要組織適合性複合体(MHC)のヒト白血球抗原(HLA)構成成分の抗原提示部位に配置し、MHC関連ペプチドをCD8+T細胞またはCD4+T細胞のT細胞受容体に提示する。HLA-A(英語版)、HLA-B(英語版)、HLA-C(英語版)、HLA-DM(英語版)、HLA-DO(英語版)、HLA-DP(英語版)、HLA-DQ(英語版)、HLA-DR(英語版)タンパク質上に薬剤関連の非自己エピトープを発現するペプチドは、T細胞受容体に結合して受容体を有する親T細胞を刺激する事が出来、それが自己組織を攻撃する。また、薬剤や代謝物は、HLAタンパク質の抗原提示部位に侵入して非自己エピトープとして機能したり、抗原提示部位の外側に結合してHLAタンパク質を変形させて非自己エピトープを形成したり、APCをバイパスしてT細胞受容体に直接結合してT細胞を刺激する事もある。しかし、非自己エピトープがT細胞を刺激するためには、特定のHLA血清型に結合しなければならない。ヒトの集団は約13,000種類のHLA血清型を発現しているが、個人が発現しているのはそのうちのほんの一部に過ぎない。SCARを誘発する薬物または代謝物は、1つから数個のHLA血清型としか相互作用しないため、SCARを誘発する能力は、その薬物または代謝物が標的とするHLA血清型を発現している個体に限られる。従って、特定の薬剤に反応してSCARを発症する素因となるHLA血清型を発現している事は稀である。これまでの研究では、DRESS症候群、SJS、SJS/TEN、TENなどの疾患を引き起こす様々な薬剤に関連する幾つかのHLA血清型(英語版)が特定され、これらの血清型を発現する個人を特定する検査法が開発され、それによってこれらの個人が原因となる薬剤を避けるべきであると判断されている。AGEPと特定の薬物に関連するHLAの血清型はまだ特定されていない。1995年に実施された研究では、HLA-B51、HLA-DR11、およびHLA-DQ3の血清型がAGEPの発症と関連することが特定されたが、この結果は確認されておらず、関連する血清型を特定する為の更なる研究も行われていない為、何らかの薬物に反応してAGEPを発症する素因を持つ個人を特定するのには有用でない。同様に、特定のT細胞受容体の変異は、DRESS症候群、SJS、SJS/TEN、TENの発症と関連しているが、AGEPとは関連していない。 DRESS症候群、SJS、SJS/TEN、TENが起こるケースでの、ADME(薬物の吸収、分布、代謝、排泄の速度)の傾向が判明している。これらの傾向は、組織内の薬物または薬物代謝物の濃度と残留時間に影響し、それによって薬物または代謝物がSCARを引き起こす能力に影響を与える。 稀に、IL36RN 遺伝子に機能喪失型の変異(英語版)がある患者に、AGEPの発症が報告されている。この遺伝子は、インターロイキン36受容体アンタゴニスト(英語版)(IL36RA)をコードしている。IL36RAは、角化細胞、滑膜細胞、樹状細胞、マクロファージ、T細胞に対するインターロイキン36サイトカイン(IL-36α(英語版)、IL-36β(英語版)、IL-36γ(英語版))の炎症促進作用を阻害する。これは、これらのサイトカインの受容体であるIL1RL2(英語版)およびIL1RAP(英語版)に結合するが刺激しないことにより、インターロイキン36がIL1RL2およびIL1RAPに結合して刺激するのを妨害する事になる。しかし、IL36RN の機能喪失型変異は、汎発性膿疱性乾癬(英語版)の症例でも報告されている。一見無関係な2つの疾患にこの変異が存在することから、AGEPをSCARsまたは乾癬の一形態として分類するには検討が必要であると指摘されている。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:01 UTC 版)
IgEを介した好酸球の増加は、好塩基球や肥満細胞から放出される化合物によって誘導される。この化合物には、アナフィラキシー時の好酸球走化性因子、ロイコトリエンB4(英語版)、セロトニンを介した好酸球顆粒の放出、補体複合体(C5-C6-C7)、インターロイキン-5、ヒスタミン(ただし、濃度範囲は狭い)等が含まれる。 未治療の好酸球増多症による症状は、原因によって異なる。アレルギー反応の際には、肥満細胞からヒスタミンが放出されて血管拡張が起こり、それに伴い好酸球が血液から移動して組織内に留まる。好酸球が組織に蓄積すると、大きなダメージを受ける。好酸球は、他の顆粒球と同様に、消化酵素や細胞障害性タンパク質を含む顆粒(または嚢)を有しており、通常の状態では寄生虫を破壊する為に使用されるが、好酸球増多症ではこれらの物質が健康な組織を損傷する。これらの物質に加えて、好酸球の顆粒には炎症性分子やサイトカインが含まれており、これがさらに多くの好酸球や他の炎症性細胞を患部に呼び寄せ、損傷を増幅・永続化させる。このプロセスが、アトピー性喘息やアレルギー性喘息の病態生理における主要な炎症プロセスであると一般に認められている。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/01 08:10 UTC 版)
MDSは放射線やベンゼンといった環境暴露によって引き起こされる可能性がある。その他の危険因子も一貫性なく報告されている。しかしながら、特定の原因の決定的証拠を確定することはできない。二次MDSはがん治療、通常は放射線治療とブスルファン、ニトロソウレア、プロカルバジンといった放射線模倣アルキル化剤の組み合わせ(潜伏期5-7年)、またはDNAトポイソメラーゼ阻害剤(英語版)との組合わせ(潜伏期2年)の遅発性毒性として起こる。免疫抑制治療後の後天性再生不良性貧血およびファンコーニ貧血はどちらもMDSへと進行し得る。 MDSは多能性骨髄幹細胞における突然変異に起因すると考えられているが、これらの病気の原因となる特異的異常については依然として不明なところが多いままである。血液の前駆細胞の分化が損われており、骨髄細胞におけるアポトーシス性細胞死が顕著に増加している。異常細胞のクローン性増殖によって分化能を失った細胞の生産が起こる 。骨髄芽球の総割合が特定の値(WHOでは20%)を超えたとすると、急性骨髄性白血病(AML)への移行が起こったと診断される。MDSからAMLへの進行は、最初に正常細胞において一連の突然変異が起こり、がん細胞へと転換するというクヌードソン仮説の実例である。白血病への移行の認識は歴史的に重要であったが、MDSに帰せられる病的状態と死亡の相当な割合はAMLへの移行からではなく、むしろ全てのMDS患者において見られる血球減少症に起因する。貧血がMDS患者において最も一般的な血球減少症であるが、輸血が容易に受けられるため、MDS患者が深刻な貧血から損傷を受けることはまれである。血球減少に起因するMDS患者における2つの最も深刻な合併症は(血小板減少による)出血と(白血球減少による)感染症である。長期的な濃厚赤血球の輸血は鉄過剰症を引き起こす。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/11 16:14 UTC 版)
第IX因子の欠乏は出血傾向を増大させ、自発的にまたは軽度の外傷によって大きな出血が生じる場合がある。 第IX因子の欠乏は血液凝固カスケードを阻害する。正常なカスケードでは、第IX因子はコファクターである第VIII因子によって活性型(第IXa因子)となる。血小板が両者の結合部位となる。この複合体は第X因子を活性化し、第X因子はフィブリノゲンからフィブリンへの変換を助ける。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/19 13:28 UTC 版)
「シャルル・ボネ症候群」の記事における「病態生理」の解説
CBSの定義については、一般的なコンセンサスはない。CBSと相関する主要な因子は、視力の低下、視野喪失、高齢である。幻視の特徴は、眼球損傷の解剖学的部位と特に関連しているわけではないが、通常は視力低下の部位と一致している。CBSの最も一般的に受け入れられている理論は、極度の視覚障害が知覚の求心路遮断を促進し、脱抑制を引き起こし、その結果、視覚皮質領域の突然の神経発火を引き起こすというものである。いくつかの研究では、幻視は盲目領域に集中している可能性が高いことが報告されている。CBS患者のfMRIでは、幻視と腹側後頭葉の活動との関係が示されている。加齢黄斑変性(AMD)と有色幻視との関連が提示されている。色覚信号は外側膝状体(LGN)の傍細胞層を通過し、後に背側皮質視覚路の色領域に伝達される。黄斑部に位置する錐体視細胞の損傷により、視覚連合野への視覚入力が著しく減少し、色領域の内因性活性化を刺激し、結果として色の幻視を引き起こす。黄斑変性症と同時にCBSを有する患者では、視覚連合野の色領域の活動性が亢進していることがfMRIで示されている。重度の眼疾患を有していても視力を維持している人は、CBSの影響を受けやすいと考えられる。 ディープボルツマンマシン(DBM)は、ニューラル・フレームワークの中で無方向の確率的プロセスを利用する方法である。研究者は、DBMが大脳皮質の学習、知覚、視覚野(幻視の場所)の特徴をモデル化する能力を持っていると主張している。また、神経細胞の活動を安定化させるために、大脳皮質の恒常性操作が果たす役割についても、説得力のある証拠が詳細に示されている。DBMを用いて、感覚入力がない場合に、ニューロンの興奮性が影響を受け、複雑幻視を引き起こす可能性があることを研究者らは示している。 情報のフィードフォワードとフィードバックの流れのレベルの短期的な変化は、幻視の発生に強く影響することがある。眠気のある時には、CBSに関連した幻視が発生しやすくなる。視力が失われた後の皮質の恒常性プロセスを破壊することで、幻視の出現を防ぐことができる可能性がある。アセチルコリン(ACh)は視床入力と皮質内入力のバランスや、ボトムアップとトップダウンのバランスに影響を与える可能性がある。特にCBSでは、皮質部位でのアセチルコリンの不足が幻視の発症に対応している。 また、メチルアルコール中毒による両側性視神経障害の後に発症することもある。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/23 09:33 UTC 版)
ケトンは、主に肝細胞のミトコンドリアの遊離脂肪酸から生成される。ケトンの生産はインスリンによって厳しく調節されており、インスリンの絶対的または相対的な欠乏がケトアシドーシスの病態生理の根底にある。インスリンは脂肪酸放出の強力な阻害剤であるため、その欠乏は脂肪組織からの異常な脂肪酸放出を引き起こすことになる。また、インスリン欠乏はケトンの生産を高め、末梢でのケトンの利用を阻害する。これは、完全なインスリン欠乏症(未治療の糖尿病など)またはグルカゴンと逆調節ホルモンが増加した状態での相対的なインスリン欠乏症(飢餓、慢性的なアルコールの過剰摂取または病気など)のときに発生する。 アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は、最も豊富な循環ケトン体である。ケトン体は酸性だが、生理学的濃度では、体の酸/塩基緩衝システムが血液のpHの変化を防いでいる。
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病態生理
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急性期頭痛薬を乱用することで、痛みの症状が増悪するというのは様々な疼痛疾患の中でも稀である。関節リウマチの治療では大量に鎮痛薬を使用するが新規の頭痛が問題になることは稀であり、片頭痛または緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛を起こす素因と考えられている。中枢性感作が関与するという意見もある。 カフェイン、ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素などが原因となる場合があり、その依存や離脱症状が薬物乱用頭痛の発症に寄与する。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 04:49 UTC 版)
早発性気分変調症の神経学的指標の存在を示唆するエビデンスがある。気分変調症の女性とそうでない女性との間で、複数の脳構造(脳梁および前頭葉)に違いがみられる。このことは、これら2群の間に発生学的な差異があることを可能性として示唆されてもいる。 機能的MRIの技術を用いて気分変調症患者群と非患者群を比較した別の研究では、この障害の神経学的指標をさらに支持する結果が得られた。具体的には、脳の複数の領域が異なる機能を示したのである。気分変調症患者では、扁桃体(恐怖などマイナスの感情の処理に関与)、島皮質(悲しみの感情に関与)および帯状回(注意と感情との橋渡し役を果たす)における活動性の亢進が観察された。 健常者と気分変調症患者とを比較したある研究では、さらに他の生物学的指標が示唆された。自らの感情に関わるどのような出来事が将来予期されるか聞いたところ、健常者はネガティブな形容詞の使用がより少なかったのに対し、気分変調症患者はポジティブな形容詞の使用が少ないという結果が得られた。さらに、健常者は気分変調症患者と比べ、ポジティブ、中立、ネガティブのいずれの出来事予期に対しても神経学的により強い反応を示すことが分かった。このことは、気分変調症患者が感情鈍麻を学習することで過剰にネガティブな感情から自己防衛する神経学的な証拠となる。 気分変調症を含むすべての型のうつ病における遺伝的基盤を示すエビデンスがある。それは、一卵性双生児のほうが二卵性双生児よりも、共にうつ病を有する確率が高いというもので、気分変調症が部分的には遺伝によって起こるとする考えが支持されている。 近年、新しいモデルが提唱されている。それは視床下部-下垂体-副腎系(ストレスに反応して活性化される脳構造)と、その気分変調症(例えばコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)とアルギニン・バソプレッシン(AVP)の表現型多型やアドレナリン機能の低下など)ならびに前脳のセロトニン神経系機序への関与に関するものである。このモデルはごく暫定的なものであって、今後のさらなる研究が必要とされている。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 14:58 UTC 版)
「偽性偽性副甲状腺機能低下症」の記事における「病態生理」の解説
偽性副甲状腺機能低下症1a型と偽性偽性副甲状腺機能低下症の両方に関与するGNAS1遺伝子は、ゲノムインプリンティングの影響を大きく受ける。偽性副甲状腺機能低下症の父親が精子形成を行うと、彼のGNAS1遺伝子はインプリンティングにより機能的であれ欠陥であれ何れのコピーも不活性化される。体内の組織はGNAS1遺伝子の異なるコピーを選択的に再活性化する。腎臓は、(偽性偽性副甲状腺機能低下症では機能的な)母方由来のコピーを選択的に活性化する一方、(偽性偽性副甲状腺機能低下症では欠陥のある)父方由来の遺伝子は刷り込まれたまま不活性に保つ。これは偽性偽性副甲状腺機能低下症でない正常な個体であっても同様である。母方由来のGNAS1遺伝子は機能的であるため、腎臓におけるカルシウムとリン酸の取り扱いは正常であり、偽性偽性副甲状腺機能低下症では恒常性が維持される。しかし他の組織では欠陥遺伝子も用いるので、殆どの組織でGNAS1転写産物のハプロ不全を引き起こし、偽性副甲状腺機能低下症1a型の表現型を呈する。その結果PTHに対する尿中cAMPの正常な反応や正常な血清PTH値も取る。[要出典]
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 06:57 UTC 版)
フィラデルフィア染色体として知られる染色体転座による遺伝子の後天的異常と明白に関連すると捉えられた最初の病気であった。フィラデルフィア染色体の名前は1960年代にペンシルベニア州フィラデルフィアの2人の研究者によって発見されたことに由来する。(9番染色体と22番染色体)各長腕の転座により、22番染色体上のBCR (breakpoint cluster region) と9番染色体のABL各遺伝子領域が複合し、融合(キメラ)遺伝子BCR-ABLを生じる。この産物である融合タンパクBCR-ABLは、恒常的に活性化されたチロシンキナーゼであり、JAK-STAT系等を介してアポトーシス抑制遺伝子BCL-XLの転写を促進するなど細胞の不死化を引き起こす。さらに、この融合タンパクはDNA修復を禁止するので、ゲノムが不安定となり、細胞は更なる遺伝子的異常を引き起こしやすくなる。フィラデルフィア染色体が検出される(陽性)細胞が骨髄芽球系かリンパ芽球性かでやや病態が異なり、後者はより難治性とされる。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 09:11 UTC 版)
UPDは卵形成や精子形成時の無作為なイベントして生じる場合があり、初期胚発生時やトリソミーレスキュー(英語版)によって起こる場合もある。 子が一方の親から2つの異なる相同染色体を受け取った場合、ヘテロダイソミーと呼ばれる。乗換えが起こっていない場合、ヘテロダイソミーは減数第一分裂時のエラーを意味している。 子が1本の染色体の2つの同一なレプリカを受け取った場合、イソダイソミーと呼ばれる。乗換えが起こっていない場合、イソダイソミーは減数第二分裂時のエラーもしくは接合後の染色体重複を意味している。 乗換えが起こっている場合、減数第一分裂時のエラーによってイソダイソミーとなる場合がある。例えばdistal isodisomyのように、乗換えが起こった遺伝子座では減数第一分裂時のエラーによってイソダイソミーが生じる。 同様に、乗換えが起こっている場合には減数第二分裂時のエラーによってヘテロダイソミーとなる場合もある。
※この「病態生理」の解説は、「片親性ダイソミー」の解説の一部です。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 14:06 UTC 版)
アレルギーでは、肥満細胞からヒスタミン、中性プロテアーゼ、アラキドン酸誘導体、血小板活性化因子、様々なサイトカインやケモカイン等の炎症性物質が放出される。これらの生理活性物質は冠動脈の痙攣(英語版)を促進し、冠動脈のアテローム性プラークの破裂を加速させる。これにより心筋への血流が阻害(英語版)され、不安定狭心症と見分けの付かない症状を引き起こす。 アレルギーの直接的な証拠がない患者でも、アレルギー反応が急性冠症候群に関与している可能性がある。ACSの患者には肥満細胞活性化のマーカーが見られる。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:08 UTC 版)
免疫応答の異常が強く推察されている。特にIgA抗体の高値やIgA免疫複合体の検出などが報告されており、発症にIgAの免疫複合体が関与していることが疑われる。組織学的には糸球体血管壁にIgA、補体C3の沈着、皮膚毛細血管では好中球浸潤が見られ、紫斑部位では好中球破砕性血管炎が特徴的である。以上のことから、先行感染や食物、薬剤などに対して異常な免疫応答によりIgA抗体の産生が亢進し、IgA免疫複合体を形成したのち、この免疫複合体が血管壁に付着し、局所でのサイトカイン等の産生が増加した結果、血管透過性の亢進や血管壁の脆弱化を伴う血管炎が起こり、紫斑、浮腫などを来たすと考えられている。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 12:32 UTC 版)
最近の研究により、免疫不全の原因となるウイルス性疾患であるHIV/AIDS(細胞性免疫不全に伴う臨床症状 の状態)に加えて、その他の免疫不全の要因を1つ以上有する症例が知られつつある 。主な要因は以下の通り。 臓器移植の既往 免疫抑制薬の使用 自己免疫および慢性炎症性疾患(例: C型肝炎 、関節リウマチ、グレーブス病、巨細胞性動脈炎、サルコイドーシス、重症乾癬 ) 年齢(例えば>60歳)による免疫老化 PDLのまれな症例は、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫や濾胞性リンパ腫などの低悪性度B細胞悪性腫瘍の形質転換としても発生しています 。 PBLの60〜75%でEBVに感染した形質芽細胞が見られる 。EBVは世界の人口の約95%に感染し、無症状、あるいは軽度の非特異的症状、もしくは伝染性単核球症を呈する。そののち潜伏期に入り、感染者は生涯にわたってEBVをB細胞系列に保有する無症候性キャリアになる。数週間・数ヶ月・数年または数十年後に、これらの保因者のごく一部、特に免疫不全の保因者がさまざまなEBV関連の良性ないし悪性の疾患のいずれかを発症する。このうち極めて稀な例として形質芽球性リンパ腫が生じることとなる 。形質芽細胞に感染したEBVはI型潜伏感染の状態にあり、感染細胞ではEBVのコードする小RNA(EBV-encoded small RNA; EBER)やBART(BamHI-A rightward transscript) miRNAが発現する。これらのRNAは感染細胞の増殖を促進し、宿主の免疫系の細胞傷害性T細胞による攻撃を回避し、そしておそらく、傷害された感染細胞のアポトーシス(すなわちプログラム細胞死)を阻害する[要出典]。 こうしてPBLの形質芽細胞は宿主の免疫監視をすり抜けて長期間生存し、過度に成長し、前悪性の遺伝子異常を獲得する。 PBLに見られる主な遺伝子異常は次の通り。 1)遺伝子組換えによる抗体遺伝子との再配列、あるいは稀な他の原因に由来したMYCがん原遺伝子の発現増加(この遺伝子の産物であるMycタンパク質により細胞増殖促進・アポトーシス阻害が生じ悪性化が促進される)。 2)PRDM1遺伝子の発現低下(この遺伝子の産物であるPRDM1/BLMP1タンパク質がMycタンパク質の発現を抑制する) 。 3)(びまん性大細胞型リンパ腫でよく見られるものと類似した、)1・7・11・22番染色体の特定の領域における高頻度の複製 。 4)シグナル伝達物質に対するB細胞応答に関与する、少なくとも13個の遺伝子の発現低下 。 5)B細胞から形質細胞への成熟を促進する遺伝子の発現増加(例: CD38 、 CD138 、 IR4 / MUM1 、 XBP1 、 IL21R 、 PRDM1 )。 6) B細胞特有の遺伝子の発現低下(例: CD20およびPAX5 ) 。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 02:32 UTC 版)
ポリオウイルスは口から体内に侵入し、最初に咽頭か小腸粘膜の細胞に感染する。細胞への感染においては細胞表面に発現し、ポリオウイルス受容体としても知られる免疫グロブリン様受容体、CD155分子に結合することで細胞内へ進入する。細胞内へ侵入したウイルスは宿主細胞のセントラルドグマを乗っ取り、複製を開始する。ポリオウイルスはおよそ1週間で消化器系の細胞内で増殖し、そこからさらに扁桃(特に扁桃の胚中心にいる、濾胞樹状細胞)、パイエル板のM細胞を含む腸管リンパ組織、および頸部ないし腸間膜リンパ節へと感染を広げ、その場で十分に増殖を重ねる。そしてウイルスはさらに血流へと進入する。 ウイルス血症として知られる血流へのウイルスの拡散により、ポリオウイルスは全身へ拡散する。ポリオウイルスは血中およびリンパ液中で長期間生存、増殖可能で、17週間にわたり循環することがある。少数の症例においてはウイルスが褐色脂肪、細網内皮系、筋などの他の組織でも増殖する。この持続的なウイルスの増殖は重度のウイルス血症を招き、軽微な感冒様症状の発展につながる。稀にこれがさらに進行し、ウイルスが中枢神経系へ侵入、局所的な炎症反応を誘起する。中枢神経系にウイルスが侵入してもなお、多くの症例では脳を包む層状の組織、髄膜に炎症が限局し、これは非麻痺型無菌性髄膜炎と呼ばれる。CNSへの感染がウイルスに与える利点は無いと考えられており、CNSへの感染は通常の消化器感染から事故的に生じるようである。ウイルスがCNSへと広がる方法はほとんど理解されていないが、基本的には偶発的であるようで、感染者の年齢、性、社会経済学的地位はCNSへの移行の有無にはほとんど影響しない。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 01:59 UTC 版)
シリカの粉塵微粒子を吸い込むと、粉塵微粒子は肺の中で酸素と二酸化炭素の交換が行われる肺胞や気管深くに沈着することがあり、その場合肺は痰や咳のかたちで粉塵を排出することができない。 シリカ粉塵の微粒子が肺に沈着すると、粉塵粒子を貪食するマクロファージが腫瘍壊死因子、インターロイキン-1、ロイコトリエンB4などのサイトカインを放出することで炎症反応を引き起こす。マクロファージはまた線維芽細胞を刺激して増殖させ、シリカ粒子のまわりにコラーゲン層を形成し、その結果線維症が生じ、また結節性病変が形成される。結晶シリカの炎症作用はNalp3インフラマソームが仲介しているとみられる。 さらにケイ素粉塵表面からケイ素化合物のラジカルが生成され、そこからヒドロキシ基、酸素ラジカル、過酸化水素が生産される。これらは周辺細胞を損傷する。 結節性珪肺に特徴的な肺の組織病理としては、中心部がコラーゲン繊維によりタマネギの皮様に球状の層を成した繊維性結節、中央部の硝子化、細胞周辺帯における偏光下で弱い複屈折を示す粒子の存在などが挙げられる。珪肺結節は結晶シリカに曝露した組織特有の反応である。急性珪肺では、顕微鏡検査によりPAS染色陽性の肺胞内浸出液と肺胞壁の細胞浸潤が認められる。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/12/02 10:11 UTC 版)
神経画像などによる最近の知見は情動調節障害における脱抑制のメカニズムが単純ではないことを示しているが、その中心的な役割を小脳が担っていることが徐々に明らかになりつつある。大脳皮質からの橋小脳路は運動系だけでなく認知や情動機能も司っており、その中で小脳は大脳皮質から入力される社会的文脈や気分などに合わせて、情動反応を細かく調節する役割を担っている。情動調節障害では、この小脳の機能不全によって皮質-橋小脳路の制御破綻が生じていると考えられており、特に小脳の微小循環の障害が情動のゲートコントロールとしての機能を妨げている可能性が指摘されている。前頭・側頭野や運動野からの直接入力は脳幹を介して小脳によって調節されており、運動系入力は体性感覚野からの抑制系入力により調節される。抑制系入力の減少は結果的に小脳の脱抑制を来たし、社会的に不適切な、あるいは場にそぐわない感情失禁、すなわちPBAが生じることになる。この系の回路で中心的な役割を担う神経伝達物質は、セロトニンとグルタミン酸であると現在考えられている。セロトニンは大脳辺縁系あるいは小脳系における衝動制御に関わっているとされており、グルタミン酸受容体は脳内に広く分布し主として抑制系入力に関わっている。これらの神経伝達物質の不均衡が症状の背景にあることから、薬物治療の奏功する可能性が高いと考えられている。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 06:27 UTC 版)
血液の短絡量と方向によって症状が変わり、短絡量は欠損孔の大きさと肺血管抵抗によって決定されるので以下のように変化する。なお、重篤な場合(肺高血圧進行時)を除いて右室に流れ込んだ血液はそのまま肺動脈に流れ込むので右室への容量負荷(拡張)は目立たず、普通は左房・左室・肺動脈が拡張する(逆に心室中隔欠損だけで右室拡張が見られる場合は重篤になっている)。 欠損孔が小さい場合(大動脈弁輪径の1/3以下)短絡量が少ないので肺動脈への影響も少なく、血行動態はほぼ正常(ただし短絡する血流の流れが激しくなっているので感染性心内膜炎(IE)を起こす確率は欠損孔が大きいケースと変わらない)。成人例は多くはこのタイプ。 欠損孔が中等度(大動脈弁輪径の1/2前後)の場合圧の高い左室から圧の低い右室への左→右シャントが発生し、肺血流量の増加と左室の容量負荷が生じる。肺動脈圧は正常ないし軽度上昇である。 欠損孔が大きい(大動脈弁輪径とほぼ同じ)場合右室圧は左室圧に等しくなり、肺高血圧を生じる。さらに肺高血圧が進展していくにつれ左右の圧力差が減るので一度は短絡量が減るが、さらに進んで右室側が高圧になるとシャントの方向が逆転して右→左シャントとなり、これをアイゼンメンゲル(Eisenmenger)症候群といいチアノーゼが起きるようになる。アイゼンメンゲル化の頻度はほぼ50パーセントで、この時点で原疾患への手術適応がなくなり、完治には心肺同時移植が必要となる。一方、アイゼンメンゲル化する以前の軽症例のうち、肺体血流比が1.5以上であった場合は手術による治療が可能である。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 09:57 UTC 版)
「原発性線毛運動不全症」の記事における「病態生理」の解説
繊毛を正しく動かすのに必要な遺伝子の異常により、繊毛や鞭毛を構成する細長い構造体である軸糸の運動が胎児期より障害され、生後、上・下気道の感染症が生じやすくなる。 発生初期に中心対微小管を持たないノード繊毛と呼ばれる特殊な繊毛が原始結節に出現し、自律的に回転運動を行うことで左向きの流れが生じ、臓器の左右非対称性が生み出される、軸糸異常の中で、特にダイニン腕の欠損を生じると、このノード繊毛の運動も障害を受けて左右の決定ができなくなり、約50%の確率で内蔵逆位が生じることになる。また一部の症例では、多脾症、無脾症、複雑な心奇形などを伴う内臓錯位が見られる。内臓逆位、慢性副鼻腔炎、気管支拡張症の3徴候が見られる時、歴史的に本症は、Kartagener 症候群と呼ばれてきた。 また運動性繊毛の異常によるPCD と非運動性の一次繊毛の異常に起因するその他の遺伝性疾患(多発性嚢胞腎, Bardet-Biedl 症候群,Meckel-Gruber 症候群など)を繊毛病 ciliopathy と総称することがある 。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/08 17:39 UTC 版)
詳しい病態生理は研究中であるが、脳幹・視床などの脳の深部が深く病態にかかわっていると考えられ、ここから白質を通り大脳皮質へ電気的興奮が投射されている。一方、通常のてんかんは、ほぼ大脳皮質とその下の白質線維のみが主体と考えられている。乳児期にのみ起こることから、白質の髄鞘化形成が病態に影響しているとの研究もある。 また、精神運動発達遅滞に関しては、ヒプスアリスミアが出現することそのものが脳の活動を抑制したり、脳細胞を破壊するのではないかといわれている。このような臨床上の痙攣発作がない、睡眠時に見られる持続的・頻回な脳波異常は、睡眠時てんかん放電重積状態(ESES)と呼ばれる。一方、ランドー・クレフナー症候群のようにヒプスアリスミアではない異常脳波を、ESESとして呈するてんかんも存在しており、ヒプスアリスミアがESESではないという説もあり、定まっていない。 頭部画像検査(CTやMRI)では潜因性ウエスト症候群では通常異常を認めず、症候性ウエスト症候群では、病因(先天感染、脳奇形、周産期障害など)に応じて様々な異常所見を認める。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/06 16:33 UTC 版)
興奮毒性は体内で産生される物質(内因性興奮毒)によって生じることもある。グルタミン酸は脳内の興奮毒の最も典型的な例であり、哺乳類の中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質でもある。正常条件下では、グルタミン酸濃度はシナプス間隙で最大1 mMまで上昇し、数ミリ秒後には迅速に低下する。シナプス間隙周辺のグルタミン酸濃度が低下しなかったり、より高いレベルに達したりした場合には、神経細胞はアポトーシスと呼ばれる過程で自ら死を引き起こす。 この病理学的現象は、脳損傷や脊髄損傷の後にも生じる。脊髄損傷後数分以内に、グルタミン酸は傷害部位の損傷した神経細胞から細胞外空間へ漏れ出し、シナプス前グルタミン酸受容体を刺激してさらなるグルタミン酸の放出を引き起こす。細胞外のグルタミン酸レベルの上昇はミエリン鞘やオリゴデンドロサイトに位置するCa2+透過性のNMDA受容体の活性化を引き起こし、オリゴデンドロサイトはCa2+の流入とその後の興奮毒性の影響を受けやすい状態となる。細胞質基質の余剰なカルシウムによって引き起こされる有害な影響の1つは、切断型カスパーゼによるプロセシングを介したアポトーシスの開始である。他の影響としては、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(英語版)の開口が挙げられる。ミトコンドリアの膜に位置するこのポアは、ミトコンドリアが過剰量のカルシウムを吸収した際に開く。ポアの開口によって、ミトコンドリアの膨潤と活性酸素種やアポトーシスにつながる他のタンパク質の放出が引き起こされる可能性がある。また、ポアはミトコンドリアからのさらなるカルシウムの放出も引き起こす。さらに、アデノシン三リン酸(ATP)の産生は停止し、ATP合成酵素はATPの産生ではなく加水分解を開始する可能性がある。この現象は抑うつへの関与が示唆されている。 外傷性脳損傷による不十分なATP産生は、特定のイオンの電気化学的勾配の消失を引き起こす。グルタミン酸トランスポーターが細胞外空間からグルタミン酸を除去するためには、こうしたイオン勾配の維持が必要である。イオン勾配の喪失はグルタミン酸の取り込みを停止させるだけでなく、トランスポーターの逆送も引き起こす。神経細胞やアストロサイトのNa+-グルタミン酸トランスポーターはグルタミン酸の輸送を逆転させ、興奮毒性を誘発する濃度のグルタミン酸を分泌し始める。その結果、グルタミン酸は蓄積し、グルタミン酸受容体の活性化はさらに損なわれる。 分子レベルでは、カルシウムの流入は興奮毒性によって誘導されるアポトーシスを担う唯一の因子ではない。グルタミン酸曝露や低酸素/虚血状態によって引き起こされるシナプス外のNMDA受容体の活性化はCREBタンパク質の遮断を引き起こし、ミトコンドリアの膜電位の喪失とアポトーシスを引き起こすことが指摘されている。一方、シナプスのNMDA受容体の活性化ではCREB経路が活性化され、脳由来神経栄養因子(BDNF)が活性化されてアポトーシスは活性化されなかった。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/30 06:15 UTC 版)
IVD遺伝子にコードされるイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.99.10)は、タンパク質中の必須アミノ酸、ロイシンの代謝分解に関わる。IVD遺伝子の変異はこの酵素の活性を落とし、ロイシンの分解能力を低下させる。これによってイソ吉草酸が蓄積し、脳神経障害が起こる。
※この「病態生理」の解説は、「イソ吉草酸血症」の解説の一部です。
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病態生理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/10 08:15 UTC 版)
正常であれば、血糖が低下すると膵β細胞からのインスリン分泌が抑制され、グルカゴンを初めとする血糖値を上昇させるホルモンが分泌され、糖新生が刺激される。血糖値は常に80~100mg/dLに維持されるが、この腫瘍がある限り、分泌抑制に異常があり、低下してもインスリンの分泌が続き、それに伴って低血糖症状を惹き起こす。
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